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『TOKYO決闘記』 第二十一話 悪戯

『TOKYO決闘記』

 私、一ノ瀬博成は東京連続失踪事件の謎を追っている高校二年生だ。
 死なない能力『途切れぬ命(アライブ・ア・ライフ)』を破られた八百万八卦。彼の肉体を使い、『球舞』のリーダー、九重九十九が蘇った。九十九は、八卦の別人格だったのだ。
 ルールすら越えた力を持つ九十九の能力『球舞王(ゴー・オーバー)』の前に、勇騎は成す術もなく敗北した。そして、九十九の命令によって六道六儀の能力『完全殺戮(オール・デッド)』が解き放たれる。じわじわと体力を奪い、やがて死に至らしめる呪いにも似た能力を受けた私達に対し、九十九は世界征服を宣言する。
 金城豪人、赤城日芽と共に『球舞』のメンバーが待つコスモガーデンへ私は向かうのだった。勇騎なしで、この邪悪な存在を打ち倒すしかないのだ。
 20XX年 一ノ瀬博成

 第二十一話 悪戯
 Tテレビ、コスモガーデンにあるとあるスタジオ。普段は、ニュースキャスターなどがいるこの場所を使っていたのは『球舞』のメンバーだった。
「カメラ、どうもありがと。また使わせてもらうよ」
 九十九は、ネクタイを緩めながらカメラマンに言う。脅されて撮影をしていたスタッフらの顔には、まだ恐怖の表情が残っている。
「ねえ、六儀。保持者は来るかな?」
「……来る」
「随分おしゃべりになったね」
 六儀の素っ気無い返事を聞いて、九十九は満足そうに笑うと椅子から立ち上がり、ADの近くに立っていた三ツ沢に近づく。
「う……うっす!九十九様、最高の演説でした!すぐに世界は九十九様の物に……!」
「なあ、三ツ沢」
 九十九は、両手で三ツ沢の頭をつかむ。その力は強いものではない。だが、三ツ沢は固定されたようにその場から動く事ができなかった。
「ここに保持者が来たら、お前一人で全員倒して来い。できないなら、ここで死ね」
「う……うわあああっ……!」
 『球舞』において九重九十九の命令は絶対だ。九十九にとって、三ツ沢を消すくらい他愛のない事である。保持者を簡単に殺害した九十九の能力を思い出す。だからと言って保持者と戦っても勝てる気がしない。恐怖で、三ツ沢は涙を流していた。目を開いたまま、涙がぼろぼろと出てくる。
「そんなに怖いの?ねえ、怖いのは保持者?それとも僕?ねえ、どっちに殺されるのがいい?」
「どっ……どっちも嫌っすよ…!おれっちじゃ、保持者には勝てないっすよ!九十九様、おれっちを許して下さい!」
「駄目だね。勝てなくてもいいから、保持者を一人くらいは葬って来い……」
 九十九は、笑いながら残酷な命令を伝える。顔は笑っているが、声は笑ってなどいない。
「無理なら、ここで消してもいいだけだけど……。『球舞』に選ばれるほどの人間だからなぁ……。さすがにここでお前くらいの男を失うのは惜しい」
 三ツ沢は、九十九の手によって自分の命が消える事はないと悟って安心した。だが、目の前の男が口の端を歪めた時、安心した自分の迂闊さを呪った。
「だから、もっと強くしてやるよ。お前の中身が、お前の怒りが全部吐き出されるくらいにね!」
 三ツ沢から離れた九十九の右手には、一体のブレインジャッカーが乗っていた。『球舞』を始めとする様々なデュエリストの頭脳に埋め込まれているものと同じものだ。
「なあ、三ツ沢……。今までブレインジャッカーを二体以上食った奴がいないのは知ってるよね?おめでとう。お前が最初だよ。ブレインジャッカー二体で強さが二倍のスーパー三ツ沢二古にパワーアップだ!!」
「嫌っすよ!やめて下さいっすよ!」
「駄目だね。死ぬわけじゃないんだから、力を抜けよ」
 三ツ沢は知っている。二体以上ブレインジャッカーを取り込んだ者がいないのは、肉体が耐え切れなくなるせいだ。一人、それを試してみた者もいたが、自らの能力に耐え切れず、結局自害した。
「さあ……生まれろよ!新しいお前の力を見たいんだよ、僕は!」
 蠢くクリーチャーの脚が、ゆっくりと三ツ沢の頭に触れた。

 コスモガーデンは、日本でも五本の指に入るほどの高層ビルである。その周囲には、メディアに関する様々な会社だけでなく、ショッピングを楽しむための300以上ある専門店、娯楽のためのイベントホール、洒落たオープンカフェやレストランなどの施設がある。コスモガーデンとその周辺施設を合わせてコスモスクエアと呼ばれる。そこは、休日だけでなく平日も多くの人が訪れる。特に、今の季節はクリスマスのイルミネーションを見るために東京だけでなく、埼玉や山梨からも多くの人が集まるのだ。
 そんなコスモスクエアも、今日は人通りがほとんどない。豪人は、眠気覚ましに買ったコーヒーを飲み干すと、一息ついてコスモガーデンを見上げた。
「ここに、九重九十九がいるんですね?」
 隣には、博成が立っている。日芽もついてくると言っていたが、危険な目に合わせない為に豪人がそれを許さなかった。もちろん、博成にも車の中に残るように言ったが彼は、それを聞き入れなかったのだ。
「九十九だけじゃない。多分、『球舞』のメンバーが全員いると思うよ。いや……僕なら『球舞』だけじゃなく、他のデュエリストも配置しておくだろうね。これは、僕らと彼らの最後の戦いなんだから。この戦いを制した者達に明日は微笑む。戦力の出し惜しみはしないよ、きっと」
 消耗戦になったら、数の少ないこちらが不利だ。怪盗アルケーと墨川一夜が協力してくれるとは限らない。豪人とヴェルデだけで戦わなければならないのだ。二人の保持者が強いとはいえ、不利な状況を覆すほどではない。
「コスモガーデンは、内部が三つに分かれていて、中は複雑になっている。九重九十九がどこにいるのかは判らないけれど、全ての場所を探してみればいい。誰か見つけてしゃべらせるのもありだね」
 豪人が前を向くと「噂をすれば……」と呟いた。コスモガーデンの入り口に三ツ沢が立っている。手には既にデッキを持っていて、戦う準備は万端である。
「……ったく、この世で飽きないのはデュエル・マスターズとジョジョだけっすね」
 モデルのように特徴的な歩き方をしながら三ツ沢は二人の来客に近づいた。そして、デッキを取り出すと、西洋の彫刻のような個性的な立ち方をして豪人を見た。
「目つき……かな?目が今までと違う。目の力が違うとそれだけで人は変わって見える。今の君は別人みたいだ」
 豪人に言われて、博成は改めて三ツ沢を観察する。今の彼は、今までの彼にはない落ち着きのようなものが見える。豪人も一度は八卦を倒した事がある保持者だ。彼を見て全く動じない。それだけの余裕が、三ツ沢にはあるのだ。
「デュエルで勝てば、スッキリする。力でねじ伏せるのは何よりも原始的で何よりも判りやすいっすね。誰が勝ったか一発で判る。力のぶつかり合いに嘘はない」
 三ツ沢は、右手に数枚の『ブランク』を持っていた。そこには、三ツ沢より少し年下の少年が苦しそうな顔で閉じ込められている。
「こいつらは、『球舞』に入ってから初めておれっちが倒したデュエリストっす。あんたらももうすぐこの仲間入りっすよ」
「ひどい……!ひどいよ!今まで何人の人をこんな目に合わせてきたんだよ!」
「お前は、今まで買ったカードの枚数を覚えているか?」
 怒りに声を震わせながら博成が叫ぶと、その言葉をあざ笑うかのように冷たい微笑を浮かべて三ツ沢が返す。
「何……!?」
「デュエルにはまっているプレイヤーなら、今までに何枚のカードを買ったか正確な数は覚えていない。それと同じで、君も何人の人を犠牲にしたか判らない……といったところかな。やれやれ……」
 豪人は、三ツ沢の言葉の意味を解説すると、静かに息を吐いた。だが、その直後、静から動へ彼の感情は激変する。
「来い!全力でねじ伏せてやる!」
 彼の叫びと共に、左手で握った『ネオウエーブ』は金色に輝く。三ツ沢を倒す準備はすでに出来ているのだ。『ネオウエーブ』と三ツ沢のデッキが互いに呼応して、世界が変わっていく。
「保持者だろーと誰だろーとおれっちには勝てねェって事を教えてやるっすよ。おれっちの『破滅の息(ディープ・ブレス)』は……」
 三ツ沢の前に五枚のシールドが現れた瞬間、クラッカーのような破裂音がして彼は突然後ろ向きに倒れた。何が起こったのか理解できなかった博成は豪人を見る。豪人は、右手に拳銃を握っていた。その銃口から一筋の白い煙が昇っている。
「勝った……!」
「いや、確かに勝ちは勝ちなんですけど……。何か違うような……」
 博成は、爽やかな笑顔で勝利を宣言する豪人を見て、その後に倒れたまま動かない三ツ沢を見た。あまりにも、呆気なさすぎる。
「勝てばいいんだよ。今は、余計な戦いをする余裕なんかないんだ」
 拳銃をジャケットの中のホルスターにしまいながら、豪人は博成に告げる。今まで、銃を隠し持っていたなんて気がつかなかった。
「これは銃刀法違反だし……うーん」
「世界を征服しようとする相手と戦う時に、法律なんか気にする奴はいないよ。それに……」
 豪人はまだ緊張した視線で三ツ沢を見ていた。博成は、既にこの戦いが終わったものだと思っていたが、それは違う。この二人の戦いはこれから始まるのだ。
倒れていた三ツ沢の右手がぴくりと動く。
「あ……!」
「何をするだぁーっ!!許さんっ!」
 三ツ沢は勢いをつけて起き上がった。銃弾を受けたはずなのに、彼の体は傷一つ負っていない。
「これくらいで倒せる相手だとは思わなかったけれど、無傷とはね……。どういう体をしているんだい?」
「銃ごときでおれっちを殺せるという発想が間違っているっすね。おれっちを殺りたければ、銃じゃなくてデッキを使えばいい」
 三ツ沢の隣に、身長百九十センチほどの人影が現れる。全身が銀色の、まるでサイボーグのような体。スプレー缶と何本ものパイプをぶら下げた胴体。そして、ガスマスクとゴーグルをつけたような顔。 非常に奇妙なその人影は、右手の指先で何かをつまんでいた。博成は、それが豪人が撃った銃弾だという事を一瞬で理解した。
「その人が、銃弾を受け止めたの?」
「人……っていうのはちょっと違うっすね」
 三ツ沢が右手を広げると、その人影も同じ動きをして手に持っていた銃弾を捨てた。
「これがおれっちのスタンド『破滅の息(ディープ・ブレス)』ッ!!スタンドが見えるって事は、お前らもスタンド使いっすか?」
「どんな能力で来るかと思ったら、スタンドを作ってくるとは……。君のハマりっぷりには驚いたよ。どんな能力を持っていたとしても、勝つのは僕だけどね!」
 豪人の前に五枚のシールドが現れ、彼は手札を取る。三ツ沢も同じようにして豪人を見た。
「おれの精神のテンションは今!『球舞』に入りたての頃に戻っているッ!冷酷!残忍!そのおれがきさまを倒すぜッ」

「九十九様、一つお聞きしてもよろしいですか?」
 コスモガーデンの最上階にある巨大な宴会場。赤い絨毯の上に、いくつかのテーブルが置かれ、その上に料理や飲み物が置かれている。そこを占領しているのは九十九だ。
 ネクタイを外したスーツ姿のまま飲み物を飲む九十九に、初七日が聞く。既に六儀は、戦うために移動をしていた。
「何かな?」
「何故、三ツ沢のような子供を『球舞』のメンバーに選んだのですか?九十九様の判断に間違いがないのは重々承知しておりますが、もっと戦うのに適した者もいるのではないでしょうか?」
「うん、三ツ沢は精神的に不安定だし、集めたデュエリストを探せば三ツ沢よりも強い奴がいるかもしれないね。でも、僕が三ツ沢を選んだ理由はそんなものじゃないんだ」
 九十九は、近くにあったソファまで移動してそこに腰掛ける。彼はグラスのふちを指で弾いて、その音を楽しんでいた。
「三ツ沢はデュエルを愛しているから『球舞』にいれた。それ以外の理由はないよ」
「デュエルを……ですか?」
「そ、デュエルを愛しているの」
 九十九の口から返ってきたのは、初七日が全く予想していなかった言葉だった。それならば、三ツ沢は『球舞』の敵になってもおかしくなかったはずだ。
「三ツ沢のデュエル・マスターズへの愛は本物だ。だからこそ、奴はデュエル・マスターズを憎んでいる。デュエルを愛し、デュエルを憎む。愛と憎しみを併せ持っているのさ。なかなか見せないけれど、奴の憎しみが爆発した時は保持者も簡単に倒せるくらいのパワーはあると思うな」
 愛と憎しみ。一見、正反対に思える感情でありながら非常に似通った感情。三ツ沢の中にあるデュエル・マスターズへの想いが、悪のエネルギーを生み出していたのだ。
「何故、あいつが『球舞』に入ろうと思ったのかはどうでもいいや。気にならないもん。とにかく、問題なのは今なんだよ。僕がパワーアップさせてやったから、今の三ツ沢は最強だ。憎しみを保持者に、いや、全てのデュエリストにぶつける完璧な戦闘マシーンになった」
 九十九は愉快そうに笑うと、足を組む。
「楽しみだなぁ!保持者を全員やっつけた後、三ツ沢はどんな行動に出るんだろう?」

「『霊王機エル・カイオウ』召喚!」
 豪人が最初に召喚したのは、2マナでありながら、4500という破格のパワーを持つブロッカーだった。相手プレイヤーを攻撃できないが、軽量かつ高パワーというだけで充分すぎるほどの性能だ。
「えー、グレートメカオー!?キモーイ!グレートメカオーが許されるのは、小学生までだよねー!キャハハハハ!」
 嘲笑と共に三ツ沢が召喚したのは、『弾け山のラルビン』だ。マナには自然文明のカードが置かれているため、パワーは3000に上がっている。
「軽量のドリームメイト……。速攻メインのデッキかな?」
「さあて、どうっすかねぇ……?」
 余裕を見せて笑う三ツ沢の目の前で、『ラルビン』の頭部に巨大な丸いカプセルが当たった。そして、動きを止めたその体に『エル・カイオウ』の拳が打ち込まれた。
「なんじゃ、こりゃー!」
「『キャプテン・メチャゴロン』さ」
 豪人が召喚していたのは、グレートメカオーとの相性がいいタップ用のクリーチャー、『キャプテン・メチャゴロン』だった。『エル・カイオウ』を出し、その後に『メチャゴロン』を出して小型クリーチャーを無力化するという行動で、攻撃的に防御する事ができる。
「ちぃっ!なめんじゃねーっすよ!」
 再び、『ラルビン』を召喚する三ツ沢。だが、そのパワーでは『エル・カイオウ』を倒せない。
「レベルの違いって奴を判らせてやるさ。『アクアン』を召喚!効果でカードを四枚手札に加えるよ。そして、『メチャゴロン』でシールドをブレイクだ!」
 『メチャゴロン』が放ったカプセルが、三ツ沢のシールドを砕く。すると、そのひびから赤い光が漏れ始めた。シールド・トリガーだ。
「キター!『地獄スクラッパー』!『エル・カイオウ』を墓地送りっすよ!いやっほう!!」
 これによって、豪人のブロッカーはなくなる。パワーが高いとは言っても、『スクラッパー』の前では無力だったのだ。
「さらに、おれっちのターン!『猛烈元気バンジョー』を召喚して、『森の歌い手ケロディナンス』を手札に加えるっす。そしてェ!『ラルビン』でシールドブレイク!」
 シールドをブレイクされたとしても、まだ問題ではない。豪人の場には『メチャゴロン』も『アクアン』もいるから攻撃はできる。『エル・カイオウ』以外にもブロッカーは入っているから、防御も簡単だ。
 だが、シールドをブレイクされた瞬間、豪人は自分の体に奇妙な違和感を覚えた。その違和感の正体が判らないまま、豪人はカードを引く。
「なんだ、これ……苦しい……!」
 どさり、と鈍い音がして後ろにいた博成が倒れた。これは、豪人も予想していなかった事だ。
「三ツ沢二古!博成君に何をしたんだ!」
「さてね……。おれっちは既に『破滅の息(ディープ・ブレス)』の能力を発動させているんすよ。自分から能力を話すわけがないでしょう?」
「そうか……。だったら、自分で考えるさ……!」
 豪人は改めて手札を睨む。アクアンの効果とブレイクされたシールドの分だけ、手札は増えている。三ツ沢を倒す為の下準備は完成している。
「『パラ・オーレシス』を召喚するよ。そして、『アクアン』と『メチャゴロン』でシールドをブレイクだ!」
「くっそ!」
 立て続けに破られる三ツ沢のシールド。その中にシールド・トリガーは入っていない。
 本来なら、安堵すべき光景だ。だが、豪人はそれを見て自分の中にある違和感がさらに膨れ上がった事に気付いた。いや、ここまで来たらそれは違和感などという言葉で片付けられるものではない。明らかな息苦しさを感じていた。
「シールドをブレイクする度に……いや、場にあるシールドが減って行く度に息が苦しくなっていく。君の能力は、シールドに特殊な毒を仕込んでおく能力か。いや……違うな」
 豪人は声を出しながら少しずつ自分の中にある仮説の完成度を高めていく。いつものように思考がまとまらない。体の中で、特に頭脳がダメージを受けているようだった。
「そんな君自身も大きなダメージを受けるような能力を使うとは思えない。だが、この能力はデュエルが長期化すればするほど君自身のダメージも増える能力だ。違うかな?」
「正解っすよ。ただ、それでも半分だ」
「毒が空気中に放出される能力ではないと、僕は考える。君の能力はシールドが減って行く度に、周辺の酸素を少しずつ減らしていく能力だ」
「やるっすね。正解っすよ。これは、酸素がどんどん減っていく能力っす。戦えなくなるくらい酸素が少なくなるなんて事はないっすけど、長時間戦ってると頭がぼやけてくるかもしれないっすね。ただ、おれっちはこの能力でダメージを受ける事はないっすけどね」
 三ツ沢は懐から一本のスプレー缶を取り出す。缶の表面に大きく書かれた『O2』の文字を見て、豪人はその中身と彼の周到さに驚いた。
「酸素のスプレーか。用意周到だ」
「へへっ!酸素を補給して頭がすーっとしたところで、おれっちのターンっす!まず、『エナジー・ライト』!そして、『ケロディナンス』を召喚するっすよ!」
 酸素スプレーを使って酸素を補給した三ツ沢が『ケロディナンス』を召喚すると、今回のターンで使い終わったマナが全てアンタップされたのだ。
「『ケロディナンス』は、召喚した時にマナにあるフェニックスのカードをアンタップするカード。5マナあれば、おれっちの切り札一号が呼べるっすよ!」
 場にいる三体のドリームメイトが、緑色の光と共に一つの巨大な体を形成していく。
「『超新星ジュピター・キングエンパイア』。おれっちの超切り札っすよ」
 大きさに違いがありすぎた。三体のクリーチャーを進化元にするとはいえ、14000のパワーは桁が違う。しかも、それが最速の5ターン目に召喚された事が大きい。準備を整えれば、豪人のデッキにあるクリーチャーでこのパワーを打ち倒す事も可能だ。だが、その準備が整うまでに時間がかかりすぎる。
「『ジュピター・キングエンパイア』で『アクアン』を攻撃するっすよ!そして、メテオバーンでジュピターの進化元の『バンジョー』を召喚するっす!その効果で『ケロディナンス』をもういっちょ手札に!」
『ジュピター』の最大の武器は、進化元のクリーチャーを再召喚できる事だ。進化元がもう一度三体並べば、二体目の『ジュピター・キングエンパイア』が並ぶ事も考えられる。
「君のペースではやらせない」
 可能な限り酸素を消耗しないように静かに告げた豪人が一枚のカードを放つ。そこから現れた無数の黒い手が『ジュピター』の巨体を包み込んでいった。
「な、なんっすかー!『デーモン・ハンド』!?メカオーだったら光と水じゃないんすか?闇も!?闇も入っているだって!?」
「余計な事をしゃべるな。君のターンだ」
 時間が勿体無い。豪人は、まだ二本の足で立って戦うほどの余裕がある。しかし、博成は酸素が減った事で肉体に負担がかかり過ぎている。
(最速のパターンで三ツ沢二古を退ける……。だが、焦りは禁物だ。何故、相手のフェニックスがあんなに多いのか、その理由を突き止めない限り、僕に勝利はない)
 豪人が真剣な表情でカードを引く三ツ沢を見つめていた。

 今から、二年と少し前の話。三ツ沢二古がまだ『球舞』に入る前、彼がその名前で呼ばれる前の話だ。
 当時の彼は、純粋にデュエルを楽しむ普通のプレイヤーだった。勝つ事だけに固執せず、色々なデッキを組みテクニックを磨き、何よりデュエルを愛していた少年だった。
 『好きこそものの上手なれ』という言葉があるように、彼のテクニックはどんどん上達していった。三ツ沢の地域の中で、最も強いデュエリストは間違いなく彼だった。冗談で「デュエルで死ねるなら本望だ」と言う事があるくらい彼の生活はデュエル・マスターズ一色になっていたのだ。
 だが、そんな彼の絶頂は長くは続かなかった。
 成功者を妬むだけの人間はどの世代、どの世界にも存在する。彼に目をつけたのは、ガラの悪い複数のプレイヤーだった。こういう連中は、大抵一人では動けない。徒党を組んで彼は三ツ沢を攻撃し始めた。
 最初は、大会での出来事。素人目から見ても判るイカサマを行った不良プレイヤーに対して、三ツ沢は注意する。
「あ?公式大会じゃないんだから、グダグダ言ってんじゃねぇよ!」
「これはイカサマじゃなくて、工夫ってんだよ!」
 数人での威圧に三ツ沢は怯んだ。普通にプレイしていれば、イカサマによるハンデがあったとはいえ、三ツ沢が勝つ事は容易だっただろう。だが、イカサマに加え、複数の人間による恫喝という心理攻撃が三ツ沢のプレイを破壊した。
 次は、カードの盗難。三ツ沢が大切にしていた高価なカードばかりが気付かずになくなっている。それと同時期に不良プレイヤーのグループのカードが高価になっている。状況証拠は揃っているのだが、それでも三ツ沢は許した。周囲のプレイヤーに問われても、彼はこう返す。
「デュエル・マスターズを楽しんでいる人に悪い奴はいないよ。カードなんてまた買えばいいんだし。あれがなくても強いデッキは作れるっす」
 不良グループを糾弾しなかった事は、ある意味では立派だった。だが、それはある意味では愚かな事だったのかもしれない。
 この言葉通りに、三ツ沢は高価なカードを使わずに強力なデッキを作り上げた。ここまで努力ができたのは、彼の中にあるデュエルに対する深い愛によるものだろう。
 不良プレイヤーに対する風当たりは強くなってきた。三ツ沢の無言の抵抗は多くの仲間を呼び、大きな力となっていたのだ。
 そんなある日、不良グループのリーダーから正々堂々としたデュエルの申し出があった。三ツ沢が勝利した場合、奪い取ったカードは全て返却し、以後イカサマも恫喝もしないという条件だった。しかし、三ツ沢が敗北した場合、カードの全ては奪われてしまうという不利な条件でもあった。
「やるっすよ。デュエルするだけであいつらの目が覚めるのなら、それでいいっす」
 だが、これは罠だったのだ。それに対抗するには、三ツ沢は幼すぎた。
 不良グループは三ツ沢から奪い取った高価なカードを使い、結果は三ツ沢の惨敗だった。対戦相手が使っていたのは、全盛期の三ツ沢が使っていたデッキだった。
 もう、不良プレイヤーの横暴を止められる者はいない。どこで資金を作ってくるのかは判らないが、店にとっていい金蔓(かねづる)である彼らを店員は咎めない。周囲のプレイヤーは三ツ沢の敗北に脅えて逆らう事もできない。負けた三ツ沢に手を差し伸べる者は誰もいなかった。
「何で……デュエルが好きだったおれっちが、何で負けなくちゃいけないんすか!何でだよおっ!」
 ネットで全国にいる多くのプレイヤーに相談するために、三ツ沢は動き出した。周りの者が腑抜けならば、本当に強い者の力を借りればいい。デュエル・マスターズの実力ならば、絶対に自分の方が上である。くだらない理由での敗北など認めない。
 ネットで情報を探している時に、偶然見つけた簡素なホームページ。それが『球舞』に入るための試験場だった。そこにあった試験をクリアした少年は過去を全て捨て、三ツ沢二古という人間になった。
 昔、その少年はデュエルを愛していた。三ツ沢二古はデュエルを憎む者だ。
 昔、その少年は全てのデュエリストは間違いなくいい人物だと信じていた。三ツ沢二古は相手の人格に関係なく、自分が憎いと思ったプレイヤーを倒す。意図的でないルール解釈ミスも、彼は許さない。
 昔、その少年はデュエル・マスターズは人生の全てだと感じていた。三ツ沢二古もデュエル・マスターズは人生の全てだと感じている。あらゆる敵を黙らせる最も便利で使いやすい道具として、最高の存在だと信じているのだ。
 新しい名前と『破滅の息(ディープ・ブレス)』を手に入れた彼は、不良プレイヤー達のいるその店に戻った。手には、灰色のデッキを持って。
「てめぇ……また戻ってきたのか」
 耳障りな薄汚い笑い声と共に、三ツ沢を見る数人の不良プレイヤー。その姿を見た時、三ツ沢はこう言った。「よかった」と。
「俺達もよかったね!また金蔓が戻ってきたぁ!」
「違うっすよ!てめぇら、全員ぶちのめしてすかっとできるからよかったって言ってんだ!最初に死にてぇのはどのプレイヤーだ!相談する時間も勿体ない!今、ここでおれが決める!まず、貴様だ。これからやるのはただのデュエルじゃねぇ!負けた奴は死ぬ。笑ってるんすか?デュエルで死ぬわけがないって?今の内に笑っとけよ、クズプレイヤーが!おれが味わった怒りを全員ぶち込んでやるから覚悟しろ!」
 同じように灰色のデッキを渡される不良プレイヤー達。イカサマも恫喝も効かない実力主義の公平な世界では、三ツ沢が負けるはずがない。圧倒的な差をつけて一人、また一人と三ツ沢の手で処刑されていく。『破滅の息(ディープ・ブレス)』の効果を初めて試した時、酸素を減らされて悶える彼らを見て三ツ沢は上機嫌だった。
「おや?デュエルの前の威勢のよさはどこに行ったんすか?口をぱくぱくさせてみっともないっすね。口をだらんと開けとくのは、みっともないからやめなさいって家庭で教育されなかったんすか?ああ、教育が悪かったからこうなっちまったんすね、はっはっはっは!」
 どす黒い復讐の炎は、不良プレイヤー達を倒しても晴れる事はなかった。まだ、憎むべき者がそこにいたのだ。
「すげぇじゃん!お前のお陰であいつらみんないなくなったよ!」
 その声をかけてきたのは、昔、三ツ沢と一緒にプレイした友人の一人だ。三ツ沢の戦いを直接見た訳ではないが、本能的に三ツ沢が彼らを倒した事を理解したのである。その言葉を聞いた三ツ沢は理解した。
「ここにもいたっすね……おれっちの敵」
 狂気に支配された笑顔が少年に向けられる。その少年だけではない。その店に出入りしていた全てのプレイヤー、全ての店員が三ツ沢の憎むべき敵だった。デュエル・マスターズを愛していたはずの一人の少年によって、その店は壊滅した。デュエルを愛し、デュエルを憎むその少年は怒りの刃の治め方を知らずに、自分の怒りをぶつけるためにデュエル・マスターズを使っていた。
 だが、二年間続けてきた悪行もここで終わろうとしている。
「な、なんなんすかぁーっ!何でおれっちが、ここまで追い詰められているんすかぁっ!!」
 豪人のシールドは最後の一枚まで削られてしまった。だが、『エル・カイオウ』が一体、『トルネイダー』が一体。それだけではなく、『ペトローバ』によって二体のグレートメカオーはパワーアップしているのだ。
 対する三ツ沢のシールドは一枚。場には、クリーチャーが一体もいない。どちらが有利かは誰の目から見ても明らかだった。
「君のターンだ。急いでくれないかな?博成君にこれ以上、負担をかけたくないんだ」
「うぐっ!」
 三ツ沢は、豪人のマナゾーンを見ていた。そこには『スパルタンJ』が置かれている。次のターン、どちらかのグレートメカオーが『スパルタンJ』に進化したら、三ツ沢の敗北が確定する。それだけは、避けなくてはならない。
「ちくしょおおおっ!こんな奴に負けるかあぁぁぁッ!!」
 三ツ沢は自棄になりながら、一枚のカードを引いた。その目つきが変わる。
「うおお……これなら、これなら……逆転できるっすよ!」
「……!」
 三ツ沢が持っている手札に膨大なエネルギーが集まっている。『ジュピター・キングエンパイア』以上の切り札が彼の手元に来たのだ。
「『ザ・ユニバース・ゲート』ッ!!そして、時は凍りつくッ!」
 三ツ沢が上空に投げた一枚のカードは、空に巨大な門を作り出した。それが開かれる時、見えるのは宇宙。人が住めない暗闇の世界だ。星の代わりにそこで輝く三枚のカード。それは、三体のフェニックスだった。
「『ザ・ユニバース・ゲート』は山札を三枚めくってフェニックスの数だけターンを飛ばすカード……。今、三枚ともフェニックスだった。つまり……」
「三秒貴様の時は止まる。これで充分だ!まず、最初の一秒!ドロー!判るな?貴様が見た『マーズ・ディザスター』だ。これをマナに置き、『ラルビン』と『バンジョー』を召喚。『ケロディナンス』を手札に加えてターン終了。次の一秒!一体目の『ケロディナンス』を召喚し、効果でマナをアンタップ!二体目の『ケロディナンス』を召喚!もう一度、マナをアンタップ!そしてェ、『ケロディナンス』と『ラルビン』を『ミスター・イソップ』に進化!そして……最後の一秒だ。『ミスター・イソップ』の効果でマナの『バンジョー』を召喚。さらに、このカードで終わらせてやるぞッ!」
 三ツ沢は迷わずカードを空にかざす。再びそこに現れるのは、巨大な門。そして漆黒の宇宙だ。
「再び『ザ・ユニバース・ゲート』ォッ!!山札からめくったフェニックスは二枚!さらに二秒、貴様の時は凍りつく!」
 三ツ沢は自分の体に、頭から足の指の先まで力が漲るのを感じていた。今の自分は、九十九に二体目のブレインジャッカーを与えられる前に比べて圧倒的な強さを持っている。相手が保持者でも勝てるはずだ。
「最高に「ハイ!」ってやつだアアアア、ハハハハハーッ!!!」
 三ツ沢は豪人の顔を見る。そこには、力の差に脅える者がいるはずである。自分を暗黒の世界に突き落とした不良プレイヤーのリーダーも、かつて仲間だと信じていた者達も最期は同じ顔をしていた。三ツ沢は、それを見る事が何よりも好きだった。
 だが、そこに脅えているデュエリストはいない。金色のデッキを持つ保持者は、自分の勝利を信じていて、その目は闘志を失っていない。
「まだ勝つつもりか?無駄無駄ァ!」
 さらに追加された二ターンの一ターン目、『ミスター・イソップ』の効果で『ラルビン』が召喚される。そして、三ツ沢は『ラルビン』と『バンジョー』二体を進化元に『ジュピター・キングエンパイア』が呼び出された。
「『ペトローバ』での強化?毛が生えた程度のパワーアップしかしていないブロッカーにこれが止められるか!」
 『ジュピター・キングエンパイア』の巨体がシールドに突進してくる。豪人は、すかさず『エル・カイオウ』を使ってそれを防いだ。
「ブロッカーは一体。そして、シールドも一枚。だが、こちらは『ジュピター・キングエンパイア』のメテオバーンで『ラルビン』を呼び出した。ブロッカーで一体防ぎ、シールドで一体防いでも意味がないのだァ!最後の一秒ッ!『アクア・サーファー』で『トルネイダー』を手札に!」
 これで、豪人を守るブロッカーは一体もいなくなった。絶体絶命である。
「金城豪人ッ!貴様の最期だッ!!」
 『ラルビン』の頭突きが最後のシールドをブレイクし、その欠片が地面へ落ちていった。
「これで!おれっちの勝ちだ!『ジュピター・キングエンパイア』!金城豪人を殺せ!」
 だが、『ジュピター』は動かない。動かないのは一体だけではない。三ツ沢のクリーチャーは全て動きを止めていた。
「な……何なんだよ?動けよ!一回攻撃すれば勝てるんだよ!何で、最後の最後でおれっちを裏切るんだよ!!」
「君を裏切ったかどうかは判らないけれど、運は僕の味方だったよ……」
 豪人が手に持っているカードは『バリアント・スパーク』。土壇場でシールドから出たそのカードが豪人を救ったのだ。
「最後の一秒だって言ってたね。5ターンも止められた時はさすがに僕も勝てないかと思ったよ。だけど、これで追い詰めた」
 豪人の隣で、『ペトローバ』が輝く。この力のプレッシャーが、三ツ沢を追い詰めたと言っても過言ではない。
「……けっ!追い詰めた?おれっちを追い詰めたって言うんすか?『ペトローバ』じゃ、せいぜいシールドを一枚ブレイクするのが精一杯だ。おれっちに攻撃は届かない。次のターンでおれっちの勝ちっすよ!」
「僕のターン、ジャンボ・アタッカーを召喚する。そして……」
「やめろ……」
 三ツ沢は豪人が何をするのか判った。過去に、この逆転の瞬間を楽しんだ。それが相手の勝利に繋がる事だとしても、それがデュエルの醍醐味だと知っていたから。
「7マナ使い、『ジャンボ・アタッカー』を『スパルタンJ』に進化する!」
「やめてくれ……」
 豪人の場に現れたのは彼の切り札である不死身のグレートメカオー、『スパルタンJ』だ。巨大な城のように、大きな体が三ツ沢の前に立ちはだかる。
「『ペトローバ』で最後のシールドをブレイク!」
「うわああああっ!!ちくしょおおおっ!」
 三ツ沢の最後のシールドは青く輝く。それはシールド・トリガーだったのだ。
「『アクア・サーファー』だ!消えろ、『スパルタンJ』!!」
「メテオバーンだ!『スパルタンJ』は場を離れない!」
 『アクア・サーファー』の出現と登場に現れた巨大な波を、『スパルタンJ』が受け止めた。そして、その体から現れた輝く金色の塊が宙を舞い、波を消し去る。
「終わりだ、三ツ沢二古」
 『スパルタンJ』が一歩ずつ三ツ沢に近づく。周りにいる自分のクリーチャーは何もできない。無力なのだ。
「ちくしょおおうっ!!最後の最後で誰も役に立たねぇ!!頼れるのはおれ自身の力だけじゃねぇか!『破滅の息(ディープ・ブレス)』ッ!!『スパルタンJ』を殴り殺せっ!」
 三ツ沢の隣で立っていた『破滅の息(ディープ・ブレス)』が動き出し、『スパルタンJ』の前に突進する。
「邪魔だ!」
 豪人が振り払うような動作をすると、『スパルタンJ』は同じ動きをして『破滅の息(ディープ・ブレス)』を拳で払った。近くの地面に叩きつけられる『破滅の息(ディープ・ブレス)』と同じように、三ツ沢も地面に吹き飛ばされた。
「ぐぇっ!」
 勢いよく打ち付けられたせいで、三ツ沢の体は一度バウンドする。口元からは、赤い血が流れていた。そこに、豪人と『スパルタンJ』がゆっくりと歩み寄っていった。
「三ツ沢二古に直接攻撃だ……」
 『スパルタンJ』が拳を振り上げ、三ツ沢の腹部に思い切り殴った。鈍い音を聞きながら、豪人は彼の体の上に『ブランク』を落とした。

「……あ」
 博成は、固い地面の上で目を覚ました。体の上には毛布がかかっている。
「博成君、気がついた!よかった……!」
「日芽、ちゃん?」
 すぐそばには、日芽が座っている。そして、少し遠くから、着物を着た一人の少女が走ってきた。博成や日芽と同じように『完全殺戮(オール・デッド)』の被害を受けた美和だ。
「僕は……そうだ!三ツ沢二古は!?金城さんは勝ったの!?」
「大丈夫です。豪人様は、先に進まれました。さあ、博成さん。これを……」
 博成は、上半身を起こしたままの体勢で美和にスプレーを渡された。三ツ沢が持っていたのと同じような酸素のスプレーだ。
「そうか……。近くにスポーツ用品店もあるもんね。酸素スプレーもあったって事か」
 博成は、勢いよく酸素を吸い込むと立ち上がる。だが、すぐにバランスが崩れた。すぐにその体を美和と日芽が支える。
「博成君!行きたいのは判るけど、もう少し休んでからの方がいいよ!」
「いや、駄目だ。僕は戦力にはなれないけれど、この戦いを見届けなくちゃいけない。勇騎君が帰ってくるならば、きっとこの戦いだよ」
 二人に支えられながら、博成は一歩前に出ようとする。
「判りました。行きましょう」
「美和さん……」
 博成は、美和を見てその後、日芽を見る。その少女も博成の思いを察して、ゆっくり肯いた。
「見に行こう。この戦いの終わりを。そして、みんなで『球舞』に勝つんだ。僕達も……勇騎君も一緒に!」

 第二十一話 終

 第二十二話予告
 コスモガーデン内で静かに敵を待つ一人の男、六道六儀。『球舞』の中でも上位に属するその男の前に、悪の炎を持つ保持者が現れる。
「……補給……完了」
 九十九を追う者、九十九を守る者。墨川一夜と六道六儀が激突する。
 第二十二話 死神
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