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『DAYS』 第六話 昨日と明日

DAYS

「M市を滅ぼしやがった俺達の宿敵からだ。今から、そいつを倒してくる」
そう言い放つシュウジの顔は、イオリが今まで見たことがない険しい表情をしていた。持っていた携帯電話を持つ手にも力がこもり、握り潰してしまいそうだった。
彼はイオリに背を向けるとその場から去ろうとする。
「待って!」
イオリはその背中に声をかけていた。もし、立ち止まったとしても、何を言えばいいのか判らない。だが、その背中を見た時、不意にそんな言葉が口から飛び出た。
「何だよ?」
立ち止まったシュウジは顔を向けずにイオリに問う。
「聞きたいことがたくさんあるの。家族っていう言葉が嫌いなのは、シュウちゃんの家族に関係があることなの?それに、“災害”があったあの日、シュウちゃんの家では何があったの?」
「お前には関係ねぇだろ?」
「関係あるよ!」
そう言ってイオリはシュウジの背中に抱きつく。これには不意をつかれ、歩き出していた彼は歩みを止めた。
「だって……、私達は家族だよ」
「俺はそう思ったことはない」
「あたしはそう思ってる。シュウちゃんも、ミチちゃんも、トーマス君も大事な家族だって」
「それに、俺の嫌いな言葉だ」
「これから好きになってもらう。あたしががんばって好きにさせてみせる。だから、話して。もし、少しでもあたしを大切だと思ってくれるなら」
しばらく沈黙が続いた。イオリからシュウジの表情を見ることはできない。覗きこもうとすればそれは可能なのかもしれなかった。だが、その勇気がなかった。
「判ったよ」
諦めたような口調でシュウジが言った。
「今から、お前に教えてやる。俺の最低の家族のこと。それと、あの日、何があったのか。俺が見たM市の“災害”について話そう」

第六話 昨日と明日

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『DAYS』 第五話 愛と罰

DAYS

昨年の秋に起こったU県M市の“災害”。
一部の街の住人が全滅するというセンセーショナルな災厄だったが、人々の記憶から急激な勢いで忘れ去られていった。何故なら、“災害”が起こった地域には何人たりとも入ることができなかったからである。
“災害”が地域とそうでない地域を隔てるように、見えない透明な壁に遮られているのだ。“災害”が起こった地域を見ることもカメラなどで撮影することもできる。だが、そこには“災害”が起こる前と同じ風景があるだけだ。
痛々しい災害の爪痕を期待していたマスコミ達はこの話題を避け始めた。情報を伝える側も受け取る側も日常的な別の事件の話題を追うようになったのだ。この“災害”を憶えているのは、これによって知人を失った者だけとなった。
そんな残された者達の間で噂になっていることがあった。それは“災害”に巻き込まれた者が生き返り、生前、大切に想っている者の前に姿を現すというものだ。目撃証言などもあり、この噂は都市伝説として広まりつつあった。同時に、“災害”に巻き込まれた者に出会うと死ぬという都市伝説も広がっていた。
室井クミコは、そのどちらも噂話ではなく事実だと知っていた。“災害”に巻き込まれて故人になったはずの先輩、渋谷ヨシフミと再会したし、(自覚はないが)彼によって殺されかけたのも事実だ。
クミコは手元にある紺色の手帳を見る。ヨシフミが愛用していたスケジュール帳で、去年の秋までのページは仕事のメモがびっしりと書かれている。そこから先は空白ばかりだった。ある程度進んでから、彼がU県M市で体験したことについての記述があった。
「先輩……」
彼が遺した真実はクミコに伝わった。しかし、彼女ではこの事件をどうすることもできない。手も足も出ない。故に、あの場所にいた二人の若者にこれを託すしかない。
「確か、トーマス・スターライトって言ってたっけ」
あの場所で名乗った金髪の青年の名前を思い出す。彼の名前も顔もきちんと記憶している。居場所は判らないが、それだけの情報があれば見つけるのは不可能ではない。難解だったとしてもやり遂げてみせる。
それが、クミコがヨシフミのためにできる唯一のことなのだから。

第五話 愛と罰

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『DAYS』 第四話 動物と音楽

DAYS

紺色のローブを纏った少女、エコーは自分の隠れ家にいた。小さいテーブルを挟んで向かいにいる同じ年頃の少女を見つめる。
『なんやねん。そんなに見つめられたら照れるやないかい!』
そう言ったのは、目の前にいる十代半ばの少女ではない。目の前の少女は眠っているらしく、目を閉じていた。両手を動かしながらエコーに話しかけるのは、少女の右手にあるクマのハンドパペットだ。緑色のスカーフを首にまいたそのハンドパペットは、持ち主の少女とは対照的にせわしなく動いている。
『このチャーリーが日本一のイケメンクマやからって惚れたらあかんで、お嬢ちゃん!』
「チャーリーと言ったな。黙っていろ。私は君ではなく、音無(おとなし)フミカと話している」
エコーの冷たい言葉が効いたのか、チャーリーはうなだれる。表情は変わらないが、その顔には哀愁が漂っていた。
『うぅ……。どーせ、ワイなんて……』
「チャーリーをいじめちゃダメ」
かわいらしい声を口から発して、チャーリーの主、音無フミカは目を開ける。
その少女は、数回、まばたきすると頭を振って眠気を振り払おうとした。同時にブラウンのお下げ髪が左右に揺れる。カジュアルなデザインで胸に黒い猫がプリントされたセーラー服に、キャラメル色のキュロットスカートを組み合わせている。その下には、赤いカラータイツを穿いていた。
服装以上に特徴的なのは、彼女の持ち物だった。動物のぬいぐるみのようなバッグやポシェットをいくつも提げていて、右手にはクマのハンドパペットがついている。そして、彼女の頭部には武骨な黒く大きいヘッドホンがある。
小さな口を開けて欠伸をした後、エコーを見る。
「君が最初から話を聞いていてくれたら、このクマと話す必要もなかった。もう一度説明する」
「大丈夫。エコーの言うこと、フミカはちゃんと聞いてた」
フミカは立ち上がり、左手で天秤の皿にあった数十枚のカードを受け取る。首と体を横に三十度ほど傾けて考えた後、彼女はそのカードの束をワニのぬいぐるみのようなバッグにしまった。
「ちゃんとやれる。心配しないで」
「心配はしていない」
互いに言葉を交わすとフミカは右手を自分の顔の位置まで持ち上げる。クマのチャーリーが再び、動き出した。
「さよなら、エコー」
『またな!魔女!』
フミカはエコーに背を向けると左手でドアを開けて去っていく。廊下からは彼女の足音と共に、優しい歌声が聞こえて来た。エコーは体の力を抜いてその歌声に耳を傾ける。
「これで、揃った」
思わず口から出た一言は、煙のように空気中に溶けて消えていった。

第四話 動物と音楽

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『DAYS』 第三話 星空と英雄

DAYS

夜はどの街にも平等に訪れる。だからと言って、夜に休む義務はない。眠らない街もある。
その青年は東京駅に降り立った。赤レンガの駅舎に背を向け、青い瞳で空を見上げる。周りがせわしなく動く中で彼だけが動こうとしない。人々は彼を避けて歩くことで流れを維持している。
「お久しぶり、東京。相変わらず星が見えないところだね」
感慨深そうな声でそう呟く。ようやく彼は動き出し、ステッカーがたくさん貼られた彼のスーツケースも動いた。歩みに合わせて彼の金髪が揺れる。
真っ白なカーゴパンツで脚を包み、真っ青なジャンパーの下からは真っ赤なTシャツが覗いている。完全なトリコロールだ。
彼は額に指を当てたと思ったら、今度はその指を折って数を数えている。
「ああ、そうだ。十年ぶりくらいか」
その数字に納得すると、再び、夜空を見上げる。彼が言うように星は見えない。
「秘密基地、まだ残ってるといいな」
何かに期待するように呟き、その青年は眠らない夜の街を歩いた。

第三話 星空と英雄

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『DAYS』 第二話 夜と交換日記

DAYS

「もうあたしには……、誰もいない。だから、お願い!あなたがあたしの家族になって!伯父さんの代わりになって欲しいの!」
シュウジは後ろから抱きついて懇願するイオリを振りほどかなかった。ただ、気だるそうな声で返す。
「断る。俺は誰かの代わりじゃねぇ。代理扱いなんて御免だね。それに、俺は家族って言葉が死ぬほど嫌いなんだ」
「どうして……」
「気に入らねぇのに、理由がいるか。理由があっても話さねぇよ。話す方も聞く方も胸糞悪くなるだけだ」
シュウジの口から発せられる言葉には、苛立ちや怒りや憎しみのようなものが混じっていた。イオリは自分にとって大事なものに対して負の感情を突き付けられたことに戸惑いを覚える。腕の力が抜け、シュウジを放した。
シュウジは少しだけ歩くと振り返る。彼の目には、その場にへたり込んだイオリの姿が映った。顔を伏せているので表情は読み取れない。だが、彼には悲しんでいる彼女の顔が容易に想像できた。シュウジは軽く舌打ちをした後、彼女を見て言う。
「家族なんて言葉は気に入らねぇ。ただ、話くらいは聞いてもいいぞ」
イオリは顔を上げた。驚いた顔をしている。彼女は何から話すべきか迷いながら、呼吸する金魚のように口の開閉を繰り返す。しばらく考えた後、ゆっくり息を吸い込んでから彼女は語り始めた。
「実は……」

第二話 夜と交換日記

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