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DM花嫁修業 笹倉心亜 第三話 お嬢様はDM中!

『DM花嫁修業 笹倉心亜』

DM企業戦士。
それは、会社のためにデュエル・マスターズで死闘を繰り広げ、同僚の未来を守るプロのデュエリストの事である。
『馬庭(ばば)カルチャーセンター』でDM企業戦士のアルバイトを募集しているのを見つけた笹倉心亜(ささくらここあ)。馬庭カルチャーセンターの社長、馬庭華江(はなえ)と社員の一人、多田太郎(ただたろう)と出会い、DM企業戦士となるための面接とも言えるデュエルが始まる。多田の高速ゴッドリンクに翻弄さるものの、心亜は切り札の『ヴァルディオス』で見事勝利し、馬庭カルチャーセンターのDM企業戦士として雇われたのだった。

第三話 お嬢様はDM中!
「ええ!?すっごく強いデュエリストの女の子!?」
ある静かな夜の事。夕食を終えた心亜は弟の心悟(しんご)と共にデュエルをしていた。戦局は心亜が優勢である。
「そ。ベリーレアとかスーパーレアとか使ってないのに、すっげぇ強いの」
心悟は、小学五年生の活発な少年だ。手元のカードと場を睨んで眉間にしわを寄せている。
「じゃあ、ここは『ムルムル』召喚っと」
「じゃ、『リンパオ』召喚して『スパイラル・ゲート』で『ムルムル』手札に戻して『リンパオ』でシールドブレイク!『ブレイズ・クロー』でとどめ!やった!三連勝!」
「ひでぇ!もう、『スパイラル・ゲート』禁止!絶対禁止!」
「えー?そんなのひどいよ~」
「ひどくない!禁止ったら禁止!」
心悟の口癖は『禁止』だ。強いカードや倒せないカードが出るとそのカードの使用を禁止にしようと言い出す。もちろん、外ではそんな事を言い出す事はない。あくまで家の中だけだ。
「う~ん、それじゃ『スパイラル・ゲート』の代わりに何入れよう?あ、それよりもその強い子の事教えてよ!」
「ああ、よく俺らのとこに来る子ね。子って言っても、姉ちゃんと同じくらいの高校生なんだけどな」
心悟の話を要約するとこうなる。
心悟が言っていた高校生くらいの少女は、一週間ほど前から心悟達がよく行くカードショップへ来るようになった。比較的安価なカードを使ったデッキばかりを使っていたが、彼女を打ち負かした者は一人もいない。
「名前は確か、花菱綾華(はなびしあやか)だったかな。姉ちゃんよりも美人だったな」
「一言多いよ!」
心悟にツッコみながら、心亜はその少女に興味を持ち始めた。強いデュエリストという言葉だけで、心亜にとっては充分過ぎるほどに魅力的な存在だ。
「どんな子なんだろう?まあいいや!とにかく、今日もデュエルデュエル!」
「でも、『スパイラル・ゲート』禁止な」
心悟はあくまでも『スパイラル・ゲート』禁止にこだわっているようだ。その夜も笹倉家は平和だった。

翌日。学校帰りに『馬庭カルチャーセンター』による心亜。ここでのアルバイトも一週間が過ぎた。
いつものように受付を通って、仕事部屋に向かった心亜はドアを開ける。
「うわああぁっ!すっげええっ!!」
と、ドアを開けると同時に若い男の絶叫が聞こえてきた。
「多田さん!?何してんの?発声練習?」
心亜が来た事に気づいたのか、社員の一人多田太郎が振り向く。
「笹倉さん、丁度いいところに!これを見てよ」
多田が心亜に渡したのは、一枚の紙だった。DM企業戦士がいる会社宛に送られたものだ。
「DM企業戦士日本一決定戦のお知らせだよ」
「時任さんも出た日本一決定戦!?」
それは心亜にとって憧れの存在である時任俊之助を始めとする強豪達が名をはせた大会だ。心亜も時任と同じ土俵に立つチャンスができたのだ。
「どうだよ。今回は、クラス分けがあって若手の大会とベテランの大会があるみたいなんだ!よしっ!優勝目指して頑張るぞ!おー!」
「多田さんはデュエル中に椅子から転げ落ちる癖を治さないと出られないんじゃない?」
「失敬な!あれはびっくりしたんじゃないよ!武者震いしすぎて転げ落ちたり、うっかり足を滑らせて転げ落ちたりしただけでビビッて転げ落ちた事は一度もない!」
「誰もビビったなんて言ってないけれど……」
「あ……」
一瞬、固まる多田だったが威厳を保つためにコホン、と軽く咳ばらいをして説明を続ける。
「ええと、今回のはチーム戦でね。どうやら、一社につき四人まで登録できるみたいなんだ。あと二人、ものすごく強いDM企業戦士を仲間にできればこの大会に出場できる。うちの会社、公式のDM企業戦士同士のデュエルってやった事ないからこれがデビュー戦になるね!」
「そっか。じゃ、できればあと三人は仲間が欲しいなぁ」
「え?今、何て?」
心亜が多田から目をそらそうとしたその時、
「失礼します」
と、凛とした声と共に一人の少女が部屋に入ってきた。後ろには社長、馬庭華江もいる。
「綺麗な子……」
少女の外見に見とれて、思わず心亜はそう呟く。
その少女の最大の特徴は、その瞳にあった。心亜とは同じくらいの年齢に見えるが、同年代の少女にはないような強い意志が見える。小さい顔に肩の辺りで綺麗に切りそろえられた黒髪。全てがバランスよく少女の顔を構成していた。異性だけでなく、同性をも魅了しそうな美しさがある。
「あれ?社長、その子誰ですか?もしかして、近い将来、最強のDM企業戦士として有名になる僕のファン?」
「華江おば様。ですから、こんなアルバイトに毛が生えたような若者でなく、あたくしに任せて下さいと申したのですわ」
少女は、多田の言葉を無視して華江に話しかける。
「綾華さん、確かに多田君では心配になるのも無理はないザマス。ですが、我が社のDM企業戦士は彼だけではないザマス」
華江は少女に答えた後、部屋にいた二人を見る。
「改めて綾華さんに紹介するザマス。我が社のDM企業戦士、多田太郎。同じく我が社にアルバイトとして入ってきた笹倉心亜ザマス。こちらは、わたくしの友達のお子さんで花菱綾華さんザマス」
「花菱綾華ですわ。どうぞよろしく」
「ふーん、花菱ね。いい名前だね、よろしく」
と、言って綾華が差し出してきた手を、興味がないような顔で握り返す多田。だが、そのすぐ後に
「花菱……。はなびし……。花菱だって!?」
と、叫んで、一歩後ずさった。
「あーっ!花菱綾華って!」
自分の記憶を探っていた心亜も、その名前を思い出した。昨日、心悟とのデュエル中に聞いた強いデュエリストの少女の名前だ。
「社長!花菱綾華さんって言ったら、高校に通いながら子供向けの安価で安全なおもちゃを販売している『エンジョイ』の社長さんじゃないですか!ま、まさかこの会社もついに吸収合併されるのか!そして、僕は変なキャラクターの着ぐるみを着せられて、悪い子供に蹴飛ばされるのか!なんて事だ!」
「しゃ、社長さん!?」
強いデュエリストというだけでも驚いているのに、高校生で社長という経歴を聞いてさらに驚く心亜。その少女が何をしにきたのかも気になっていた。
「いやだー!視界の悪い着ぐるみの中に入って子供に蹴飛ばされるのはいやだー!」
「多田君、勝手に合併の話を妄想しないで欲しいザマス。今日、綾華さんがこちらにいらしたのは……」
「華江おば様。そこから先はあたくしが説明いたしますわ。今日からあたくしはDM企業戦士のアドバイザーとして馬庭カルチャーセンターで働く事になりました。あなた方のリーダーとしてこの会社を引っ張っていくつもりなので、よろしくお願いしますわ」
「何だって!」
多田が驚いて大声を出す。
「そういう事ザマス。綾華さんは忙しい時間を縫って手を貸してくれるザマス」
「ダメダメ!リーダーって言うんだったら、やっぱり強くなくっちゃダメですよ、社長!ここは、一番強い僕が実力を試してみないと……」
「多田君はこの前、笹倉さんに負けたはずザマス。その後もリベンジを挑んで負けたと聞いたザマス。それに、次のDM企業戦士の大会は一社四人まで登録できる。笹倉さんと綾華さんを含めてあと二人は戦力が欲しいザマス」
「うっ!た、確かに負けたんですけどあれは油断して……。って、僕、さりげなく戦力外通告!?」
「あの~、社長。やっぱりあたしもいきなりやってきてリーダーって言われるのはちょっと……」
ここでようやく心亜が口を開く。
「納得できないとおっしゃるのかしら?いいですわ。そこの若造にも勝ったみたいですし、あなたの実力、あたくしが確かめてあげますわ!」
「いいよ!そう言ってくれるのを待ってたんだ!」
デッキを取り出す心亜と綾華。邪魔なテーブルや椅子、そして戦力外通告を受けて呆然としている多田をどかしてデュエルが始まった。
「『予言者クルト』を召喚してターンを終了しますわ」
綾華の先攻で始まったデュエル。1ターン目にして、いきなりクリーチャーが召喚された。心亜も速攻を得意としていたが、彼女の行動も早い。
「うわっ!いきなり『クルト』が出るなんてまずいよ~!『ブレイズ・クロー』来いっ!」
念じながらカードを引く心亜だったが、肝心の『ブレイズ・クロー』は来なかった。手札にも入っていない。
「ふっ、初手から手札が事故を起こすとはまだまだだね、笹倉さん」
「多田君、偉そうに解説するんじゃないザマス。デッキに四枚入っていたとしても、必ず1ターン目に1コストのクリーチャーが来るとは限らないザマス」
ショックから立ち直って冷静に解説し始める多田と、律儀にツッコミを入れる華江。二人が見守る中、デュエルは続いていく。
「『シャーマン・メリッサ』召喚!これで、クリーチャーは二体ですわ!『クルト』でシールドをブレイク!」
「うぅ、早いよぉ……」
心亜のデッキも速攻を意識して組まれているデッキだ。デッキのほとんどが3コスト以下のカードで組まれている上によく回る。スピードアタッカーも入れてあるため、速攻デッキの中でも特に早いデッキだ。
しかし、先攻を取られた上に1ターン、2ターンと続けての召喚が心亜に与える心理的プレッシャーは大きい。序盤の攻撃でシールドをなくしてしまったら、ブロッカーもシールドを増やす手段も持っていない心亜のデッキでは、後がない。
「でも!パワーだったら負けないよ!『ライラ・ラッタ』召喚!」
心亜が召喚したのは、攻撃を受けた時にシールドを手札に戻すデメリットを持っている代わりに、2コストで3000というパワーを持ったクリーチャーだ。綾華のクリーチャーでは倒す事ができない。
「さすが、笹倉さんだ。僕を乗り越えただけの事はあるね」
「多田君はちょっと黙っているザマス」
コストに比べて強力なパワーの『ライラ・ラッタ』を見ても綾香は表情を変えない。パワーに対してそれを圧倒的に上回るスピードか、それに近い策略があるという事だ。
「3ターン目、『青銅の鎧』を召喚ですわ!そして、山札の上からマナをチャージ!」
『青銅の鎧』が召喚されてマナが増える。強力だが、速攻デッキとの相性がいいとは言えないクリーチャーの登場に周囲が驚いた。
「そうか!花菱さんのデッキは速攻デッキに見せかけた大型クリーチャー召喚デッキだ!『青銅の鎧』を召喚したのはきっとそのためですよ、社長!」
「そこ!うるさいですわ!」
「多田さん、静かにしてよ!」
「多田君、これ以上うるさくしてデュエルを妨害すると減給処分にするザマス」
「はい……ごめんなさい」
三方向からの砲撃を受けて多田は静かになる。
しかし、多田でなくても『青銅の鎧』を使った事に対する疑問は覚えたはずだ。『青銅の鎧』によるマナブーストの理由を誰もが理解できない中、
「準備完了ですわ」
と、綾華が微笑む。パワーの低いクリーチャー三体に四枚のマナ。クリーチャーの数が多いのは心亜にとって脅威だが、この数ならまだなんとでもなる。
「『クルト』と『シャーマン・メリッサ』でシールドを攻撃!」
「来て!『スパイラル・ゲート』!」
心亜は祈りながらシールドを手札に加えるが、その中にシールド・トリガーはなかった。心亜は愕然として手札を見て、重要な事を思い出した。
「そうだった……。昨日、心悟と戦った時に『スパイラル・ゲート』禁止にされて全部デッキから抜いちゃったんだ。どうしよう~!」
焦る心亜だったが、デッキに入っていないカードの事を考えていても仕方がない。諦めて手札を睨み、この中にあるカードで逆転する方法を探す。
綾華のデッキは心亜の想像を超えた特殊な速攻デッキのようだった。3ターン目を終えた時点で、既に準備が終わっている。次のターンに、切り札が出るのかもしれないが、それがどんなものか予想できない。
「だから、今、倒せるクリーチャーをどうにかしなくちゃ!『リンパオ』召喚だよ!」
心亜が出したのは、3マナの標準的なスピードアタッカー『リンパオ』だ。これで、タップされた二体のクリーチャーを倒す事ができる。
「『リンパオ』で『クルト』を攻撃!『ライラ・ラッタ』で『シャーマン・メリッサ』を攻撃だよ!」
二体のクリーチャーを失ったが、綾華は涼しい顔をしている。全く問題ないとでも言うように。
「あれ~?クリーチャー二体も倒されたのに、何で余裕なんだろう?社長、どう思いますか?」
「多田君、『シャーマン・メリッサ』を見るザマス」
「見るザマスって、もう倒されちゃったじゃないですか……。って、あれ?『シャーマン・メリッサ』がマナになった!」
「え!そんな!?」
多田と心亜が驚いて綾華のマナゾーンを見る。確かに、倒したはずの『シャーマン・メリッサ』がマナに変化しているのだ。
「『シャーマン・メリッサ』は、破壊されるとマナになるクリーチャーですわ。これでマナは五枚!火文明、自然文明、光文明の三色が揃いましたわ!」
綾華がドローし、マナゾーンの三枚をタップしてクリーチャーを召喚する。
「あたくしの切り札、『コアラ大佐』召喚ですわ!」
場に出たのは、3マナでパワー2000のクリーチャーだった。2000のパワーならば、『ライラ・ラッタ』で倒せる。心亜が『コアラ大佐』の強さを理解できずにいると、綾華は残っていた二枚のマナをタップする。
「O・ドライブを使いますわ!」
「えっ!?」
「笹倉さん、『コアラ大佐』は召喚した時にマナゾーンのカードをタップする事で、クリーチャーを強化する事ができるザマス。光文明のカードをタップすれば、攻撃を可能に。火文明のカードをタップすれば、W・ブレイカーを追加できるザマス」
「ええっ!?」
「召喚したばかりの『コアラ大佐』に火文明の力と光文明の力を与えますわ!これで、召喚酔いのないW・ブレイカーの誕生ですわ!」
召喚酔いが解除されW・ブレイカーを得た『コアラ大佐』が、残っていた心亜のシールド二枚をブレイクする。だが、最後のシールドを見た瞬間、不安そうにしていた心亜の表情が変わった。
「シールド・トリガー!『獅子幻獣砲』だよ!『青銅の鎧』を墓地へ!」
最後のシールド・トリガーによって、心亜はギリギリのところで助かる。このターン、綾華はもう攻撃ができなくなった。
「そうか。3ターン目に『青銅の鎧』を召喚して、4マナ。4ターン目には5マナ揃うから、『コアラ大佐』のO・ドライブ二つが1ターン早く使える。4ターン目にW・ブレイカーのスピードアタッカーが来たら大変だ!3ターン目に『青銅の鎧』を召喚して準備完了って言ったのはこの事だったんだ!」
多田の言う事を心亜も理解していた。『青銅の鎧』は大型を召喚するためではなく、『コアラ大佐』のO・ドライブを最短で決めるためのカード。速攻デッキに置ける1ターンの差はとてつもなく大きい。
「でも、準備完了なのはこっちも同じ!こっちの切り札だってちゃんとあるんだから!」
心亜がマナのカードを三枚タップし、その中から一枚のカードを手札から出した一枚のクリーチャーの下に重ねる。
「マナ進化!『ブレードグレンオー・マックス』!!」
心亜が召喚した進化クリーチャーにそこにいた者達の視線が集まる。3コスト、パワー4000のその進化クリーチャーは、マナにある火文明のクリーチャーを進化元にして登場するクリーチャーだ。その場にあるどのクリーチャーよりも高いパワー。そして、心亜が切り札だと言えるだけの信頼性のある特殊能力。ここで、初めて綾華の表情に陰りが見えた。
「進化クリーチャーだから、当然召喚酔いはなし!行くよ!『ブレードグレンオー・マックス』でシールドを攻撃!そして、ブロックされなかったから『コアラ大佐』を破壊!」
心亜の切り札『ブレードグレンオー・マックス』の能力。それは、シールドへの攻撃をブロックされなかった時にパワー3000以下のクリーチャーを一体破壊する事。攻撃と同時に相手への妨害を行う能力だ。これによって、綾華の最後のクリーチャー『コアラ大佐』が破壊される。次のターンに心亜へ直接攻撃ができなくなった。
「『ライラ・ラッタ』と『リンパオ』も攻撃だよ!」
怒涛の連続攻撃が綾華のシールドに襲いかかる。そして、その中にシールド・トリガーはなかった。
「シールド・トリガーがなくても問題なしですわ!シールドが減ったら増やせばいいのです。『ジェット・アール・イー』!」
綾華が呼び出したクリーチャーの特殊能力によって、彼女は山札の上から一枚をシールドにする。綾華のシールドは三枚。そして、心亜のクリーチャーも三体だ。
「まだ、スピードアタッカーがないからこのターンじゃとどめは刺せない。だから『フォーチュン・ボール』で手札補充だよ!」
綾華のシールドは三枚なので『フォーチュン・ボール』で引ける条件は整っている。心亜は二枚のカードを引き、綾華のシールドを見た。
「『ブレードグレンオー・マックス』でシールドを攻撃して『ジェット・アール・イー』を破壊!『ライラ・ラッタ』で攻撃!」
『ライラ・ラッタ』による攻撃を受けたシールドを綾華が見せる。
「シールド・トリガー、『獅子幻獣砲』ですわ。『リンパオ』を破壊!」
「そんな!」
綾華のシールドが一枚残り、また勝負が判らなくなった。
否。綾華は既に涼しい顔に戻っている。それだけではなく、表情に抑えられない微笑みのようなものが見える。それは勝利を確信した笑いだった。
「なかなかのテクニックでしたわ。そこの男性と同じで大した事はないかと思っていましたが、ここまで追い詰められるとは思いませんでした。ですが、これで終わりにして差し上げますわ!」
綾華がここで召喚したのは、切り札の『コアラ大佐』だった。
「O・ドライブで光のマナをタップ。これで『コアラ大佐』は召喚酔いが解除され直接攻撃が可能!ギブアップなさい」
誰の目から見ても心亜の敗北は明らかだった。決着はついた。
「いや、その必要はないよ!」
心亜の返事はNOだ。その言葉に、他の三人は驚く。
「笹倉さん、気持ちはすっごくよく判るけれど、負けは負けなんだから潔く認めなきゃ。ね?」
「大丈夫、多田さん。まだ大丈夫だから」
「でもさ」
多田には、心亜のその言葉がすねる駄々っ子のように聞こえたのかもしれない。だが、華江と綾華は違った。その言葉、その目、その表情からまだデュエルは終わっていない事を感じ取ったのだ。
「負けていないというのならば、この攻撃を止めてみなさい!『コアラ大佐』で直接攻撃!」
タップされたコアラ大佐。「もう駄目だーっ!」と言って頭を抱える多田。対戦相手の表情を見る綾華。静かに様子を見守る華江。その場で心亜は手札の中の一枚に全てを賭けた。
「ニンジャ・ストライク!『テンサイ・ジャニット』を召喚!」
「何ですって!?」
綾華を驚愕させ、華江も思わず息を飲んだ一枚(ちなみに、多田はまだ「もう駄目だーっ!」と言って頭を抱えていた)。それは相手のクリーチャーの攻撃、もしくはブロック時に効果を発揮するニンジャ・ストライクを持つクリーチャー『斬隠テンサイ・ジャニット』だった。
「『テンサイ・ジャニット』は3コスト以下のクリーチャーを手札に戻すカードだよ!『コアラ大佐』を手札に!」
『コアラ大佐』を手札に戻しながら、じっと『テンサイ・ジャニット』を見る綾華。そして、喉から声を絞り出すように言う。
「そんな切り札を……。あたくしの切り札の事まで考えて手札に入れていたというの?そんな馬鹿な!」
「う~ん。今まで来なかったっていうか……。本当は『スパイラル・ゲート』の代わりに入れてたんだけどね。それで、『フォーチュン・ボール』で引いたら。偶然来たんだよね。えっと……」
困惑しながら説明する心亜。『テンサイ・ジャニット』を効果で山札の一番下に入れ、心亜のターンが始まる。
「偶然だけど、偶然じゃない。きっとカードが味方をしてくれたって思ってる!」
心亜の『ライラ・ラッタ』が綾華の最後のシールドをブレイクする。その中にシールド・トリガーはない。
「行くよ!『ブレードグレンオー・マックス』で直接攻撃!」
綾華に心亜の攻撃を止める術はなかった。決着がついたのだ。
「素晴らしいですわ。あたくしの完敗です」
心亜に手を差し出しながら、綾華は思う。カードが味方をするという事は、運が彼女に味方をしたという事だ。運を味方にできる彼女に綾華は興味を持った。
「改めまして自己紹介を。あたくしの名は花菱綾華と申します。いかに低予算でデッキを構築するか。それが、あたくしのテーマですわ」
「あたしは、笹倉心亜だよ!よろしくね!綾華ちゃん!」
久し振りに「社長」でも「花菱さん」でもない下の名前で呼ばれた。目の前にいる少女は、いい仲間であるのと同時にいい友達になれそうだとそう感じる綾華だった。
「おば様。面白い子ですわね。心亜さんと共にあたくしも全力でメンバー探しをいたしますわ」
「お願いするザマス」
華江は心亜と綾華の二人を信頼している。残り二名のメンバーを加えて最高のチームを作りだせるだろう、と。

次回に続く

第四話予告
時任「今回も熱いデュエルだったぜ!なっ、桃太郎!」
百瀬「毎回私を桃太郎と呼ぶな!私は百瀬光太郎だ!」
時任「いいじゃん、細かい事は。それより速攻同士の熱い戦いに燃えたぜ!」
百瀬「ふっ、次回では光文明の華麗でテクニカルなデッキを見たいものだ」
時任「華麗かどうかはともかく、テクニカルなデッキは出るかもしれないぜ」
百瀬「何っ!?それは本当か、時任」
時任「ああ。次回は、チームのメンバーを探す心亜ちゃん達がとある専門学校の学際に行く話だ」
百瀬「そこで行われるデュエル大会。そして、アーティスティックなデッキを使う……王子!?」
時任「次回は『第四話 王子様の芸術』だ!百瀬、日本って王様いたのか?」
百瀬「いるわけがないだろう!判り切った事を聞くな!」

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