スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

デュエマの神様

『デュエマの神様』


 Tは小学生でデュエル・マスターズの初心者プレイヤーだ。友達から使っていないコモン・アンコモンのカードをもらってデッキを作ったTは、まだ一度も勝った事がない。自分でいくつかパックを買っているのだが、それでも勝てない。家に帰ってからどうすれば勝てるのか考えたのだが、持っているカードが弱いせいだ、という結論が出ただけだった。強いカードが欲しくても、今月の小遣いは残っていないのだからデッキを改良するためには来月の小遣いを待つしかない。
 どうしようもない現実に心の中で悪態をつきながら、Tはベッドにもぐりこみ、眠りに落ちた。

 気がつくと、Tは霧の中にいた。真っ白な霧の中にたった一人で立っている。自分以外の存在は何もなかった。Tが不安になって周囲を見回した時、遠くから白いマントを纏った一人の人物がやってきた。友達が好んで使う《死神術士デスマーチ》のような仮面をかぶったその人物は、Tの目の前まで来ると馴れ馴れしく「よっ!」と、右手を挙げて話しかけてきた。
「辛気臭い顔すんな。いいカードが逃げていくぞ」
「《デスマーチ》が俺に何の用だよ!」
 いつも《デスマーチ》に負けているTは、目の前にいる白いマントの男が話しかけてきた時、不安が消え、怒りの感情が表に出た。白いマントの男はTの反応を見て笑った後
「悪い。お前のいつも友達の《デスマーチ》に負けてるんだよな。俺の顔、よく《デスマーチ》に似てるって言われるんだ。次から気をつける」
と、返した。Tは、顔じゃなくて仮面じゃないかと思ったが、不機嫌そうな顔で黙った。
「そんなぶすっとした顔すんな。俺、デュエマの神様。最近、デュエマを始めたお前が勝てないみたいだから、お前を助けてやろうと思ってやってきたんだ。デュエマに関するお前の願いを三つだけ聞いてやるから話してみろ」
「本当に!?」
 ものすごいチャンスだった。目の前の男が本当に神様かどうかは判らないが、願いを叶えてくれるのならば、相手が神でも悪魔でもかまわない。《デスマーチ》を使って連勝している友達に勝てるのならば、悪魔に魂を売ってもかまわない。最近のTはそう考えてしまうくらい、追い詰められていた。どんな手を使っても、一度くらい勝ってみたい。
「それじゃ、相手の手札を見ながら対戦できるようになりたい!」
 デュエル・マスターズに限らず、カードゲームなら手札が重要なのはTでも判る。その手札を見ながら対戦すれば、相手がどんな風に戦うのか手に取るように判るはずだ。友達にだって勝てるかもしれない。
 神様は両腕を組んで数回頷くと、口を開いた。
「判った。それじゃ、あのカード使え。《光神龍スペル・デル・フィン》。あれなら、相手の手札見たまま対戦できるし、相手の呪文は使えなくなるし、一石二鳥だな。これで一つ聞いたぜ」
「えっ!アドバイスだけ?」
 確かに、神様が言うように《スペル・デル・フィン》を使えば相手の手札を見たまま対戦する事ができる。しかし、今月の小遣いがないTにとってベリーレアのカードを入手するのは不可能だ。手札を見る方法が判っても実行できなければ意味がない。
 不満に思いながら、Tは二つ目の願いを考えた。
「カードを買う時に、中に何が入っているのか判るようにして欲しい!」
 Tはパックを買ってもホイルカードが出た事はない。友達はホイルカードを使ったデッキを組んでいるのに、自分だけホイルカードがないなんて不公平だと感じる。自分が弱いのはホイルカードがないからだ、とTは信じている。
 パックを買う時に中身を透視して中に何が入っているのか判れば、最小限の投資で最大限の効果が得られる。そうすれば、たくさんのホイルカードを入手して強いデッキを組める。
 神様はまた数回頷いた後に口を開いた。
「判った。じゃ、この紙を見ろ。神の紙だ。ありがたいし、面白いだろう。笑ってもいいんだぞ」
 神様が懐から出した紙を、Tは苦笑いしながら受け取った。それにパックの中身を透視する方法が書いてあるのかと思ったが、それにはカードの名前が大量に書いてあった。
「最近、流通しているパックにどんなカードが入っているのか書いてある紙だ。どのパックを買えばどんなカードが手に入るか判るぞ!これで、目的にあったカードを買えるな!これで二つ聞いたぜ」
「ふざけんなよ!神様とか言って目茶苦茶な事ばかり言うなよ!」
 我慢の限界に達したTが吠えると、神様は「ひっ!」と言って大袈裟に驚いた。
「うわ~、人が親身になって聞いてやったのに、逆ギレかよ。最近の子供は怖いねぇ」
 神様の態度に呆れながら、Tは三つ目の願いを考えた。
 目の前にいるのは役立たずの神様だ。だから、透視能力という人智を超えた能力は使えないに違いない。しかし、そんな神様でも『デュエマの神様』である事に変わりはない。ならば、シンプルかつ『デュエマの神様』だからこそ叶えられる願いを言えばいい。
「強いカードが欲しい!」
 強いカードが欲しい、と言うのは全てのプレイヤーが望む願いだ。デュエル・マスターズの神様ならば、これくらいの願いはかなえられるに違いない。
 神様は腕を組んで何か考えるような仕草をした後、こう言った。
「六月発売の覚醒編(サイキック・ショック)を待て!」
「何だよ、それ!最後は宣伝かよ!」
 もう我慢できなかった。怒りに頭を支配されたTは神様に掴みかかる。神様は情けない声で「ひっ!暴力はやめて!」と、言った後Tの顔を見た。
「怒るなよ~。ちゃ、ちゃんと三つの願いを聞いたじゃないですか~」
 Tの目が怒っているのを見て、神様は裏声になりながらTに話す。だが、Tは納得できない。納得できるはずがない。
「ふざけんなよ!願いを聞くだけで一つも叶えてくれないじゃないか!」
「いや、だって最初から三つの願いを聞いてやる、って言ったじゃないか」
「……は?」
 Tはしばらく沈黙して考えた。確かに神様は「かなえてやる」ではなく、「聞いてやる」と言っていた。
「願いを言えば、自分のデッキに足りないものが見えてくる事もある。そうすれば強いデッキが作れ――ゲフッ!!」
 Tの拳が神様の腹を叩く。神様はその場に倒れ、体を二つに折って苦しがっていた。
「叶えてくれるみたいに言うんじゃねぇ!紛らわしいんだよ!この役立たず!」
 Tがそう叫んだ瞬間、神様の姿は消えた。そして、Tの意識も、まるで眠りに落ちるように消えていった。

 それからしばらくして、Tは自分のデッキを見直した。負けてばかりなのは変わらないが、相手が《デスマーチ》を使っている時は、必ず勝てるようになった。何故、勝てるのかは判らないが、神様を思い出して怒りがこみ上げ、その怒りが自分に力を与えてくれているのだと思っている。
「神様、二度と俺の前に顔を出すんじゃねーっ!」
 《デスマーチ》そっくりの神様への怒りを胸に秘め、今日もTのデュエマが始まった。
スポンサーサイト

コメント

非公開コメント

Twitter

FC2カウンター

FC2カウンター

現在の閲覧者数:

検索フォーム

QRコード

QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。