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『TOKYO決闘記』 第四話 獣人

  『TOKYO決闘記』

 私、一ノ瀬博成(いちのせひろなり)は立法学園高校の二年生で、新聞委員会に所属している。東京連続失踪事件から手を引くよう私に忠告した赤城勇騎(あかぎゆうき)。私は、デュエル・マスターズで生徒達の学力を上げるという怪しい学習塾の調査に乗り出した。そこには、失踪事件との関連性があると思ったからだ。勇騎と共にその学習塾に乗り込んだ私は、そこがデュエリストの養成施設だという事を知った。勇騎を倒す為に現れた三人のデュエリスト。そして、緑色のデッキ『グランドクロス』の保持者が現れたのだった。

 20XX年 一ノ瀬博成

 第四話 獣人

 部屋に入ってきた少年は、長い銀髪をなびかせながらデッキケースを開ける。同時にカードが勢いよく飛び出して、空中でシャッフルされる。そのカードの五枚がシールドとなって少年を守り、五枚が手札となった。
 勇騎と同じように保持者である銀髪の少年。博成は、一人のプレイヤーとしても、この事件を追う者としても彼のデュエルに興味があった。
「何を見ている?」
 博成は声をかけられてはっとした。塾長がこの部屋に呼んだ人間は三人いたのだ。その内の二人は勇騎と保持者の少年と戦っている。残った一人が博成に目をつけるのも当然だった。
「お前、自分のデッキを持っていないのか。ならば、消えろ」
 淡々とした口調でそういった中学生は白いカード『ブランク』を博成に向かって投げつける。だが、そのカードは博成の元まで届く間もなく、『プロミネンス』に弾かれてしまった。
「赤城君!」
 デュエルが始まってから、まだ一分も経っていないだろう。だが、勇騎は勝利して博成の前に立った。
「あの程度の実力で俺の相手をするつもりだったのか。保持者をなめるな!」
 目の前の中学生を一喝した勇騎は、銀髪の少年と同じようにカードをシールド、山札、手札にセットして対戦の準備を終える。
「黙れ、保持者。塾長の前には行かせない。お前達は二人ともここで消してやる!」
 落ち着いていた中学生だが、勇騎の存在に圧倒され始めたのか言葉が少しずつ強くなってきた。
「やっぱり、赤城君はすごいんだ……」
「この程度の敵に保持者が負ける事はまずないだろうな」
 博成の隣には、銀髪の少年が立っていた。こちらのデュエルももう終わっていたらしい。銀髪の少年の言うとおりだと、博成も思った。勇騎は圧倒的な強さとそれに裏付けられた自信を持って行動している。彼が倒されるところなど、予想できない。
「『ノーブル・エンフォーサー』をジェネレート。これで、パワー2000以下のクリーチャーの攻撃、ブロックを禁止だ!」
 勇騎の場にいるクリーチャーは二体。『剣撃士ザック・ランバー』と『猛菌剣兵チックチック』だ。
 それに対して相手のシールドは一枚。この状況で攻撃が失速してしまうのは危険だ。だが、勇騎は焦らない。その顔は既に自分の勝利を確信している。
「まず、『凶戦士ブレイズ・クロー』を召喚する。これで、1マナ使用。残りは3マナだ」
 勇騎は判りきった事を言いながら『ブレイズ・クロー』を召喚した。召喚酔いをしている上に、パワーが1000なのでこのターンに攻撃する事はできない。
「赤城君、次のターンに『レジェンド・アタッカー』を使って勝つつもりなの!?でも、そんな悠長な事をしてたら……」
「俺はこのターンで勝つ。お前は黙っていろ」
 低い声で言う勇騎。強い者達の中で、博成は自分が場違いな存在だと感じ始めていた。
「俺は、残りの3マナで『タイラーのライター』を召喚する。これで、俺のマナは全てタップされ、『ザック・ランバー』のパワーは3000になった」
 『ブレイズ・クロー』の召喚はマナを全てタップするために必要だったのだ。これで、『ザック・ランバー』は『ノーブル・エンフォーサー』による規制を受けずに攻撃ができる。
「だけど、それだけだ。塾長の指導を受けた我々に勝つ事など……」
 『タイラーのライター』が動き出し、中学生を守っていた最後のシールドが割られる。それを見た中学生は呆然としていた。
「馬鹿な……!『チックチック』を召喚したという事は、マナに水文明のカードがあったという事。なのに、どうして『タイラーのライター』がスピードアタッカーに……!?」
「俺のマナをよく見ろ」
 勇騎の言葉を聞いて、銀髪の少年以外の人物が全員勇騎のマナゾーンを見る。彼のマナに置かれていたのは、火文明のカード。そして、火と水の両方を持ったレインボーカードだった。
「この場合、レインボーカードは火文明のカードとして扱われ、『タイラーのライター』の特殊能力が発動する。これくらい、優秀なら判るよな?」
「くっ……!」
 もうシールドがなくなった中学生に対して、勇騎の『ザック・ランバー』が直接攻撃をする。その時に振り下ろされた剣の衝撃で近くにいた博成は後方に吹き飛ばされた。
「あぐ!」
 そして、博成は教室の机に頭をぶつけて意識を失っていった。
(赤城君、僕も君みたいに強く戦えるかな……?)
 一つの疑問を抱えたまま。

 自分達を狙う刺客を倒した勇騎と銀髪の少年は、学習塾を出て塾長を探していた。
「あの男をあんな子供に任せておいていいのか?」
 道中で先に言葉を発したのは銀髪の少年だった。彼の方が勇騎よりも背が高いため、見下ろすような形になっている。
「日芽(ひめ)の事を言っているのか?確かに日芽は保持者ではないが、俺達と同じ側の世界にいる者だ。一ノ瀬を任せておく事に何の問題もない。それよりも……」
 勇騎は鋭い目で隣にいる銀髪の少年を見る。それは彼も同じようで、勇騎を目で射抜いた。
「判っているな?この世界で保持者が出会ったというのがどういう事か」
 勇騎の問いに対して、銀髪の少年は全て判っているようにゆっくりと頷く。
「お前か俺か、どちらかがこの戦いに勝利し全てを得る。敗者は全てを失う」
「だが、あの男を捕らえるまでは一時休戦だ」
 二人の保持者は味方同士ではない。隙があれば、どんな状況でもデュエルを挑み相手を倒すだろう。今は、利害の一致ゆえに休戦しているだけなのだ。
 しばらく歩いた二人は大型のショッピングセンターに辿り着いた。その広い駐車場に塾長は立っている。
「すばらしいな、保持者。だが、ここで終わりだよ」
 塾長が灰色のデッキケースを取り出した途端、彼らの世界から他の人々が消えた。そこにいるのはデュエルができる三人の選ばれた者だけだ。
「そこの保持者の推理通り。私の学習塾は戦士達の養成施設となっている。世間で失踪したと言われている者は、今やデュエリストを狩る戦士となって東京中に散らばっているだろう。今、負けを認めて私の下で働くのならば、その中のリーダーとしてお前達二人を使ってやってもよい。悪くない話だろう?」
「身の程知らずが」
 塾長の言葉に対し、勇騎はものすごく不機嫌そうに答える。
「お前ごときが俺を下に見ているのか?お前達が組織を作ってデュエリストを失踪させている事は判っている。その中で、貴様は所詮養成施設の教官程度の存在。しかも、あの程度の戦士しか育てられない。そんな雑魚が調子に乗るな」
「このガキ……!」
 奥歯をぎりぎりと噛み締めて、塾長は勇騎を睨みつける。『プロミネンス』を取り出して対戦しようとする勇騎だったが、銀髪の少年が左手でそれを制した。
「あの男は、俺が倒してみたくなった」
「勝手にしろ」
 勇騎が『プロミネンス』を懐にしまい、銀髪の少年が『グランドクロス』を取り出す。少年と塾長が互いにデッキケースを開け、飛び出したカードが自ら動き、対戦準備を整えた。
「保持者、名前くらいは聞いてやろう。お前の墓に刻む名だ!」
 塾長の挑発的な言葉に対し、銀髪の少年は眉一つ動かさずにこう言った。
「俺に名はない。どうしても呼びたければ、ヴェルデと呼べ。俺の仲間はそう呼ぶ」
 銀髪の少年、ヴェルデはそういうと手札を握り塾長を見据えた。

「う……」
 勇騎とヴェルデが去った後の塾の一室。床の上に寝ていた博成は目を覚ました。
「あ、博成君、起きたんだー!おっはよ!」
 そばにある椅子に座っていた少女が博成の様子に気付いて近づく。それは勇騎の妹、日芽だった。
「日芽ちゃん?君がどうしてここに?」
「ゼ……じゃなかった。お兄ちゃんに呼ばれて来たんだよ。博成君が倒れているから、起きるまでここにいろって。ひどいよね、博成君置いて自分は友達とどこかに行っちゃうんだもん!」
 日芽は頬を膨らませて怒ったような表情をしていたが、博成は勇騎がこれだけの気遣いをしてくれた事に感激していた。
「ねえ、日芽ちゃん。勇騎君はどうして戦っているの?」
 博成は体を起こすと、日芽を見て聞いた。
「それはね。自分で決めた事だって、言ってたよ。自分の目的のためだって」
「自分の目的のため……?」
 自分の目的のために、保持者の少年は強くなった。それは、博成が持っていない強さだった。
「うん、決意と信念があれば、誰だって強くなれるってお兄ちゃんが言ってた。そして、がんばった人はきっと真実に辿り着けるんだって!」
「真実……?」
「お兄ちゃんが好きな言葉なんだよ。それが、お兄ちゃんの目標なのかもしれないね」
 勇騎の言う真実がどんな意味の言葉かは判らない。だが、目標のために突き進めば博成だって強くなれるかもしれない。
「決意と信念、か」

「『大勇者「大地の猛攻」(ガイア・スマッシャー)』でシールドを攻撃する!」
 ヴェルデの『大地の猛攻』によって塾長のシールドは残り一枚になった。場にいる他のクリーチャーは『怒髪の豪腕(レイジ・アーム)』と『バブル・ランプ』が一体ずつ。攻撃した『大地の猛攻』以外のクリーチャーは召喚酔いしている。シールドは残り二枚だ。
 塾長の場には、『タイム・スカウト』と『ディープ・ジャグラー』が一体ずついた。
「さすがは保持者だ。パワーの高いクリーチャーを使った速攻デッキ。だが、パワーだけではどうにもならない事を教えてやる!」
 塾長はマナをタップして、『フィスト・ブレーダー』を一体召喚した。
「それで、終わりか。ブロッカーを一体出しただけで、俺に勝つつもりか?」
「甘いな。さらにマナをタップして、『砂男』を召喚!」
「何っ!?」
 そこで初めてヴェルデの表情が変わる。砂男の効果で、塾長の場にいる水文明のクリーチャーはスレイヤーとなったのだ。
「『タイム・スカウト』で『大地の猛攻』を攻撃!相撃ちで『大地の猛攻』を墓地に!」
 ヴェルデの攻撃の中心だった『大地の猛攻』が破壊される。だが、塾長の猛攻はそれだけで終わりではなかった。
「『ディープ・ジャグラー』でプレイヤーを攻撃!さらに……!」
 山札の一番上のカードが飛び、塾長の手に収まる。『ディープ・ジャグラー』の特殊効果が発動したのだ。
「ほう……。俺がやったのと同じ事をしたか」
 勇騎には、その理由が判った。塾長は勇騎がやったのと同じように、闇と水のレインボーカードで闇のマナを使って『砂男』を出し、『ディープ・ジャグラー』の特殊効果を使う時は、水のマナとしてそれを使ったのだ。
 ヴェルデのシールドが手札に入る。塾長の攻撃はこれで終わりだが、『ディープ・ジャグラー』の効果で引いた手札によって局面が大きく変わる事もありえる。
「どうした、保持者。今、負けを認めたとしてもお前に待つのは死、だけだ」
「ふざけるな」
 塾長をじっと見たヴェルデはカードを引く。その目は勇騎と同じように絶対の自信に支えられた者の目だった。
「お前と俺では、潜り抜けた死線が違う!」
 ヴェルデが自分のマナをタップし、『バブル・ランプ』に一枚のカードが重ねられた。
「『バブル・ランプ』を『アストラル・リーフ』に進化。その効果で三枚ドローする。そして……」
 ヴェルデは引いたカードの中から一枚のカードを取り出す。その瞬間、塾長の『フィスト・ブレーダー』が水の塊となって消え去った。
「私のブロッカーが!貴様、何をした!?」
「『スパイラル・ゲート』。これで、お前のブロッカーは消えた。『アストラル・リーフ』でシールドを攻撃!」
 最後のシールドが破られ、塾長の姿が無防備になった。
「い、嫌だ……!私はこんなところで終わる人間ではない。もっと上を……!もっと上を!」
「『怒髪の豪腕』でとどめだ」
 『怒髪の豪腕』が持っていた大きなハンマーで、塾長は近くに止まっていた車まで吹き飛ばされた。塾長から出た黒いもやは、ヴェルデが持っている『ブランク』に吸い込まれて消えた。
「さてと……邪魔者は消えたな」
 戦いを終えたヴェルデは、一度カードを『グランドクロス』の中にしまい、勇騎を見た。それを見て勇騎も『プロミネンス』を取り出す。お互いに動かず、何も話さない静かな時間。
「行くぞ!」
 先に静寂を破ったのはヴェルデだった。彼の気持ちに反応するように『グランドクラス』が緑色の一際強い光を放つ。だが、ヴェルデは『グランドクロス』を地面に落としてしまった。その手は小刻みに震えている。
「ぐ……がぁ……。こんな時に……!」
 ヴェルデがその場に膝を突いて倒れると、『グランドクロス』は光を失って空へと消え去った。
「ぐぅ……う……ぐ、ぐぅおおおおおっ!!」
 咆哮と共に、ヴェルデの顔が変わっていく。その姿はまるで銀色に輝く狼。人間の体に狼の顔という、異形の生物だった。
 そして、服から露出している彼の左手は金色に輝く鎧のような物で覆われていた。
「お前はまだ、この世界に慣れていないのか」
 獣へと姿を変えたヴェルデは低く唸った。その姿を見て勇騎は『プロミネンス』を懐へしまう。
「この世界の人間の姿へ戻ったら、俺のところへ来い。その時にお前のデュエルを受け付ける」
 そう言って、彼は日の暮れた町を歩いていった。

 その頃、東京駅にて。
 新幹線の改札口を抜けた辺りに、奇妙な一組の男女がいた。一人は、白いスーツを派手に飾りつけた青年。もう一人は、薄い緑色の和服に身を包んだ黒髪の清純そうな少女だった。
「ここはごちゃごちゃしすぎているな。ごちゃごちゃするのは、僕の美学に合わない。美和(みわ)、お前はどう思う?」
「はい、全て豪人(ごうと)様の美学が正しゅうございますわ」
「その通りだ、美和。この世には二種類の人間が存在する。美学を持って行動する人間と、美学を持たずに行動する人間だ。どちらが上等で、僕がどちらの人間なのかは説明するまでもないな」
 豪人と呼ばれた白いスーツの青年はポケットからデッキケースを取り出す。それは黄色く輝いていた。
「東京連続失踪事件。追っていれば、保持者とも出会えそうだな」

 第四話 終

 第五話予告
 養成施設を撃破した事で、勇騎は東京連続失踪事件の裏に隠れた組織に狙われ始めた。そんな彼の前に新しい保持者が現れる。
「この世には二種類の人間が存在する」
 勇騎の前に現れた新たな保持者、金城(かねしろ)豪人。そして、博成も行動を開始する。
 第五話 美学

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