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決闘暴走議事録 デュエマのダイゴみ! 第二話 暴れん坊にはから~いおしおき!

決闘暴走議事録 デュエマのダイゴみ!

都内某所にある私立無双竜機学園高校。個性溢れる生徒達が大勢通っている進学校だ。
そんな生徒達をまとめ、生徒会の頂点に君臨するナイスな男が一人。
その名は極神寺(きょくしんじ)ダイゴ。人は彼を生徒王と呼ぶ。

第二話 暴れん坊にはから~いおしおき!

ピカピカの一年生、一ノ瀬(いちのせ)タダオが無双竜機学園高校に入学してから二週間が経った。学校にも生徒会の活動にも慣れてきた。生徒会ではまだ見習い扱いなので、早く一人前として認めてもらおうと考えていた。
最近、タダオは何か困っている人はいないかと放課後にパトロールをしている。誰かを助けて手柄を立てようとしているのだ。
まだ一人前として認められるほどの手柄は立てていない。だが、焦ってはいけない。地道にいい事をしていくのが大事だと思っている。
今日も生徒達にとってのいい事を少しでもやるためにパトロールをしていると、彼の耳が何かを捉えた。
それは校舎裏から聞こえた複数の男子生徒の声だ。荒々しい声と共に、何かを殴るような音が聞こえる。嫌な予感がする。
急いでタダオが校舎裏に向かった。悪い予感は的中していた。数人の男子生徒が一人の男子生徒を取り囲んで殴っているのだ。
「やめろ!何をしているんだ!」
タダオは何も考えずに拳を振り上げた生徒に突進して突き飛ばす。そして、殴られていた生徒を見て「早く逃げるんだ!」と命じた。殴られていた生徒はしばらく戸惑っていたようだが、しばらくして状況を理解したのか逃げていった。
「なんだぁ、お前は?」
リーダー格らしき男がタダオの前に立つ。茶色いソフトモヒカンの男で、ブレザーの襟についたバッジからタダオと同じ一年であると判った。身長は高くないが、威圧感があった。ダイゴに出会う前のタダオだったら、恐怖して何もできずにいただろう。
「聞いて驚け。僕は生徒会見習いの一ノ瀬タダオ。学園のみんなのためにいい事をしている。生徒会の名において君達の悪事を成敗する!」
だが、今のタダオは違った。リーダー格のソフトモヒカンに睨まれても周りを彼の仲間に囲まれても、タダオは動じなかった。両の目で自分の周りにいる男子生徒の数を数えると静かに息を吐いた。
「たかが、五人か。いいよ。一人ずつ相手になろう」
タダオは目の前にいるソフトモヒカンを見て笑う。その表情の変化を見て、形容しがたいプレッシャーを感じたのか、彼らは一歩後ろへ下がった。本当に一人ずつなら倒してしまいそうだったのだ。
「聖決闘暴走領域(デュエマ・フィールド)発動!」
タダオは天を睨み、右手を上空へ伸ばす。だが、何も起こらない。
不思議に思った彼はもう一度、「聖決闘暴走領域(デュエマ・フィールド)発動!」と叫んだ。周りの生徒は少しずつ距離をつめてくる。
それを見たタダオは
「今日はちょっと調子が悪いからまた今度ね」
と言って彼らに背を向けようとした。
「うるせえっ!」
それよりも一瞬早くソフトモヒカンの拳がタダオの腹に飲み込まれる。タダオは目を見開き、口から大量の息を吐き出した。その直後、鋭い痛みが腹部を襲う。
「おい、誰か来ないか見張っとけ。白けたから、こいつ殴って憂さ晴らしだ」
部下に命令した後、ソフトモヒカンはタダオの太ももを蹴飛ばす。脚の力を失ってタダオが倒れそうになると、前髪をつかんで止めた。
「い、痛い!」
「無様だな。さっきまで生徒会の名前出していい気になってた奴とは思えないぜ。ところで……、お前、学園のみんなのためにいい事をしているって言ったよなぁ?俺らのためにもいい事してくれるか?」
「そんなこと……、言ったっけ?」
腹に二発目の拳が叩きこまれる。ソフトモヒカンと仲間達の邪悪な笑顔がタダオの瞳に映った。
「いい事させてもらうぜぇ。ストレス解消だ、生徒会見習いさんよ!顔はやめてやるから感謝しな!」
「感謝するからどこも殴らないで!」
タダオの悲痛な叫びは受け入れられなかった。三発目の拳を受けたところで、タダオの意識は消えた。

生徒会室は今日もいつも通りだった。
「ダイゴー、カツカレーが食べたいお。三千五百円くらいのカツカレーがいいお」
会議用の椅子に腰かけた少女が奥にある立派なデスクのいる男性生徒を見て言った。
学園一とも言える小柄な少女の前には近くの弁当屋のものらしい空の弁当箱が三つ並んでいた。生徒会室にいる三人で食べたものではない。彼女一人で食べたものだ。
彼女の名は、ワン・チャン。中国系のアメリカ人で無双竜機学園の二年生だ。多くの人間は彼女をワンコと呼んでいる。頭に巨大なリボンをつけているが、リボンを含めても身長は百四十センチ程度しかない。
「塩カルビ弁当を三つ食べた直後に言うことか?学食のカレーで我慢しろ。三千五百円なら、好きなだけ食べられるぞ」
窓側にある高級そうなデスクを一人で使っているこの生徒は生徒会長の極神寺ダイゴだ。ウエーブがかった銀色の挑発など外見も個性的だが経歴も個性的な三年生だ。大企業、極神寺グループの総帥としていくつもの関連企業をまとめている。
ワンコは諦めたように溜息を吐く。その後、生徒会室の隅にいる少年を見た。
「じゃ、テツノスケ、おごってくれお」
「やなこった。俺は巨乳美女の頼みしか聞かない主義なんだ」
隅に敷かれた六畳の畳の上で筆を滑らせながら少年が答える。紺色の作務衣に身を包んだ和風の雰囲気を持つこの男は三年の闘魂堂(とうこんどう)テツノスケ。書家でもあり、書道のプロとして活躍している。茶道もたしなんでいるため、生徒会のメンバーにお茶を出すこともある。
「今日の議題は多発する校内連続暴力事件だというのに、タダオは何をしている!」
「きっと、カツカレー食べてるんだお」
「カレーから離れろ」
「巨乳美女をナンパしてるんだろ」
「それはお前だろ」
ワンコとテツノスケにツッコミを入れた後、ダイゴは柱時計を見る。授業は既に終わって一時間近く経っている。掃除当番や週番の仕事があったとしても、遅すぎる時間だ。
「確かに珍しいな。あいつ、放課後になったらすぐに生徒会室に来てたじゃねえか。今日こそ、生徒会見習いじゃなく、正式な生徒会役員だと認めてもらうんだって。俺達の中では珍しい普通の真面目キャラだと思ってたんだけどな」
テツノスケはそう言って筆を置き、書き終えた『巨乳』の文字を見ていた。
「すぐに生徒会室に来るなんて、暗い青春だと思うお。ダイゴやテツノスケみたいな先輩相手だったからノイローゼになってしまったんだお、きっと」
「いや、待てよ……」
ダイゴは真剣な表情で立ち上がった。その顔は何かに怯えているようにも見える。体は寒さに耐えるように小刻みに震えていた。
「どうしたんだよ?顔色悪いぜ?」
「テツノスケ、俺の最悪の想像が当たってしまったらどうしよう」
寄ってきたテツノスケの肩に手を置き、ダイゴは顔を伏せる。そして、絞り出すような声で言った。
「奴に……、タダオに彼女ができていたとしたら!」
「ば、馬鹿な!タダオに彼女が!」
ダイゴの言う『最悪の想像』を聞いてテツノスケに雷が走る。驚きのあまり、目と口が大きく開いていた。
「そうだ。朝は家まで起こしに来てくれて昼は一緒に手作りの弁当を食べて放課後は一緒に帰るようなそんなかわいい彼女だ!しかも、貧乳だ!」
「いや、そこは巨乳だろ。それは譲れん」
「こうしてはいられないぞ、テツノスケ!今日、俺達がやるべき事は判っているな?」
「ああ、判ったぜ。やるべき事は一つだ」
ダイゴとテツノスケは邪悪な笑みを浮かべると、出入り口の扉に向かう。あまりの凶悪さと邪悪さにどんな者でも道を開けてしまいそうだった。
「ワンコ、お前も来い。タダオのかっこ悪いところを彼女に見せつけて、別れさせるのだ。人の不幸は蜜の味だ!」
「付き合い切れないお。お前ら二人でやれお」
「手伝ってくれたらさっき言ってた三千五百円のカツカレーをおごってやろう」
「神様仏様ダイゴ様!ワンコになんなりとご命令下さいお!」
呆れていたワンコもダイゴの一声を聞いて彼らの後に続く。彼女も邪悪な笑みを浮かべていた。
「タダオ、悪く思うなお。お前は良い後輩だったが、カツカレーには勝てんのだお」
ダイゴが生徒会室の扉に触れた時、彼が力を入れる前にその扉が開いた。
「大変だぞ、みんな!」
生徒会室の扉を開けて、一人の男が入ってくる。
黒に近いこげ茶色のスーツを来た男だ。整った口髭が顔のアクセントになっている。
ダンディな雰囲気が漂うこの男は富宝(とみたか)ゴンゾウ。生徒会の顧問をしている教師だ。外見はナイスミドルとも言うべき渋い四十代の中年男性に見えるが、こう見えても二十代後半である。
「富宝先生、どいてくださいお。三千五百円くらいのカツカレーが逃げちゃうお」
「カレーの話をしている場合ではない。新しく生徒会のメンバーになった、えーっと……、ホニャララ君か。ホニャララ君が保健室に運ばれたぞ。生徒会から校内連続暴力事件の犠牲者が出てしまったのだ」
「何ですと!あと、ホニャララじゃなくて一ノ瀬タダオです。覚えてやってください」
タダオが来なかった理由を知り、ダイゴが驚いた顔でその情報を受け取る。彼らの顔からは完全に邪気が消えていた。
「タダオー!疑ってすまーん!よく考えたら地味なお前にかわいくて貧乳の彼女ができるなんておかしいと思ったんだー!」
そして、出入り口から勢いよく飛び出して走っていく。
「先生、タダオは無事なんですか?」
「一何とか君は無事だ。入院までする必要はない。保健室に行こう」
「無事ならよかったですお。あと、一何とかじゃなくて一ノ瀬タダオですお」
ダイゴの後を追うようにして、テツノスケ達三人も保健室に向かった。

無双竜機学園は多くの生徒が通う学校だけあって保健室も立派だ。診療所クラスの設備があり、数名の医療スタッフが待機している。
衝立で仕切られた奥のベッドにタダオはいた。意識ははっきりしているが、起き上がれずにいる。
「タダオ、何があったんだ?」
真面目な表情でダイゴが聞いた。そこには、純粋に生徒を心配する生徒会長の姿があった。
「僕は校舎裏で絡まれている人を助けたんです。そしたら、代わりに殴られてしまって……」
「そいつらの中にソフトモヒカンの奴がいなかったか?」
タダオは驚いた顔でダイゴを見た。その表情を見たダイゴはそれ以上聞かずに「やっぱりな」と呟いた。
「ダイゴ。お前はもう判ったのか?」
「ああ、場所は変わったが議題について話し合う事になったな。タダオが遭遇したのは校内連続暴力事件の容疑者、一年の毒島(ぶすじま)ショウタだ。一年の不良達を仕切っている男で、少しでも気に入らない事があると同級生を殴るらしい」
「お前、そんな奴に向かっていったのかお。もうそんな事しちゃダメだお」
ワンコは呆れた顔でタダオを見ていた。
「僕も会長の真似をしてデュエマでやっつけようとしたんです。でも、聖決闘暴走領域(デュエマ・フィールド)が発動できませんでした……」
「お前、デュエマのカード持ってるのかお?」
「……あ」
タダオが聖決闘暴走領域(デュエマ・フィールド)を発動できない理由は簡単だった。それを聞いてテツノスケが噴き出す。
「笑わなくてもいいじゃないですか」
「悪いな。だって、面白かったんだ。しょうがないだろ?」
「無鉄砲な奴だな。誰かに格好いいところでも見せたかったのか?」
ダイゴがタダオの頭に手を置いて聞く。優しい声だった。
「いえ、そんな事は考えていませんでした。ただ、生徒会見習いじゃなくて正式な生徒会役員になるために、何かいいことをしなくちゃいけないと考えていたんです」
「で、絡まれていた生徒を助けてお前がボコボコにされたという事か。どうしようもない奴だな」
「ですけど!」
「お前の勇気は充分理解したよ」
タダオの反論をダイゴの優しい声が消し去る。優しさの中に厳しさを込めた声で生徒会長はこう続けた。
「だけど、自分も大事にしろ。他の生徒が助かってお前が怪我をしたんじゃ意味がないんだ」
「すみません……」
「判ったら今日はもう休め」
「はい……」
白いカーテンを閉めて生徒会メンバーは出て行った。
保健室を出て周りに人がいなくなったところで、ダイゴは壁を殴った。
「くそっ!」
そして、吐き捨てるように呟く。その目には真っ赤な怒りの炎が燃えていた。
「落ちつけよ。確かにタダオは殴られたけれど、大した怪我じゃなかっただろ?通学しながら治せるレベルだって。そうでしょ、先生?」
「ああ、彼の怪我だけじゃない。毒島は相手に重傷を負わせるような事はしていない。それと、何を考えているか判らんがこの男に手を出すのはやめておけ」
ゴンゾウのアドバイスを聞いたダイゴは非難するような目つきで彼を見た。その目を見ても、ゴンゾウは動じない。
「毒島ショウタは国会議員の息子だ。親の力を使って問題をもみ消すのも容易い。毒島が加減をしているのも、どのくらいの問題なら簡単にもみ消せるか知っているからだ。今まで問題が明るみにならなかったのもそのせいだ」
「ふん、たかが国会議員でしょう?それに問題が明るみにならなかったのも今までの話だ。今は俺達が知っている」
「だが、気を抜くなよ。親の力を頼って何をしてくるか判らんからな」
「問題ありませんよ」
肩に軽く手を置くゴンゾウに対して、ダイゴは自信に溢れた笑みを浮かべた。
「お前一人でやろうとするな。かわいい後輩がやられたんだ。今回は俺も手伝うぜ」
「頼むぞ、テツノスケ!」
「でも、どうやってそのブサイク島をやっつけるんだお?証拠も残ってない。目撃証言だけだったら、いつもみたいに校庭に呼び出して処刑とかはできないと思うお」
「ブサイク島じゃなくて毒島な。そこは考えてある。問題ない。くっくっく!」
ダイゴの顔は笑っていたが目は笑っていない。
テツノスケとワンコは悟った。この顔は何か悪い事を考えている時のダイゴの顔だと。

その日、校内連続暴力事件を起こしている男、毒島ショウタは機嫌が悪かった。彼の機嫌が悪い理由は二つある。
一つは、三人の仲間と連絡が取れない事。昨日の放課後にタダオに暴行を加えた後で別れてから自分と副リーダーの原(はら)を除く三人にメールを送っても返事が返ってこなかった。登校した後も彼らを見かけない。原は三人が復讐されたのではないかと怯えていたので、そんなことはないと怒鳴りつけた。毒島も復讐を恐れているのだ。
もう一つは、生徒会に呼び出された事。放課後、毒島と原は校庭に来るように言われていた。恐らく、連続した暴力事件に関して注意を受けるのだと思っていた。何故、注意をするのが生徒会で、何故、校庭に呼び出すのか疑問に思ったがそんなことはどうでもよかった。
原をつれて校庭に向かう。すると、毒島と原はそこで信じられない光景を目撃した。
校庭の中央には、三人の生徒が正座をさせられていた。彼らは毒島と共に行動する仲間達だ。目隠しされ、さるぐつわを噛まされている。そして、太ももの上には分厚い百科事典が載せられていた。
「お前ら!」
近づく毒島の行き先を防ぐようにダイゴが立ちふさがる。生徒会長の口元に浮かぶ微笑を見て毒島は三人の仲間に手を出した者の正体を本能的に理解した。
「てめぇか!てめぇが俺のチームの奴らを殺ったのかぁ!」
頭に血が上った毒島は目の前にいる男の顔に向かって右の拳を突き出す。ダイゴはその手を難なくつかんだ。
「殺すなどと人聞きの悪いことを言うな。デュエマで叩きのめしただけだ!」
「一人一人は大した奴じゃなかったな」
「そんなことより、三千五百円のカツカレー食べたいお」
ダイゴの後ろからテツノスケとワンコが姿を見せた。さらに、ゴンゾウに連れられてタダオも近くの校舎から現れた。
「詳しく教えてやろう。昨日、暴行を受けた一ノ瀬タダオから証言を聞いた俺達は、まず、お前達の仲間の内、三人を処刑することにした。最初に貴様を倒すよりも、仲間を倒した方が精神的に追い詰められると思ったからだ。次にやられるのは自分。そんな気持ちになっていただろう?」
ダイゴの言う事は当たっていた。毒島も原も次に自分が襲われるのではないかと恐怖していた。
「だが、親父や親父の知り合いがもみ消してくれたはずだ!誰も俺達がやったことは公言しないと誓わせた!昨日、やった奴のもみ消しはまだ終わってないかもしれないが、俺達を少し見ただけの奴が俺達全員の顔を覚えているわけがねぇ!」
「確かにお前の言う通りだ。暴行事件の容疑者について、誰も口を開こうとしなかった。タダオもお前達全員の顔は覚えていなかった。だから、俺は暴行事件を行った者ではなく、毒島ショウタと親しい者を調べた。そしたら、みんな喜んで教えてくれたぞ。誰も暴行事件の犯人だとは言っていないからな!」
「くそっ!」
毒づく毒島を見て、ダイゴは説明を続ける。
「後は、親しい奴らを一人一人調べ上げて問いただせばよかった。お前、友達の数が少ないんだな。調べるのは簡単だったぞ」
「一日でそこまでやったのか!」
「優秀な秘書がいるからな。直接、手を下したのは俺達生徒会だ。さて……」
説明を終えたダイゴはデッキを取り出した。それを見て、毒島も自分のデッキを出す。そして、二人は十メートルほど離れた。
「皆の衆!生徒王にして無双竜機学園の生徒会長、極神寺ダイゴだ!今から生徒王の名において連続暴力事件の犯人を処刑する!処刑の方法はデュエマだ!」
ダイゴの声を聞いて、校舎の中にいた生徒達が集まってきた。彼らの周りにいる生徒達は全員が毒島の負けを期待している。
「なめるなよ……。俺は国会議員の息子だぞ!」
「ふん、そこで国会議員の父親の名を出す辺りが三流の証しだ。偉いのはお前ではない。父親だ。聖決闘暴走領域(デュエマ・フィールド)発動!」
ダイゴの姿が白い光に包まれる。すると、彼の頭に金色の王冠が現れ、背中に真っ赤なマントを羽織った姿に変わった。彼の前には純白のテーブルクロスが敷かれた長いテーブルが現れ、天井には豪華かシャンデリアが姿を見せ、生徒達を照らす。
「ぶっ潰してやる!聖決闘暴走領域(デュエマ・フィールド)発動!」
毒島の姿も変質していった。ソフトモヒカンだった髪型は鶏のトサカを連想させるような派手なモヒカンに変わり、制服のブレザーの代わりにトゲ付きの肩パットがついた黒い革ジャンになっていた。
「汚物を消毒しそうな聖決闘暴走領域(デュエマ・フィールド)だな」
「それって掃除屋さんってことですか?」
「タダオ、お前は勉強が足りないお」
テツノスケとワンコは、正座させられていた三人の生徒を連れて下がる。
「おい。あんたらが三人の殺ったのか。毒島君だけじゃなくて、俺とも戦え」
テツノスケの背中に声をかけたのは原だった。彼も手にデッキを持っていた。
「巨乳美女の誘いなら受けたいんだけどな。男の誘いなんて乗りたくないぜ」
「かわいい後輩の仇討ちだお。それに、後輩のためにがんばったっていう美談が伝わって彼女ができるかもしれないお」
ワンコの「彼女ができるかもしれない」という言葉が聞いた。やる気を出したテツノスケは
「さあ、早くデュエマを始めようじゃないか!」
と、爽やかな笑顔で原に話しかけた。
「ふざけやがって!勝つことを前提に話を進めてんじゃねぇぞ!聖決闘暴走領域(デュエマ・フィールド)発動!」
原の聖決闘暴走領域(デュエマ・フィールド)も毒島と同じものだった。唯一の違いは髪型で、原の髪型は紫色のパンチパーマになっていた。
「美しさの欠片もない聖決闘暴走領域(デュエマ・フィールド)だな。俺の聖決闘暴走領域(デュエマ・フィールド)を見やがれ!」
テツノスケが白い光に包まれる。光が消えた時、彼の姿が浮かび上がってきた。
制服の上に『巨乳の彼女募集中!』と達筆で書かれたタスキをかけただけだ。それ以外の変化はない。
だが、変化は彼の周りに起こっていた。テツノスケは大きなソファーに腰掛けていて、その周りに水着を着た巨乳の美女が数人集まっていた。
「やぁ~ん、テッちゃんったら後輩のためにがんばっちゃうんだ。素敵!」
「そう思うだろ?俺っていい奴?」
「もちろん!テツノスケ君っていい子よね~!」
「ぐへへ、褒めて褒めて」
周りの巨乳美女に褒められてテツノスケの顔はだらしなく緩み切っていた。ワンコとタダオは呆れた目でテツノスケを見ていた。周りにいる女子生徒も道端に落ちているゴミでも見るような目でテツノスケを見ていた。
「タダオはあんな風になっちゃダメだお。お姉さんと約束だお」
「判っていますよ、ええ。テツノスケ先輩は性欲で聖決闘暴走領域(デュエマ・フィールド)を発動させたんですね、判ります」
「これも若さだよ。素直に自分の思いを表現できるのは素晴らしい」
ゴンゾウだけは温かい目でテツノスケを見守っていた。男子生徒達は「うらやましいぞ、闘魂堂!」「ちくしょー!俺と代われ!」と羨ましがっていた。
「みんな、応援ありがとう!それじゃ、戦ってくるぜ!」
「テツノスケ、がんばって!」
美女達全員がそう言うと、煙に包まれた。煙が晴れたと思ってタダオが見ると、そこに立っていたのは巨乳美女の等身大パネルだった。
「テツノスケの聖決闘暴走領域(デュエマ・フィールド)はああやって一時的にパネルの巨乳美女を実体化できるんだお。カードに描かれているクリーチャーを実体化するのを応用しているんだお」
「何か、無駄な使い方みたいですね……」
「待たせたな、始めようぜ!」
「無駄な時間を使いやがって!俺の速攻で叩き潰してやるよ!」
テツノスケと原は聖決闘暴走領域(デュエマ・フィールド)の効果で現れたテーブルに自分のデッキを置く。自動的に山札の上の五枚が横に並び、シールドとして変化する。残った三十五枚のカードを上から五枚引いて対戦が始まった。
「お前も速攻デッキ使いか。昨日、倒した奴よりは楽しめそうだな」
既に、テツノスケの表情は巨乳美女に囲まれて弛緩したものから、紙に筆を滑らせている時のような真剣なものへと変わっていた。マナゾーンへカードを置くと、すぐにそれをタップする。
「行くぜ!《闇戦士ザビ・クロー》を召喚だ!」
テツノスケがバトルゾーンにカードを置くと、場に褐色のトカゲ人間のようなクリーチャーが現れた。黒く長い舌で舌舐めずりをしている。両腕につけた鍵爪で地面を引っ掻き、相手のシールドを見ていた。
「まだ1ターン目だぞ!何でクリーチャーが出せるんだよ!」
原は1ターン目から現れた《闇戦士ザビ・クロー》の存在に驚いていた。驚いたのは原だけではなく、タダオも1ターン目に現れたクリーチャーを見て口を開けていた。
「嘘……、まだ1ターン目ですよ?」
「《ザビ・クロー》は1コストのクリーチャーだお。だから、出せても不思議ではないお」
1コストのクリーチャーは存在する。それを使った速攻デッキも存在する。だからと言って出されて驚かないかというとそうではない。
原はドローした後、自分の手札を見たがマナをチャージしただけでターンを終えてしまった。
「何だ。速攻デッキなのに1ターン目に何もできねえのか。情けないぞ!俺は《地獄のケンカボーグ》を召喚!」
両手に燃える鉄球を持った人型クリーチャー《地獄のケンカボーグ》が現れる。その横を駆け抜けて《ザビ・クロー》が鍵爪でシールドを貫いた。
「まずは一枚だ。早くクリーチャー出さねえと勝てないぜ!」
「うるさい!2マナタップして《戦略のD・H(デュエルヒーロー)アツト)を召喚だ!》出した時の能力で二枚ドロー!そして、手札を二枚捨てる!」
原が最初に出したのは青いスーツ姿の紳士のようなクリーチャーだ。《戦略のD・Hアツト》は手札の入れ替えを可能とするクリーチャーだ。
「手札を捨てちゃうんですか?勿体ないことをしますね」
「そうでもないお。闇文明のカードには墓地のカードを利用するものもあるからその準備をしているのかもしれないお」
ワンコの言う通りだった。原の墓地に置かれたのは闇の墓地進化クリーチャーと闇のクリーチャーだ。それを見たテツノスケは相手の策略について考えていた。
「墓地進化は突然現れるからな。俺には墓地利用を止めるカードなんてねえから突き進むか!ほらよ!」
3マナをタップして、テツノスケは《地獄のケンカボーグ》のカードに一枚のカードを重ねた。すると《ケンカボーグ》の姿が大きく赤く変化していく。手に持っている武器は巨大なドリルになっていた。
「俺の切り札《鬼神!ヴァルボーグなう》だ!《ヴァルボーグなう》でW・ブレイク!さらに《ザビ・クロー》でブレイクだ!」
テツノスケのたたみかけるような攻撃に生徒達が沸いた。対戦が始まる前は白い目で見ていた女子生徒達からも歓声が上がった。これで原のシールドは残り一枚となった。
「確かに強いが、これならどうだ!3マナタップして《斬隠テンサイ・ジャニット》召喚!」
原のバトルゾーンに大きな手裏剣の形をした凧に乗った青い子供の姿のクリーチャーが現れる。同時に《ヴァルボーグなう》が青い光を発してその場から消え去った。
「テツノスケ先輩の切り札が!」
「あれが《テンサイ・ジャニット》の力だお。場に出した時の能力でコスト3以下のクリーチャーを手札に戻せるんだお」
ただのクリーチャーであれば次のターンに出すことができる。だが、テツノスケが戻されたのは進化クリーチャーだ。進化元のクリーチャーと《ヴァルボーグなう》の両方のコストが必要となる。次のターンにチャージをしたとしても、使えるのは4マナだ。それでは《ヴァルボーグなう》は出せない。
「まだ終わりじゃねぇ。《アツト》で《ザビ・クロー》を攻撃!」
《アツト》は持っていた棒付きキャンディで《ザビ・クロー》を殴り倒した。これでテツノスケのクリーチャーはゼロになった。
「ふん、《ヴァルボーグなう》を戻したくらいで調子に乗るなよ!これが出せなくても、俺には速攻に向いた他のクリーチャーがいるんだ!3マナタップして《ライラ・アイニー》を召喚!そして、攻撃!」
青い帽子をかぶった赤い鳥のクリーチャー《ライラ・アイニー》がテツノスケの場に姿を現す。そして、すぐに原のシールドへ突撃していった。
「あのクリーチャー、召喚されてからすぐに攻撃しましたよ!大丈夫なんですか?」
タダオの脳裏に浮かんだのは召喚酔いだ。テツノスケが出した《ライラ・アイニー》は召喚酔いせずに行動をしていた。
「大丈夫だお。《ライラ・アイニー》はスピードアタッカーって言って召喚酔いせずに攻撃できるクリーチャーなんだお」
「どうした?これでシールドはゼロになったぜ!」
「だからどうした!シールド・トリガーだ!」
《ライラ・アイニー》が破った最後のシールドからサーフボードに乗った人型のクリーチャーが飛び出してくる。シールド・トリガークリーチャー《アクア・サーファー》だ。
「《アクア・サーファー》の出した時の能力で《ライラ・アイニー》を手札に!」
「……っと、そう順調にはいかないか」
テツノスケは手札に戻って来た《ライラ・アイニー》を見て微笑んだが、笑っていられるような状況ではなかった。原のクリーチャーはこれで三体になった。彼のクリーチャー達が二回攻撃をしたらテツノスケの負けが確定する。
「そうだ!ここからが俺の逆転だ!《死神術士デスマーチ》を召喚!」
原の場に道化師のような姿のクリーチャーが現れる。そのクリーチャー《死神術士デスマーチ》がテツノスケのシールドを一枚指すと、音を立てて砕けて行った。
「あのクリーチャーもスピードアタッカーですか?」
「いや《デスマーチ》は墓地進化のクリーチャーだお。墓地のクリーチャーを進化元にできるから突然現れるんだお。《アツト》で墓地を増やしていたのはこのためだったんだお」
《デスマーチ》の攻撃を合図に他の三体のクリーチャーもテツノスケのシールドに特攻していった。これでテツノスケのシールドは残り一枚になってしまった。
「シールド・トリガーもないとは無様だな、生徒会!次だ!次の一撃で終わらせてやる!」
「お前、馬鹿だろ」
勝利を目前にして吠える原に対して、テツノスケは冷めた一言を浴びせる。そして、マナゾーンにカードを置いた。
「馬鹿とはどういう意味だ!」
「ブロッカーの《デスマーチ》も攻撃に使ったのが馬鹿だって言ってるんだ。お前、手札に《テンサイ・ジャニット》を持っているだろ?」
「何っ!」
原は驚いて自分の手札を見た。テツノスケが言うように、彼の手札には《テンサイ・ジャニット》が二枚あった。
「《テンサイ・ジャニット》のニンジャ・ストライクを使えば俺のターンでも召喚できる。だから、《ヴァルボーグなう》や《ライラ・アイニー》が攻撃しても対処できる。そう思っていたんじゃないのか?俺のマナに置かれているカードもコスト3以下の奴だけだからな」
そう言うと、テツノスケは自分のマナのカードを一枚一枚ゆっくり丁寧にタップしていった。
その緩慢な動作を見て、原は形容しがたい恐怖に襲われる。自分の判断の致命的な間違いに気付いてしまった。しかし、既に遅すぎた。
「5マナタップ!《GENJI・ボーイ》を召喚!」
両手に十字の形をした巨大な剣を持った少年のクリーチャー《GENJI・ボーイ》が現れる。その姿を見て原は頭を抱えて叫んだ。
「俺の予想は当たっていたみたいだぜ。コスト5の《GENJI・ボーイ》なら《テンサイ・ジャニット》で戻せねえ。もし《デスマーチ》を攻撃に使わずにブロックのために取っておいたとしても無駄だ。《GENJI・ボーイ》は攻撃時の能力で相手のブロッカーを破壊できる!」
テツノスケが《GENJI・ボーイ》のカードに触れる。それと同時に《GENJI・ボーイ》が脚に力を入れて構えた。
「俺の前で速攻使いを名乗るなんざ、十年早いぜ!《GENJI・ボーイ》でとどめだ!」
原に向かって走っていった《GENJI・ボーイ》は持っていた剣を原の頭に叩きつけた。カエルが潰れたような声を出して原は倒れる。
「安心しろ。とどめは手加減してやったぜ」
テツノスケはデッキを片づけると原に背を向けてそう言うのだった。

「おらよ!《戦略のD・Hアツト》だ!二枚ドローして二枚捨てる!」
「ならば俺は3マナタップして《停滞の影タイム・トリッパー》を召喚する」
ダイゴと毒島の対戦はまだ序盤だった。
毒島のデッキは原のデッキと同じような構造になっているらしく、《アツト》で墓地を増やしていた。
対してダイゴは《停滞の影タイム・トリッパー》で相手のマナの動きを止める作戦に出た。
「会長、まずいんじゃないですか?毒島っていう不良のデッキも速攻みたいですよ」
「心配するな。一何たら君。速攻を得意とするテツノスケとは逆にダイゴはコントロールの戦術を好んでいる。遅い戦い方は得意なはずだ」
「確かにそうかもしれませんね。……あと、一何たらじゃなくて一ノ瀬です」
ゴンゾウの言うことは理解できた。入学式のデュエマで猿渡に勝った時もダイゴはコントロールデッキを使っていた。
だが、3ターン目で最初の行動というのは遅すぎるような気がしてならない。
「くそっ!《タイム・トリッパー》のせいで使えるのは2マナだけか。なら、2マナタップして《特攻人形ジェニー》を召喚!そして、自爆!」
《タイム・トリッパー》の能力によりマナの動きを拘束された毒島は、そのターンに置いたマナを使えない。前のターンまでにチャージしたマナを使って黒い服を着た少女の人形を召喚した。《特攻人形ジェニー》はけたたましい笑い声と共に爆発を起こす。その破片の一つがダイゴの手札を一枚弾き飛ばした。
「手札破壊だけで終わりじゃねぇぞ!《アツト》でシールドブレイク!」
《アツト》が持っていた棒付きキャンディでシールドを殴っていく。そのシールドはシールド・トリガーではなかった。
「困ったな。軽い除去カードはあまり入れていない。だから、こうしよう。3マナタップして《エナジー・ライト》で二枚ドロー。そして、G(グラビティ)・ゼロ。《魔光騎聖ブラッディ・シャドウ》二体を召喚!」
小さな馬に乗った小型の騎士のようなクリーチャーが現れる。マナをタップせずに現れたブロッカーを見てタダオは驚いていた。それを見てゴンゾウとワンコが説明を始めた。
「G・ゼロは特殊な条件を満たした時、コストなしで召喚できる。《ブラッディ・シャドウ》の条件は呪文を唱えたターンだということだ」
「その分、手札が減りやすくなるから注意が必要だお」
二体のブロッカーを見て毒島が唸る。《クゥリャン》を召喚しただけでターンを終えた。
「攻撃はなしか。これ以上小型クリーチャーで攻められると困る。《ノーブル・エンフォーサー》ジェネレート!」
ダイゴの場に銛を持った青い騎士の鎧が現れた。それを見た時、毒島の顔が凍り着いた。
「《ノーブル・エンフォーサー》を出していれば、パワー2000以下のクリーチャーは攻撃とブロックができなくなる。これでお前の動きは止まったな」
ダイゴは見下したような目で毒島を見た。彼は奥歯を噛みしめると引ったくるような手つきでカードを引く。
「だったら、《ノーブル・エンフォーサー》があっても殴れる奴を出しゃあいい!《死神竜凰ドルゲドス》召喚!」
毒島の場に、背中からクリスタルを生やした小型の龍が現れる。《ドルゲドス》は《ノーブル・エンフォーサー》の制約を受けずにダイゴのシールドへ突進していった。
「墓地進化か。パワーもあるな」
「それだけじゃねぇ!出した時の能力で片方の《ブラッディ・シャドウ》をこのターンブロック不可能に!」
《ドルゲドス》のクリスタルが怪しく輝くと、一体の《ブラッディ・シャドウ》が動きを止める。《ドルゲドス》がその横を通り抜けようとしたが、もう一体の《ブラッディ・シャドウ》が立ち塞がる。《ドルゲドス》の突進を受けて《ブラッディ・シャドウ》は砕け散った。
「そんなにシールドが大事かよ!」
「今はな。それに《ブラッディ・シャドウ》を蘇らせる手段もある。《超次元リバイヴ・ホール》!」
ダイゴの唱えた呪文の効果で、墓地に置かれたばかりの《ブラッディ・シャドウ》が主の手元に戻って行く。そして、場に馬に乗った貴族のようなクリーチャーが現れ、《ドルゲドス》を踏み潰した。
「《時空の凶兵ブラック・ガンヴィート》だ。出した時にタップされていない相手クリーチャーを破壊できる。さらにG・ゼロで手札に戻した《ブラッディ・シャドウ》を召喚!ターンを終える」
一進一退の攻防だった。ダイゴは毒島の攻撃を受け切っている。だが、タダオには少しずつ押されているように見えた。
「イライラするぜ。切り札出すからさっさと消えちまえ!」
毒島は《クゥリャン》のカードに一枚のカードを重ねた。すると、《クゥリャン》の姿が紺色の鎧に身を包んだ巨大な人型のクリーチャーへと変わっていく。
「《魔水晶スタートダッシュ・リバイバー》だ!パワー7000のW・ブレイカー!さらに出した時の能力もある!」
《魔水晶スタートダッシュ・リバイバー》が口笛を吹くと、その横に破壊されたはずの《ドルゲドス》が現れた。クリスタルが輝き、《ブラッディ・シャドウ》一体の動きを止める。
「《スタートダッシュ・リバイバー》は出した時に自分の墓地からコスト3以下のクリーチャーを出せる進化クリーチャーだお。進化クリーチャーも出せるから《ドルゲドス》が出て来たんだお」
「そんな……!毒島は《アツト》で自由に墓地を増やせるんですよ!」
タダオが場に目を向けると毒島は得意そうに笑っていた。
「大した事ねぇな、会長さんよぉ。《スタートダッシュ・リバイバー》と《ドルゲドス》でシールドを攻撃だ!」
「《ブラッディ・シャドウ》!死守せよ!」
《スタートダッシュ・リバイバー》の攻撃は《ブラッディ・シャドウ》が止めたが、《ドルゲドス》は止まらない。これでダイゴのシールドは三枚になった。
「テメェの負けだ、極神寺グループの総帥!俺が勝ったら、俺達が校内で好き勝手しても見逃してもらうぜぇ!」
「いいだろう。勝てればの話だがな」
ダイゴは不敵に微笑むとマナのカードに手を触れた。
「5マナタップし、《光器パーフェクト・マドンナ》を召喚!」
翼の生えた巨大な聖女の像のようなブロッカーが現れる。《光器パーフェクト・マドンナ》の姿を見た時、毒島は舌打ちをした。それは周りの生徒にもはっきりと判るものだった。
「《パーフェクト・マドンナ》ってそんなにすごいブロッカーなんですか?ただのパワー2500のブロッカーにしか見えないんですけど」
「確かにパワーは低いな。《リバイバー》には勝てない」
「でも、《パーフェクト・マドンナ》はパワーマイナス以外の効果では場を離れないんだお。勝ちにくいけど負ける事もほとんどないお!」
「さらに《ブラック・ガンヴィート》で《ドルゲドス》を攻撃。相討ちで二体とも破壊だ。ターンを終える」
《パーフェクト・マドンナ》の効果は絶大だった。毒島の勢いはなくなり、手札とのにらめっこを続けている。彼は《アツト》を一体だけ召喚し、墓地を増やした。そして、《ドルゲドス》を召喚する。
「《パーフェクト・マドンナ》を止める!これでどうだ!」
《リバイバー》と《ドルゲドス》がダイゴのシールド目掛けて襲いかかって来た。ダイゴは《リバイバー》を《ブラッディ・シャドウ》で止め、《ドルゲドス》の攻撃を受ける。
「どうだ!《ドルゲドス》さえあればお前の攻撃も……、何っ!?」
驚く毒島やギャラリーの生徒達を青い光が照らした。
「シールド・トリガー《クリスタル・メモリー》だ。俺のデッキのカードよ、来い!」
ダイゴの山札のカードが全て彼の眼前に移動する。絶え間なく移動を繰り返すカードを見てダイゴは一枚を手に取った。残ったカードはシャッフルされ、束になって元の場所に戻っていく。
「もしものための一枚がシールド・トリガーで良かった。デッキに一枚だけ入れたこいつが手元に来てくれたからな。召喚!」
ダイゴがマナのカードを四枚タップしてクリーチャーを召喚する。現れたのは黄色い卵のような形のクリーチャーだった。そのクリーチャーが出た瞬間、毒島の《リバイバー》と《ドルゲドス》が力を失ったようにその場に倒れた。
「《予言者マリエル》だ。《ノーブル・エンフォーサー》がパワー2000以下のクリーチャーの攻撃とブロックを禁止にしたように、このクリーチャーはパワー3000以上のクリーチャーの攻撃を禁ずる。この二枚が場に並んだ今、攻撃できるのはパワー2500のクリーチャーだ。お前、そんな都合のいいパワーのクリーチャーを持っているか?」
「くそっ!」
毒島は怒りを隠そうともしない。顔を真っ赤にしてダイゴを睨みつける。視線だけで人を殺せそうなほどに憎しみがこもった目だ。
「怒るなよ。これもデュエマだ」
「引いてやる。引いてやるぜぇ。《マリエル》はただのクリーチャーだ。除去のカードを引いてやる!」
引いたカードを見て毒島は落胆する。だが、《クゥリャン》を召喚してもう一枚カードを引いた時、彼の顔から怒りが消えていった。
「いいカードを引いたみたいだな。それを捨てろ」
ダイゴが黒い服を着た少女の人形を召喚する。《解体人形ジェニー》だ。《ジェニー》が持っていた巨大なカッターを振ると、毒島の手札が全て宙に飛んでいった。
「狙え、《解体人形ジェニー》!捨てるのはあの一枚だ!」
けたたましい笑い声と共に、《ジェニー》は両腕でカッターを投げつける。カッターが突き刺さったカードは《アクア・サーファー》だった。《マリエル》を場から離すことのできる一枚を捨てたのだ。
「テメェ!何しやがる!」
「相手の邪魔をするのはデュエマの基本だ。さあ来い」
再び、真っ赤な顔になった毒島はカードを引いた。それは《マリエル》を倒せるカードではなかった。
「《ドルゲドス》を召喚。ターンエンドだ」
「《マリエル》をどかした時のために数を増やすか。ならば、俺は《リバイヴ・ホール》!《ブラッディ・シャドウ》を墓地から手札に戻す。そして超次元ゾーンからこいつを呼び出す。《ヴォルグ・サンダー》!」
ダイゴの場に赤い体色の巨大な獣が現れる。《ヴォルグ・サンダー》に毒島の山札が睨まれた時、山札の上から二枚のカードが弾き飛ばされた。
「《ヴォルグ・サンダー》が出た時、自分か相手の山札を選ぶ。そしてクリーチャーが二枚出るまでカードを墓地に送る!」
「なめんな!俺のデッキのカードは全部クリーチャーだ!それに墓地が増えれば墓地進化のクリーチャーも出しやすくなる!何も問題はねぇ!」
「どうかな?震えているぞ」
毒島の脚の震えを指摘し、ダイゴは《ブラッディ・シャドウ》を召喚した。毒島が《マリエル》を場から消した時の準備をしたように、ダイゴも《マリエル》が消えた時のための準備をしているのだ。
「俺は負けねぇ!《アツト》を《リバイバー》に進化!墓地から《ドルゲドス》を呼び出し、ターンエンド!」
「ならば、俺は《リバイヴ・ホール》で《ブラッディ・シャドウ》を戻し、二体目の《ヴォルグ・サンダー》を出す!もちろん、捨てるのは毒島の山札だ!」
再び、毒島の山札の上のカード二枚が墓地に置かれた。ダイゴはそれを注意深く見ていたが、その中に《アクア・サーファー》はなかった。
「どうせ、《リバイヴ・ホール》は残り一枚しかねぇ!もう《ヴォルグ・サンダー》は出せねぇんじゃねぇのか?なら問題はねぇんだよぉ!」
毒島が吠えるように叫び、カードを引く。そのカードを見た途端、口笛を吹いた。
「来たぜぇ、総帥さんよぉ!《アクア・サーファー》で《マリエル》を手札に!《リバイバー》!シールドをぶち破れ!」
ついに《マリエル》が姿を消し、毒島のクリーチャーが解放された。自由になった《リバイバー》は勢いよくシールドへ突撃していく。ダイゴはそれを見て何も言わない。ブロッカーに命令もしなかった。《リバイバー》の攻撃がダイゴのシールドを捉える。
「諦めたか!これで今日から学園の支配者は俺だぁ!」
「知性が足りないな」
「あぁ?」
ダイゴが静かに呟いた時、金色の光がその場を包んだ。多くの生徒が目を閉じる。
「な、何が起きやがった!」
「シールド・トリガー、《DNA・スパーク》だ!この効果で俺はお前のクリーチャーを全てタップする!《クリスタル・メモリー》で山札をチェックした時に、シールドにこれが入っているのを確認していたのだ!」
ダイゴは満足したような顔でカードを引いた。その顔を見て毒島が聞く。
「また《マリエル》を出して時間稼ぎをするつもりかよ!」
「またそんなことをする必要はない。見ている生徒達も飽きて来たはずだからな。俺の次のターンが始まるまでにお前を倒す。俺が直接手を下すことはない。お前は自分の手で自滅することになる」
「俺が自滅なんてするかよ!」
「試してみるか?」
ダイゴは不敵な笑みを浮かべてマナのカード八枚をタップした。そして、場に巨大な黒い魔神が現れる。腹には巨大な口があり、腰からは骨でできたような巨大な手が生えている。
「《復活の祈祷師ザビ・ミラ》。俺は出した時の効果で《タイム・トリッパー》、《解体人形ジェニー》、そして、《ヴォルグ・サンダー》二体を破壊する!」
《復活の祈祷師ザビ・ミラ》の腰から伸びた手が、ダイゴの指定したクリーチャーの体を貫いていく。その残骸が黒く輝き、そこから四体の《ヴォルグ・サンダー》が現れた。
「一度に《ヴォルグ・サンダー》四体だとぉ!?どうなってやがる!」
「《ザビ・ミラ》を出した時、自分のクリーチャーを好きな数破壊できる。そして、破壊したクリーチャーの数だけコスト6以下のサイキック・クリーチャーを超次元ゾーンから出す!この効果で《ヴォルグ・サンダー》を四体出したのだ。さて……、お前の山札は耐えられるかな?」
四体の《ヴォルグ・サンダー》の目が光る。八つの目に睨まれて毒島の山札の上のカード八枚が飛んでいった。満足したように笑ったダイゴは一言「ターンを終える」と言った。
「だけど、こっちだってクリーチャーは残ってるんだ!いいカードを引いて勝ってやるよぉ!」
毒島が山札の上のカードに触れた時、彼は動きを止めた。青ざめた顔で残った山札を見る。
「カードを引くのが怖いか、毒島?敢えて言おう。お前はもう死んでいる!これが必殺ダーク・ヘル・サイレント・キル!」
「必殺技の名前が致命的にダセェ」
毒島はカードを引いた。それと同時に彼は小さく呻いてカードを落としてその場に倒れた。この時点で山札にあるカードはゼロだ。
「山札のカードがなくなった時点で負けとなる。俺が時間稼ぎをしているように見えたか?俺はこの時のためにお前の山札の数を計算して戦っていた。お前は最初から最後まで俺の掌で踊っていたのだ」
ダイゴは聖決闘暴走領域(デュエマ・フィールド)を解除し、デッキを片づけた。彼に生徒会メンバーが近寄る。
「な、なめるな……」
毒島が震えながら立ち上がる。その双眸はダイゴを睨んでいた。
「お前だって……、親の七光かなんかだろぉ。自分の力だけで極神寺グループの総帥になれるわけがねぇ。それに生徒会長だって同じだ。生徒が見ているのはお前なんかじゃねぇ。極神寺の名前だ。お前が生徒会長にふさわしいんじゃねぇよ。極神寺の名が生徒会長にふさわしいんだ」
「負け犬の遠吠えだな」
ダイゴは静かな声で言い返す。
だが、タダオはそう言った時のダイゴの目を見て恐怖した。普段の彼からは想像できないほどの冷たい目をしていたのだ。
「俺だってそうだ!どいつもこいつも親父の名前ばかり見やがる!俺じゃない!親父の息子としか見てもらえねぇ!同じような人間だってのに、何でお前ばかり……、お前ばかり恵まれてやがるんだ!」
毒島の鋭い拳がダイゴを狙う。だが、それがダイゴに触れることはなかった。触れる直前のところで、ギャラリーから飛び出した一人の女生徒に受け止められたからだ。
「これ以上、総帥を愚弄するようなこと言うな!」
高い声で毒島に言い返した少女は毒島の拳をつかんだまま投げ飛ばす。空中で一回転した彼の体は地面に叩きつけられた。
「誰だ、こいつは」
「俺の秘書の蜜本(みつもと)ユウミだ。ユウミ、余計なことはしなくていい。ところで、例のものは持ってきているな?」
「はい、総帥!」
ユウミはダイゴに笑顔を向けると文庫本くらいのサイズの袋を受け取った。ダイゴが袋を開けると、鼻につんとくる匂いが広がる。
「な、なんだよ。それ……」
倒れた毒島は顔だけを動かして袋を見た。体に力が入らないのか、首以外は動いていない。
「粉からしだ。熱湯で溶いて使うのが正しい使い方なのだがな。ユウミ、スプーンをくれ」
「はい!」
ユウミからカレー用の大きなスプーンを受け取ったダイゴは袋の中に入っていた粉からしをスプーンに山盛りになるくらい取り出した。それを毒島の顔に近づける。
「何だよ、それぇ!やめろ、やめてくれ!」
「山札切れで負けた時は、普通にクリーチャーの攻撃を受けた時以上のダメージが体に残る。十分くらいは体の自由が利かないはずだ。抵抗できないのに暴力を受ける気分はどうだ?」
ダイゴはスプーンの粉からしを毒島の鼻の穴に突っ込んだ。彼は声にならない悲鳴を上げて呻く。次に山盛りの粉からしを口の中に入れた。
「お前、俺との違いを知りたがっていたな。一つ、お前は自分の力ではなく、父親の力を自分の力だと思い込んで暴れていた。俺は俺の力で戦った。二つ、お前は親の七光だが、俺は違う。極神寺グループ総帥の座も生徒会長の座も俺の手で勝ち取ったものだ。学校で極神寺グループ総帥の名を名乗ったことはない」
もはや反応をしない毒島を見てダイゴが言う。タダオの目には、その横顔がどこか寂しそうに見えた。
「さてと、残りの四人にも同じ罰を与えておくか。テツノスケ、残りの四人はどこだ?そいつらにも同じように粉からしをお見舞いしなければなるまい」
「あっちで倒れてるよ。これで校内暴力事件も解決だな」
「そうだな。……あ、そうだった。良い子のみんなは真似するなよ!」
ダイゴはギャラリーとして集まっていた生徒達を見て大声で言った。生徒達は皆、首を横に振って「誰がやるか!」と言っていた。

ダイゴ、テツノスケ、ワンコ、タダオ、ゴンゾウ、そしてユウミは生徒会室に集まっていた。タダオよりも背が少し低いくらいのユウミが彼の横を通る時、ユウミのショートカットの髪からは名前のように蜜の甘い香りがした。
「蜜本ユウミです!総帥のファーストキスはボクのものだからねっ!」
ユウミはタダオに自己紹介をすると、かわいらしい笑顔で微笑んだ。それを見てタダオの顔が赤くなる。
「ユウミは秘書兼ボディガードだ。あらゆる護身術を会得している。この学校の生徒ではないが、普段は生徒の振りをして学校に紛れ込んでいるんだ」
「なんだ。会長にもかわいい女の子の知り合いがいるんじゃないですか。二次元の彼女なんかいらないんじゃないですか?」
「かわいい女の子だって!うれしー!」
タダオの言葉を聞いて、ユウミは何度もその場で跳びはねた。その姿を見てテツノスケが溜息を吐いた。
「ダイゴ、説明してやれよ」
「そうだな。タダオ、ユウミは男だ。正確に言うと男の娘だ。本名はユウミじゃなくてユウジだ」
「男の子?」
「男の娘」
テツノスケが『男の娘』と書いた紙をタダオに見せた。相変わらず、達筆だった。
「ええ~っ!じゃ、じゃあ女の子の格好はしているけれど、性別上は男ってことですかぁ!?」
「問題ないよ。心は乙女だもんっ!」
「問題あるぞ。体は男だ」
それを見てタダオは力のない声で笑った。数秒前にときめいて顔を赤くしていた自分を殴りたいとさえ、思うのだった。
「な、なんというか……、個性的ですね。会長と一緒で」
「総帥とお似合いってこと!?わぁ~っ、ありがとう!タダオ君ってぱっとしないと思ってたけど、いい人なんだね!」
「はは、どうも」
ユウミから鞄を受け取ってダイゴは生徒会室を出ていく。ユウミもそれに続いた。これからの彼には生徒会長ではなく、極神寺グループ総帥としての仕事が待っている。
今のタダオは彼の力になることはできない。だが、いつか彼の持つ哀しみを理解して見習いではない生徒会役員になると自分に誓った。

次回につづく

次回予告

圧倒。それが彼女の名前。超越。それもまた彼女の名前。いくつもの美辞麗句が当てはまる彼女が生徒会に現れる。最強の女帝がダイゴ達を蹂躙する。
次回 第三話 女帝
勝利宣言の後には、何も残らない。
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