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『コードD』File.35 命の研究所

『コードD』
 デュエル・マスターズ。
 それは、魔力によって生み出された四十枚のカードを使用する戦闘魔法の奥儀。
 これは、デュエル・マスターズカードを使って戦う若者達の『ウソのようなホントウ』の物語である。
 トライアンフのメンバーは噂で広がっている『死者を蘇らせる方法』について調査を始めた。調査の途中で、一時的に死者を蘇らせて操る力を持ったプライズ、ネクロマンサーの笛がジャロールに盗まれた事を知る。ジャロールはネクロマンサーの笛を使って、陸(りく)と親しかった少女、ナタリーを蘇らせ、陸にけしかけるのだった。ナタリーに勝利した陸は、ジャロールに怒りをぶつける。ジャロールは陸に対して、人を蘇らせる研究所があると言い、陸をそこに連れていく事を約束する。
 陸とジャロールが向かう柳沢研究所。その中で、湊(みなと)は自分や夢の中に出てくる少女と酷似した蓮華(れんげ)という少女に出会うのだった。

  File.35 命の研究所

 柳沢研究所。
 ネットの噂を調べた征市(せいいち)達、トライアンフのメンバーが見つけたのはその名前だった。死者を蘇らせる方法を調べていた彼らが様々な情報を吟味した結果、この研究所の存在を突き止めた。
 柳沢研究所では、死者を蘇らせる方法を研究している。そして、もうすぐその方法が実用化すると言われている。それは、あくまで噂でしかない。実際にそんな研究が行われているからどうかは調べる方法がないのだ。
 研究所のセキュリティは万全で、侵入する事が難しい。調査をするにしても、適切な理由がない限り、入る事はできない。魔法警察もトライアンフも侵入不可能な研究所に頭を抱えていた。
 しかし、誰もが諦めかけていたその時、魔法警察の一人がとある写真を入手した。それは、魔道書同盟の一人、幻(げん)が柳沢研究所に入っていく写真だった。魔道書同盟の一員を匿っているのならば、それに関する情報を調べるために研究所に入る事もできる。そう考えたメンバー達は研究所に突入する準備を始めていた。
「それで、嫌われ者の僕が助っ人に呼ばれたというわけか」
 黒い髪に青に近い色の目をして眼鏡をかけたその男が言った。本来ならば、トライアンフの事務所にいないはずのその男は、腕を組んだまま不機嫌そうな顔で菜央(なお)のデスクに腰かけていた。
「そう言うなよ、マシュー。頼れそうなのはお前しかいなかったんだ」
 征市が苦笑しながら眼鏡の男に声をかける。トライアンフアメリカのメンバーであり、ジャバウォックとの戦いで彼らに協力した男、マシューは眼鏡のブリッジを人差し指で押し上げて征市を見る。
「前に君は僕にこう言ったはずだ。今度は観光に来い、と。トライアンフジャパンの応援に来いとは言われていなかったぞ」
 マシューは苛立ちを隠さずにそう言うと、デスクの上に数冊の本を叩きつける。それらは、Y市の観光ガイドだった。
「まあまあ、落ち着いてよ、マシュー。これが終わったら、おいしいもの食べさせてあげるから。ね?」
 彩矢(あや)が子供に言い聞かせるような口調で言うと、マシューは
「当然、君らのおごりだろうな?」
と、鋭い目でメンバーを見る。
「菜央、マシューってこんな奴だったっけ?」
「いえ、何か違いますね」
 征市と菜央が苦笑しながら小声で話す。マシューはそれを聞き逃さず、溜息を吐いた。
「こんな奴で悪かったな。観光したくて何が悪い。これが終わったら、僕の言う事を聞いてもらうぞ」
「判った。観光も食事も好きにしてくれ。だから、留守は任せたぞ」
 彩矢の次にマシューとの付き合いが長い一真(かずま)はそう言った後で、事務所にいる三人のメンバーに顔を向けた。陸と湊はここにはいない。
 陸は、先日のネクロマンサーの笛に関する話の後、姿を見せていない。携帯電話を通して最後に陸と会話をしたのは征市だった。あの時、陸はネクロマンサーの笛を知っているような口ぶりで話をしていた。もしかしたら、ネクロマンサーの笛を持っていたジャロールと出会い、彼に連れていかれてしまったのかもしれない。理由は不明だが、ジャロールは陸に固執していた。その可能性は充分考えられる。
 そして、湊は、保護者である若月の研究の手伝いをするため、トライアンフの仕事を休んでいた。魔道書同盟との戦いが控えているため、彼の手も借りたいというのがメンバーの本音だった。
「俺達は今から柳沢研究所に向かう。幻だけでなく、全(ぜん)や念(ねん)も関わっているだろう。死者を蘇らせる研究自体が魔道書同盟と深く関わっていて、奴らの戦力を増強させる事につながるのかもしれない。研究所を調べ、魔道書同盟を倒すのが俺達の目的だ」
「念、か……」
 征市は震える拳を握りながら念との戦いを思い出した。伝説のカード《ボルメテウス・ホワイト・ドラゴン》を自在に操り、圧倒的な力を見せつけていった。彼との戦いで敗北した後、征市は特訓を続けたが念に勝てるかどうかは判らない。彼と戦った時の恐怖が震える拳を通して蘇ってくる。
「君が恐れるほどの敵が魔道書同盟にいるのか?」
 恐れが表情に出ていたのか、マシューが征市に声をかけてくる。冷静な彼にしては珍しく、征市を心配したような声だった。
「……ああ」
 征市は少し迷ってから、自分の素直な心情を吐露する。弱気な征市の姿を見て、マシューは戸惑った表情を見せた。
「信じられん。ジャバウォックを倒した君の言葉とは思えないな」
 マシューは静かな口調でそう言った後、熱を込めた声でこう続けた。
「君は、あれだけ強大なジャバウォックを退けた男だ。もちろん、それは君だけの力ではない。だが、最終的にあの巨大な怪物を蹴散らしたのは君だ。君が恐れている敵がどれほどのものかは知らないが、君が……君達が倒せないほどの相手か?」
 征市はその言葉を聞くと、はっとしたような顔でマシューを見る。マシューは相変わらず不機嫌そうな顔をしていたが、目には征市を信頼する光のようなものが見えていた。
「君達の力を見せてやれ。君は相羽総長の血を引く男で、君達は魔道書同盟の企みを退けてきたトライアンフジャパンのメンバーだ。持てる力をぶつけてやればいい」
「マシューの言うとおりだ」
 マシューの言葉を後に、一真が口を開いた。
「魔道書同盟のメンバーが強敵なのは間違いない。だが、俺達は奴らを倒せるだけの力を持っている。今までは奴らの策に対して後手に回っていたが、今回は違う。奴らの企みが表面化する前に対処する」
 一真の言葉にメンバーが頷く。彼が車椅子を引いてエレベーターに向かうと、征市達もついて行った。彩矢は、エレベーターの前で一度立ち止まると、振り返ってマシューを見る。
「ありがと、マシュー。征市さんの事、気に入った?」
「彼がここにとって大切な存在だというのは認める。総長の孫だから認められているのではなく、彼が強いデュエリストであり、大切な仲間だから認められているんだろう」
「そういう事!マシューもここに来たらいいのに♪」
「遠慮しておく。僕はトライアンフアメリカのメンバーだからね」
 彩矢の冗談を聞いてもマシューの不機嫌そうな表情は変わらない。だが、彼の目が笑っていた。
「彩矢、気をつけて」
「心配ないわ。だって、素敵な旦那様がいるんだもの!」
 彩矢は笑顔で手を振るとエレベーターに乗った。
 柳沢研究所でどんな罠が待っているのか判らない。幻が目につく形で研究所に入った事だって彼らの罠かもしれないのだ。
 それでも、征市達は研究所に向かう。それが事件を解決する唯一の手掛かりだからだ。

 陸がトライアンフのメンバーの前から姿を消し、柳沢研究所に移り住んでから一週間が過ぎた。
 死者を蘇らせる研究をしていると聞いてジャロールと共にここに来たのだが、陸にはどんな研究をしているのか判らない。陸の仕事は研究の邪魔をする外敵の排除であって、研究ではないからだ。最初にここへ来て、所員に挨拶をする時だけ中に入った。しかし、それからは、建物の外や研究所周辺のパトロールをする毎日が続いていた。陸以外にも、警備用に作られた怪人が周辺を見張っている。
 陸は今、海の見える休憩所で休んでいた。休憩所はオープンカフェのように白いテーブルと椅子が置かれている。陸は、休憩所の中にある自販機で買った紙コップのコーヒーに口をつけて海を見ていた。
「あら!元気がないわねっ!」
「全か」
 陸の向かい側の椅子に全が座る。自分にとって敵である魔道書同盟の一員だが、この研究所の中では仲間だ。ジャロールに全を紹介された時は戸惑い、デッキを取り出して戦う準備をしたが「ナタリーを蘇らせたくはないのかい?」と聞かれ、戦うのをやめた。全だけでなく、幻や念も研究所に集まっていた。幻は、陸にとってジャロールと同じように宿敵なのだが、ナタリーを蘇らせるために、手を出せずにいた。
 ジャロールはこの研究所で人造デュエリストを生み出したと言っていた。そして、怪人を生み出すために必要なコアもここで生み出したと話す。
「人を蘇らせるのは、それ以上に難しい事なのだ。この研究所の所員だけでは、その壁を超えられなかった。だが、心配はいらない。魔道書同盟の力があれば、その壁を超え、人類は命の限界を超越する!それを目撃した時、僕は不老不死に近づき、ナタリーは蘇るだろう!」
 ジャロールは興奮した様子で語っていた。ジャロールにも、人を蘇らせる研究に参加する事のメリットがあった。彼はまだ不老不死にこだわっている。
「あなたの大切な子が蘇るのよっ!もっと嬉しそうに仕事ができないのっ!」
 ここ数日の出来事を辿っていた陸の思考は、全の言葉で途切れる。確かに、全の言うようにナタリーが蘇るのは陸にとっても嬉しい事だ。しかし、ジャロールや魔道書同盟のメンバーに協力する事で、トライアンフを裏切っているような罪悪感が心にのしかかっている。
「喜ぶのはナタリーが蘇った時のために取っておくよ。嬉しそうな顔でもそうでなくても、きちんと仕事をしていれば問題ないだろう?用心棒として、やるべき事はやるよ。誰も研究所に近づけさせないさ」
 陸はそう言うと、空になった紙コップをゴミ箱に放り込んで休憩所を出た。
 休憩所から外に出た陸は、支給されたジャンパーのポケットから手袋を出して手を通した。そして、研究所の建物を見張る緑色の軍服姿の人影を見た。軍服と同じように緑色のベレー帽をかぶった彼らの顔は、黒い絵の具で塗りつぶしたように全てが真っ黒だった。彼らは全が作り出した怪人、防衛男だ。
 トライアンフと全が戦っていた時は、怪人が量産される事はなかった。あの後、怪人の量産に成功したため、防衛男は数十体存在する。陸はその理由を知らないが、それもジャロールが全に渡した新型のコアがあったからできた事だった。
 建物の周辺の見回りを終えた陸は、研究所の敷地から出てその周辺のパトロールを行う。それを何度も繰り返すのが陸の仕事だ。
 陸が研究所の出入り口を出て少し歩いたところで、セーラー服の上にコートを羽織った知人の姿を見つける。湊だ。
陸が驚いた顔をしていると、湊も陸に気付いた。
「陸さん!一体、どうしたんですか?」
「それは僕のセリフだよ。湊君、何でここに……」
 陸の視線は、湊の顔と研究所を行き来した。そして、湊は陸が着ているジャンパーが研究所の物だと判り、その腕をつかむ。
「これ、ここの研究所のジャンパーですよね?陸さん、この研究所について何か調べているんですか?トライアンフの 仕事で潜入捜査をしているんですか?」
「いや、そうじゃないよ。僕はただ、知り合いに言われてここの警備をしているだけさ」
「警備って……トライアンフの仕事はどうしたんですか、陸さん!」
 陸はつかまれていた腕を振り払う。そして、静かな口調で話し始めた。
「僕は、この研究所でやっている死者を蘇らせる研究を守らなくちゃならないんだよ。それが終われば、やっと僕の罪が一つなくなる気がするんだ」
「死者を蘇らせる研究?」
 陸の言葉を聞いて、湊の顔が青ざめる。そして、脳裏に夢で見た光景が現れた。
 あれは、自分によく似た少女と研究所の所長が歩いていた光景だ。それと同時に、研究所の中にいた蓮華という少女を思い出す。彼女も湊や夢の中の少女とよく似た外見をしていた。
 夢の中にしか現れない少女と、その少女に酷似した外見の湊と蓮華。そして、陸の口から語られた死者を蘇らせる研究。それらの材料から、湊の頭に最悪の考えが浮かんでいた。
「湊君?どうしたの?しっかりしてよ!」
 陸が大声を出すのを聞いて、湊は正気に戻っていった。そして、陸の腕をつかんで彼の顔を見る。
「ここで死者を蘇らせる研究をしているんですか?それは本当なんですか!?」
「ああ、そうだよ。湊君、ここについて知っているみたいだったけど……もしかして、知らなかったの?」
「そんな……」
 湊は落胆したように顔を伏せる。そして、陸の横を走り抜け、研究所の中に入っていった。
「そうか。湊君が言っていた家の人の手伝いって、ここの研究所に関する事だったのか。世間は狭いって、こういう事を言うのかな」
 陸は誰に言うのでもなくそう呟くと、散歩でもするように研究所周辺を歩き始めた。

 研究所に入った湊は、廊下を歩いていた若月に駆け寄った。
「若月さん、ここは何の研究をしているんですか!教えて下さい」
「言ったはずだ。知らなくていい、と」
 若月は湊の問いに素っ気ない態度で答える。今までの湊だったらそれで引き下がったが、今日は違っていた。陸から聞いた情報があるからだ。
「死んでしまった人を蘇らせる研究じゃないんですか?」
 湊がそれを聞いた瞬間、若月の表情に動揺が走った。若月は驚いた顔で湊を見る。
「お前……どこでそれを知ったんだ」
「それは言えません。若月さん、何故、そんな研究をするのか教えて下さい。人を蘇らせるなんて間違っています!」
「お前に何が判る!」
 突然、若月は激昂する。怒りの表情で若月は、驚いた顔の湊を見た。
「人を蘇らせる事が間違っていると、何故、断言できる!?俺を説得できるほどの理由があるというのか?」
 若月はいつも冷静だった。だから、これだけ感情を爆発させた若月を見て、湊は何を言ったらいいのか判らなかった。
「俺達がこの研究をする理由を聞いていたな。表向きは、ビジネスとして利用するためだ。だが、本当の理由はそれだけじゃない。教えてやるからついてこい」
 若月はそう言うと、湊に背を向けて歩き出す。湊は急いで彼についていった。
 若月の歩調は早く、湊は彼についていく事だけに集中していた。どこを歩いているのか見る余裕もない。
「ここにいる奴らは一つだけ共通点がある」
 しばらく歩いてから、若月が口を開いた。湊は、それを聞き洩らさないように注意深く耳を立てる。
「それは研究者だって事じゃない。そんな事よりも、もっと大切な事だ。俺達は、全員、大切な人間を失っている。ある者は親友を、ある者は親を失った。俺も失った恋人を蘇らせるために研究を続けている」
 若月の口から自分の過去について語られるのは初めてだった。若月は、一緒に暮らしている湊にも、自分の事について話したがらない人間なのだ。そんな彼が、自分から研究に関わる理由を話している。
「好きな奴や大事な奴がいなくなる気持ち、判るか?お前はまだ子供だから判らないだろうな」
 決め付けるような口調で若月が言う。湊の反論を一切許さないような意思が感じられた。
「死者を蘇らせる研究以外にも、ここの研究所は俺好みの研究テーマがあった。だから、所長に協力したんだ」
「所長さんに?」
 湊は夢の中で見た所長の姿を思い出す。思考を整理するよりも先に若月が口を開いた。
「所長の娘は、死んだ。丁度、今の湊と同じくらいの歳だった。俺達の研究は、所長の娘をあの時と同じ姿で蘇らせる事で完成する。そこから、所長の時間は進むんだ」
 湊の想像は当たっていた。予知夢に出てくる少女は、死んだはずの所長の娘なのだ。何故、彼女が予知夢に出てくるのか、その理由は判っていない。だが、一つだけ確かな事がある。
少女は死者を蘇らせる研究を止めて欲しいと思っている。湊が行動する理由はそれだけで充分だった。
「若月さん、今からでも遅くありません。研究を中止して下さい。その研究は誰にも望まれていない研究です!所長さんの娘さんだって、そんな事して欲しいなんて思っていません!」
「ほぅ……」
 若月はいつの間にか立ち止まっていた。そして、左にあった金属製のドアを開ける。
「入れ。ここにお前の知りたい情報がある」
 若月に言われて湊は部屋に入る。真っ暗な部屋の中に灯りを灯すために、手探りで電灯のスイッチを探していると、背中を強く押されてその場に転んだ。湊が起き上がって入り口を見ると、ドアが閉まり始めていた。急いでドアに飛び付くが、ドアは完全に閉まり、鍵がかけられてしまった。
「若月さん!?どうして、閉めるんですか!開けて下さい!」
 ドアを叩いて若月に呼び掛けるが、若月はドアを開けようとしない。その代わり、こんな事を言い始めた。
「湊。お前、この研究や実験について知りたがっていたよな?それだけじゃなくて、蓮華とも会っているみたいじゃないか」
「知っていたんですか?」
 湊は気付かれないように会っていたつもりだった。だが、若月にはそれも判っていたのだ。湊はもっと慎重に行動するべきだったと後悔した。
「蓮華は素直だからな。隠し事ができないんだ」
 それから、一呼吸おいて若月は話し始める。
「じゃあ、教えてやるよ。ここの死者を蘇らせる研究がどんなもので、俺達が今までどんな実験を行ってきたのかを……」

 征市達が柳沢研究所に入ると、十人近い防衛男が現れて、デッキを突き付けた。彼らの中央には、青い服を着て、青い帽子をかぶった色違いの防衛男がいる。その防衛男だけは右手に鞭を持っていてそれで地面を叩く。
「やれ!」
 地面を叩く音と共に緑色の防衛男が動き、シールドを展開する。それを見て、征市達もデッキケースを取り出した。
「客をもてなすって態度じゃないな。そんな態度に出られると、こっちも本気で叩きつぶしたくなってくる」
 征市がそう言ってデッキを取り出し、シールドを並べようとした時、彼の前に青い防衛男が立ちふさがる。青い防衛男は左手で服のポケットからデッキを取り出すと目の前に五枚のシールドを並べた。
「お前がトライアンフのエース、相羽征市か。全様からお前には注意するように聞いている。我々、防衛男達の中でも最も強い私が貴様を蹴散らしてくれる!」
 青い防衛男はそう言うと、鞭で地面を叩いた。征市はそれを見て、山札から五枚のカードを引く。
「ご指名を受けちまったみたいだ。他の奴らは頼んだぜ」
「判りました。気をつけて下さい」
「他の奴らはアタシ達に任せちゃって下さいね!」
「お前が苦戦するとは思えないが、油断はするな」
 菜央、彩矢、一真の三人の声を聞いて征市と青い防衛男のデュエルが始まった。
「《エナジー・ライト》だ!」
 征市が手札に持っていたカードを使った瞬間、その場に水の塊が現れ、意思を持っているかのように跳びはねる。それと同時に彼の山札の上のカードが二枚、手元に飛んでいった。
「そっちが手札を増やすなら、こっちはマナだ!行くぞ!」
 防衛男はフェレットのようなクリーチャー《幻緑の双月(ドリーミング・ムーンナイフ)》を既に召喚し、その効果でマナを増やしていた。今、ターン最初のマナチャージを行う事で、彼のマナゾーンにあるカードは五枚になった。その内の三枚をタップしてマナを出すと、一体のクリーチャーを召喚する。
「《青銅の鎧(ブロンズ・アーム・トライブ)》召喚!」
 二本足で立つ緑色の獣《青銅の鎧》を召喚する事で防衛男のマナはさらに増える。残ったマナを使ってさらに一体のクリーチャーが場に出た。
「《クゥリャン》だ!効果でドロー!」
 手足がついた巨大な機械に乗ったサイバーロード《クゥリャン》は、機械のアームを動かして防衛男の山札の上のカードを一枚つかむと、それを主に向かって投げた。
「大した速攻だな」
 防衛男が並べたクリーチャーを見て、征市が呟く。この場を守っている防衛男のリーダー格なのだから、簡単に倒せない事は予想していた。しかし、これは征市の予想を超えている。この時点でマナのカードは六枚あり、三体のクリーチャーが並んでいる。流れが悪ければ、反撃をする前に倒されてしまうだろう。
「お前が何かをする前に倒す!《幻緑の双月》でシールドを攻撃!」
 《幻緑の双月》は勢いをつけて跳ぶと征市のシールドに体当たりをした。シールドにひびが入ったのを確認すると、急いで仲間のいる場所へ戻る。
 《幻緑の双月》が戻った時、防衛男のクリーチャー達は空を見上げた。少し、暗くなったような気がしたからだ。
 見ると、彼らの頭上には赤い金属製の機械《地獄スクラッパー》があった。《地獄スクラッパー》は三体のクリーチャーの上に着地すると、炎を噴き出しながら金属製のプレス機を使い、三体を潰す。三体は爆発し、カードだけがその場から飛んでいった。それを見て、征市が軽く息を吐く。
「運よくシールド・トリガーが来てくれて助かったぜ。まだ楽観はできないけどな」
「うぬぬ……。おのれ!」
 征市は防衛男を挑発するように、わざとゆっくりした速度でカードを引く。そして、引いたカードの裏を見せつけた。マナをタップすると、そのカードを場に投げる。
「《パクリオ》召喚!」
 カードが青い光に包まれ、クリーチャーの姿に変化する。黄色のソファに腰掛けた紫色のサイバーロード《パクリオ》は腕を組んだまま、防衛男の手札を見る。すると、《パクリオ》の横に浮いていた銀色の巨大な鍵が防衛男の手札に刺さる。それと同時に、防衛男の手に電流が流れて、防衛男はカードを離してしまった。
「《エナジー・ライト》か。いいカードだよな。だが、最後の最後まで使わせねぇよ!」
 《パクリオ》が手を上げると、鍵が刺さったカードはシールドへ変形し、防衛男のシールドゾーンへ新しいシールドとして加わった。
「馬鹿か、お前は!私のシールドを増やして何になる!?」
「ハンデだと思ったか?そうじゃないな。お前の手札はこれで全てなくなった。行動に制限がかかったぜ!」
 征市が言うように、防衛男はマナを増やす事に集中していた。そのため、手札補充がおろそかになっていたのだ。ターンの最初にカードを引く事はできるが、一枚のカードでは行動の選択肢が少ない。
「嘗めるな!私の戦い方に間違いはない!」
 防衛男は動揺を隠すように大声を出してカードを引く。そして、一体のクリーチャーを召喚した。
「やれ!《レベリオン・クワキリ》!」
 頭部に巨大なハサミがついた虫のようなクリーチャーが現れた。その姿を見て、征市の顔に緊張が走る。
「手札を増やすなら、好きにしろ。私の《レベリオン・クワキリ》はお前の手札の分だけパワーアップするのだ!選択肢の多さが仇となったな!」
「そうかもな」
 征市がカードを引くと、《レベリオン・クワキリ》の体が一回り大きくなり、鋭さを増したハサミが光る。
 《レベリオン・クワキリ》は相手の手札の数だけパワーが2000増えるクリーチャーだ。そして、パワーが6000を超えた時、W・ブレイカーとなる。シールドをブレイクする事で、征市の手札を増やす事もできる。放置すれば、それだけで征市の命を奪う危険性もあるクリーチャーだ。
しかし、それを見ても征市は落ち着いていた。まだデュエルが始まって間もない事もあるが、それ以上に念と戦った時に比べてプレッシャーが少ない事も大きい。
「今、俺が使っているのは奴に負けた後に練り直したデッキ。……悪いが、こんな奴に負ける気はしねぇっ!」
 征市はカードを引くと、両目に力を込めて防衛男を見た。その目に射すくめられて、防衛男は半歩、下がる。
「ありえん!防衛男のリーダーであるこの私が負ける事など、ありえんのだ!」
「今からたっぷり見せてやるよ。ありえないような現実。『ウソのようなホントウ』って奴をな!」

 若月はドア越しに自分達の研究の歴史について語り始めた。
 その研究が始まったのは、今から二十年近く前になる。柳沢所長にとって唯一の家族だった娘、小春が事故でこの世を去った半年後に全てが始まった。
 その時から生体工学の権威として名が知られていた柳沢所長の元に、死者を蘇らせる方法を伝えに来た男がいた。娘を失った寂しさから何もする気になれずにいた柳沢所長は、その男の言葉を聞いて研究を始める決意をする。裏のギルドから資金を集め、何かに使われていた研究所を改築して柳沢研究所を作り、自分と同じ悲しみを持った者を集め、研究を始めた。
 必要なのは肉体だった。クローン技術を応用し、死者とほぼ同一の肉体を作り出す。
 同じDNAを持っていたとしても、生み出されたクローンにはオリジナルと違う点が存在する。それらの違いをなくした完成度の高い肉体を作り出す事が柳沢研究所に与えられた仕事だった。
 肉体が完成したら、魂を肉体に入れる。それをするために、所長は魔道書同盟と手を組んだのだ。
「そんな……。それじゃ、この研究所では、命を生み出していたんですか?」
「そうなるな。だが、勘違いはしないでくれ。失敗作を殺すような事はしなかった。誰も人が死ぬところなんて見たくはないからな。完成度の低い失敗作は、それぞれ普通の人間としてどこかで生きているさ」
「そんな無責任な事、言わないで下さい!」
 湊は勢いよくドアを叩いた。勝手に人を生み出す研究のおぞましさに怒りを覚える。
「そこで生まれた人達はどうなるんですか!親もいないし、頼れる人だっているかどうか判らないんですよ!」
「そうだな。だけど、この世には親がいなくたって生きている奴もいるさ。俺達の目的は失敗作を育てる事じゃない。たった一つの完成品を生み出す事だ。それに――」
 一度、言葉を切ってから、若月が続ける。
「失敗作だって、こうやって役に立った。限りなく完成品に近いお前は、検査のデータを取るのに便利だったよ」
「え……?」
 湊の言葉が途切れる。そして、その頭脳に一つの考えが浮かぶ。
 自分には、親がいない。若月が親代わりで彼に育てられていた。そして、定期的に柳沢研究所での検査を受けるようにしている。
 自分は、所長の娘に似ている。そして、研究所の中にいた少女、蓮華も所長の娘に似ていた。以上の事から、湊は結論に達した。
「僕も……僕もこの研究所で作られた失敗作、なんですか?」
 話しながら自分の声が震えるのが判る。今まで、自分は普通の人間だと信じていた。何かの研究の失敗作だなんて、想像した事すらなかった。
『あなたは、お人形さんじゃないの?』
 人形のプライズ、マリアンヌが湊に言った言葉の意味が判った。湊は所長の娘をかたどって作られた人形だ。マリアンヌはそれを感じ取ったから湊にそう聞いたのだ。
 両目に涙をためた湊は、崩れるようにしてその場に座る。嗚咽を聞きながら、若月が話しかける。
「もうすぐ実験は終わる。それまでそこで大人しくしていろ」
 心が悲しみに支配されながら、それでも、湊は考えていた。自分が失敗作だとしたら、完成した所長の娘のクローンがあるはずだ。湊には、それが誰なのか容易に想像がつく。だが、聞かずにはいられなかった。
「僕が失敗作なんだとしたら、完成したクローンは一体、誰なんですか?その子に所長の娘さんの魂を入れたら、その子はどうなってしまうんですか?」
「完成品が誰なのか、判るだろ?お前もよく知っている蓮華だよ」
 予想通りだった。この研究所には、他に子供がいない。いるのは湊と蓮華だけだ。湊でないとしたら、蓮華以外にはありえない。
「所長の娘の魂を蓮華の肉体に入れたら……蓮華って人格は完全に消える。一つの体に二つの魂はいらないからな」
「それじゃ、殺すのと同じじゃないですか!」
 吠えるような声で湊が言う。湊はドア越しに若月が苦悶するような表情を見た気がした。
「そうだよ。ここで俺達は初めて人を殺すんだ。だけど、たとえ人を殺したとしても……たとえ世界を敵に回したとしても、蘇って欲しい人がいるんだ。俺達には……!」
 絞り出すような声で若月が呟くと、足音が遠ざかっていった。実験が終わるまで、出る事はできないだろう。
「実験を止めなくちゃ……。そのためには……!」
 湊は携帯電話を取り出すと、ストラップについている雪ダルマの人形を見て念じる。こうする事でデッキを取り出し、カードを通して魔力の弾丸を発射する。魔力の弾丸なら、鉄製のドアでも簡単に破壊できる。
 しかし、湊が念じてもストラップが変化する事はなかった。
「まさか、この部屋、魔法が使えないようになってるの?」
 用意周到だった。湊は若月に魔法が使える事を話した事はない。だが、様々な検査の結果を見てそれを知っていたのかもしれない。
 湊は携帯電話を見て、陸に連絡しようと試みる。湊がこの研究所にいるのを知っているのは陸だけだ。陸の力を借りれば、脱出して実験を止められるかもしれない。
 そう思って湊は携帯電話のボタンを押そうとするが、そこで思い出す。陸は死者を蘇らせる実験を外敵から守るためにここにいるのだ。湊が仲間でも、実験を邪魔する者を外に出すとは思えない。嘘をついて出すように言っても、陸は湊が閉じ込められた事を怪しんで出してくれないだろう。
「どうにかしなくちゃ……。蓮華が死んじゃう!」
 無力さを感じながら、湊は征市にメールを送る。自分が柳沢研究所にいる事。そして、そこに閉じ込められている事などをメールで伝えた。
「征市さん、お願いします。僕と、蓮華を助けて……」

「ぬおお!進化!《大勇者「ふたつ牙」(デュアル・ファング)》!!」
 防衛男の《幻緑の双月》が緑色の光を纏って、巨大な戦士へと変化する。何本もある腕で巨大な剣を支える《大勇者「ふたつ牙」》は三枚ある征市のシールドに突進すると剣を横に振って叩き割った。
衝撃で、シールドの欠片が飛び散る。それから一拍置いて破られたシールドの一枚が緑色に光った。征市が手を伸ばし、そのカードのシールド・トリガーを発動させる。
「シールド・トリガー!《ナチュラル・トラップ》だ!《「ふたつ牙」》をマナへ!」
 突如、《「ふたつ牙」》の下の地面から緑色のツタが飛び出し、その体躯を縛り付ける。《「ふたつ牙」》の体は緑色の光を出すと二枚のカードに変化し、防衛男のマナゾーンへ飛んでいった。
「首の皮一枚繋がって助かったって奴かな?」
 征市はそう言うと、カニのような足に巨大な目玉を持つブロッカー《ストーム・クロウラー》を召喚する。《ストーム・クロウラー》は足をマナゾーンまで伸ばすと、一枚のカードを引っかけて飛ばした。征市はそれを片手で受け取り、手札に加える。それは征市の切り札《ボルシャック・大和・ドラゴン》だ。征市が切り札を持っているのを見て、防衛男は苦しそうな声を出す。
 今、征市の場に攻撃できるクリーチャーはいない。シールドは一枚。そして、ブロッカーが一体いるだけだ。
 しかし、防衛男も似たようなものだった。シールドはなく、《ストーム・クロウラー》が防衛男を守っている。シールドがあるだけ、征市の方が有利だった。
「俺のターンはこれで終わりだ。さあ、攻撃して来いよ」
 征市の挑発を聞いて、防衛男はカードを引く。
「《エナジー・ライト》だ」
 《「ふたつ牙」》を召喚した事、それに加えて《「ふたつ牙」》自身をマナに送られた事で、防衛男のマナゾーンには十枚のカードがある。《エナジー・ライト》を使ってもまだ七枚のカードが未使用になっていた。
 《エナジー・ライト》の効果で引いた一枚目を見た時、防衛男は落胆したように溜息を吐いた。しかし、二枚目を見た時に彼の体は静かに震えた。表情こそないものの、その動作でいいカードを引いた事が判る。征市も過去の経験から危険な何かが迫っているのを感じた。
「マナは充分。これなら、誰にも止められない。行けっ!」
 防衛男はマナゾーンのタップされていないカード七枚を全てタップすると、自分の切り札にそれを注ぎ、場に投げる。それと同時に手札から青いカードを一枚、切り札に向かって投げた。二枚のカードが合わさる瞬間、青い光が全てを包み込む。光の眩しさに、征市も思わず、目を閉じた。
 征市が目を開けると、自分の最後のシールドに赤紫色の斧が突き刺さっているのが見えた。その巨大な斧を支えるのは、鍛え上げられた青い肉体を持つリキッド・ピープルだった。
「俺の場には《ストーム・クロウラー》がいた。なのに、こいつはそのブロックをすり抜けてきたのか?それに、場に出たばかりなのに何で召喚酔いをしていない!?一体、何なんだ、このクリーチャーは!」
 征市が叫ぶのと同時に、リキッド・ピープルは斧を引き抜き、シールドに背を向ける。すると、シールドは砕け、地震に耐えられなかった建物のように崩れていった。
「私の切り札《クリスタル・アックス》。どんな防御もこのクリーチャーには通用しない。何故なら、《クリスタル・アックス》はブロックされない手札進化のクリーチャーだからだ!」
 防衛男の切り札、《クリスタル・アックス》が縦に斧を振ると空間が裂ける。空間の裂け目の中に消えた《クリスタル・アックス》は防衛男の場に姿を現した。青い光が場を照らす時、今と同じやり方で《ストーム・クロウラー》の前から姿を消し、シールドをブレイクしたのだ。
 そして、召喚酔いしなかった理由も説明された。
 手札進化とは、現在、水文明のカードだけが可能とする特殊な進化の一種だ。手札にある水のクリーチャーを進化元として場に出るタイプの進化クリーチャー。それが手札進化だ。二枚のカードを使うため、手札が少ない状況では成功しない事が多い。
「水のクリーチャーを増やすために自然と水の二色でデッキを組んでいたってわけか。やってくれるぜ」
 征市の最後のシールドはシールド・トリガーではなかった。それを見た後、カードを引いて目を閉じると《ボルシャック・大和・ドラゴン》をマナに置く。
「とうとう諦めたか!全様はお前を恐れていたが、恐るるに足らんな!」
「そいつはどうかな?」
「何っ!?」
 征市は不敵に笑うと一枚のカードを場に投げる。緑と赤の光を発して人の姿を形成し始めたそれから、巨大な斧が飛び出す。その斧は防衛男の場まで飛んでいくと《ストーム・クロウラー》を真っ二つに切り裂いた。
「私の最後のブロッカーが!お前、一体、何をした!?」
「召喚しただけだ。この《無頼勇騎ウインドアックス》をな!」
 火文明のヒューマノイドの鎧に身を包む人型の獣《無頼勇騎ウインドアックス》は、場に登場するのと同時に、マナを一枚増やし、相手のブロッカーを破壊するクリーチャーだ。《ウインドアックス》が戻ってきた斧をつかむと、その体が緑色の光に包まれ、カードの姿に戻った。そのカードはマナゾーンへ飛んでいく。
「クリーチャーを戻した?何の真似だ!」
「黙って見てろって。今から、火文明最強の切り札を見せてやるからよ!」
 征市のマナゾーンから鉄砲玉が飛び出すように赤いカードが飛んでいく。それは炎に包まれながら、龍へと姿を変えていった。その龍《ボルシャック・大和・ドラゴン》が刀を振るうとその身を包んでいた炎が消える。
「《ボルシャック・大和・ドラゴン》だと……!?だが、そのカードはマナに置かれていたはずだ!」
「ああ、確かにマナに置いたぜ。《母なる紋章》で場に出すためにな!」
 征市が使った呪文《母なる紋章》は、場のクリーチャーを一体、マナに置き、それと同じ文明のクリーチャーをバトルゾーンに出すカードだ。《ウインドアックス》は火と自然、二つの文明を持つクリーチャーだ。故に、《母なる紋章》で《ボルシャック・大和・ドラゴン》を出す事ができるようになる。
「嘘だ!私の切り札が出ているのに、負けるなんて!」
「嘘じゃない!だから、言っただろ?『ウソのようなホントウ』って奴を見せてやるってな。《ボルシャック・大和・ドラゴン》でとどめだ!」
 《ボルシャック・大和・ドラゴン》の刀が炎に包まれる。《ボルシャック・大和・ドラゴン》は防衛男の前に立つと、両腕で力いっぱい剣を振り下ろした。巨大な刀に体を両断され、防衛男は爆発する。
 征市がそれを見てデッキをケースにしまうと、それと同じように他のメンバーもデッキをしまった。他の防衛男も倒れたのだ。
「相羽さん、もう今の私達を邪魔する敵はいないはずです。急いで建物の中に入りましょう」
 菜央の指示に頷き、征市達は研究所の建物を目指して走る。だが、その前に三つの人影が立ちふさがった。その中の一人を見たメンバーは自分達の目を疑う。
「そんな驚いた顔をしてどうした?」
「お腹……空いた?」
 三人の内、二人は人造デュエリストの峰岸春間(みねぎしはるま)と筒井智里(つついちさと)だ。そして、その二人の前にデッキを持った陸が立っている。
「陸……。何でお前がここにいるんだよ。そうだ!ジャロールはどうした!あいつは今、どこにいるんだ!?」
「今、ジャロールの事は関係ないですよ、セーイチさん。僕がやるべき事は一つだけだ……」
 陸はそう言って、デッキケースをメンバーに突き付ける。その眼光は、敵を見るような鋭さがあった。
「この研究所で行われる実験を守る。そのためなら、仲間と戦ったって構わない!」

 『File.36 衝突する意思』につづく
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