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DM企業戦士 時任俊之助 第二十五話


第二十五話 究極の切り札

前回までのあらすじ
 浜崎(はまさき)の策略を打ち破るために、文美(ふみ)を捜す百瀬(ももせ)と熊本(くまもと)。彼らは、文美が誘拐されている貝沢(かいざわ)組に乗り込み、双子の兄弟、鳥尾一郎(とりおいちろう)鳥尾次郎(とりおじろう)の兄弟と対戦する。一方、対戦が始まった時任(ときとう)は、浜崎によって手札を見抜かれ苦戦するのだった。

「俺は『フェアリー・ライフ』を使う!」
 貝沢組の事務所。百瀬の対戦相手、鳥尾一郎は自然と火のカードを使ったデッキらしい。マナが増えたら、苦戦しそうだ。
「私はマナをチャージして終了する」
だが、百瀬は特に何もする気配がない。最初の二ターン、マナチャージ以外の動きがなかった。
「なめてんのか!『シャーマン・ブロッコリー』を召喚!さらに、『チッタ・ペロル』だ」
「ドラゴンのサポートカードも入っているとは……。楽な戦いではないな」
 百瀬は三ターン目になってようやく行動を開始した。
「『機動賢者キーン』を召喚。ターン終了だ」
「火文明のカードだと!てめぇ!光使いじゃなかったのか!?」
 今まで、テレビで放映されていた大会で百瀬は一度も火文明のカードを使わなかった。今回も、そうであると思いこんでいた一郎は激しく動揺している。
「うるさいぞ。私のターンは終了した。早くプレイをしたまえ」
「なめやがって……!『シャーマン・ブロッコリー』でシールドを攻撃!」
「『キーン』でブロックだ」
 『シャーマン・ブロッコリー』は破壊されるとマナになる。だが、ブロックしなければシールドを失っていた。
「『チッタ・ペロル』で攻撃はしねえ。俺のターンは終了だ」
「そうか、攻撃をしておけばよかったと後悔するぞ」
 百瀬が手札から『クリムゾン・チャージャー』を出す。『チッタ・ペロル』は破壊され、百瀬のマナが増えた。
「実戦で火文明のカードを使うのは初めてだが……。ふむ、悪くないな」
「こいつ……!」
 頭に血が上り始めた一郎を横目で見ながら、次郎は熊本に襲い掛かる。
「『幻緑の双月(ドリーミング・ムーンナイフ)』でマナを増やす!後何ターン持つかなぁ!?あ!?」
 挑発をしてくる次郎を無視し、熊本もゆっくりと自分のペースでカードを動かす。
「『勇気の玉(ハッスルボール・トライブ)』を出してターンを終了するッス」
「けっ、遅い!『サイバー・ブレイン』でドロー!さらに『幻緑の双月』でシールドをブレイク!」
 次郎も一郎のデッキと似ている。だが、水文明のカードが入っているため、手札もマナも豊富な状態で戦える。ゆえに、柔軟に戦えるのだ。
「自分は『幻緑の双月』に『クリムゾン・チャージャー』を!そして『勇気の玉』でシールドを攻撃するッス!」
 これによって、次郎はクリーチャーを全て失い、熊本が少し有利になった。
「だが、俺にはマナがある。さっさとぶっ潰してやっから覚悟しろ!」
 浴びせられる挑発も熊本には一切効果がない。時任との約束を守る為に、この男を全力で倒さなければならない。挑発にも恫喝(どうかつ)にも、心を動かしている暇などないのだ。

「『ガチャック』のターボラッシュ発動!残念だったね、時任君。むっふっふ」
 浜崎の『ストリウム』と『ガチャック』によって時任のクリーチャーはどんどん破壊されていく。小型デスパペットによる絶え間ない攻撃と水文明のドローで、浜崎はじっくりと確実に時任を追い詰めていく。
「だけど、これ以上はさせない。俺は……」
「『コッコ・ルピア』を召喚して、『フレイムバーン・ドラゴン』を出す……。違うかね?」
「くっ!」
 浜崎に予測された通りだ。時任は『コッコ・ルピア』を出して『フレイムバーン・ドラゴン』を召喚する。
「『フレイムバーン・ドラゴン』の効果で、『ストリウム』を墓地へ!」
 だが、相手に戦略が判ったとしても、負けるとは限らない。時任の狙いが判らなければ、勝機はある。
「やってくれるね……。ならば、『解体人形ジェニー』を召喚。君が大事そうに持っているその切り札、『超竜ヴァルキリアス』を墓地へ送ってもらおう」
 時任は『ヴァルキリアス』を墓地へ置く。次のターンに召喚できるはずだったのだが、これで望みが一つ消えた。
「覚えておきたまえ。これが君の限界だ。君にふさわしい場所でそろそろ退場したまえ」
 また一枚、シールドが割られる。時任のシールドは減っていくが、浜崎はまだ無傷だ。
「全力で倒すって決めたのに……それでもまだ駄目なのか」
 安定した戦略があるデッキ、そして手札を見抜く千里眼。
「ああ、一つアドバイスをしておこう。私のシールドは全てシールド・トリガーだ。非常に主人想いのいいデッキでね。勝手にシールド・トリガーになってくれるのだよ。むっふっふ」
 嘘だ。これは時任に対するプレッシャー。全てのシールドにシールド・トリガーを仕込んだという宣言だ。
 使った手段は卑怯だが、今回の敵は強すぎる。時任は勝ちを放棄しかけていた。
(ん…?でも、待てよ?)
 浜崎が時任のシールドを攻撃した時、シールド・トリガーが出た事を驚いていた。浜崎は手札の内容は判るが、シールドまでは判らないのか。
(ならば、それに全てをかけるしかない!)

「『式神イノセント』と『クック・ポロン』を進化ボルテックス!『太陽王ソウル・フェニックス』だ!」
 次郎の場に現れる切り札。それが、熊本の最後のシールドを破壊した。
 次郎の場には、『ソウル・フェニックス』が一体。そして、シールドが三枚残っている。
 熊本の場にあるのは、『コッコ・ルピア』だけだ。
「でも、自分にはマナが八枚もあるッス。これだけあれば、充分ッス!」
 熊本はまだ諦めていない。いや、それどころかすでに勝利を確信している。
「3マナで『緑神龍グレガリゴン』を召喚!そして、4マナで『超神龍ブラムグレール』に進化するッス!」
 マナを溜めてチャンスをうかがっていた熊本の切り札、『ブラムグレール』。現時点で、そのパワーは16000もある。
「だが、『ソウル・フェニックス』は倒されても進化元のクリーチャーを場に残す事ができる。それに、俺のシールドにシールド・トリガーがないっていう保障はねぇぜ?」
 そんなプレッシャーとは、何度も戦ってきた。そして、常に最良の選択ができる自分を信じている。
「残った1マナで『無限掌』を使うッス!」
 『無限掌』の効果を受けた『ブラムグレール』によって『ソウル・フェニックス』も進化元のクリーチャーも倒される。そして、次郎のシールドが全てブレイクされた。その中にシールド・トリガーはない。
「俺が……負けるだと……!?ちっくしょおおおっ!!」
 絶叫して自分の敗北を認める次郎。その隣の一郎は百瀬を倒す為に切り札を出す準備をしていた。
「『コッコ・ルピア』と『フレイムバーン・ドラゴン』を進化ボルテックス!『龍炎鳳エターナル・フェニックス』!」
「アンタップ状態のクリーチャーを攻撃できる切り札か……」
「『聖霊竜騎アサイラム』を攻撃だ!」
「『キーン』でブロックする!」
 一郎の場には、切り札の『エターナル・フェニックス』と無傷のシールド。
 そして、百瀬の場には、『アサイラム』が一体。シールドは一枚しか残っていない。だが、それでも百瀬の表情は余裕に満ちている。
「切り札を出すのが少し遅かったようだな。このターンで私の勝利は確定する!」
「あ?はったりを言ってんじゃねぇぞ!」
「私の言った事は真実だ。そして、真実は常に勝利を約束する!『アサイラム』を進化、『聖霊王アルファディオス』!」
 百瀬の場に現れた最強の切り札、『アルファディオス』。これによって、光文明以外のクリーチャーの召喚、呪文は禁止された。
「『エターナル・フェニックス』を『アルファディオス』で攻撃。君の場にクリーチャーはもういない。そして、君はもう何もできない。私の勝ちだ」
 がっくりとうなだれる一郎。これで、文美の安全は保障された。
「時任、私達は勝ったぞ。次はお前の番だ」

 時任と浜崎のデュエルも終盤を迎えていた。
「デスパペット三体を『超新星プルート・デスブリンガー』に進化GV!シールドを攻撃、メテオバーンを発動。進化の可能性がある『フレイムバーン・ドラゴン』を墓地へ送ってもらおう」
 浜崎は圧倒的な物量で時任を攻めていた。彼の場には、『道化人形ミケ』と『プルート・デスブリンガー』。そして、シールド・トリガーが仕込まれている可能性があるシールドが三枚残っている。
 時任の場には、『コッコ・ルピア』一体と『緑神龍ミルドガルムス』二体。そして、今の攻撃でシールドが全て破壊された。
「だけど、まだチャンスはある!」
「しまった。そのシールドは!」
 手札を透視できる浜崎はそこで初めて時任のシールドに気付いたらしい。
「シールド・トリガー、『サイバー・ブレイン』!俺はこのカードで勝利の鍵をつかむ!」
 三枚のカードをドローした時任。そのカードを見た浜崎は笑う。
「『ボルメテウス・サファイア・ドラゴン』……。いいカードだが、私の場にはブロッカーがいる。それでシールドを攻撃しようとしたら、ブロックすればいい。そして、『スピリチュアルスター・ドラゴン』。今、『ヴァルキリアス』を呼んだとしても、マナが足りないだろう。最後の一枚は『ブレイン・チャージャー』か。今となっては無駄なカードだね」
「お前はそう考えるか。この勝負、俺の勝ちだ!」
 ターンの最初のドローを終え、行動に移ろうとする時任だったが、そこで動きが止まった。まだ、文美の無事が決まったわけではない。ここで浜崎を倒して何かあったら……。
「ん~、そうだね。君のお友達が心配だね、むっふっふ」
「くそっ!」
 ここは、『ボルメテウス・サファイア・ドラゴン』を召喚して、わざと派手に負けるべきなのか。それとも、勝ちを狙うべきなのか。
「時任!何をしている!」
 観客席から聞こえる友人の声。そこには、百瀬達と文美がいた。
「そっか……。無事だったんだ」
 観客席から浜崎に視点を戻した時任は、自分の手札に触れる。その中から、最高の一枚を選択した。
「『スピリチュアルスター・ドラゴン』を召喚する!」
「血迷ったか!?『ヴァルキリアス』を呼んだところで、君のマナは足りない!それにマナゾーンに『ボルメテウス・サファイア・ドラゴン』もないではないか!」
「俺が呼ぶのは『ヴァルキリアス』じゃない。残りの5マナを全部使って、進化GV!『超新星ライラ・ボルストーム」!!」
『ミルドガルムス』二体と、『スピリチュアルスター・ドラゴン』が融合し、時任の切り札が降臨する。
「こんな切り札があったとは……!バカなああっ!!」
 浜崎のモノクルが爆発するような音と共に砕け散る。それと同時に時任のネクタイ付近でも何かが砕けるような音がして地面に落ちる物があった。
「これは、小型カメラか……?これとモノクルを使って俺の手札を見ていたのか。シールドは見えないわけだな」
 時任は『ライラ・ボルストーム』に手を触れる。
「お前みたいな卑怯な奴は何度来ても倒してみせる!『ライラ・ボルストーム』で『プルート・デスブリンガー』を攻撃!メテオバーンで『ミケ』を破壊して、手札から『ボルメテウス・サファイア・ドラゴン』を召喚!」
 『ライラ・ボルストーム』の一撃で、浜崎のクリーチャーは全て消え去った。そして、『ボルメテウス・サファイア・ドラゴン』の能力で仕込んだシールド・トリガーも全て焼き尽くされる。
「『コッコ・ルピア』でとどめだ!」
「この私が二度までも……。おのれ、時任俊之助!!」
 閃光が浜崎の体から発せられ、会場を包む。眩しさに目を閉じた時任が、そっと目を開けると浜崎の姿はそこにはなかった。
「何とか勝てたぜ。百瀬、熊本」
 観客席に手を振る時任。今回の勝利は彼らと共に勝ち取ったものだった。また別の姿で浜崎が時任に挑戦したとしても、必ず勝利してみせる。

次回に続く(ここに書くネタがもうなかったりする)

次回予告
 熊本ッス!自分と文美さんがデッキチェックに間に合わなくて失格になったのは悔しいッスけど、文美さんが無事なのでオーケーッス。時任先輩はそんな自分達とフリーデュエルで戦ってくれる事に。って、大会用の大舞台ッスか?しかも、隣では桃太郎さんの試合をやってるッスよ!次回『第二十六話 明日へと繋ぐ者』

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DM企業戦士 時任俊之助 第二十四話


第二十四話 二つの激闘

前回までのあらすじ
 時任(ときとう)達が参加しているDM企業戦士最強決定戦。決勝トーナメント二回戦開始間近の時任の控え室に入ってきた謎の紳士。彼の名は浜崎邦彦(はまさきくにひこ)。かつて、矢島(やじま)と名乗り時任に倒されたDM企業戦士だった男だ。浜崎は文美(ふみ)を誘拐し、彼女の安全と引き換えにデュエルで時任に負ける事を要求する。卑劣な策略に時任だけでなく、熊本(くまもと)や百瀬(ももせ)の怒りも爆発するのだった。

「あの浜崎という男の所属会社、Pアーツを知っているか?」
 犬飼と雉宮、そして、百瀬と熊本がチームを組んで文美を捜す事になった。百瀬の車に乗った直後、助手席の熊本が話し始めた。
「Pアーツ……海外から美術品を輸入している会社ッスよね?」
「その通り。表向きは普通の会社だ。だが、この会社は暴力団の資金源でもある。美術品の輸入と偽って麻薬を運ぶ事もあるのだ」
「じゃ、そんな組織相手に自分達は戦いを挑むんスか!?」
 時任達の手前、「文美を助ける」という生返事をしてしまったが、これは怖すぎる。熊本は自分の軽率さを呪った。
「Pアーツと繋がっているのは、貝沢(かいざわ)組。飲み屋の元締めが発展した組織だ。すでにここまで判っていれば、充分だ」
 百瀬の車はとある雑居ビルの前に止まる。ここに、貝沢組の事務所があるのだろう。二人は、階段を上って事務所がある階まで移動する。
「相手に気付かれないように、静かに潜入するんスね?」
 できれば、相手に気付かれないように文美を救出したいと思っていた熊本は確認するように百瀬に尋ねる。
「ふん、誰がそんなこそ泥みたいな真似をするか」
 自信たっぷりの顔でそう言うと、百瀬は大きな音を立てて事務所のドアを開ける。
 中には、入れ墨の入った男やガラの悪そうなチンピラまで、色々な男達がいた。その奥で、口にガムテープを貼られ、パイプ椅子に座った文美がいる。否、パイプ椅子に座っているのではない。ロープで固定されているのだ。
「私は百瀬光太郎!我が盟友の相原文美君を向かえに来た!邪魔をする者は誰であろうと叩き伏せる!」
「んだとォラァ!!」
 近くにいたチンピラの一人がナイフを片手に百瀬に突進してくる。だが、百瀬は相手の腕をつかみ、軽く振るっただけで相手を地面に倒してしまった。
「二度は言わん!相原君を帰すか、痛い目を見るか選べ!」
「おもしろいじゃないか」
 奥に座っていた着物を着た五十代の男がゆっくりと立ち上がる。静かに立ち上がったのに、その体から噴出す気迫が百瀬の体を押す。
「俺が貝沢組の組長、貝沢竜夫(たつお)だ。お前、DM企業戦士とかいう奴だな。テレビで今も中継やってるぜ」
「ほう、我々も有名になったものだ」
 貝沢組長は杖をついて百瀬に近づく。嫌な汗が、百瀬の背中をつたう。
「あの嬢ちゃんを帰せっていうが、それはできねぇな。嬢ちゃんを帰しちまったら、時任かいう奴が本気を出すだろう?」
「相原君が帰さなくても、時任は手を抜かん。私が責任を持って相原君を帰すと約束したからな。あの浜崎という男は負け、相原君も無事に救出。貴様らはこれで終わりだ」
「おう、いい度胸してるじゃねえか。だが、金稼ぎのためにも浜崎には負けてもらっちゃ困るんでな」
 貝沢組長は百瀬の目の前まで来ると止まる。威圧。百瀬とは戦ってきた場所が違う。戦いを勝ち上がってきた生き残りだけが持つ鋭い牙。それを見せられているのだ。
「鳥尾(とりお)の兄弟を呼べ!」
「へい!」
 組長の支持で、近くにいた組員が動く。
「何をするつもりだ?」
「お前ら、デュエル・マスターズやってるんだろ?お前らとはやり方が違うが、俺のところにいる鳥尾兄弟もデュエリストでな。賭けデュエルをやってレアカードを巻き上げて日銭を稼ぐのが奴の仕事さ」
「外道、が……!」
「何とでも言えよ。金を稼ぐのに正道も外道もない。効率がいいか悪いかの違いだ。お前らが鳥尾と戦って二人とも勝てたら、あの嬢ちゃんを帰してやってもいい」
「私達が負けたら……?」
「そうだな……その時は」
 いかつい顔をしていた組長の顔がそこで突然真っ赤になる。
「じょ……嬢ちゃんを俺の嫁にもらうっ!」
「な……なんだってぇーっ!!」
 シリアスな展開から、突然コメディに。その場にいた全員が声を揃えて驚きのセリフを口にしていた。
「な……何を言っているのだ!嫁にもらうと言うのは、すなわち……結婚するという事だぞ!結婚するという事は……キスしたりとかするんだぞ!判っているのか!?」
「桃太郎さん、落ち着くッス」
 混乱した百瀬を見て、意外にも熊本が一番最初に冷静になった。
「ええい!何を言っている!私は桃太郎じゃない!こんなおっさんが、自分の子供ほどにも年齢を離れた女性にキスをするのだぞ!認めん!断じて認めん!絶対認めん!」
「認めないなら、お前が鳥尾に勝って引き離してみろや」
 奥から、まったく同じ顔をした二人の男が現れた。二人とも百瀬と歳はそう変わらないようだが、裏の世界で生きてきた威圧感がある。
「俺が鳥尾一郎」
「俺が弟の鳥尾次郎だ」
 鳥尾兄弟がテーブルの前に座る。そして、懐からデッキを取り出した。
「やれやれ……。熊本とやら、君は次郎の方を頼む」
「判ったッス」
 デュエル・マスターズなら勝機はある。相手が多少卑怯な手を使ったとしても、百瀬は自分が勝てると確信していた。だが、隣の熊本に実力は正直な話、よく判らない。敗北する可能性も捨てきれない。この勝負、一人でも負けたらそれでアウトなのだ。
「シールドを置いたぜ、さっさと始めようや」
 一郎に言われて、百瀬も急いでデッキをシャッフルし始める。
「おい」
 突然、組長が杖を振った。その軌跡には百瀬がいて、杖の先がもう少しで百瀬の鼻先をかすめるところだった。その杖は一郎の顔を打ち付ける。
「一郎、お前シールド仕込んだな。本気の決闘でケチな真似してんじゃねぇ!」
「へ、へい、親分!」
 一郎は鼻血をぬぐうのも忘れて、シールドを戻しデッキをシャッフルし直す。
(どうやら……ちゃんとしたデュエルができそうだ)
 だからこそ、鳥尾兄弟は手ごわいのかもしれない。不安と緊張が入り混じり、百瀬のボルテージは静かに上がっていった。

 その頃、東京ドーム内。大会の決勝トーナメント第二回戦第一試合が始まろうとしていた。
 対戦台に立った時任の目に迷いはない。百瀬達のためにも、日本の経済界の未来のためにも、目の前のエセ紳士を倒さなければならない。
「ん~時任君、私の言った事は覚えているかね?」
「覚えているぜ。だからこそ、俺はあんたを全力で倒す!」
「いいセリフだね、むっふっふ」
 浜崎は時任が演技をしていると思い、油断をしている。普通にシャッフルをして、普通にシールドを並べているようだ。
(なんだ。DM傭兵っていうから、シールドとかにシールド・トリガーを仕込んでいるのかと思ったけど、違うみたいだ)
 互いに準備が整い、対戦が始まる。
「ふっ、まずは『光線人形ストリウム』を召喚だ!」
「俺は『シビレアシダケ』を召喚!手札をマナへ!」
 まだ、浜崎は時任が本気である事に気付いていない。演技であると思っているうちに少しでも有利な状況を作らなければならない。
「ん~、私は『死劇人形ピエール』を召喚するとしよう。『ストリウム』でシールドを攻撃!」
「シールド・トリガーで『フェアリー・ライフ』を使う!山札の上をマナに!」
「何っ!貴様、まさか……!」
 浜崎の目が見開かれる。時任が本気である事にようやく気付いたようだ。
「その通り。俺はこのデュエル、本気で戦っている!『ブレイン・チャージャー』を使ってドローとマナブースト。ターン終了だ」
「ふ、そうか」
 ゆっくりと息を吐いて、浜崎がにやりと笑う。
「時任君、人質作戦だけで君を倒せるとは思っていない。私の真の力の前に、君はなす術もなく、倒れる事になるだろう」
「そんなの、はったりだ!」
 そう言いながらも、時任は浜崎の眼光の鋭さに脅えていた。彼は、人質以外にも策を持っている。
「時任君、いいカードを持っているね。右から、『コッコ・ルピア』、『緑神龍ミルドガルムス』、『アクア・サーファー』。ドラゴンデッキかな?」
「なっ……!」
 マナを見ている?いや、マナゾーンには一枚も『コッコ・ルピア』など置いていない。この男は、時任の手札を言い当てている。
「言っただろう。君はなす術もなく、倒れると……。『解体人形ジェニー』を召喚!『コッコ・ルピア』を捨ててもらおうか」
 浜崎は、時任の手札を見ずにそう言い放つ。静まり返る会場。時任は、自分の手札から墓地へ『コッコ・ルピア』を置いた。その瞬間、会場を歓声が包む。
「聞きたまえ、彼らの声を。すごい推理力と言っているよ。観客(オーディエンス)は無知で無垢だ。これは推理などという曖昧なものではない。時任君、私の千里眼の前に敗れたまえ」
 謎の力を持った男、浜崎。そして、鍛えられた刺客、鳥尾兄弟。圧倒的な強さを持ったこの敵に、時任と百瀬、熊本はどうやって立ち向かうのか?

次回に続く(次回、ついに決着!)

次回予告
 文美です。いきなり誘拐されちゃうし、デッキはできてないしもう最悪!今からじゃ、どうやってもデッキチェックには間に合わないよね。でも、失格になるのを覚悟で熊本君も着てくれた事だし、よしとしてあげますか!時任さん、浜崎の技には仕掛けがありますよ。この世に千里眼なんてものはないんだから。それから、桃太郎さんと熊本君、絶対に勝ってよね!一人でも負けたら、私があんなおっさんと結婚しなくちゃいけないんだから!次回『第二十五話 究極の切り札』強大な敵、焼き尽くせ!『ライラ・ボルストーム』!!

DM企業戦士 時任俊之助 第二十三話


第二十三話 最悪の敵

前回までのあらすじ
 時任俊之助(ときとうしゅんのすけ)達、DM企業戦士最強を決める大会が始まった。決勝トーナメント第一回戦が終了し、順調に勝ち残る時任達。その最後の試合の直後、時任と百瀬(ももせ)のフリーデュエルが始まる。接戦の末、百瀬が勝利し、時任は自分のライバルの強さに驚愕するのだった。

決勝トーナメント一回戦から一週間後の日曜日。第二回戦に進める八人のDM企業戦士達は、再び東京ドームに集まっていた。
「ふぅん、この大会でドラマを生み出すのか」
時任は熊本(くまもと)の話を聞いていた。時任が選ばれた理由、それはこの大会を盛り上げる起爆剤としての役割を期待しているからなのだ。
「その後、文美(ふみ)さんはこうも言ったッス。この大会で優勝して利益を得る事で、多くの人々を苦しめる企業も出てくるって」
「確かにな……」
大企業になるためには、クリーンな事だけをやっていくわけにもいかない。生き残るために、汚い事をやる企業も存在するだろう。
だが、そんなレベルではなく自らの利益のために、全ての人間を犠牲にしようとする者も存在する。人の不幸がそのまま自分の利益になるような組織がこの大会に出ているとしたら、その企業の人間を勝たせてはいけない。
「でも、そんな奴がいるんだったら、そいつを出場させなければいいだけじゃないのか?」
「自分もそう聞いたッス。でも、それらの企業の中には一般の人にはクリーンだと認識されている企業もあって、出場停止になったら、アカシック・ホールディングの信用が失われかねないッス」
「なるほど。そりゃ、問題だよな。……そう言えば、文美ちゃんは?」
時任も熊本もすでに控え室にいるのに、文美だけが来ていない。時任が遅刻するのならば話は判るが、文美が遅刻するような事は考えられない。
「デッキリストを早く提出しないと、失格になっちゃうのに……。どうしたんだ?まさか、寝坊?」
「先輩じゃないんスから、それはないッスよ」
その時、二人がいた控え室のドアが開いて、一人の男が入ってくる。
「むっはっは!ごきげんよう、ジェントルメン!」
黒いタキシードにシルクハット、モノクルを右目につけ、ステッキをくるくると振り回す紳士。もちろん、口にはひげが生えている。
「な……なんだ、あんたは?」
「ん~、時任君。次の対戦相手を知らないとは、大変嘆かわしい!ショックだ!私は、浜崎邦彦(はまさきくにひこ)。君を倒す者の名だ、心に刻んでおきたまえ!」
謎の男、浜崎はステッキの先端を時任に突きつける。今まで以上に変な……いや、個性的な男だ。
「もっとも、この姿も私の仮の姿でしかない。私は前に一度君と戦った事があるのだよ。その時はR社の矢島(やじま)と名乗っていたがね」
「矢島だと?」
R社の矢島といえば、大会が始まる数週間前に東京ドームで戦った相手だ。その後、文美から矢島はイカサマをして袖に入っていたカードと手札を入れ替えていた事を聞いた。もちろん、矢島という男は現在、金井社長が主催する大会に出場できないようになっている。
「矢島なら、出場禁止処分を受けているはずだ!何を言っている!」
「だから、その時は矢島と名乗っていたと言っただろう。私の本当の姿は秘密。君達がデュエル・マスターズで契約を取ってくるDM企業戦士なら、私はデュエル・マスターズの対戦で敵を倒し、雇い主の依頼を引き受けるDM傭兵(ようへい)と言ったところか、むっふっふ……」
「DM傭兵だと……?」
関係ないけど、語呂が悪いと、時任は思った。
「そのDM傭兵が俺に何の用だ!」
「これからゆっくり話してあげよう。ちょっと待っていてくれたまえよ」
浜崎は携帯電話を取り出し、どこかにかけている。
「ああ、私だ。彼女を出してくれたまえ。こちらも時任君に替わろう」
時任は浜崎が差し出した携帯電話を受け取る。
「もしもし……」
『もしもし、時任さんですか!?』
「って、文美ちゃん!?今、どこにいるの?」
『それが……つかまっちゃったみたいなんです。暴力団に』
「何だって!」
そこで、時任は浜崎に電話を取り上げられた。
「そこまでだ、時任君。彼女を助けたければ、今回の対戦でわざと負けたまえ。おおっと、あまりにもわざとらしすぎるのは困るよ。うまく演出してくれなければ……」
「俺が言うとおりにすると思っているのか!」
「言うとおりにしなくてもいいよ。彼女がどうなってもいいならばね」
浜崎は時任を見る。彼にとってのデュエルは、ただのカードを使ったデュエルではない。時任の知人、弱点、その全てを利用して完全に勝つ。これは、悪魔の戦い方だ。
「汚いぞ……」
「ん~、私の機嫌一つで彼女の死体が東京湾に流れるかもしれないのだよ?口に気をつけたまえ」
浜崎はステッキを振り回しながら高い声で笑うと、そのまま去っていった。
「わざと負けろだって……?ちっくしょう!」
怒りに顔を赤くした時任は控え室の壁を殴る。だが、そんな事をしても何の解決にもならないのは明らかだった。
「先輩、落ち着くッスよ」
「その通りだ、時任」
再び、控え室のドアが開き、三人の男が入ってくる。
「桃太郎!それに犬飼(いぬかい)と雉宮(きじみや)も!」
「待て、時任!私の名前だけ間違えて、何故この二人の名前は覚えている!」
「桃太郎さん、こんにちはッス!この前の先輩とのデュエル、カッコ良かったッス!」
「ええい!褒めるのであれば、まず私の名前を覚えろ!私は百瀬光太郎(ももせこうたろう)だ。桃太郎ではない!」
そこで一つ咳払いをして、百瀬は用意していたセリフを口にし始めた。
「話は全て聞いていたぞ、時任」
「マジで?お前、俺のストーカー?」
「黙れ、話を続ける。どうやら、相原(あいはら)君が誘拐されてしまったようだな。そして、デュエルにわざと負けなければ相原君の身柄は保証しないと……。これは立派な犯罪だ。我々には、犯罪に屈しない権利と義務がある」
「でも、どうするんだよ?多分、警察に電話してもまずいと思うし。金井社長に言っても、奴にばれるかもしれないし、それならわざと負けた方が……」
「馬鹿者!お前が負けたらあのエセ紳士の思う壺だ!我々三人で相原君の居場所を探す。お前はあのエセ紳士を叩き潰して来い!」
「桃太郎……」
百瀬の提案に驚き、時任は呆然とする。
「先輩、自分も文美さんを探すッス!」
隣を見ると、熊本も立ち上がって百瀬の傍に行く。
「熊本、お前はもうすぐデッキリストの提出時間だろ?間に合わなくなるぞ!」
「もちろん、自分も戦いたいッス。でも、時任先輩が勝つためならば、自分は戦いを放棄してもいいッス!先輩は、遠慮なく全力で戦って欲しいッスよ!」
「熊本、ありがとう……」
時任は自分のデッキをしっかり握る。このデュエル、負けるわけにはいかない。男の意地を懸けて必ず、浜崎を倒す。
「俺、勝ってくるぜ!みんな、文美ちゃんを頼んだ」
時任は会場へと急ぐ。
「さあ、我々も行動を開始しよう。相原君を隠した場所の目星はついている。後は残ったいくつかの可能性を潰すだけだ!」
こうして、時任と百瀬が協力して最悪の敵に立ち向かうのだった。

次回に続く(今度の敵は最悪かつ、巨大!)

次回予告
 ごきげんよう、レディースアンドジェントルメン。浜崎だ。どうやら、百瀬君達がおかしな真似をしているようだね。だが、私も鍛え抜かれたDM傭兵の一人。普通にデュエルをしても時任君に負ける事はない。次回『第二十四話 二つの激闘』

DM企業戦士 時任俊之助 第二十二話


第二十二話 決戦~打ち破る者と破られた者~

前回までのあらすじ
 時任俊之助(ときとうしゅんのすけ)はデュエル・マスターズの対戦で契約を取ってくるDM企業戦士だ。決勝トーナメント第一回戦が全て終了した。圧倒的な実力の差で相手に勝利した百瀬(ももせ)は、その場で時任にデュエルを申し込む。金井社長の許可を得て行われる特別試合。事実上の決勝戦とも言える戦いに全てのデュエリストが注目した。

「2マナ使って、『疾風のスウザ』を召喚!」
時任の場に『スウザ』が召喚される。百瀬との戦いに時任が選んだのはティラノ・ドレイクデッキだった。
「百瀬、このデッキは俺のデッキの中でも最強のデッキだ。悪いけど、事実上の決勝戦は俺の勝ちだぜ。あれ?って事はこれで勝てば俺は優勝候補?イエイ!」
カメラに向かってVサインをする時任。もちろん、大型モニターにもその姿が映る。
「なるほど。時任の最強デッキ……。ならば、私も全力で相手をしよう!」
百瀬は『霊騎アンタリオス』を召喚する。特殊な能力もない平凡な2マナクリーチャーだ。
「ならば、全力のお前を余裕で倒してやるまでだ!『竜音のキラ』を召喚!これで、次のターンから俺が呼ぶティラノ・ドレイクのコストは1マナ軽くなる。さらに、『スウザ』の効果でスピードアタッカーだ」
サポートのクリーチャーを召喚して、着実に準備をする時任。彼のレベルは確実に上がっている。
「ふむ、非常に怖い。だが、私の相手ではないな!」
百瀬が召喚したのは、『霊騎サイヤ』。アーク・セラフィムのブロッカーである。
「さらに、『アンタリオス』で時任のシールドをブレイクする!」
先にシールドを破ったのは百瀬だ。時任はシールドを手札に加え、自分のターンに入る。
「『竜音のキラ』の効果で1マナ減らし、2マナで『エンドブリンガー・ドラグーン』を召喚する!」
百瀬の表情が若干曇る。『エンドブリンガー・ドラグーン』は、攻撃を宣言した瞬間、攻撃対象を破壊するティラノ・ドレイク。しかも、『スウザ』の効果でスピードアタッカーになっている。
「さらに、2マナ使って『バイス・サイクロン』だ!」
時任は観客席にいる文美(ふみ)に向かって手を振る。手札破壊のための呪文は文美のアドバイスで入れたものだ。これだけで、相手を妨害し、勝てる確率が上がった。
「『バイス・サイクロン』か……。選択を誤ったな、時任」
百瀬は手札から一枚のカードを選んで、場に出す。
「私が選び捨てる事でこのカードは場に出る。貴様の妨害工作を糧(かて)に生を受けるこのクリーチャーの名は……」
「『聖霊提督セフィア・パルテノン』か……!」
五つの新種族に一体ずつ存在する提督。相手の手札破壊をエネルギーにして場に出るクリーチャーでなおかつ、手札補充もできる優れものだ。種族こそ違えど、同じ『新種族』のデッキを作っている時任もその強さは知っていてデッキに入れている。
「出たカードは『秘護聖ラビリオン』、『霊騎ラグマール』、『霊騎マリクス』の三体。三枚とも手札に加えるぞ」
手札破壊をしたはずなのに、相手の手札が増えてしまった。だが、『バイス・サイクロン』は手札に戻ってきた。それに、『エンドブリンガー・ドラグーン』もいる。
「『エンドブリンガー・ドラグーン』で『アンタリオス』を攻撃!」
特殊能力で『アンタリオス』が破壊され、百瀬のターンに移る。
「ならば、私は『サイバー・ブレイン』を使う」
「何だって!」
アーク・セラフィムが入っている色は光と自然。だが、百瀬はそこに水のカードを入れてきた。これで、百瀬の手札がさらに増える。増えた手札の中に、まだ『セフィア・パルテノン』が入っているかもしれない。
「そして、『霊騎サイヤ』で『エンドブリンガー・ドラグーン』を攻撃だ」
「あ…しまった!光のブロッカーはクリーチャーの攻撃ができるのを忘れていた!」
百瀬によって少しずつ包囲されていく時任。だが、時任は序盤から激しい応酬のあるこの戦いを喜んでいた。
「百瀬、お前もこのデュエルが楽しいだろう?」
「当たり前だ。あの軍曹殿には悪いが、彼では力不足なのだよ」
二人の熱気に釣られるように、会場も声援に包まれている。二人の力が彼らを動かしているのだ。

「おじさんが何故、時任さんをこの大会に呼んだか判る?」
客席にいる文美は隣にいる熊本(くまもと)にだけ聞こえる声で言った。いや、それは普通の声なのだが、周りの声にかき消され小さな声に聞こえるのだ。
「おバカな先輩でも客寄せパンダくらいにはなると思ったんじゃないスか?」
「それは当たっているわ。おじさんは時任さんを使って、この大会をただの大会ではなく、おもしろいハプニングがある一つのドラマを作り上げようとしているのよ」
おもしろいハプニングというのならば、熊本の前で起こっている時任と百瀬の対戦がまさにそれではないか。圧倒的な力で対戦相手を下した百瀬が時任を指名して戦う。予想外の展開に誰もが驚き、二人の激しいデュエルに人々は熱狂している。
「もちろん、時任さん以外にもこの大会のスパイスとなる存在はたくさんいるわ。この大会を盛り上げる事がおじさんの目的。それは、経済的な利潤を得るためかもしれないけれど、それだけとは思えない」
単純な利益だけが目的ではないとしたら、金井社長の真の目的は一体何なのだろう?
「文美さんも知らないんスか?」
「私が教えてもらったのは、おじさんの目的の一つだけ。本当の目的までは判らないわ。自分で考えろって事かも」
そう言って金井社長の事を話す文美の目はきらきらと輝いている。金井社長を尊敬しているのだ、と熊本は思った。

「『衝撃のロウバンレイ』を召喚!そして、『轟竜凰ドラグランダー』でアンタップ状態の『霊騎アウリエス』を攻撃。『ロウバンレイ』の効果で『サイヤ』を破壊だ!」
時任の場には、切り札の『ドラグランダー』とブロッカー破壊能力を仲間に与える『ロウバンレイ』がいる。シールドは残り二枚。
一方、百瀬の場には『セフィア・パルテノン』が一体と『ラビリオン』が一体いる。シールドは一枚だ。
「『ロウバンレイ』でシールドをブレイク!さらに、『ラビリオン』を破壊!」
百瀬のシールドがなくなった。しかも、最後のシールドにシールド・トリガーは入っていなかった。
「さすがは時任だ。だが、お前はシールドに触れる事はできても私に触れる事はできん!『霊騎ラグマール』を召喚。私は、召喚した直後の『ラグマール』をマナに置く」
「俺は『ロウバンレイ』をマナに……」
ブロッカー破壊のためのカードが除去されてしまった。豊富な手札を使って、百瀬がまたブロッカーを出してきたら不利になってしまう。
「でも、俺には切り札の『ドラグランダー』がいる。こいつがいれば、負ける気がしない!」
「ならば、その希望を打ち砕いてくれる!二体目の『ラグマール』を召喚!」
「バカな!」
百瀬は二体目の『ラグマール』をマナに置く。時任は残った最後の一体、『ドラグランダー』を選ぶしかなかった。
「そして、『セフィア・パルテノン』でシールドをブレイク。ターン終了だ」
時任は震える手つきでカードを引く。ついさっきまではこの戦いを楽しむ余裕があった時任だが、今は恐怖に震えていた。
「来たぜ、『ペインシュート・ドラグーン』!三枚めくって出た『ティラノ・ドレイク』は二枚!パワーマイナス3000の効果を『セフィア・パルテノン』に二回使って破壊する」
何とか百瀬のクリーチャーを排除した時任。だが、百瀬にはまだ手札が大量に残っている。
「『霊騎マリクス』を召喚。さらに、『聖帝ファルマハート』に進化。シールドをブレイク!」
最後のシールドにあったのは、シールド・トリガーだ。だが、『地獄スクラッパー』では『ファルマハート』を倒せない。
「いや、倒す必要なんてないか。百瀬の場にはブロッカーがもういない。『ペインシュート・ドラグーン』で百瀬を攻撃!」
「甘い!甘すぎるぞ、時任俊之助!!メテオバーンを発動する!」
百瀬が『ファルマハート』の進化元を引き抜き、『ファルマハート』はブロッカーとなって再び立ち上がる。そして、『ペインシュート』の攻撃から百瀬を守ったのだ。
「そんな……」
「勉強不足だったな、時任。『聖帝ファルマハート』で時任俊之助に直接攻撃だ!」
自分に作れる最強のデッキで敗れ去った時任。声援が会場内に反響しているが、それはどこか遠くの世界のように思える。
「これが、百瀬と俺の実力の差なのか……」
大会、決勝トーナメント第一回戦終了。第二回戦にはどんな戦いが待っているのか?そして、最強のデッキで敗れた時任はどうやって立ち上がるのか?

次回に続く(ついに百瀬の時代到来か!?)

次回予告
 自分は、GGアームズ所属星田五十六軍曹だ!次回に自分の出番はない!文美という女が危険な目に遭うそうだ!さらに、決勝トーナメント第二回戦の開幕!主人公、時任俊之助の相手は何と……。しつこいようだが、自分の出番はない!次回『第二十三話 最悪の敵』いいか!返事は「サー!イエッサー!」だ!

DM企業戦士 時任俊之助 第二十一話

第二十一話 決戦~彼の意地~

前回までのあらすじ
 時任俊之助(ときとうしゅんのすけ)はデュエル・マスターズの対戦で契約を取ってくるDM企業戦士だ。決勝トーナメントで使うデッキが決まらない百瀬(ももせ)だったが、一ノ瀬(いちのせ)少年の何気ない助言を受け開眼する。また、熊本(くまもと)は詩を好む男、紫村(しむら)を撃破。次のステップに進むのだった。

「『守護聖天ラルバ・ギア』に進化!あなたのブロッカーを全てタップして直接攻撃です!」
決勝トーナメント第一回戦ほぼ全てが終わった。今の試合で雉宮(きじみや)が勝利。時任の知人の中で、決勝トーナメントに進んだ者は百瀬を除き全て勝利していた。
「大丈夫かな、桃太郎の奴。今日は調子が悪そうだったぞ、あいつは」
「桃太郎さんなら、大丈夫ッスよ!」
「そうね。むしろ時任さんが勝ち残ったのが不思議なくらい」
「おいおい、そりゃねーだろ!」
時任、熊本、文美(ふみ)の三人は決勝トーナメントを観戦していた。残る試合は一つ。百瀬の試合である。
入り口からゆっくりと対戦台に向かって行く百瀬と、その対戦相手。本気で戦う者同士がぶつかり合う時、その空気は格闘技の試合にも似た張り詰めた緊張感が混じる。
「自分は、GGアームズの星田五十六(ほしだいそろく)軍曹だ!」
「ほう……GGアームズとは。モデルガンのメーカーか……」
ハリウッドの戦争映画で見るような軍人のような服装をした男を目にしても、百瀬のリアクションは冷静だった。彼は完全に精神統一されている。
「いいか!今から自分のデッキで貴様を教育してやる!この教育を終える頃には、貴様は役立たずのゴミからどんな敵でも抹殺できる冷酷な戦闘マシーンへと成長しているであろう!返事は「サー!イエッサー!」だ!」
「……教育?対戦が終わる頃には、その減らず口を叩けないようにしてやろう」
互いに準備が整い、百瀬の対戦が始まった。

デュエルが始まってから五分も立たない内に全ては終わった。
「直接攻撃だ、軍曹殿」
「バカな……。自分が、何もできずに敗北するとは……!」
結果は、百瀬の圧勝だった。シールドは四枚も残っている。
「軍曹殿、君の姿など最初から私の眼中には入っていない。今の私がもっとも戦いたい男、それはただ一人……」
百瀬の鋭い視線が観客席にいた時任の姿を捉える。
「そこから降りて来い、時任俊之助!決勝まで待つ事はない。今ここで、事実上の決勝戦をしてどちらが上か決めようではないか!」
挑発的な百瀬の言葉。だが、その裏にある自信と彼の熱い想いを時任は確かに感じた。
「いいぜ、百瀬。事実上の決勝戦、受けて立つ!」
「先輩!トーナメントは今の試合で終わりッスよ!次の試合からは別の日にやるんだから、勝手な事をしては駄目ッスよ!」
「そうですよ、時任さん。それに事実上の決勝戦ってのが気に入りません。時任さんは私に負けるから決勝まで行けません!」
「ちょっと待てよ!俺が文美ちゃんに負けるなんて勝手に決めるなって!俺、最近強くなってるんだから、文美ちゃんにも勝てるかもしれないだろ!」
「勝てたとしても、勝手に試合をするのはいけないッスよ!」
「熊本君!「勝てたとしても」って何よ!まるで、私が時任さんに負けるみたいな言い方じゃない!」
時任達三人が言い争っている姿が、大型モニターに映る。漫才のようなやり取りに会場は爆笑しているのだが、彼らは自分達が笑われている事に気付いていない。
「試合を許可しよう」
その笑い声を静止させるかのように、スピーカーから低い声が会場内に響く。金井社長の声だった。
「フリーデュエルの一つとして、百瀬君と時任君の試合を許可する。ただし、これは非公式の対戦だ。どちらが勝ってもこの大会で優遇されるわけではない。だが、二人ともがんばって戦いなさい」
「金井社長、感謝します」
主催者側の席にいる金井社長に礼をした百瀬は、再び、時任を見る。時任は強い意志を宿した鋭い視線を受け止めた。
「いいぜ、百瀬。子供達相手のフリーデュエルも楽しいけれど、それだけじゃ味わえない大舞台のデュエルも最高だ。お前とそんな緊張感バリバリのデュエルができるなら、俺は文句など言わない。言うわけがない!」
突如決まった二人の対戦。二人が作った最強のデッキが巨大な舞台でぶつかり合う。時任を倒す為に百瀬がしてきた努力は実るのか?

次回に続く(星田五十六、負けるのが早すぎだ)

次回予告
 みなさん、こんばんは。雉宮真です。時任さんに挑戦するとは…リーダーの執念は本物ですね。いつの時代もできる男はライバルの存在があって成長するものですが、リーダーもそういったタイプのようです。ですが、リーダー。時任さんも努力をしているはず。彼に勝つにはそれ以上の努力が必要ですよ。次回『決戦~打ち破る者と破られた者~』迫り来る脅威、立ち上がれ『ファルマハート』!

DM企業戦士 時任俊之助 第二十話


第二十話 己の声を聞け

前回までのあらすじ
 熊本浩介(くまもとこうすけ)は時任俊之助(ときとうしゅんのすけ)の後輩で、DM企業戦士だ。熊本の相手は、転生舎の紫村士郎(しむらしろう)だった。紫村が掲げる理想を聞いて戸惑う熊本。その頃、百瀬(ももせ)は自分が得意とする光のカードを使いこなせず、頭を抱えていた。

「『早食王のリンパオ』でシールドをブレイク!」
熊本と紫村の対戦は少しずつ進んでいった。
「紫村さんは新種族のドリームメイトッスか……。自分は…」
熊本の場には、『青銅の鎧(ブロンズ・アーム・トライブ)』と『幻緑の双月(ドリーミング・ムーンナイフ)』が一体ずつ。使い慣れているが、古い種族を使ったデッキだ。
(ドリームメイトがどんな戦い方をするか、自分には判らないッス。古いデッキで、戦えるんスか…。それに…)
紫村には、美しい詩集を出すために戦うという目的がある。だが、熊本は、自分が何のためにここに立って戦っているのか判らなくなっていた。
「『幻緑の双月』を『大勇者「大地の猛攻」』に進化!『「大地の猛攻」』で『リンパオ』を攻撃!そして、『青銅の鎧』で『力持ちのジェロン』を攻撃するッス!」
相手に対する負い目から、どうしても守りに徹したような戦い方になってしまう。
「『ホップステップ・バッタン』を召喚して僕のターンを終了します」
紫村は軽いW・ブレイカーのクリーチャーを出す。クリーチャーの数では勝っているのだが、クリーチャーのパワーだけを見て熊本は戸惑っていた。
「何とか……何とかしないと……」

一方、こちらは子供達と、トーナメントの順番待ちをしている選手達が何人かいるフリーデュエル用の部屋。百瀬はまだデッキ作りをしていた。
「彼らはあなたに力を貸してくれますよ」
突然聞こえた少年の声に百瀬が顔を上げると、そこには一ノ瀬俊樹が立っていた。
「君……見ていたのか」
「ええ」
一ノ瀬少年は、百瀬の前に座るとテーブルの上にあるアーク・セラフィムのカードを見る。
「光が好きみたいですね。でも、アーク・セラフィムは光だけじゃないんですよ」
「そんな事は……判っている……!」
一ノ瀬少年にそう反論するが、百瀬はその言葉にひどく驚いていた。それが、百瀬のデッキの弱点だったのだ。
一ノ瀬少年は百瀬の前から離れる。すると、百瀬は自分が持っているアーク・セラフィムのカードを全て確認した。彼のデッキには、自然のカードが少なかったのだ。
「そうか……。アーク・セラフィムは光だけではない。彼らは自然文明のカードも入っている。両方の長所を活かすのが、新種族デッキを作る上での注意点……」
百瀬は、自分が世界一天才になったかのような錯覚を感じた。自分自身が天才ではなく、ただの凡人である事は判っている。だが、今まで見えなかった何かが見えた瞬間―見えない何者かに啓蒙された瞬間、その一瞬だけ人は天才になれる。その時の百瀬は、天才に近い存在だった。
「うわー、熊本ー!変なデッキはやめろー!」
情けない声と共に、時任がフリーデュエルの部屋に入ってくると、決勝トーナメントを映しているモニターを見た。
「よかった。ワイルド・ベジーズデッキじゃないみたいだ」
「時任、何を心配しているのだ?周りの子供が変な目でお前を見ているぞ」
「ああ、桃太郎」
ほっとしていた時任は、そこでデッキを組んでいた百瀬に気付いた。
「いや、俺野菜嫌いじゃん」
「小学生の頃からそうだったな。まだ好き嫌いがあるのか」
「熊本の奴が俺を倒すためにワイルド・ベジーズデッキを作ってるんじゃないかと思って……。ああ、当然子供達のフリーデュエルもするつもりだぜ」
「くだらんな」
どうでもいい事を心配している時任を見て、百瀬は呆れる。そして、この時確信した。
今の自分は間違いなく、時任に勝つ事ができる。
「そう言えば、桃太郎。そろそろエントリーの時間じゃないか?早く行った方がいいぜ」
「そうだな……」
百瀬は静かにその場を去っていく。
「今日の百瀬、私を桃太郎と呼ぶなって言わなかったな……」
いつもと違う百瀬の様子が気になる時任だったが、周りにいる子供達を見て、それをすぐに忘れてしまった。

「『深緑の魔方陣』で『地獄スクラッパー』をシールドへ!」
早くも終盤に突入した、熊本と紫村のデュエル。紫村のシールドは、今、増やした分を合わせて三枚。クリーチャーは『災勇鬼ダイゴクウ』と『幻獣提督ウー・ワンダフォー』が一体ずついる。
「『ダイゴクウ』の効果で、W・ブレイカーのクリーチャーが二体も……。自分は……」
熊本の場には、シールドが三枚。『光線人形ストリウム』が一体と、『青銅の鎧』が一体いるだけだ。クリーチャーのパワーでも押されている上に、相手のシールドにはシールド・トリガーが最低でも一枚入っている事が判る。
「熊本君、何やってんの!もっとしっかりしなさい!」
ふと顔を上げると、選手用の客席から文美が怒鳴っているのが見える。
「でも、文美さん。自分には、紫村さんみたいに格好いい理由なんてないッスよ」
「バカ!格好いい理由なんて、どうでもいいの!私達は仕事でこの大会に来てるのよ!大事な休日潰して来てんの!その人の詩集が人を感動させて役に立つかもしれない。それは素晴らしい事だけど、私達の仕事だって人の役に立たない事じゃない!」
熊本達の仕事は広告代理店。人の代わりに、多くの人に品物を宣伝する職業。それは、品物を作った多くの人の生活を背負うという責任がある仕事だ。
「責任がある……。だったら」
ならば、自分はこのデュエルで負けるわけにはいかない。
「すいません、紫村さん。自分にも、仕事がある以上責任があるッス。だから、負けるわけにはいかないッス!」
「判っています。それは僕も同じ事です!」
紫村のクリーチャーが一斉に攻撃し、熊本のシールドがすべて弾け飛ぶ。だが、最後の一枚が奇跡の入り口となった。
「シールド・トリガー、『母なる大地』を使うッス!『ストリウム』をマナに置き、そして……」
熊本が入れておいた、ビーストフォークではない一つの切り札。それは……。
「『無双恐皇ガラムタ』を場に出すッス!」
「『ガラムタ』……。攻撃した時にシールド・トリガーを防ぐクリーチャーですね。ですが……」
『ガラムタ』と『青銅の鎧』で攻撃しても、シールドは一枚残る。紫村にはまだ届かない。
「大丈夫!今手札に来たシールドと、引いたカードがあれば逆転できるッス!まず6マナ使って『青銅の鎧』を『大勇者「ふたつ牙」』に進化!」
これで、シールドを全て破壊できるようになった。だが、それでも直接攻撃はできない。
「まだ自分の召喚は終わっていないッス!『ふたつ牙』の効果で2マナ増えて、残り4マナ。『幻緑の双月』を召喚して、『大勇者「大地の猛攻」』に進化するッス!」
「そんな……!」
マナを増やし、小型進化クリーチャーを出す。逆転が成功したのだ。
「『ガラムタ』と『ふたつ牙』でシールドをブレイクするッス!」
これによって、紫村のシールドが全てブレイクされた。その中に、仕込んだ『地獄スクラッパー』ともう一枚の『深緑の魔方陣』があった。
「『大勇者「大地の猛攻」』で紫村さんを直接攻撃するッス!」
直接攻撃が決まった瞬間、歓声が会場を包んだ。己の信念を持った強敵に熊本は勝利したのだ。
「熊本さん、ありがとうございます」
「紫村さん、ありがとうッス!自分、頭が悪いから詩の美しさとか難しい事はよく判らないッスけど……でも、この大会はテレビで中継されているはずッスから、これを見た人の中で詩集を作るのに協力してくれるかもしれないッス」
「そうですね……。僕はまた、別の道を探してみます」
美しい詩集を出そうとした男、転生舎、紫村士郎敗退。だが、彼の戦いは熊本の心に何かを刻んでいった。彼が編集者として最高の詩集を出した時、熊本はきっとその本を買うだろう。

次回に続く(どんな事でも責任が存在する)

次回予告
 一ノ瀬俊樹です。決勝トーナメント一回戦もいよいよ大詰め。最後は百瀬さんの試合です。どんなデッキを組んでくるんでしょうか。そして、試合が終わった後に百瀬さんが取った行動とは。次回『第二十一話 決戦~彼の意地~』。

DM企業戦士 時任俊之助 第十九話


第十九話 美男と野獣

前回までのあらすじ
 時任俊之助(ときとうしゅんのすけ)達、DM企業戦士が戦う大会の決勝トーナメント。第一試合で時任は偽中国人の龍大人(ロン・ターレン)こと鈴木三郎を下した。残るDM企業戦士は十四人。次のステージへ駒を進めるのは誰か?そして、『ゲームの達人』一ノ瀬俊樹(いちのせとしき)の行動の目的は?

 文美(ふみ)は控え室に備え付けてあるモニターで時任の対戦を見ていた。予選を突破してきた者達を倒すのは、やはり容易ではない。この大会に集まっている者は、皆、ただの遊びでやっているわけではないのだ。ある者は自社の宣伝。ある者は優勝者の企業だけが得られる資金の調達。そして、中には単純に優勝者に贈られる副賞を求めて戦う者もいるだろう。
 文美は、誰にも負けるつもりはない。予選突破などすでに想定していた出来事である。これから起こるかもしれない想定外の事態にどう対処するか。それで、自分の運命が決まるだろう。
 第二試合は知らない企業の人間達の対戦だ。そして、その次の第三試合は熊本(くまもと)の対戦である。それを見ている時間的な余裕はない。
 文美はデッキリストの最終確認を済ませると、控え室を後にした。

 フリー対戦用の部屋。試合を控えている雉宮(きじみや)を先に行かせた百瀬(ももせ)は、直前まで自分のデッキの調整に専念していた。
「気にいらん……。私が好んで使う光文明のクリーチャーで組んだデッキなのに、何故うまくいかないのだ?」
 子供達と対戦をしながら、デッキの弱点を考える百瀬。だが、答えはまだ見つからない。
 一ノ瀬少年と戦うまで、このデッキと百瀬の相性は抜群だったはずである。しかし、彼に敗れてからは調子が悪くなっていた。
 デッキはカードの束でしかない。ただのカードの束に意思があるとしたら、作り手の想いによるものだろう。デッキへの想いが強ければデッキ自体も強い意思を持つ。それ故、使い手との不協和音を嫌う。
 思い入れが強くても、デッキへの不信感は簡単に生まれる事があるものだ。百瀬は今、完全な敗北によってデッキへの不信感を抱き始めている。
「こんなところで迷っていて……時任に勝てるのか?いや……」
 トーナメント表を見る限り、時任との対戦は決勝戦になりそうだ。このままでは、決勝へ進めるかどうかも危うい。
 テーブルの上には、アーク・セラフィムのカードがある。この日のために百瀬が選んたカードだ。
「お前達は、私に力を貸してくれないのか?」
 時間がない。百瀬はカードを手にとって再びデッキ作りを始めるのだった。

 第二試合が終わり、第三試合が始まった。熊本が大きな舞台でデュエルをするのはもう三度目だ。最初は観客の視線にプレッシャーを感じていた彼も、今なら適度な緊張感を生み出すその舞台を楽しむ余裕さえ持っていた。
「よっし、がんばるッス!」
 両手で顔をバシバシと叩いて気合を入れ、対戦台へと上がる。対戦相手は、線が細く、スマートな印象を与える好青年だった。レンズの小さな眼鏡がよく似合っている。
「よろしくお願いします。僕は、転生舎の紫村士郎(しむらしろう)といいます」
「自分はS社の熊本浩介(こうすけ)ッス!よろしくッス!」
 デッキを取り出した熊本はある事に気付いた。
「紫村さん、転生舎って確か、出版社ッスよね?」
「ええ、詩集を専門に取り扱っているので多くの人には知られていません。まさか、ご存知の方がいらっしゃるとは……」
 紫村は熊本に控えめな笑顔を見せる。洗練された彼の雰囲気は詩的と呼ぶのにふさわしい。
「いや、姉貴がよく転生舎さん発行の詩集を買うもんッスから。それで、覚えていたッス」
「ならば、熊本さんのお姉さんは大事なお得意様になるわけですね。ありがとうございます」
 デッキのシャッフル、シールド、手札の準備が終わり、いよいよ対戦が始まる。
「熊本さん、現在、日本にどれだけ出版社があるか知っていますか?」
「え?」
 マナを置いた熊本は、突然の質問に戸惑った。時任が買うマンガ雑誌などの出版社は知っているだけでも五社ほどある。それに会社の役員はマイナーな出版社から経営に関する本を出す者もいる。競争により、小さな出版社が潰れているとしても百くらいはあるのではないだろうか、と熊本は考えた。
「百か二百くらいッスか?」
「いえ、およそ四千はあるでしょう」
「よ……四千!?」
 想像していた数字とは桁違いだ。それだけの出版社が日本にあるというのか。自分の知らないところで本を出している出版社がそんなに……。
「その中でも、詩集を出す出版社は少ない。本は商品です。需要がなければ、優れていても世に出す事はできません。ですが、我々転生舎は優れた詩集を世の中に出して多くの人に詩を知ってもらいたいのです!そのためにも、この戦いは僕が勝ちます」
 紫村はマナを置き、準備を終えた。一見、優男のようにも見える紫村だったが、彼の執念がオーラとなって彼の周りに漂っているように見える。時任や文美と一緒に出場した熊本とは違い、この大会に『意義』を見出している。もし、紫村が優勝すれば、転生舎は多額の融資を受け、多くの優れた詩集が発行されるだろう。
「自分は……っ!」
 自分には何があるのか判らない。それでも、この対戦台に立つ以上、戦うしかない。
 外から来る巨大なオーラと、内からくる不安と迷い。今までに感じた事のないプレッシャーと戦いながら、熊本はカードを引くのだった。

次回に続く(彼は詩の中に何を見出したのか)

次回予告
 おっす、時任です。え?今回、俺の出番なし!?かんべんしてよ、俺主役なのに。百瀬と熊本ばっか活躍してんじゃん。次回は熊本の試合が終わって、百瀬のデッキが完成。俺の出番があるかどうかはまだ判らないな。次回『第二十話 己の声を聞け』。包囲する敵、蹴散らせ!『ふたつ牙(デュアルファング)』!!

ネギ博士「学校であった恋い話の情報をいただけませんか?日野様」

 登場人物
・ネギ博士
このコラムを書いている人。
・わん太ちゃん
ネギ博士の脳内にいるラブラドール・レトリーバーのわんこ。

ネギ博士「わん太ちゃん、大変だー!」
わん太ちゃん「わんわん(訳:どうしたの?)」
ネギ博士「以前、『学校であった恋い話』に関する記事を書いたせいか、『学校であった恋い話』で検索してこのブログにたどり着いた人が幾人かいたみたいなんだ。検索でこちらを発見された方へ。そういった情報は「日野様の部屋」(『学怖』の非公式ファンサイトながらSFC版やPS版からのファンがいる由緒正しきファンサイト)とかをチェックしようぜ!
って、本当に大変なのはそんな事じゃないんだよ。『学校であった恋い話』はタイトルとは裏腹に恋愛とは名ばかりの殺し合いゲームらしいのだ(ソースはここ)。なんてこったい!」
わん太ちゃん「わんわん(訳:グロテスクな表現とか暴力的な表現とか書いてあったのはこういう事だったんだね)」
ネギ博士「ちくしょ~。せっかく、「岩下明美は俺の嫁!」と言いまくっていた私の大願が成就できるとか思ったのに。同姓も攻略できるっていうから細田以外、坂上で攻略しようとか思ってたのに……。だが、これはおもしろそうじゃないか?一応「恋」とかからスタートしてどうやっていつもの『学怖』らしさに到着するのか楽しみで仕方がないぜ!」

一人称で小説が書けるかね?

 登場人物
・ネギ博士
このコラムを書いている人。
・わん太ちゃん
ネギ博士の脳内にいるラブラドール・レトリーバーのわんこ。

ネギ博士「へい、わん太ちゃん!久し振りに小説書くのに役立つ記事が書けそうな気がするよ!「書けそうな気がする」ってだけで「書ける」とは言っていないけどね!」
わん太ちゃん「わんわん!(訳:真面目にやらないとかみつくよ!)」
ネギ博士「ごめんなさい。真面目にやります。今日は小説における地の文(セリフ以外の部分)の書き方についてのコラムだよ。その中でも、一人称のものと三人称のものがあるね。今回は、一人称のものについて書くよ。『元祖・ネギの舞台裏』にもこの話題に関連する記事があるよ。」

◆一人称で書くとは?◆
わん太ちゃん「わんわん(訳:一人称とか三人称とか地の文とか言われてもよく判らないよ~)」
ネギ博士「じゃ、説明していこうか。地の文とは上でも書いたようないセリフ以外のキャラクターの行動とかそういった事を書く説明の文章の事。
一人称は、登場人物の誰かの視点で描かれるタイプ。主人公の視点か、語り手の視点のどちらかな。今、ここで公開している小説ではサンプルがないから具体例が出しにくいなぁ。『ライ麦畑でつかまえて』とかは一人称だよね。ホールデンの語りで描かれているからね。あと、ここで紹介したもので近いって言ったら『学校であった怖い話』とか。まだ、オープニングだけしか紹介していないけれど、あれもオープニングだけなら主人公(坂上修一)の語りによって進んでいく一人称だよね。
三人称では、誰かの視点ではなくて作者の視点で描かれる。『時任』も三人称で書いている作品だよ」
わん太ちゃん「わんわん(訳:簡単に言うと、登場人物の視点か作者の視点で書いているかの違いなんだね)」
ネギ博士「そういう事。で、今回はひたすら一人称での書き方について論じていくわけ」

◆一人称って簡単かね?◆
ネギ博士「最初に言っておく。一人称で小説書くのはやめとけ
わん太ちゃん「わんわん!(訳:いきなり何言うの!)」
ネギ博士「そう言いたい気分なんだ、うん。言わなくちゃいけない気がしたんだ。一人称の特徴についてもう一度、言うよ。
主人公か、もしくは、それに近い登場人物の視点で描かれる小説。本格ミステリなんかだと、主人公の名探偵ではなく助手が語り手になるケースが多い。ホームズのシリーズだってワトソンが語り手だよね。ホームズはあんまり読んだ事ないけれど。
特殊なパターンで、一章ごとに語り手が変わるパターンがある。長編小説で実際にあったよ、こういうパターン。特殊だからそんなに見かけないかもしれないけれど。この場合、説明なしに書くと読者が混乱するから「第一章○○ ネギ博士」とか、語り手の名前をサブタイトルの後に入れると親切。つーか、それくらいしないと混乱してストレスがたまる。
さて、ここまで語ったところで言わせてもらおう。一人称で書くのは難しい!」
わん太ちゃん「わんわん(訳:難しいの?)」
ネギ博士「ああ。ぶっちゃけて言うと、小説書き始めたばかりの人とか、初めて小説書く人にはお勧めできない。お勧めできないけれど、何故か一人称で書きたがる人が多い。
これは推測でしかないんだけれど、一人称で書く方が簡単に書けるように見えるのかもしれないね。三人称みたいに形式ばった書き方をしなくていいし、普段、自分が話しているみたいな感じで書けるように感じるから。ここに一人称で挫折する人、ひいては小説を書こうとして挫折する人に対しての罠が仕掛けられているんだろうなぁ」
わん太ちゃん「わんわん(訳:そうなの?)」
ネギ博士「そう思う。色々なサイトとかブログとかで普通の人が趣味で書いた小説読んだりするんだけれどね。一人称で書いているんだけれど、いきなり三人称に変わっているだとか、連載で一話目だけは一人称だけれど、二話目から三人称に変わっているのとか多いんだよ。前も書いたけれど、一つの話(場面が変わったのならともかく)一人称からいきなり三人称に変えるのはルール違反だからね。厳しく叩かれるよ。
そういうの見るとね、一人称は簡単そうに見えるけれど難しいんだろうなぁって思うよ。でも、一人称で始めるって決めたんだったら最後まで一人称で通そうぜ?ケータイ小説だってその程度の事はできているんだから」

◆一人称のメリット◆
わん太ちゃん「わんわん(訳:難しい事は判ったよ。でも、一人称で書く事のメリットとかってないの?)」
ネギ博士「一人称で書く事の最大のメリットは、語り手の心情をダイレクトに伝える事だろう。「心情」って打って「新庄」と変換されたこの虚しい気持ちもダイレクトに伝える事ができるんだ」
わん太ちゃん「わんわん!(訳:そんな虚しい気持ちはダイレクトに伝えなくてもいいよ!)」
ネギ博士「他には、一部細かい描写をしなくていいとか。「道に名も知らぬ花が咲いていた」とか、書ける。花の名前を調べなくてもいい!やったね!
他には、推理小説なんかで読者を罠にはめるのとかに向いているとかね。これは上級テクっぽいけれど、うまく語り手の意識と誘導して読者の意識も誘導するとか。
語り口調で書くのが得意な人は、一人称って結構合うと思うな。じゃ、メリットの次はデメリットだ」

◆一人称のデメリット◆
ネギ博士「最大のメリットと同じように、最大のデメリットがある。それは、語り手以外の人間の心情は書けないという事だ。まあ、ルール判っていない初心者な書き手の中には、一人称なのに「~はうれしかった」とか語り手以外のキャラクターの心情を書いてしまいそうだけれど、それはダメね」
わん太ちゃん「わんわん(訳:そうだね。他の人の心が判っちゃったらおかしいもんね。上みたいなのは「~はうれしかった」じゃなくて「~はうれしそうな表情をしていた」とか、外見の事を書くべきだよね)」
ネギ博士「その通りだ。他にも、語り手が見ていない場所や場面は書けないという事。これでも、語り手がいない場面なのに、無理矢理一人称で書く人がいるかもしれないけれどNGね」

◆一人称で書くための覚悟が足りない◆
ネギ博士「多くの「一人称で書き始めて途中で三人称に切り替えた小説書き」諸君に伝える!貴君らには根性と覚悟が足りない!
一人称で書くには、語り手とシンクロする必要がある!語り手になりきれ!語り手ならどういう表現をするか考えろ!常に一体化するんだ!それだけの事をしないと感情をダイレクトに伝えるなど、夢のまた夢だ!いいか!語り手と一体化だ!!」
わん太ちゃん「わんわん(訳:力がこもっているね)」
ネギ博士「もちろんだとも。一人称で書くためのコツはやっぱり語り手のシンクロする事だもんね。昔、長編ミステリ(ここでも公開予定)を一人称で書いている時に、語り手とシンクロしすぎて大変だったからね。現実生活が侵食される感じで。切り替えはきちんとするように気をつけたけれど。
ま、それだけ難しいってわけだから楽に書きたければ三人称で書く方がいいよ」

デュエル・マスターズFE最終巻を読んで

 登場人物
・ネギ博士
このコラムを書いている人。レイトン教授の単行本を買うか悩んでいる。
・わん太ちゃん
ネギ博士の脳内にいるラブラドール・レトリーバーのわんこ。良識がある。

ネギ博士「デュエル・マスターズFE単行本、完結おめでとう~!というわけで、今回は発売されたばかりの『デュエル・マスターズFE』の最終巻についての話だよ」
わん太ちゃん「わんわん!(訳:最終巻には、エピローグが追加されていて、バルキリー・ドラゴンが一枚ついているんだよね)」
ネギ博士「そうそう。イラストがバルキリー・ドラゴンとヴァルキリアスを描いていらしたイラストレーターさんによる新規イラストだから興奮したね。そこの君、性的な意味じゃないから変な想像するなよ!」
わん太ちゃん「わんわん!(訳:変な事言わないでよ!)」

◆DM小説家の目で見る最終巻の超スゴイところ◆
ネギ博士「見せ場は追加されたエピローグとプロモのバルキリー・ドラゴンだけかな~とか思っていたんだよ。だけど、そうじゃなかった。DM小説家的にはもっともっとスゴイものがあったんだ」
わん太ちゃん「わんわん(訳:それは何?)」
ネギ博士「松本大先生による手書きの世界大会のトーナメント表があったんだよ!もちろん、そのプロットの通りにはいかなかったんだけれど、そのトーナメント表を見ているだけでいくつもの別の物語が想像できておもしろい。ああいう展開もあったのかもしれない。こういうのもあったかもしれないとかね。ちょっとでも魂が震えたのなら本屋に行くんだ。そしたら、マンガのコーナーとか新刊のコーナーとかで探してそのままレジに持って行くんだ。そして、お金を払えばOK。熱き書き込みを読んで魂をふるわせろ!」
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松本 しげのぶ真木 孝一郎

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蒟蒻畑復活おめでとう

 登場人物
・ネギ博士
このコラムを書いている人。蒟蒻畑は大好き。
・わん太ちゃん
ネギ博士の脳内にいるラブラドール・レトリーバーのわんこ。わんこなので、蒟蒻畑は食べない。

ネギ博士「やった!嬉しいよ~!嬉しくて脳みそが爆発しそうだね!本当に爆発したら困るけれど」
わん太ちゃん「わんわん(訳:何かいい事でもあったの?)」
ネギ博士「この記事を見て欲しい。私が大好きな蒟蒻畑が復活するんだ!嬉しいじゃないの!」
わん太ちゃん「わんわん(訳:そっか~。博士、蒟蒻畑が販売停止になっていたの、ショック受けてたからね)」
ネギ博士「在庫なくなる前に結構買ったんだけれど、すぐに全部食べちゃったんだよね。おいしいから。私はぶどう味が一番好きかな。店頭発売予定日は12月5日らしい。うちのとこでは一日遅れるかもしれん。マンナンライフ様、ナイスなクリスマスプレゼントをありがとう!よし、今年はクリスマスケーキに乗せるの、いちごじゃなくて蒟蒻畑にするか」
わん太ちゃん「わん……(訳:それはいちごの方がいいよ……)」

頼まれやすいようだな

 登場人物
・ネギ博士
このコラムを書いている人。
・わん太ちゃん
ネギ博士の脳内にいるラブラドール・レトリーバーのわんこ。

ネギ博士「さて、『時任』の解説とかしなくちゃいけないけれど、流れを無視して普通のどうでもいい雑記を書いちゃうぜ!」
わん太ちゃん「わんわん!(訳:解説しなくちゃダメだよ!)」
ネギ博士「大丈夫だって。今、『時任』最終話までの修正作業をしているから、近いうちに最終話まで一気に公開できるかもしれないよ」

◆本題:頼まれやすい男◆
ネギ博士「私、町中を歩いていると色々頼まれるんだよ」
わん太ちゃん「わんわん(訳:パシリにされるの?)」
ネギ博士「違う違う。写真撮ってくれだとか、道を聞かれたりだとかね。他の人が周りにいても、何故か私に頼んでくるんだ。何故だろう?以前、知り合いにその話をしたら「頼みやすそうな感じだから」とか言われてしまった。それ以来、人にものを頼まれにくそうなオーラを出そうと頑張ってきたんだ」
わん太ちゃん「わんわん!(訳:それってどんなオーラなのか全然判らないよ!大体、どうやってがんばるのさ!)」
ネギ博士「私にもよく判らん。だが、とにかく「俺に何か頼むんじゃねー!」って気持ちをばらまくように心掛けて歩いていたんだ。最近は、自転車で行動する事が多かったから、声はかけられなかったんだよ。でも、昨日歩いていたら……うぅっ!」
わん太ちゃん「わんわん(訳:何か頼まれたんだね)」
ネギ博士「うん。シャッター押してくれって。で、丁寧かつ親切に対応した後、その相手を見送って「俺、何をしているんだろう」とかって思ったね」
わん太ちゃん「わんわん(訳:せっかく変なオーラ出してたのにね)」
ネギ博士「そうだよねー!これからも町中を歩いていたら色々頼まれてしまうのかもしれん。これが私の宿命なのか!?嫌な宿命だし、ヘボい宿命だ」

DM企業戦士 時任俊之助 第十八話

第十八話 猛攻を打ち破れ!

前回までのあらすじ
 時任俊之助(ときとうしゅんのすけ)二十四歳。
 DM企業戦士最強を決める大会がついに始まった。決勝トーナメント第一回戦の第一試合は時任と謎の胡散臭い男、龍大人(ロン・ターレン)だった。一方、その頃、百瀬は少年にデュエルを挑まれる。

 決勝トーナメント最初の試合に観客の子供達は興奮していた。金井(かない)社長の計らいで、今回も普段は遊ぶ時間を得られないような忙しい子供達を優先的に招待した。大好きなデュエル・マスターズの大会を巨大なスクリーンで見られるのだ。楽しくない理由などない。
「『ブラッディ・イヤリング』を召喚アル!」
「俺は『一撃勇者ホノオ』を召喚する!」
 そんな大舞台ゆえに、時任は緊張する。予選では、一人に注目が集まる事などはなかった。だが、今は全ての観客が自分達の対戦を見ている。昔から、発表会などの人前に立つ事が苦手だった時任にとっての課題は、視線に慣れる事だろう。
「『エマージェンシー・タイフーン』を使うアル!」
 相手の龍大人は『エマージェンシー・タイフーン』の効果で二枚引き、一枚捨てる。
「勿体ない事するな」
「フッフッフ、あなたにはワタシの戦略が判らないみたいアルね。まあ、いいアル」
 龍大人は肩を上下させて不敵に笑う。
「戦略が判らなければ、自分のペースで突き進むだけだ!『機動賢者キーン』を召喚!そして、『ホノオ』でシールドをブレイク!」
 ブレイクしたシールドは『エマージェンシー・タイフーン』だった。龍大人の墓地がさらに増えていく。その頃になると、さすがに時任も気付いた。これは闇文明らしい墓地を利用した戦略だという事に。
「時任さんと言ったアルね。今気付いても遅いアル。ワタシの切り札の前にひざまずかせてやるアル」

 一方、百瀬(ももせ)の対戦は終盤を迎えていた。百瀬のシールドは一枚も残っていない。だが、数体のアーク・セラフィムと『霊騎マルディス』がいる。『マルディス』の効果でアーク・セラフィムがブロッカーになっているから、すぐにやられるという事はない。
 だが、相手の少年の場はそれ以上に堅牢だった。『封魔メールワスプ』と『封魔ウェバリス』が二体ずつ。さらに、『メディカル・アルナイル』がいるので、ブロッカーは不死身である。ドローのために『スナイプ・アルフェラス』。そして、シールドは五枚残っている。
「この少年……只者ではない。だが、私は負けるつもりはない!『霊騎ラグマール』を召喚!私は召喚した『ラグマール』をマナに送る」
「ならば、僕は『スナイプ・アルフェラス』をマナに置きます」
 ドローのためのカードが場から消えた。これは百瀬にとってチャンスである。
「さらに、『霊騎レングストン』を召喚!」
 この効果で百瀬は山札の上にあった『バリアント・スパーク』を入手した。次のターンに一斉攻撃をしかけるつもりだ。
「少年、私のターンは終わりだ。次のターンに勝利をもぎ取ってみせよう」
 目の前の少年は動じない。マナをタップして、静かにカードを場に出す。そのカードの存在に、百瀬の表情が凍りついた。
「『超新星ネプチューン・シュトローム』に進化します」
「ね、『ネプチューン・シュトローム』だと!?」
 『ネプチューン・シュトローム』のメテオバーンの効果で百瀬を守るアーク・セラフィムが全て山札の一番上に送られる。そして、百瀬に『ネプチューン・シュトローム』の直接攻撃が届いた。
「バカな、この私がシールドを一枚も割れずに負けるとは……」
 その場に崩れそうになる百瀬だが、犬飼(いぬかい)と雉宮(きじみや)が彼を支えた。
「百瀬さん!」
「しっかりして下さい、リーダー!」
 そんな百瀬達を尻目に少年は先に進もうとする。
「百瀬さん、金井社長がお待ちです。あちらの会場でお会いしましょう」
「待て……」
 百瀬はよろよろと立ち上がり、搾り出すような声で言う。
「お前、一体何者だ……?」
「それは私が説明しよう」
 秘書を横に連れて、金井社長がその場に現れる。
「彼は『ゲームの達人』と呼ばれている一ノ瀬俊樹(いちのせとしき)君だ。大会のアドバイザーとして呼んだ」
「一ノ瀬……俊樹……」
 百瀬もその名前を知っている。オセロやチェスなどのボードゲームだけでなく、ありとあらゆる戦略系のゲームを得意とする少年だ。その少年がアドバイザーとしてこの大会に来ていたとは……。
「達人だから負けたとは考えんぞ。私はもっと強くなってやる」
 時任に勝つためにな、と最後につけた言葉は小さすぎて誰も聞き取る事ができなかった。

 トーナメント第一回戦も終盤にさしかかろうとしていた。シールドは互いに二枚ある。
「『コッコ・ルピア』を召喚!さらに、『ディメンジョン・チョーカー』を召喚するアル!」
 序盤で墓地に送り続けていたドラゴンを『ディメンジョン・チョーカー』の効果で回収する龍大人。
「こんな手札補充をしてくるとは……。だが!」
 時任も手札補充では負けていない。彼の場には『ミスト・リエスがいる』。今、二枚のカードを引いた。
「俺は防御を強化する!『ジル・ワーカ』を二体召喚だ!」
 時任の場には今、召喚した『ジル・ワーカ』と『キーン』が一体いる。防御力は高い。
「そんな防御、簡単に崩せるアルよ。『黒神龍バグラザード』召喚!」
 龍大人が『ディメンジョン・チョーカー』の効果で回収した一枚。それはタップされていない光のクリーチャーを攻撃できる『バグラザード』だった。
「さらに、ワタシの切り札、『神滅竜騎ガルザーク』を召喚アル!」
「『ガルザーク』なんか使っているのか!」
 現在、『ガルザーク』は攻撃時のパワーが12000。さらに、T・ブレイカーになっている。
「ターンを終了するアル。さあ、あがいてみせるアルよ」
「なめるなよ!『雷撃と火炎の城塞』で『コッコ・ルピア』を墓地へ。さらに、『ディメンジョン・チョーカー』をタップ!『ミスト・リエス』で『ディメンジョン・チョーカー』を攻撃だ!」
 ドラゴン以外のクリーチャーを撃破する時任。だが、それは少し遅すぎたようだ。
「なら、ワタシは二体目の『ガルザーク』を召喚するアル。『バグラザード』で『ミスト・リエス』を攻撃」
「『ジル・ワーカ』でブロック!二体の『ガルザーク』をタップだ!」
 攻撃する間もなく、タップされる『ガルザーク』。だが、龍大人は余裕の表情を崩さない。
「フッフッフ、まだ有利な状況には違いないアルよ」
「だったら、この一枚でひっくり返してやるよ!『ダブルソード・レッド・ドラゴン』を召喚!」
「な……!そのカードは!」
 『ダブルソード・レッド・ドラゴン』はタップ能力で触れずに相手クリーチャーを倒せるクリーチャーだ。攻撃されない『ガルザーク』を倒す事もできる。
「ならば、タップしなければいいだけアル。『サイバー・ブレイン』でドロー。ターンを終了アル」
 さらに手札を増やした龍大人。すでに、勝つためのパターンを考えているのだろう。
「タップされていなければ、タップするだけだ!『超獣大砲』!」
時任がこの場で選んだ呪文。それは自分のクリーチャーを一体破壊する事で相手のパワー7000以下のクリーチャーを破壊できる呪文だ。
「俺は『ジル・ワーカ』を破壊して『ガルザーク』一体を墓地に送る。そして、破壊された『ジル・ワーカ』の効果で『ガルザーク』と『バグラザード』をタップ!」
「そんな……そんな馬鹿なアル!」
「これが俺の戦略だ。『ダブルソード・レッド・ドラゴン』をタップ!『ガルザーク』を墓地へ!」
 三体も並んでいた大型のドラゴンが一体だけになってしまった。
「まだアル。『ディメンジョン・チョーカー』を召喚!ドラゴンを回収して、今度こそ……」
 再び、時任を追い詰める準備をする龍大人。残り二枚のシールドに望みを託したのだ。だが、そんな後ろ向きな希望は意味がない。
「『ダブルソード・レッド・ドラゴン』でシールドをW・ブレイク!そして、『ミスト・リエス』でとどめだ!」
 直接攻撃が決まった瞬間、大勢の歓声と拍手が会場を包む。
「ワタシがこんなにあっさり負けるとは……。決勝トーナメントは厳しいアル。時任さん、中華街に来たらぜひ、ワタシの店に寄って欲しいアル」
 敗北した龍大人は店の地図が書いてある名刺を時任に渡した。
「ああ、是非寄らせてもらうよ」
 そして、時任が名詞を見ると、そこには『養老庵店主 鈴木三郎』と書かれていた。
「名前、違うじゃん!」
「かっかっか、龍大人が本名とは言ってないアルよ」
「ひでぇ!しかも、この名前思いっきり日本人じゃないか!」
「実はそうアル。店の宣伝とはいえ、中国人のふりは大変アル!」
「いや、やばいって!あんたの中国人のふりのせいで国際問題に発展したらどうするんだよ!」
 一回戦が終わった会場では、漫才みたいな二人のやりとりがいつまでも続いていた。

次回に続く(中華街といえば肉まんですね)

次回予告
 アイヤー、龍大人こと鈴木三郎アル。もうワタシの出番はないけれど、まだまだ大会は続くアルよ。次回は時任さんの後輩の熊本さんの対戦アル。相手はなんと、詩集専門の出版社のイケメン編集者さんアル。詩なんてワタシにはさっぱり判らんアルよ。次回は『第十九話 美男と野獣』アル。

DM企業戦士 時任俊之助 第十七話

第十七話 龍を操る男

前回までのあらすじ
 時任俊之助(ときとうしゅんのすけ)二十四歳。DM企業戦士達の頂点を巡る大会の予選に堂々遅刻。ライバルの百瀬光太郎(ももせこうたろう)達が見守る中、百瀬の部下である犬飼(いぬかい)を下し、何とか予選を通過。だが、真の戦いはこれからである。

「今日の俺は完璧だ!奇跡を起こした!」
 東京ドーム内にある控え室。時任達、S社の社員が三人集まっている。もちろん、その三人は時任、熊本(くまもと)、文美(ふみ)だ。予選から一週間が経ち、決勝トーナメントの第一試合が始まろうとしているのだ。
 さすがに時任も今回は遅刻をしなかった。彼はその事を奇跡と言っているのだ。
「何言ってるんですか、時任さん。社会人なら遅刻しないのが当たり前です」
「そうッスよ!先輩には社会人としての自覚が欠けているッス!」
「うるさいな、遅刻しなかったんだらいいだろ。それよりも、今回は俺が最初の試合だから緊張するな~。二人とも負けるなよ!じゃっ!」
 時任は笑顔で手を振ると、ドアを開けて控え室を飛び出していく。だが、その三十秒ほど後、控え室に戻ってきて
「いけないいけない。デッキを忘れちまったよ」
と言って、自分のバッグからデッキを取り出しまた飛び出していくのだった。
「……S社の人事部は今すぐ時任さん以外の人をDM課の課長にするべきだと思うわ」
「自分もそう思うッス」

 通路を歩いていると百瀬達三人に会う。犬飼は前回、予選落ちしたが、サポートのためについて来ているのだろう。
「よう、百瀬。いよいよ決勝トーナメントだな」
「ふん、運だけで勝ったような時任はここでふるい落とされるのだろうな」
「何言ってやがる。俺が勝ったのは実力だ。それよりも、一人足りなくないか?」
 百瀬の部下は犬飼の他に雉宮(きじみや)と猿谷(さるたに)がいたはずだ。予選の時から猿谷の姿がない。
「ああ、猿谷か……」
 ここで、百瀬の顔に少し影が落ちる。何かまずい事を聞いてしまったのか。
「猿谷は先日、海外に出張に行き、そこで交通事故に……」
「交通事故!?」
 時任は百瀬の表情と交通事故という言葉を聞いて、全てを悟った。猿谷は仕事中に事故で亡くなったのだ。
「そ……そうだったのか。ごめんよ。部下を失ったら、寂しいよな。今度、俺もご焼香に行くよ」
「焼香、だと?」
 そこで百瀬は顔を上げて、時任を睨む。
「時任、勝手に猿谷を殺すな!」
「でも、お前、交通事故って」
「ん?ああ、交通事故に遭いそうになっていた女性を助けたのだ。そして、その女性が猿谷に一目惚れ。しかも、その女性がセレブだったのだ。二週間ほど前に結婚して今は退社している。今頃は悠々自適な生活を送っているのだろう」
 どこか遠くを見る百瀬。部下の幸せが心底うらやましいようだ。
「は、ははは……。結婚、ね……」
 結婚。それは時任や百瀬にとって遠い未来の事ではない。だが、まだその単語は現実味を帯びていないような気がする。
「それよりも、百瀬。お前の出番はもっと後だろ。何で、もう準備してるんだ?」
 百瀬の試合は今日の最後だ。二時間以上も先の事である。
「主催者の金井社長に頼まれて、子供達の相手をする事になっているのだ。この先に、用意された部屋がある」
「ふうん、子供に負けて自身をなくしたりして」
「そんな事はないな。貴様こそ、初戦で負けるなよ」
 互いに激励しあって、時任は去っていく。厳しい予選を勝ち抜いた連中が相手なのだ。どこで負けるか判らない。だが、「自分だけは勝てる」という自信が最大の武器になる事もあるのだ。
「あの……」
 百瀬達の背後から男の子の声が聞こえる。振り向くと、そこには十一歳くらいの男の子が一人で立っていた。
「大会参加者の百瀬光太郎さんですね。一戦お相手できますか?」
 そう尋ねる少年の雰囲気は非常に落ち着いていて、物怖じしない感じだった。百瀬は相手の持つオーラの大きさに一瞬戸惑ったが、デッキを取り出す。
「私が行くまで待ちきれなくなった子供がここに来たのだろう。一戦ならば、ここでお相手する」
 二人はデッキをシャッフルすると、地面にカードを並べた。

 東京ドームの客席は今日も子供達で満員だ。その観客に囲まれてデュエルをするのも、多少慣れてきた。時任はしっかりした足取りで対戦台に向かう。
 対戦相手はカンフーをする人が着ているような中国風の服装である。目は線で書いたように細い。
「かっかっか、アナタが時任さんアルか。ワタシは龍大人(ロン・ターレン)。横浜の中華街で店を出しているアルよ」
「はぁ……そうですか……」
 語尾に「アル」をつける人物がこの世に存在するとは思えなかった。今、時任の目の前には天然記念物よりも貴重な存在がいる。
「さあ、デュエルするアルよ!ワタシはドラゴン使い!中国四千年の歴史を見せてやるアル!」
「(うわー、うさんくせー)俺だって、今回の切り札はドラゴンだ!行くぞ!」
 たくさんのライトが二人を照らし、決勝トーナメント最初の試合が始まった。

次回に続く(横浜の中華街には武器屋があります)

次回予告
 文美です。時任さん、遅刻しなかったからっていばりすぎ!そんな男は嫌われますよ!あ、桃太郎さんの対戦も少し気になりますね。メインじゃないから、どうでもいいですけど。次回は『第十八話 猛攻を打ち破れ!』です。

DM企業戦士 時任俊之助 第十六話

第十六話 決着!バトルロワイヤル

前回までのあらすじ
 時任俊之助(ときとうしゅんのすけ)二十四歳。デュエル・マスターズカードを使って戦い、契約を取ってくるDM企業戦士だ。ついにDM企業戦士の頂点を決める大会の予選が始まった。時任達S社からは、彼の他に熊本(くまもと)と文美(ふみ)が参戦する。順調に勝ち続けるS社メンバーや百瀬(ももせ)達。時任は寝坊して遅刻していたのだ。行け!時任!予選を勝ち残るのだ!

「『大勇者「ふたつ牙」』に進化!さらに、増えたマナを使って『大勇者「大地の猛攻」』も召喚するッス!」
 長かった予選ももう終盤。熊本も順調に勝ち進んでいた。
 熊本達がいるのは、五十勝以上した者のテーブルだ。六十勝以上の者はまだ一人もいない。この場には、熊本や文美の他に、百瀬や雉宮、そして、名前も知らない別の会社の社員がいる。数えてみると、現時点で十五人。予選を通過できるのは十六人なので、ここにいるメンバーは全員予選通過が確実となっているようだ。
「随分とてこずっていたようだな」
 熊本がデッキを片付けて立ち上がると、そばに百瀬が立っていた。熊本と対戦相手のデュエルを観察していたらしい。
「時任はここにはいないのか」
「先輩は遅刻したッス!」
「何!何と……何と愚かな……」
 百瀬は想像もしていなかった言葉を聞かされ、呆然としている。
「いや、待て……。時任は前からそうだったではないか。あれは、そう……。小学五年生の頃の林間学校の話だ。大事なイベントの日には、必ず遅刻してくるのだ。あの男は」
「はぁ……迷惑な人ッスね」
「迷惑だとも。だが、今の時任は迷惑なだけではないようだ」
 百瀬は意味の判らない言葉を言って、別のテーブルに移動する。不思議に思って熊本も移動する。そこは四十勝以上した者が集まるテーブルだった。
「『アクア・サーファー』であんたのブロッカーを手札に!『ヘブンズ・ゲート』でせっかく重いブロッカーを出したのに残念だったな。そして、『ブレイズ・クロー』でとどめだ!」
 そこで対戦しているのは時任だったのだ。
「先輩!間に合ったんスか!」
「おお、熊本。俺にはこれくらいのハンデが丁度いいんだよ。これで五十勝だ」
 時任はデッキを片付けると、五十勝以上のテーブルに移動する。それと同時に五十勝以上のテーブルに移動する者がいた。百瀬の部下の犬飼だ。
「時任さん、こんにちは。今まで姿が見えないから心配しましたよ」
「はっはっは……いやぁ、真の主役は遅れて登場するもんだから」
 二人は着席して、対戦の準備を始める。時任も犬飼も周りの状況を見て察した。この二人の内、どちらかが予選を突破し、どちらかが予選落ちすると。だから、こそこそしないで一騎打ちを選んだのだ。
「先輩、途中からの参加でどうやってあそこまで勝ち進んだんスか?」
「それはこれから教えてやるよ。行くぜ、『ブレイズ・クロー』を召喚!」
 予選最後にして最大の戦いが始まっていた。

「『悪魔神バロム』に進化!あなたのブロッカーを全部蹴散らして直接攻撃!」
 同じ頃、文美は対戦を続け、六十勝をもぎ取っていた。すでに予選突破は可能なのだが戦い続ける。そうすれば、決勝で戦う相手のデッキ構成やプレイのくせをある程度知っておく事が可能だからだ。文美はすでに予選など眼中にない。決勝を勝ち抜く事を考えている。
「さてと……」
 残り時間を考えると、もう一回対戦ができるかどうかというギリギリの時間だ。先ほどから近くのテーブルが騒がしい。気になったので移動してみると、そこには時任と犬飼が対戦していて、周りを色々な人が囲んでいた。
「『エグゼドライブ』と『チックチック』を召喚!シールドを攻撃だ!」
「くっ……でも、僕の手札も増えましたよ、時任さん!『アクアン』を召喚してさらに手札を増やします」
 予選突破をかけた戦い。これが白熱しないわけがない。一進一退の素晴らしい戦い。互いに墓地のカードが増えていく。
「さらに、『レギ・バエル』を召喚!『グラリス』で『チックチック』を攻撃して、ターンを終了です」
 犬飼のデッキは光と水で構成された防御主体のデッキ。時任の速攻に対して守り抜かれたシールドは二枚。さらに『レギ・バエル』と『タージマル』が一体ずついてシールドを守っている。攻撃が可能なクリーチャーは『アクアン』と『電脳精霊グラリス』。そして、今の『アクアン』のドローで『聖霊王アルカディアス』を引いている。
 時任のデッキは防御力を無視した火と水の速攻デッキだ。場には『ブルレイザー』が二体。シールドは一枚だ。
「先輩、『ブルレイザー』は今の状態じゃ攻撃できないッス!それに、攻撃できてもブロッカーに守られてたんじゃ……」
「大丈夫だ、熊本。この速攻デッキはそう簡単には負けない!」
 時任はまず、一枚のカードを場に出す。
「『火炎流星弾』。これで『タージマル』を破壊だ」
 さらに、時任は手札を使って『エグゼドライブ』を召喚する。二人のクリーチャーの数が同じになった事で、二体の『ブルレイザー』は攻撃が可能になった。
「それでも、僕には『レギ・バエル』がいます。とどめはさせませんよ」
「ならば、俺はそれを踏み越えて行く!呪文、『レジェンド・アタッカー』だ!」
 時任が最後まで隠し持っていた呪文、『レジェンド・アタッカー』。これによって、時任のクリーチャーは全てパワーがプラス4000され、W・ブレイカーを得る。
「そんな……!こんなカードをまだ持っていたなんて」
「『エグゼドライブ』でシールドをW・ブレイク!シールド・トリガーはなしか……。なら、『ブルレイザー』で直接攻撃だ!」
 時任の攻撃が決まる。それとほぼ同時に予選終了を告げるブザーが会場に響いた。周りからは拍手が聞こえる。
「時任さん、さすがです。決勝もがんばってください」
「ああ、対戦ありがとう」
 犬飼が出した右手を時任が強く握り締める。
 そう、まだ予選が終わっただけなのだ。決勝が本当の戦いである。ライバルは百瀬だけではない。まだ見ぬ強豪が自分の勝利を信じて戦っている。
 もちろん、時任も例外ではない。自分の優勝を信じて、時任は戦う。

次回に続く(あの人がいない事に気付いた人はいるでしょうか)

次回予告
 こんにちは、犬飼です。次回からは決勝トーナメントです。対戦前にとある子供と対戦する事になった百瀬さん。でも、そのせいで大変な事に!?さらに、時任さんの対戦相手は何と!おっと、ここから先は次回『第十七話 龍を操る男』を見て下さいね!

DM企業戦士 時任俊之助 第十五話

第十五話 開幕!戦士達の宴

前回までのあらすじ
 時任俊之助(ときとうしゅんのすけ)二十四歳。デュエル・マスターズカードを使って戦い、契約を取ってくるDM企業戦士だ。最大のライバル、百瀬光太郎(ももせこうたろう)や、仲間の熊本浩介(くまもとこうすけ)、相原文美(あいはらふみ)と共に成長していく時任。そんな時任達DM企業戦士の頂点を決める大会が始まろうとしていた。行け、時任。己のデッキを信じて突き進め!

 ある日曜日の朝。晴れていてとても、気持ちがいい。時任俊之助もすやすや眠っていた。
だが、その眠りを妨げるかのように不快な電子音が時任の鼓膜に響く。だが、慣れた動作で目覚まし時計を止めた時任は二度寝を始めた。
「あれ……?そう言えば、俺、何で目覚ましかけてたんだ?」
 眠る直前にそれを疑問に思った時任は眠るまでの行動を思い出していた。デッキを作って、それから目覚ましをかけて……。そこまで思い出したところで時任は再び眠りの世界に引きずり込まれるのだった。

 それから、約二時間後、東京ドーム内。
 各企業のデュエリスト達が集まっていた。その中には、百瀬や文美の姿もある。そう、今日は金井(かない)社長主催の各企業対抗デュエル・マスターズ大会の予選なのだ。
「先輩、まだ来ていないみたいッスね」
 S社用に用意された三つの席のうち、一つは空席だ。時任が座るはずだった席である。
「まったく、何やってんの、あの人は!熊本君、後で電話しておいてね!」
「了解ッス」
 自分よりも年下の文美に指示を受けながら、熊本は緊張のあまり汗ばんだ両手を擦り合わせている。
 そんな中、全員の前に金井社長が立つ。開会式が始まるのだ。
「とうとう始まっちゃうッスよ。どうするんスか、先輩……」

 その頃の時任は目を覚まし、コーヒーを飲みながらぼうっとしていた。何か重要な事があったはずだ。だが、思い出せない。
「まあ、いいや。思い出せないって事はそんなに重要じゃないんだろ」
 コーヒーを飲んだ時任はもう一度寝ようと思ってベッドに移動する。その時、枕元においてあった携帯電話が派手な音を鳴らした。表示を見ると、どうやら熊本のようだ。
「もしもし、どうしたんだ?」
「どうしたじゃないッスよ、先輩!今日は何の日か忘れたんスか!?」
「はて……?」
 何か大切な日だっただろうか……。そう考えた時任は目を覚ました。
「そうだった、熊本。悪い!」
「そうッスよ、先輩。早く来てください!」
「今日はお前の誕生日だったな。誕生日おめでとう。今からプレゼントを持って行くよ」
「そうじゃないッス!自分の誕生日は先月ッスよ!今日は企業対抗の大会の日じゃないッスか!」
「大会……?」
 完全にその事を忘れている自分がそこにいた。
「やべぇ!」
「やばいッスよ、先輩!すぐに来てください!場所は東京ドームッスよ!」
 そこで熊本の電話が切れる。
 そうだ。デッキを作っていたのは、今日の大会のためだったのだ。完全に忘れていた。スーツを着て、デッキを持った時任はすぐに家を出た。
「ぎょえ~っ!間に合えー!」

 一方、通話を終了した熊本は予選会場に戻った。予選は午前と午後に分かれたバトルロワイヤル。途中での入場、退場も許されている。色々なデュエリストと戦って、勝利数の多かった上位十六名が決勝トーナメントに進出できる。
 こういったルールだと、弱い者だけがターゲットにされるケースがあるが、今回はそうはならない。全員の実力が拮抗している。さらに、同じくらいの勝利数の者だけが戦えるように、勝利数に応じて戦うテーブルが分かれている。十勝以上の者は青のテーブル、二十勝以上の者は黄色のテーブル……というようにレベルの近い者同士が対戦するようになっている。
 予選が始まって三十分が経過した今、すでに十勝した者が現れ始めた。
「『バリアント・スパーク』で貴様のブロッカーを全てタップ!そして、『聖皇エール・ソニアス』でとどめだ!」
 最初に十勝したのは、百瀬だ。得意の光デッキを使って、場をうまくコントロールしたのだ。
「『冥府の覇者ガジラビュート』を召喚してシールドを一枚墓地へ!そして、『腐敗電脳メルニア』でとどめよ!」
 さらに、文美も十勝していた。手札破壊を駆使した闇デッキを使っていたようだ。
 他の場所でも、十勝する者は出始めている。時任の部下、犬飼(いぬかい)と雉宮(きじみや)も勝ち進んでいる。
「先輩、何やってんスか。このままじゃ、何もせずに先輩の予選は終わってしまうッス!」
 熊本は時任の事を気にかけながらプレイを続ける。果たして、時任は間に合うのか。そして、誰が決勝トーナメントに進むのか。

次回に続く(遅刻はいけませんね)

次回予告
 うっす!熊本浩介ッス!とうとう始まった予選。先輩の事ばかり考えてないで、自分も自分のデュエルに集中するッス!何とか到着した先輩も予選に出場したんスけど……本当に大丈夫なんスか?次回『第十六話 決着!バトルロワイヤル』本当の戦いはまだこれからッス!

DM企業戦士 時任俊之助 第十四話

第十四話 断罪の一撃

前回までのあらすじ
 時任俊之助(ときとうしゅんのすけ)のライバル、百瀬光太郎(ももせこうたろう)は自分の事を「桃太郎」と呼ばれるのを嫌うDM企業戦士だ。百瀬の部下、雉宮(きじみや)に誘われて彼の出身大学の文化祭に来ていた。そこで行われているデュエル・マスターズの大会で勝利したのは、対戦時の態度の悪さ故に近所の大会から出場禁止処分を受けた鬼塚恭兵(おにづかきょうへい)という少年だった。対戦相手への罵倒を続ける彼に(「桃太郎」と呼ばれた事もあって)百瀬の怒りが爆発する!

「ほらよ、『パクリオ』であんたの『聖皇エール・ソニアス』をシールドに!」
 デュエル開始から数ターン。鬼塚の場には、現在召喚した『パクリオ』と、『予言者キュベラ』がいる。『スターマン』の進化への準備は整ったようだ。
「ほう、少しはやるようだな」
 手札を減らされても、百瀬は動じない。じっと、相手の攻撃の仕方を考えている。
「私のターン、『宣凶師キンゼラ』を召喚して、ターンを終了する」
 百瀬の場に並んでいるのは、『宣凶師キンゼラ』と『宣凶師ベリックス』のみ。シールドを攻撃できるクリーチャーは一体もいない。
「なめてんのかよ、おっさん!マナを溜めて、『スターマン』に進化ボルテックス!シールドをW・ブレイクだ!」
 百瀬は攻撃をブロックしない。二枚のシールドを手札にくわえる。その中にシールド・トリガーはなかった。
「さらに『スターマン』の効果でシールドが増える!ザコが!」
「弱い者ほど、相手を挑発するものだ。真に上等なプレイヤーは挑発にじっと耐える事ができる者……」
 百瀬は静かにカードを引く。そして、マナを溜めると手札から一枚のカードを出した。
「『宣凶師ベリックス』を『超戦攻賢者アギラ』に進化!」
「あれは、百瀬さんの新しい切り札だ!」
 犬飼(いぬかい)が身を乗り出した。百瀬のデッキの内容を知らなかった雉宮もそのカードに驚く。
「『超戦攻賢者アギラ』はグラディエーターとアースイーターのパワーを2000プラスし、さらにその二種族がブロックする時にカードを引ける進化クリーチャー。リーダーがこのカードに目をつけていたとは……」
「私は攻撃をせずにターンを終了する。来い、鬼の少年」
「ふぜけやがって、鬼退治のつもりかよ!『魂と記憶の盾』で『キンゼラ』をシールドに!」
「くっ……!」
 百瀬のブロッカーがいなくなる。無防備になったシールドに『スターマン』の一撃がくわえられた。
「これで、私のシールドは残り三枚か……」
 本来ならば、非常に危険な状態だ。さらに鬼塚のシールドは『スターマン』の効果で七枚になっている。
「だが、シールドが手札にくわわった。これで私の選択肢も増えた事になる。『ベリックス』を召喚、さらに『宣凶師ベルモーレ』を召喚だ。そして、『ベリックス』の効果で手札に戻した『シークレット・クロックタワー』発動!」
 百瀬は山札の上から三枚を見てその中から最適な一枚を加える。
「さあ、私のターンはこれで終わりだ」
 にやりと笑う百瀬。相手をしていた鬼塚も危険を感じ始めていた。
「なめるな、『雷鳴の守護者ミスト・リエス』を召喚だ!」
 ドローのために『ミスト・リエス』が場に出る。相手もそれなりの戦略があるようだ。
「『スターマン』で攻撃!」
「『ベルモーレ』でブロックする。そして、私はこの効果でドロー」
 『ベルモーレ』が強制的なブロックで墓地に行くが、百瀬は『アギラ』の効果で手札が増えた。その一枚は『シークレット・クロックタワー』の効果で操作したカードだ。
「では、私のターン。『ベリックス』を『聖皇エール・ソニアス』に進化!『アギラ』の効果でパワーは10000となる!これで、『スターマン』を攻撃!」
「くそっ、しまった!」
 『スターマン』が墓地に行き、鬼塚のシールドが増える。切り札が消えたとはいえ、シールドは九枚、さらにクリーチャーが出る限り、手札が増える『ミスト・リエス』がいる。そう、鬼塚が勝つ可能性もあるのだ。

 そして、デュエルは終盤に突入していた。
「『ホーリー・スパーク』でおっさんのクリーチャーを全てタップだ!今度こそ、ぶっ潰してやるぜ!」
 鬼塚は、『ホーリー・スパーク』でタップされた『アギラ』を『スターマン』で攻撃する。百瀬のドローを支えていた『アギラ』は破壊された。
「これで、シールド回復。シールドがない状態まで追い込まれたが、これで残り一枚になった。だけど、あんたのはこれで終わりだ!『ミスト・リエス』でシールドをブレイク!」
ついに百瀬のシールドがなくなる。
 百瀬には、『エール・ソニアス』。鬼塚には『スターマン』と『ミスト・リエス』。次のターン、『エール・ソニアス』で攻撃して、さらに直接攻撃をくわえなければ、勝つ事はできない。だが、相手のシールドにはシールド・トリガーが入っている可能性もある。
「ならば、勝利の女神に祈るしかないな」
 百瀬は前髪をかき上げて微笑む。そこには、勝利を確信した彼の顔があった。
「私のターン、ドロー。そして、マナをチャージ。『宣凶師ベルモーレ』を召喚して、それを『超戦攻賢者アギラ』に進化!」
 観客がざわめいた。『アギラ』で攻撃してシールド・トリガーが出なければ、百瀬が勝てる。
「『アギラ』で最後のシールドをブレイク!」
 鬼塚はシールドを手札に加える。全ての者がそのカードを凝視した。
「残念だったな、シールド・トリガー、『予言者コロン』!」
「しまった、百瀬さん!」
 犬飼が百瀬の表情を見る。『コロン』は場に出る時、相手クリーチャー一体をタップするクリーチャーだ。このままではとどめをさせない。
 だが、百瀬の表情は変わっていない。
「おっさん、俺のターンだな。とどめを……」
「私のターンが終わったと、誰が言ったのだ」
 両腕を組んで鬼塚を睨む百瀬。そして、場には『エール・ソニアス』がタップされていない姿で残っている。
「貴様の知識はそんなものか。雉宮、『エール・ソニアス』の効果をこの不真面目な少年に教えてやれ」
 いきなり呼ばれた雉宮は百瀬の隣まで移動する。
「『聖皇エール・ソニアス』、グラディエーターの進化クリーチャーです。パワー8000のW・ブレイカー。そして、このクリーチャーは『相手がバトルゾーンにあるクリーチャーを選ぶ時、このクリーチャーを選ぶことはできない』という特殊能力を持っています」
 説明を聞いた鬼塚の表情が歪んでいく。
「つまり、『コロン』の能力で『エール・ソニアス』はタップされない。『ホーリー・スパーク』なら危なかったって事ですね、百瀬さん」
 客席の犬飼も解説をする。
「その通りだ、犬飼。では……」
 百瀬の長い指が『エール・ソニアス』に触れる。
「この『聖皇エール・ソニアス』に映った貴様の姿……鬼に見えたり!『エール・ソニアス』でとどめだ!」
 『エール・ソニアス』の直接攻撃が鬼塚に届く。悔しそうな顔でテーブルを叩いた鬼塚はデッキを片付けると、子供から奪ったカードを置いて逃げるように去っていった。
「さあ、少年。こっちへおいで」
 デュエルを終えた百瀬は、カードを奪われた子供を手招きする。そして、近づいてきたその子供にカードを手渡した。
「取り返してやったぞ。もう、このカードを取られるなよ」
「ありがとう、桃太郎のおじちゃん!」
 子供が上目遣いで百瀬に礼を言う。
「む……。仕方がない子供だ。今回だけだぞ、私を桃太郎と呼んでいいのは……」
 百瀬はデッキを片付けると、それを持って移動する。犬飼と雉宮もそれに続いた。
「犬飼、雉宮」
 百瀬は笑っている。普段の彼からは想像できないさわやかな笑顔だ。
「たまには、桃太郎と呼ばれるのも悪くはないな」

次回に続く(時任の出番が一度もなかったな)

次回予告
 皆のもの、元気にしているか?百瀬だ。ついに開催される企業対抗デュエル大会。その予選は強いものだけが勝ち残るバトルロワイヤルだった。すでに予選は始まっているが、時任は遅刻だと!?ええい、何をやっているのだ、時任!次回『第十五話 開幕!戦士達の宴』時任、予選落ちなどしたら承知はせんぞ!

DM企業戦士 時任俊之助 第十三話

第十三話 荒らす鬼

前回までのあらすじ
 時任俊之助(ときとうしゅんのすけ)はデュエル・マスターズのカードで対戦して、契約を取るDM課の課長である。最大のライバルにして、小学生時代の同級生、百瀬光太郎(ももせこうたろう)の部下達に勝利した時任達。金井(かない)社長が言う大会まで約一ヶ月。時任と百瀬の闘志は燃え上がるのだった。

 澄み切った空。気持ちのいい風。百瀬にとって最高の日曜日である。もちろん、今日は彼にとっても休日だ。仕事は入っていない。部下の犬飼(いぬかい)に誘われて、雉宮(きじみや)の出身大学の文化祭に来ていた。猿谷(さるたに)は海外に出張である。そのため、百瀬は犬飼、雉宮を連れてその文化祭を楽しんでいたのだった。
「雉宮、今日は天才数学者の藤原譲二(ふじわらじょうじ)氏の講演があると聞いている。それは何時からだ?」
「はい、その講演は本日の午後二時からです。まだ時間がありますよ」
 雉宮がパンフレットを素早くチェックする。百瀬も雉宮も休日なので、それなりにラフな格好だ。雉宮は私服でいる時の方がホストっぽい。
「百瀬さーん!」
 犬飼が百瀬達に向かって走ってくる。彼は両手に二つずつ風船を持っていた。風船には『気球同好会』と印刷されている。身長が150センチほどの犬飼が風船を持っていると、違和感がない。今日の彼はスーツを着ていないので、ただの子供にしか見えない。だが、彼もまた雉宮と同年齢の会社員で百瀬の部下なのだ。
「あっちで風船を配っていたので、もらってきました。はい、これが百瀬さんの分です」
「む……ありがとう」
 犬飼が来た方向を見ると、そこで風船をもらっていたのは、子供だけだ。百瀬のような大人は誰一人としてもらっていない。
「犬飼、あなたは行動も子供みたいですね」
「そう言うなよ、雉宮。はい、君の分だよ」
 額にしわを寄せて注意する雉宮に対して、犬飼は笑顔で風船を渡す。雉宮も風船を受け取った。
「残りの一つは猿谷にあげよっと」
「ヘリウムが抜けて、しぼんでしまうぞ」
 両手に風船を一つずつ持って満足そうな犬飼に、百瀬が注意する。まるで、保護者のようだ。
「リーダー、あと十分ほどで、卓上遊戯研究会の大会が始まるようです」
「判った。そちらに向かおう」
 卓上遊戯研究会。それは、大学時代の雉宮が所属していたサークルで、チェス、囲碁、などの古くからあるゲームの他に、すごろくや人生ゲームといったテーブルゲーム、またはウノやトランプなどのカードゲームで勝利するための論理を築き上げるのが活動目的の団体である。今年はトレーディングカードゲームの研究が盛んで、その一環として、デュエル・マスターズの小規模な大会が開かれているのだ。無料の大会だが、優勝者には最新のパックが一箱与えられる。
 百瀬は参加する予定はない。だが、何かデッキ構築のアイディアが得られるかもしれないと思って、観戦に来たのだ。
(待っていろ、時任。私は金井社長が主催する大会で必ずお前に勝利してみせる)
 時任に勝つ。その目的のために、百瀬は努力を続けていた。

 卓上遊戯研究会の大会はある教室で行われていた。大学と言えば階段教室だが、ここは普通の教室である。多少狭いので、会議室にも見える。百瀬達三人は、教室後方に設置された客席から大会の様子を見ていた。近所の子供達が多く出場しているようだ。それぞれが自分達の使いたいデッキを使って楽しんでいる。
だが大会も決勝になったところで、
「弱い!弱すぎ!お前、デュエルやめちまえ!」
と、罵声が聞こえた。見ると、高校生くらいの少年が、対戦相手に対して言っているようである。その少年は目つきがよくなかった。ガムをかみながらのプレイ、手札の過剰なシャッフル、マナのタップアンタップをしをしていない。さらに、対戦相手への罵倒。
「くっ……『ボルメテウス・サファイア・ドラゴン』を召喚」
 それが、対戦している子供の切り札なのだろう。マナを溜めて何とか召喚したクリーチャーだが、ブロッカーに攻撃を阻まれる。
「ちっ……『パクリオ』で全部落としたつもりだったけど、まだそんなもん持ってやがったか!うぜぇ、『魂と記憶の盾』!」
 場にあった『ボルメテウス・サファイア・ドラゴン』が子供のシールドに移動する。そして、高校生の少年の攻撃が始まった。
「あいつが来ているとは……」
 雉宮が苦々しく呟くのを百瀬は聞いていた。
「あの少年は何者なのだ?」
「リーダー、奴は近所の大会であまりにも対戦時の態度が悪かったために全ての店に出入り禁止の処分を受けた男です。名は鬼塚恭兵(おにづかきょうへい)」
「鬼……か」
 百瀬は再び対戦している場に目を戻す。
「『スターマン』でシールドをW・ブレイク!『ミスト・リエス』でとどめだ!はっ、弱すぎ。お前死んだぜ」
 まだ続く罵声。さらに鬼塚は相手のマナゾーンにあった『サファイア』をつかむと、
「お前みたいなザコにこのカードを使えるわけねぇだろ。俺がありがたくもらっておいてやるよ。その方がカードもうれしいだろうし」
さらに、罵声を浴びせた。
「そんな訳がないだろう」
 客席から立ち上がった百瀬はゆっくりと鬼塚に近づいてくる。
「なんだ、このおっさん?」
「おっさんではない。私は百瀬光太郎」
「桃太郎?」
「ふざけるな!私を桃太郎と呼ぶとは、もう許せん!」
 百瀬はデッキを取り出すと、テーブルに置いた。
「公衆の面前で貴様を叩き潰してやろう。貴様の罵声は一人の人間として許せるレベルのものではない。そして、その子にカードを返してもらおう」
「ああ?人を馬鹿にしてんの、このおっさん?俺が負ける訳ないだろ?叩き潰す?そりゃ、こっちのセリフだ!」
 鬼塚少年はデッキをシャッフルし始めた。百瀬もシャッフルをする。
「いいぜ、桃太郎のおっさん。俺が負けたらこのガキのカードを返してやるよ」
「私は二十四歳だ。おっさんではない」
 雉宮と犬飼も近くまで様子を見に来る。
「百瀬さんは、あのデッキを使うつもりだ」
 犬飼がごくりとつばを飲み込む。全ての準備が整い、鬼退治が始まった。

次回に続く(デュエルはマナーを守って楽しくやりましょう)

次回予告
 鬼塚の『スターマン』デッキ相手に善戦する百瀬の新デッキ。彼に馬鹿にされた子供達のためにも、負けるわけには行かない。最大のピンチを迎えたその時、百瀬の切り札が牙をむく!
第十四話 断罪の一撃

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『DM企業戦士 時任俊之助』第七話&第八話 第九話&第十話の裏話

 登場人物
・ネギ博士
この記事を書いている人。
・わん太ちゃん
ネギ博士の脳内にいるラブラドール・レトリーバーのわんこ。

ネギ博士「もいっちょ四話連続で公開した『時任』。今回は時任が敗北する話(第七話&第八話)とそこから立ち直る話(第九話&第十話)だったね」
わん太ちゃん「わんわん!(訳:今までちょこっとだけ出ていた文美がようやくレギュラーキャラとして時任達の前に姿を見せたね!僕、最初は敵キャラだと思ってたよ)」
ネギ博士「そいう風に見せたかったんだよ。色々想像してもらえるように書いたんだ。じゃ、今回も解説行くよ!」

◆新たなストーリーの入り口となる第七話&第八話◆
ネギ博士「確か、七話と八話って一か月くらい間を空けて書いたんだよ。八月は何故か、小説が書けない月でしかも、公式の大きい大会の準備があったから、そっちに時間を割いていたんだよね」
わん太ちゃん「わんわん(訳:この話から文美が時任達と絡んでくるようになったよね)」
ネギ博士「そうだね。時任が火文明で百瀬が光文明、熊本が自然文明だから文美は闇文明にしようと最初っから決めていた。だけど、闇だからってどことなく暗い性格のキャラクターにするのは嫌だったし、悪役っぽくするのも嫌だった。私、ひねくれ者だから普通にするのが嫌いなんだよね。闇文明使いだけれど、明るい性格で会社の人気者って、最初からこの設定で行くつもりだったし、初心者ばかりのDM企業戦士達を引っ張る師匠みたいな役目も持たせた。金井社長の考えを伝える一種のメッセンジャー的な要素もあるかな?」
わん太ちゃん「わんわん(訳:じゃ、実力は時任よりも文美の方が上なんだね)」
ネギ博士「この時点ではね。時任達三人の中では一番余裕を持ってプレイするタイプなんだよ。マイペースなんだね。
今、改めて七話の最初読み直してみたけれど……おかしな事考えるなぁと思ったよ。私ってよくこういうシーンを書くんだよね。最近は自重してるけれど」
わん太ちゃん「わんわん!(訳:おかしすぎるよ!そのおかしさが『元祖・ネギの舞台裏』やこのブログを生んだのかな?)」
ネギ博士「そうかもしれないね」

◆大会編序章とも言える第九話&第十話◆
ネギ博士「主人公が敗北から立ち直る話って好き。こう、徐々に立ち直っていく過程にカタルシスを感じるんだよね。あと、九話冒頭の夢も好き」
わん太ちゃん「わんわん(訳:この話では、イカサマをする敵が出てくるんだね)」
ネギ博士「全国の「矢島」姓のみなさま、ごめんなさい。この話から文美と熊本の立ち回りの仕方とかが判ってきたと思う。書きなれたかな?熊本ってデュエル以外で役に立つシーンが多いなぁ。むしろ、デュエルだと目立ってないような……。まずい!それはまずいぞ!」
わん太ちゃん「わんわん(訳:でも、熊本がメインの話もあるよね)」
ネギ博士「あるある。熊本が活躍する話だってちゃんとあるさ。
さて、ゲストキャラの矢島。毎回、ゲストキャラは適当に決めていた。前に書いた神父や悪魔のコンビもね。ゲストキャラの書き方とか『時任』は『デュエル・ジャック』の影響を受けたと思っている。
矢島は、最初からイカサマを使うっていう設定だけは決まっていて、あと暗そうな性格とかを付け加えていった。でも、それだけだとキャラが薄いから前から使いたかった眼鏡がずり落ちる敵キャラって要素を使ってみた。眼鏡がずり落ちるキャラと言えば『ワイルドアームズ2』のジュデッカが出てくるよ。もうしばらく眼鏡がずり落ちるキャラは書けないかと思ったけれど、意外とこのキャラクター目立たなかったから(後に『時任』のキャラクター達が出てくるDM小説『DUEL OR DIE』でも出なかった)もう一回くらい眼鏡がずり落ちるキャラをDM小説で出してもいいかもしれない」
わん太ちゃん「わんわん(訳:眼鏡がずり落ちるっていう設定にずいぶんこだわっているね)」
ネギ博士「おもしろいからね。活かせるかどうかはともかく使いたい設定だよ」

◆各キャラクター使用デッキ◆
ネギ博士「連載当時(2006年)に作り上げた古きデッキだ!一つずつ解説していこう!」

◆時任俊之助 第八話使用デッキ◆
・クリーチャー
4 x シャーマン・ブロッコリー
4 x コッコ・ルピア
4 x 青銅の鎧(ブロンズ・アーム・トライブ)
4 x 紅神龍ガルドス
3 x 無頼勇騎ウインドアックス
4 x 無双竜機ドルザーク
3 x バルキリー・ドラゴン
2 x バザガジール・ドラゴン
・進化クリーチャー
2 x 超竜ヴァルキリアス
・呪文
4 x フェアリー・ライフ
3 x ナチュラル・トラップ
3 x 地獄スクラッパー

ネギ博士「うんとね、この話もそうだったけれど、時任がドルザークを使おうとするとろくな事にならないんだ。召喚酔いしている内に除去されたりとかね。野菜嫌いなのに、シャーマン・ブロッコリーが入っているのは完全にミス。もっと頭を使わないとね」

◆相原文美 第八話使用デッキ◆
・クリーチャー
4 x ギガザンダ
3 x 双神兵カミカゼ
3 x 砕神兵ガッツンダー
4 x ギガスラッグ
3 x 翔天魔獣ギガッピ
4 x ギガバルザ
2 x 腐敗勇騎ガレック
・進化クリーチャー
4 x 超機動魔獣ギガランデス
・呪文
1 x スケルトン・バイス
3 x デーモン・ハンド
3 x 地獄スクラッパー
・クロスギア
3 x デモニック・プロテクター
3 x クエイク・スタッフ

わん太ちゃん「わんわん!(訳:文美のデッキはキマイラをギガランデスで強化するデッキだね!)」
ネギ博士「ギガランデス好きなんだよ。あとキマイラも結構好き。今だったらアーマロイドメインにするかもしれないけれど、当時はそこまで考えていなかったね」

◆時任俊之助 第十話使用デッキ◆
・クリーチャー
2 x ピーカプのドライバー
4 x 幻緑の双月(ドリーミング・ムーンナイフ)
3 x 無頼勇騎ゴンタ
4 x 青銅の鎧(ブロンズ・アーム・トライブ)
4 x 猛菌剣兵チックチック
2 x 無頼勇騎ウインドアックス
3 x 紅神龍ジャガルザー
4 x アクア・サーファー
2 x バザガジール・ドラゴン
・進化クリーチャー
2 x 大勇者「大地の猛攻」(ガイア・スマッシャー)
・呪文
3 x 母なる大地
1 x サイバー・ブレイン
3 x ストリーミング・チューター
3 x 地獄スクラッパー

ネギ博士「第八話よりも軽くスピード重視の設計になっているデッキ。やっぱりジャガルザーはいいぞ」

◆矢島 第十話使用デッキ◆
・クリーチャー
4 x デンデン・パーカッション
4 x 光線人形ストリウム
4 x 腐敗電脳メルニア
4 x 嘆きの影ベルベットフロー
3 x 停滞の影タイム・トリッパー
1 x アクアン
3 x フォーチュン・ボール
3 x 屑男
・呪文
1 x サイバー・ブレイン
4 x デーモン・ハンド
・クロスギア
4 x クエイク・スタッフ
3 x デモニック・プロテクター
・進化クロスギア
2 x ツナミ・カタストロフィー

わん太ちゃん「わんわん!(訳:矢島のデッキはツナミ・カタストロフィーを切り札にしたデッキだよ!)」
ネギ博士「矢島の性格を暗くしようと思い、そこから連想した切り札がツナミだったんだ。効果も派手だから切り札らしい演出ができるしね」

◆おわりに◆
ネギ博士「第九話と第十話を大会編序章って言ったけれど、大会が始まるまでにはまだしばらくあるんだよね」
わん太ちゃん「わんわん(訳:次回は百瀬も登場するおもしろい話になるよ!)」

ネギ博士「腹減ったから、お好み焼き食べに行こうぜ」

 登場人物
・ネギ博士
このコラムを書いている人。
・わん太ちゃん
ネギ博士の脳内にいるわんこ。

ネギ博士「さて、『時任』の解説を書くと見せかけて、トラックバックテーマを使った記事だよ、わん太ちゃん」
わん太ちゃん「わんわん!(訳:今回のテーマは『第622回「お好み焼きは大阪派?広島派?」』だよ!博士!あとでちゃんと、解説書いてよね!)」
ネギ博士「もちろん、書くさ。こういった食べ物のどっち派?って話題は結構多いよね。だしが関東風か関西風かとか。お好み焼きが大阪派か広島派かっていうのもよく論争になると思う。といっても、他愛のない論争だけれど」
わん太ちゃん「わんわん(訳:他愛のない事なんだけれど、そういう他愛のない事の方が真剣な論争になるんだよね!)」
ネギ博士「人間とはそういうものだよ、わん太ちゃん。私は、特に意識していないけれど、お好み焼きは大阪派だな。というより、人生において広島風のお好み焼きを食べた経験が少ないから比べにくいんだよね。で、気がつくとお好み焼きを食べる時はいつも大阪風になってしまう。あ、昨日も友人Y氏と一緒に『道とん堀』行って来たよ。ここの豚吉が大好きなんだ。近くに『道とん堀』がある人は、是非食べてみてね!」
わん太ちゃん「わんわん(訳:これも大阪風なんだね)」
ネギ博士「うん。やっぱり、大阪風を見かける事の方が多いなぁ。大阪派とか広島派とか考える前に大阪風のしか出てこないや。お好み焼きの話してたら、また豚吉食べたくなったよ。ちょっと行ってくるね!」
わん太ちゃん「わんわん!(訳:博士!『時任』の解説書いてよ!)」

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ネギ博士「学校であった『恋』い話だと……!?」

 登場人物
・ネギ博士
このコラムを書いている人。
・わん太ちゃん
ネギ博士の脳内にいるラブラドール・レトリーバーのわんこ。

ネギ博士「た、大変だ、わん太ちゃん!大変なんだー!」
わん太ちゃん「わんわん(訳:博士、そんなに慌ててどうしたの?)」
ネギ博士「なんと、『学校であった怖い話(アパシー版)』の恋愛シミュレーションが発売されるらしいんだ!
わん太ちゃん「わんわん!(訳:ええーっ!『学校であった怖い話』って、博士が最近、こっちのブログでも宣伝しているあれでしょ?)」
ネギ博士「ああ、そうだ。記事にしているのはSFC版だけれど、今度出るのはアパシー版と言って当時のスタッフがサークル組んで同人で出しているPCゲームね。興味を持たれた方はこちらからどうぞ」
文字色ん太ちゃん「わんわん(訳:で、どんなゲームなの?)」
ネギ博士「どうやら、タイトルは『学校であった恋い話』らしい。怖い(こわい)じゃなくて恋い(こいい)なんだね。キャラクター紹介のところに、同姓も攻略可能って書いてあった。すげぇな。攻略しちゃおうかな?」
わん太ちゃん「わんわん(訳:博士……)」
ネギ博士「こらこら、引くな。『学怖』で恋愛シミュレーションっていう時点で普通じゃないものができるけれど、登場キャラクターが濃いから普通の恋愛シミュレーションでも充分普通じゃないものになりそうだ。あ、そうそう。「本作品には、グロテスクな表現や、猟奇的な表現が含まれます」って書いてあったから要注意だね!
わん太ちゃん「わんわん(訳:グロテスクな表現とか猟奇的な表現がある恋愛シミュレーションはやだよぅ……)」

『学校であった怖い話』のオープニングについて語る

 登場人物
・ネギ博士
このコラムを書いている人。
・わん太ちゃん
ネギ博士の脳内にいるラブラドール・レトリーバーのわんこ。

ネギ博士「やれやれ。前回で「次回に続く!」って言ってから随分、時間が経ってしまったよ、わん太ちゃん」
わん太ちゃん「わんわん!(訳:博士が計画的じゃないからいけないんだよ!)」
ネギ博士「ごもっともです。さて、前回の終わりに「小学五年生の夏ごろに『学怖』とのファーストコンタクトを果たしたって書いたけれど、それからこのソフトの存在は忘れていたんだよね。で、小学六年になってすぐの頃、おもちゃ屋のワゴンセールで1980円くらいになっている『学怖』を発見した。一万円ちょっとが約二千円だからね。これはお買い得。当時の私としては大金である二千円を使って買ったのを覚えているよ。当時の私から見れば、二千円はそれはもう大金で、ミニ四駆のパーツがいくつ買えたかってくらいのお金なんだ」
わん太ちゃん「わんわん(訳:ふーん。それで、博士と『学怖』は運命の出会いを果たしたんだね」
ネギ博士「うん。そういう事。買ったのはSFC版ね。当時はPS版も出ていたから、クラスの友達の中にはそっちを持っているっていう人もいた。ただ、PS版は画像が綺麗すぎて駄目だ。SFCの方がノスタルジックな成分が含まれているから、こっちの方がいい。最近、プレイ動画を見て改めてそう思ったよ」

◆恐怖!『学校であった怖い話』のオープニング◆
ネギ博士「まずは、この動画を見てくれ。これがSFC版『学怖』のオープニングだ」



↓以下の文章は映像を見てからお楽しみ下さい↓
わん太ちゃん「わんわん(訳:今回はyou tubeからの転載なんだね。前回はニコニコ動画だったけれど、変えたの?)」
ネギ博士「you tubeを選んだのは、ニコニコ動画のアカウントがなくても見られるから。ただ、ニコニコだと学怖MADが目茶苦茶多いからね。これから学怖の動画は主に、ニコニコ動画から転載する事が多いだろう。
さて、改めてこのオープニングを見るとまた何とも言えない恐怖を感じるね。正確には恐怖の入り口だけれど」
わん太ちゃん「わんわん(訳:七人が七不思議について語るのに、六人しかいなくて大丈夫なの?)」
ネギ博士「それは大丈夫だ。選択肢によって七人目は変わるし、七人目なしで終わる事も結構あるから。それよりも、一番驚いたのはタイトル画面じゃない?」
わん太ちゃん「わんわん(訳:うん。遊んでいた子供の影がいきなり怪物になるのとか、怪物の声が聞こえるのが怖かったよ)」
ネギ博士「私も最初にあれを見た時はショックを受けたね。だが、これはまだ始まりにすぎない。本当の戦いはこれからだぜ!」
わん太ちゃん「わんわん!(訳:ええー!まだこのコーナー続くのー!?)」

誰も教えてくれなかった小説での文章の書き方の基礎

 登場人物
・ネギ博士
このコラムを書いている人。
・わん太ちゃん
ネギ博士の脳内にいるラブラドール・レトリーバーのわんこ。

ネギ博士「さて、今日の記事の内容は知っている人なら「なぁんだ」って言って鼻で笑ってしまうような内容です。だが!私は数か月前まで知らなかった!そんな文章の基礎に関する話でやんす」
わん太ちゃん「わんわん(訳:博士も知らないような文章の基礎って一体、どんなの?)」
ネギ博士「いや~、今まで知らなかったのがあまりにも恥ずかしくて恥ずかしくてしょうがないでやんすよ。この程度の基礎も知らなかった奴は小説の書き方について偉そうに言っていたのかと思うと……。だが、誰も教えてくれなかったし、書いてある資料もあまりないのだから仕方がない!ここで、書いておくとしよう!」

◆数字のルール◆
ネギ博士「わん太ちゃん。どうやら、小説では数字は漢数字で書くというルールがあったらしい」
わん太ちゃん「わんわん!(訳:博士、今まで適当に書いていたじゃない!)」
ネギ博士「ああ、やばかったぜ。ここ数年は個人的な好みで算用数字を使っていたけれどね。ただ、DM小説では算用数字を使わない方が合う状況もある
わん太ちゃん「わんわん(訳:ルール破っていいの?)」
ネギ博士「試してみたけれど、この方がデュエル・マスターズを扱う小説っぽく見えるから仕方がない。
一つは、カードのコストを書く時。「2マナ」とか「3コスト」って書いた方が馴染むし、「二マナ」や「三コスト」って何か変だ。
もう一つは、クリーチャーのパワーを書く時。これはどっちがいいのかまだ迷っているけれどDM小説では「一万二千」よりも「12000」の方が判りやすいと思う。半年経ったらまた別の事を言っているかもしれないけれどね」


◆三点リーダのルール◆
ネギ博士「小説でよく使う三点リーダ(『…』の事ね)。これも、きちんとしたルールがあったんだ」
わん太ちゃん「わんわん!(訳:どんなルールなの!?)」
ネギ博士「簡単だ。三点リーダは…と一つだけでなく……と二つ並べるんだ。さらに長い沈黙を表したい時には…………と四つ並べる。三点リーダは二つずつ!こう覚えておけばOK!」

◆おわりに◆
ネギ博士「数字はともかく、三点リーダは目から鱗が出る思いだったよ。本当に誰も教えてくれなかったし」
わん太ちゃん「わんわん(訳:でも、判ってよかったじゃない)」
ネギ博士「そうだね。これからも、こういう誰も教えてくれなかった基礎を探してここで公開しておきたいものだね。簡単には見つからないかもしれないけれど」

季節と小説

 登場人物
・ネギ博士
このコラムを書いている人。
・わん太ちゃん
ネギ博士の脳内にいるラブラドール・レトリーバーのわんこ。

ネギ博士「おいどんが住んでいるところは、とうとう雪が降ってきました。冬っぽくなってきたね、寒い寒い」
わん太ちゃん「わんわん!(訳:博士ー、外行こうよ~。雪降ってるから雪で遊ぼうよ~)」
ネギ博士「寒いから外に出ないんじゃい!寒い寒い言っていても始まらないな。今日は、『季節と小説』について書いていこうかな。ご存じの通り、我が国日本は四季があって季語がある。情緒があるじゃないか。だから、物語にも四季や季節を取り入れたらおもしろいと思わないかな?」
わん太ちゃん「わんわん(訳:四季によってイベントも変わるから、それを使った物語もできそうだね)」
ネギ博士「そういう事。じゃ、色々語っていこう」

◆季節と舞台◆
ネギ博士「特定の季節だったら、特定の舞台を用意してそこで物語を進めるとかできそうだ。今の季節ならスキー場の近くのホテルとかね。クリスマスが近いからイルミネーションで綺麗な街中を舞台にする事もできる。さらに、特定の季節ならではの舞台装置だって存在する
わん太ちゃん「わんわん(訳:舞台装置?どんなの?)」
ネギ博士「今だったら、雪を降らせる事が舞台装置としての役割を持っているだろう。自然現象は物語を盛り上げ、色々な演出をする武器になる。どう使うかは書き手の演出力次第だけれどね」

◆季節を固定した小説と固定していない小説◆
ネギ博士「DM小説の中には、連載系の作品もある。連載小説みたいな長い作品だったら、季節を固定してその季節の良さを押し出して書いてみるのもいいかもしれないね。うまく使えれば、物語に大きな影響を与える事もできそうだ。逆に季節を固定しなければ、話を進めていくうちに四季のいいとこ取りみたいな事もできそう」
わん太ちゃん「わんわん(訳:どっちもおもしろそうだけど、事前にその季節の事をしっかり調べないとね!)」

◆おわりに◆
ネギ博士「季節って案外、ないがしろにされている事も多いから見直してみるチャンスかも。近いうちに四季をいいとこ取りした小説書きたいな」
わん太ちゃん「わんわん(訳:書く時間あるの?)」
ネギ博士「う~ん、それはどうだろうね?」

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