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決闘暴走議事録 デュエマのダイゴみ! 最終話 あれこれ全てがデュエマのダイゴみ!

決闘暴走議事録 デュエマのダイゴみ!

都内某所にある私立無双竜機学園高校。個性溢れる生徒達が大勢通っている進学校だ。
そんな生徒達をまとめ、平和と治安を維持する者達がいた。
書道の達人、闘魂堂(とうこんどう)テツノスケ。
言語のエキスパート、ワン・チャン。
学園最強の女帝、不死鳥座(ふしちょうざ)ミヤビ。
凡人、一ノ瀬(いちのせ)タダオ。
そして、生徒王にして生徒会長の極神寺(きょくしんじ)ダイゴ。
これは、彼ら、無双竜機学園生徒会が学園に巣食う悪を蹴散らす物語だ。
ダイゴ達はテツノスケが女子寮の風呂を覗いていたという噂を聞く。その直後、片倉チサという彼女ができたテツノスケが生徒会室にやってきた。ダイゴが女子寮の風呂を覗いたという噂を聞いた彼はダイゴにデュエマを挑んだ。ダイゴは戦いの中で自分の無実を証明した。同時に、ダイゴを生徒会長の座から引きずり下ろすために暗躍する組織の存在を暴露する。その組織の一員だったチサはテツノスケを利用していたのだ。
勝利したダイゴの前に、倒された毒島(ぶすじま)ショウコと裏生徒会の菅野ヤマヒトが現れる。菅野はある人物の力を借りて生徒会を叩き潰すための行動を始めていた。菅野が力を借りた人物、それはダイゴの伯父、極神寺ダイゾウだった。

最終話 あれこれ全てがデュエマのダイゴみ!

「あんたがこんなことをしたのか!ダイゾウ伯父さん!」
突如、現れた男をダイゴは『伯父』と呼んでいた。タダオも何かのニュースでこの男を見たことがあり、知っていた。
極神寺ダイゾウ。ダイゴが総帥になる前は、極神寺グループの幹部で、流通大手の極神寺マーケットの社長をしていた男だ。
「一体、何のためにこんなことを。菅野の手伝いをしたと言うのは本当なのか?」
「本当だ」
ダイゾウがダイゴを見る目は冷たい。そして、発せられる言葉も冷気を宿しているようだった。
「全てはお前に復讐するためだ。お前に切り捨てられた極神寺グループの幹部の恨み、忘れたとは言わせんぞ!」
ダイゾウの言葉に怒りがこもった。冷たさの中に熱いマグマのようなものを秘めたものを込めて彼は叫ぶ。
「お前が極神寺グループに来て、経営のトップになったせいで全て台無しだ!今まで上層部にいた幹部はみんな本社を追い出されてしまった!ダイゴ、誰がお前に会社の経営を教えてやったのか忘れたのか?中学生だったお前が、親父の気まぐれで極神寺グループに連れて来られた時、誰が仕事のやり方を教えてやったのか忘れたか?」
「忘れる訳がない。全部……、全部、ダイゾウ伯父さんが教えてくれたんだ」
ダイゴは絞り出すような口調で言った。それを聞いたダイゾウは鼻で笑う。
「その恩を仇で返すのか?お前という奴は!」
「誤解だ!聞いてくれ!」
怒りをぶつけるダイゾウに対して、ダイゴは必死に説得しようと呼びかけている。だが、ダイゾウはその声を聞こうとしない。
「あの人……、会長の伯父さんの極神寺ダイゾウさんってどんな人なんですか?」
「それはボクが説明するよ」
タダオが他の生徒会のメンバーに聞いた時、後ろでよく知った声が聞こえた。ショートカットの髪と無双竜機学園の女子用の制服が似合う美少年でダイゴの秘書、蜜本(みつもと)ユウミだ。
「ダイゾウさんは総帥の伯父さん。ここでいう伯父さんっていうのは総帥のお父さんのお兄さんって意味ね。総帥が入る前は極神寺グループ全体の中でも五本の指に入るくらい偉い人だったの。今は、地方にある極神寺グループ関連の子会社で社長をしていたはずなんだけどね」
「社長ってことはまだ偉い人なの?」
《ジェニー》が頭上に疑問符を浮かべながら聞く。ユウミは困った顔をしながらその問いに答えた。
「社長だから、その会社では一番偉いんだけどね。でも、極神寺グループの幹部だった時に比べたら偉くないってダイゾウさんは思っているんじゃないかな?ダイゾウさんを含めた昔の幹部を全員地方の子会社に移動させたのは総帥だから、ダイゾウさんは総帥のことをものすごく恨んでいるのかも」
それを聞いたタダオはダイゾウが言っていた『切り捨てられた』の意味を理解した。極神寺グループの中心地から片隅に追いやられたことがショックだったのだ。今まで上層部で戦ってきた者が、地方に飛ばされて平気なはずがない。
「でも、何で会長はそんなことをしたんです?恨まれるって判りそうなのに」
「それは当時の極神寺グループの体質に問題があったからなんだよ。創業者である総帥のおじいさんの息子が当時の極神寺グループの幹部だった。前総帥も同じで創業者の息子だったよ。当時の幹部は自分達の地位を守るために、極神寺の血を引く人間しか経営幹部になれないっていう決まりを作ったんだ」
「自分勝手な奴らだお。そんなことをしたら企業が滅ぶことくらいちょっと考えれば判りそうなものだお」
ワンコは呆れた声で言った。それを聞いてユウミも苦笑する。
「ホントだよね。でも、ある程度歳を取った人達ってそんなことが判らなくなって、何かが怖くなってきちゃうんだ。だから、こんな碌でもないことをしたんだよ。それを問題だと思って行動した人がいた。総帥のおじいさんで極神寺の創業者、極神寺ダイゴロウだよ。経営から退いていたダイゴロウおじいさんは、総帥を極神寺グループに招き入れたんだ」
「それって、さっきダイゴのおじさんが言ってた中学の時の話?」
《ジェニー》の問いにユウミは頷いた。
タダオも数年前の新聞やテレビのニュースで見たことがあった。引退したはずの極神寺グループの創業者が自分の孫をグループに入れたということで話題になっていた。それが、タダオが極神寺ダイゴという人間を初めて知った出来事だった。
「総帥はダイゴロウおじいさんとダイゾウさんに仕事を教えてもらいながらグループを立て直していった。そして、高校入学と共に総帥は極神寺グループのトップになったんだ」
タダオはその時のこともよく覚えている。十五歳の少年が世界を動かす極神寺グループの総帥となったのだ。様々なメディアが連日祭りのようにこの話を伝えていた。この時から、タダオはダイゴが通う高校に行こうと思い始めていた。
「総帥は極神寺の人間だけがトップを独占することをよく思わなかった。だから、総帥になってからしばらくして幹部になるために必要な条件を変えたんだ。極神寺の名で選ぶんじゃなく、実力で選ぶことにしたんだよ」
「それで、実力がない極神寺の人達がグループを追い出されたのね。確か、ダイゴ君からそういう話を聞いたことがあるわ」
ミヤビは当時の記憶を思い出しながら言う。この出来事も多くの人々を震撼させた。
「極神寺の名前だけで幹部になっていた人達は権力を失っていった。そのことで最初は総帥を恨んでいた人もいたけれど、総帥がさらに会社の利益を増やしていったから最後は誰も反対できなかった。だから、今になってこうやって復讐に来る人がいるとは思わなかったよ」
ユウミは悲しそうな目でダイゴとダイゾウを見ていた。ダイゾウは今にもダイゴにつかみかかりそうな危険な空気を漂わせている。
「学校にまで乗り込んできて、一体、何が目的なんだ?」
「判らないか?私はお前に復讐すると言ったんだ。デッキを出せ」
ダイゾウは懐から自分のデッキを取り出す。ダイゴはしばし迷いながら、デッキを取り出した。
「この学校では揉め事が起きた時にデュエマで決めているようだな。そのやり方に合わせよう。私が勝ったら、お前に極神寺グループの総帥をやめてもらう」
「何だって!」
それを聞いていたタダオが驚く。生徒達も驚き、ざわつき始めていた。
「俺がやめた後、誰が極神寺グループを動かすんです?」
「それは私に決まっている。どうだ、ダイゴ。この勝負を受けるか?」
ダイゴは何も言わずにダイゾウから五メートルほど距離を取った。そして、振り返ってダイゾウの目を見て言う。
「総帥の座とか極神寺の名にしがみつくなんて、小さい男だ。そんな男に俺が負けるはずがない!」
「言うようになったな。一人前になったつもりか!」
ダイゴとダイゾウの二人は睨み合っていた。今にもつかみかかりそうな険悪な雰囲気だ。
「フッフッフ、ちょっと待っていただけまスカ、ダイゾウさン。ワタシも極神寺さンと戦うために来たのでス」
今まで黙って話を聞いていた菅野もデッキを取り出した。すると、蛇のような目でダイゴを見る。
「先に戦うのは私だと言ったはずだ」
「その通りでス、ダイゾウさン。そういう約束でワタシ達は手を組みまシタ。だから、極神寺さン。その戦いが終わった後で、ワタシとも戦ってもらいまス。アナタを倒して恨みを晴らし、今度こそ生徒会長になってみせまスよ!」
「なんだ、お前。まだ生徒会長の座に固執していたのか」
ダイゴはダイゾウから目を逸らすと、呆れた顔で菅野を見た。その目には同情の色も見える。
「ええ、そうでスとも。ダイゾウさンが極神寺グループのトップの座を求めるように、ワタシはこの学園の生徒のトップの座が欲しいのでス。ワタシが勝ったら、生徒会長の座を頂きまスよ」
菅野は眼鏡のブリッジを軽く持ち上げると、ダイゴを見て微笑む。顔の筋肉を動かしただけの醜い微笑みだった。
「あの菅野っていう人は何者なんですか?生徒会長の座が欲しいなら選挙をすればいいのに」
「選挙をしてもダイゴ君に勝てないことが判っているのよ。前にあたし達がリコールされた話をしたわよね」
ミヤビの言葉を聞いてタダオはあることを思い出した。
ダイゴ、テツノスケ、ミヤビは二年前(ダイゴが一年生の時)から生徒会に在籍していた。ダイゴは当時から生徒会長をしていたが、一時期、リコールによってその任から外れていたことがあった。その時に別の人間が生徒会長になったが、すぐにリコールされ、ダイゴが再び、生徒会長になった話だ。
「ええ、一カ月だけ会長が生徒会長じゃなかった時期の話ですよね。あの菅野っていう人と関係があるんですか?」
「関係アリなのよ。あの菅野ヤマヒトがダイゴ君の後、一時的に生徒会長になっていた人物なの。ただ、頼りないし、やること成すこと全部がダメだったからすぐにリコールになったけどね。でも、まだ生徒会に固執していたなんて……」
「あら、菅野さんが生徒会に固執すること自体は不思議ではありませんわ」
よく知った少女の声が聞こえた。あまり思い出したくない存在だったが、タダオは仕方なく声の主を探す。彼女と彼はそこにいた。
「お久しぶり。ごきげんよう、生徒会の皆さん」
「随分と面白いことになっているね」
新聞部の双子、渡辺ヒジリと渡辺コブシだ。ダイゴ達がリコールされる原因となる学校新聞の記事を書いたのはこの二人だ。
「あ、あっちに行ってくださいよ」
タダオは震える声で新聞部の二人に声をかけた。以前、タダオは二人の策にはまって痴漢に仕立て上げられたことがあった。後に誤解は解けたが、あの時の恐怖は消えていない。
ヒジリはくすりと上品に微笑むと
「あまり怖がらなくてもいいではありませんか、タダオさん」
と、言った。
「タダオが怖がるのも無理はないお。また嘘新聞で生徒会を陥れるつもりかお」
「そんなことはしないさ。何故、菅野が生徒会長にここまで固執するのか。何故、今頃になって生徒会に仕掛けてきたのか教えてあげようと思ってね」
コブシはそう言うと、制服の内ポケットから紺色の手帳を取り出した。中身をめくりながら話を続ける。
「二年前、極神寺ダイゴがリコールされた後、生徒会長として立候補した菅野ヤマヒトはわずか一カ月で生徒会長を辞めさせられた。この時は、彼の取り巻きで一緒に生徒会役員になった生徒も辞めたのさ。自尊心が高かった菅野はこの現実に激怒した。何とかして生徒会長の座を取り戻そうと思い、裏で怪しげな集まりを開いていた。これが彼のいう『裏生徒会』さ。彼の取り巻きや学園に不満を持つ生徒の一部が参加していた」
「あんな奴についていく奴がいるのかお?生徒会長を一カ月で辞めさせられるような奴だお」
それを聞いたヒジリは持っていた扇子を広げ、口元を隠しながら言う。
「そう思うのも無理はありませんわね。常識で考えるならば、生徒会長を一カ月でリコールされるような人物について行くはずはありませんわ。ですが、菅野ヤマヒトが国会議員の息子だという事実を加えたらどうなるかしら?」
「それもただの国会議員ではなく、民生党幹事長の息子だとしたら」
「なるほど。そういうことですか」
渡辺兄弟の言葉を聞いてタダオは菅野の周りに人が集まる理由を理解した。
国会議員の息子というのは、この学園内では大きなステータスだ。かつてショウコが国会議員の息子という地位を乱用して暴力事件のもみ消しを図ったことがあった。菅野もそんなことができる人間であり、彼はその力を人を集めるのに使ったのだ。
「菅野は生徒会に復讐することにした。その計画の途中で会長の伯父さんの話を知ったのだろう。そして、生徒会を潰すための行動を始めた」
「今、生徒会長が変わるのは面白いことですわ。校内新聞のネタになります。けれど……」
ヒジリは扇子を畳み直すと静かに溜息を吐いた。
「菅野ヤマヒトなんて男が会長になるのは御免ですわ。自分の親の権力を自分の力と勘違いし、親の権力に擦り寄ってくる連中を自分の力で集めたと思っている愚者がトップに立つ。あなた方はこんなことに耐えられまして?」
「ヒジリだけじゃない。僕も気に入らないと思ったのさ。だから、会長に盗聴されているのを承知で情報を流したんだ」
「げ……。盗聴もお見通しだったんですか」
タダオが冷や汗を流しながら二人を見ると、ヒジリは「気にしていませんわ」と、涼しい顔で返した。
「じゃ、今まであの人は裏で何か作戦を立てていたんですよね?それが表に出て来たってことは、ものすごくヤバいんじゃ……」
タダオは心配した顔でダイゴを見ていた。ダイゴは、ダイゾウと菅野、二人の敵の視線を受けている。
「さあ、極神寺さン。どうするンデス?戦いまスか?それとも逃げまスか?逃げたら、生徒会長は戦いから逃げる臆病者として生徒達の前に恥ずかしい姿を晒すことになりまスよ。そうなったらリコールされてしまうかもしれませンね?」
菅野の言うことはあくまでも仮定の話だ。ダイゴが菅野との戦いを避けたとしても、生徒達がリコールするとは限らない。だが、逃げることはダイゴのプライドが許さなかった。
「戦って負けたら生徒会長の座を失う。戦わなくても生徒会長をリコールされる、か。随分と俺に不親切な状況だな」
ダイゴは不敵な眼差しで菅野を見る。そして、意を決したように口を開く。
「俺は――」
「ダイゴ、お前が戦う必要なんかねえよ」
その言葉を遮る者がいた。それはテツノスケだ。デッキを手に取り、菅野に近づいていく。
「テツノスケ……」
「三連戦はきついだろ?お前は伯父さんと全力で戦え。後のことは考えなくていいぜ。こいつは俺が叩き潰す」
テツノスケの言葉を聞いたダイゴは、視線をダイゾウに向けた。
二人は視線を合わせない。だが、戦場で信頼できる戦友に背中を預けるような奇妙な安心感があった。
「そういうことだ、菅野。俺が生徒会長代理としてお前を倒しに来た!よくも俺の純情を踏みにじってくれたな!」
「少しだけ夢を見させてあげたのだから、感謝してもらいたいでスねぇ、闘魂堂さン。ところで、本当に極神寺さンの代わりに戦うつもりでスか?あなたが負けたら極神寺さンは生徒会長でなくなりまスよ?」
テツノスケはそれを聞いた時、横目でダイゴを見た。ダイゴの目はダイゾウだけを見ている。そんな彼の口が動いた。
「気にするな、テツノスケ。お前なら、そんな奴には負けない。そう信じてお前に任せたんだ」
「嬉しいこと言ってくれるじゃねえか。お前も負けるんじゃねえぞ。今度は俺がお前を負かす番だからな」
ダイゴの言葉を聞いてテツノスケも決心する。デッキをシャッフルする手つきからも余裕がうかがえた。
「伯父さん、あなたがそんなに極神寺の名にこだわっていたとは知らなかった。欲しいのなら、くれてやる。ただし、俺を倒せたらの話だがな!聖決闘暴走領域(デュエマ・フィールド)発動!」
ダイゴの体が白く光っていく。光が止んだ時、彼は制服の上から赤いマントを羽織り、王冠をかぶった姿に変わっていた。デッキを置くために現れたテーブルも大理石でできた立派なものだった。
「菅野、お前だけは許さねえ。俺が勝ったら、お前は二度と生徒会長に立候補するんじゃねえ!聖決闘暴走領域(デュエマ・フィールド)発動!」
テツノスケの体が白い光に包まれる。光が消えた時、彼の周りには多くの巨乳美女達が集まっていた。
「テッちゃん、ガンバ!」
「おうよ!任せとけ!」
そう返すテツノスケの顔はいつものようにだらしなく緩んではいなかった。倒すべき敵を見据え、真剣な顔をしている。テツノスケの真剣な顔を見た後、巨乳美女達は煙を出して等身大パネルへと変化していった。
「ダイゴ、お前には極神寺の総帥は無理だ。私に寄こせ!」
「闘魂堂さン、あなたが勝つなど万に一つもないンでスよ!」
ダイゾウと菅野の体が黒い光に包まれていった。黒い光が消えた時、彼ら二人の前には黒い色のテーブルが現れる。
「ひっ!」
「な、何だ、あれ!」
その光景を見ていた生徒達が驚いた声を出す。目の前で変化を見ていたダイゴとテツノスケも二人の変貌に息を飲んだ。
ダイゾウと菅野の目は赤い光を放っていたのだ。まるでこの世の者ではない悪霊か悪魔の瞳のようにその目は妖しく光る。
「あれは暗黒決闘暴走領域(ダーク・デュエマ・フィールド)だわ!」
成り行きを見守っていたミヤビが言う。その声には緊迫したものが混じっていた。
「普通の聖決闘暴走領域(デュエマ・フィールド)とは違うんですか?」
「暗黒決闘暴走領域(ダーク・デュエマ・フィールド)は聖決闘暴走領域(デュエマ・フィールド)とは別のものよ。このフィールドもカードの効果を実体化できるけれど、生み出すのに必要なものが違うの。普通のフィールドを生み出すのに必要なのがそれぞれの想いなんだけれど、暗黒決闘暴走領域(ダーク・デュエマ・フィールド)は違う。恨みや憎しみといった負の感情から生まれたものなのよ!」
今までも正しいとは言えない敵は大勢見てきた。だが、暗黒決闘暴走領域(ダーク・デュエマ・フィールド)を発動させた者はいなかった。それだけダイゾウと菅野が抱くマイナスのエネルギーが強いということなのだ。
「始めるぞ、ダイゴ。親父に連れて来られる前のように、全てを失え!」
ダイゾウの前に五枚のシールドが並ぶ。ダイゴも同じようにシールドを設置した。
「ククク、闘魂堂さン、あなたも気に入らないンでスよ。ワタシが入りたくても入れなかった生徒会にいるあなたが憎イ!あなただけではなイ!生徒会のメンバー全員が憎いンでスよ!」
菅野は金切り声で叫ぶとシールドを並べた。軽く息を吐いてテツノスケもシールドを置く。
極神寺グループと無双竜機学園生徒会の命運を賭けたデュエマがスタートした。
「まずは《フェアリー・ライフ》だ!マナを増やす!」
ダイゴとダイゾウのデュエマで先に動いたのはダイゾウだった。先攻を取った彼は2ターン目に《フェアリー・ライフ》を使った。
「《フェアリー・ライフ》でマナを増やす、か。いつもの伯父さんの戦い方だ」
ダイゴはダイゾウの動きをじっくり観察しながらカードを引く。しばらくカードを眺めた後、マナにカードを置いた後、首を振った。
「俺はこのターンでできることはない。ターンエンドだ」
「いつものカウンター狙いの戦い方か。お前が動き始める前に仕留めてやるぞ」
ダイゾウはカードをマナに置き、一枚のカードを場にかざした。
「《ライフプラン・チャージャー》だ!山札の上四枚をめくり、クリーチャーを手札に。さらにこの呪文はチャージャーだから使用後、マナに行く!」
ダイゾウの手を離れた使用後のカードはマナゾーンに飛んでいった。そして、ダイゾウは四枚を見て選んだクリーチャーのカードをダイゴに見せる。タダオ達もそれを見ていた。
「黒いクリーチャーのカード。あれ、エンジェル・コマンドですか?」
タダオがダイゴの側でいつも見ていた種族だ。見間違えることはない。
だが、彼の記憶には光のエンジェル・コマンドしかなかった。闇のエンジェル・コマンドの存在自体知らない。
「闇文明にもエンジェル・コマンドはいるんだお」
「ダイゴ君が光で伯父さんが闇のエンジェル・コマンドなのね。それぞれの対比を見ているようだわ」
ミヤビが言うことも尤もだった。
極神寺グループのトップで光を浴びているダイゴと、子会社に飛ばされて自分の心の中に生まれる闇を育て続けているダイゾウの違い。それがデッキにも現れている。
「マナの差が大きい。サイズの大きいクリーチャーを出される前にこっちも動く!《ハッチャキ》を召喚だ!」
頭部にクリスタルがついた人型のクリーチャー《ハッチャキ》が場に出る。ダイゴはいつもこのクリーチャーの攻撃で様々なブロッカーを出してきた。
「さあ、どうするんです?俺のデッキは光と水で組んだデッキ。《ハッチャキ》で出すためのクリーチャーは簡単に手札に呼べる」
「手札補充が得意なのはお前だけだとは思わないことだ。要塞化!」
充分なマナが溜まったダイゾウは一枚のカードをシールドに貼り付けた。すると、そのシールドからレンガの城が現れる。城塞の上にはパンダの頭部のような置物がついていた。
「《ハッスル・キャッスル》で要塞化した。これで私は自分のクリーチャーを出す度にドローできる」
隙がない戦い方だった。自然のカードによるサポートでマナだけでなく、手札も増やしている。
「だったら、こっちも手札を増やす。《エナジー・ライト》で二枚ドロー!さらに《ハッチャキ》で攻撃して、《ロードリエス》を場に!」
《ハッチャキ》がダイゾウのシールドに突撃し、その横に《知識の精霊ロードリエス》が現れる。《ハッチャキ》の拳は、《ハッスル・キャッスル》で要塞化されていないシールドを砕いた。
「やった!ダイゴが《ロードリエス》を出したわ!ダイゴのデッキはブロッカーがたくさん入ったデッキだから、どんどん引けるわよ!」
「でも、判断ミスをしているよ。《ハッチャキ》で《ハッスル・キャッスル》をつけたシールドを殴っておけばもうドローを封じられたのに」
ダイゴの先制攻撃を見て《ジェニー》は喜び跳びはね、タダオは《ハッスル・キャッスル》を狙わなかったことに疑問を感じていた。
「《ハッスル・キャッスル》で要塞化されたシールドは別のシールドに攻撃を移せるんだお。だから、あのシールドに攻撃をするのは最後になるお」
「ずっとあのドローの効果が続くんですか」
ワンコの解説を聞いて、タダオは納得する。同時に、《ハッスル・キャッスル》の恐ろしさに身震いした。
「先制攻撃か。読みを誤ったな、ダイゴ!」
シールドを破られたのにダイゾウは不敵な顔で笑った。同時に空が黒雲に包まれ、赤紫色の幾何学模様の魔法陣が現れた。
「しまった!シールド・トリガーか!」
「その通りだ。《ウェディング・ゲート》。この効果で闇のエンジェル・コマンドを二体場に出す!」
赤紫色の魔法陣からは灰色の巨大な手が飛び出した。その手に二体のクリーチャーが乗っている。二つの馬を組み合わせたような下半身を持ち、悪魔のような翼を広げ、両手に拳銃を持った堕天使《乾杯の堕天カリイサビラ》だ。
「二体もW・ブレイカーが!まるで、会長の《ヘブンズ・ゲート》みたいだ」
「やっぱり、似ているわね。ダイゴ君に聞いた通りだわ」
ミヤビの独り言のような一言を聞いて、タダオは彼女を見た。その視線の意味を悟ってミヤビは口を開く。
「あのダイゾウ伯父さんがダイゴ君に仕事を教えたって言っていたわよね?でも、教えたのは仕事だけじゃない。デュエマを教えたのもあの伯父さんだって言っていたわ。そして、伯父さんには勝ったことがないとも言っていた」
「ええっ!」
タダオ、ワンコ、《ジェニー》が驚いた顔でダイゴを見る。彼の顔には普段のような余裕が感じられない。張りつめた緊張感が顔から滲み出ていた。
「それなのに、極神寺の代表の座を賭けて戦っちゃったんですか!?勝てるかどうかも判らないのに!」
「総帥がダイゾウさんにデュエマを教わったのは何年も前だよ。今だったら判らない」
タダオを安心させるように優しい声でユウミが言った。それは自分自身に言い聞かせていたのかもしれない。
「《ハッチャキ》に《ロードリエス》か。いいカードだ。早い段階で潰しておくべきだな」
自分のターンが来たダイゾウは、一体のクリーチャーを召喚する。四つの筒を組み合わせたような上半身と派手なアクセサリーのような下半身を持つエンジェル・コマンド《結杯(さかずき)の堕天カチャマサングン》だ。
《カチャマサングン》が出た時、その背後にあるシールドが音を立てて割れた。同時にダイゴの《ロードリエス》の肉体がガラスのように割れていく。
「《カチャマサングン》が場に出た時、自分のシールド一枚を犠牲に相手のコマンド一体を破壊できる。これで、ブロッカーはなくなったな」
ダイゾウが冷たく微笑み、《カリイサビラ》の凶弾が《ハッチャキ》を貫いた。もう一体の《カリイサビラ》の銃口がダイゴのシールドを向く。
「《カリイサビラ》!W・ブレイクだ!」
両腕の銃が火を吹き、ダイゴのシールド二枚を蜂の巣にしていった。ダイゴは黙ってそれを見ている。
「《カチャマサングン》を含めてW・ブレイカーが三体か。ここでいいカードが来てくれないと……」
苦々しく呟いてダイゴは破られたシールドに手を伸ばす。すると、その中の一枚が金色の光を発した。黒雲に覆われていた空が青空へ変わる。
タダオ達が空を見上げた時、そこには金色の魔法陣が描かれていた。
「出た!会長の《ヘブンズ・ゲート》だ!」
それはダイゴがよく使うシールド・トリガー呪文《ヘブンズ・ゲート》だった。二体のブロッカーが場に舞い降りる。
「俺はこの効果で《ロードリエス》と《オッソ・レオーネ》を出す!さらに……!」
自分のターンになったダイゴは一枚のカードを場にかざした。すると、ダイゾウの《カリイサビラ》一体が姿を消した。
「《魂と記憶の盾》を使った。これでW・ブレイカーは残り二体。そして、この攻撃で残り一体になる。《オッソ・レオーネ》!」
獣のように咆哮した《オッソ・レオーネ》は《カリイサビラ》に飛びかかり、前足の鋭い爪で真っ二つに切り裂いた。これでまた勝負の行方が判らなくなってきた。
「どうだ!」
「少しは成長したようだな。だが、その程度のクリーチャーでは私には勝てんぞ」
ダイゾウがカードを引いた瞬間、目に見えるほどの黒いオーラが彼の体から溢れて来た。一時的に優位に立ったダイゴはそれを見て息を飲み、気を引き締めるのだった。

「《鬼人形ボーグ》を召喚!」
テツノスケと菅野のデュエマは菅野の先攻で始まった。先に行動を起こしたのはテツノスケで、2ターン目に《鬼人形ボーグ》を召喚した。
「ふム、速攻デッキでスか。想定していたタイプとは異なりまスがいいでショウ。極神寺さンを倒すために組んだこの最強デッキの力を見せてあげまスよ」
菅野は薄気味の悪い微笑みを浮かべるとマナのカードをタップしてクリーチャーを召喚する。それは金色の鳥のようなガーディアン《束縛の守護者ユッパール》だった。
「《ユッパール》は極神寺さンが出した大型ブロッカーの動きを封じるためのカードでス。速攻にも充分な効果を発揮するカードでスネ」
《ユッパール》のくちばしから出た光線が《鬼人形ボーグ》を捉える。《鬼人形ボーグ》はダメージを受けなかったが、力を失ってその場に倒れた。
「これで次のターン《鬼人形ボーグ》は攻撃できまセンよ」
「仕方ねえ。だったら、別のクリーチャーだ!召喚!」
テツノスケの場に炎を帯びた鉄球を持った人型のクリーチャーが現れる。《地獄のケンカボーグ》だ。
「では、極神寺さン対策のカード第二弾を紹介しまショウ。《ヘブンズ・ゲート》などで呼び出した大型ブロッカーは必要最小限の力で消しまス。《スパイラル・ゲート》!」
場に現れた濁流が《ケンカボーグ》を飲みこんでいく。さらに《ユッパール》が《鬼人形ボーグ》に向かって突っ込んだ。ぶつかった二体のクリーチャーは爆音と共に消え去る。
「どうしまシタ、闘魂堂さン。4ターン目だというのに一枚もシールドを割れていまセンね?」
菅野や嫌味ったらしく笑うと眼鏡のブリッジを軽く押し上げた。
その瞬間、菅野のシールドが一枚、音を立てて割れた。シールドがあった場所には鎧を着たトカゲのようなクリーチャーが立っている。
「どうしました、菅野さん。スピードアタッカーの《流星のエグゼドライブ》で攻撃しただけなのに驚き過ぎですよ」
テツノスケは菅野の口調を真似て茶化した。菅野の顔からは今まで浮かべていた薄気味悪い笑みが消えていた。代わりに憎悪や怒りで口の端が震え始めている。
「スピードアタッカーでスか。ならば、《ユッパール》で動きを止めてあげまショウ」
「そうはいかねえぜ。《エグゼドライブ》はターンの終わりに手札に戻る。《スパイラル・ゲート》みたいに手札に戻すカードも通用しねえ!このままシールドを全部叩き割ってやるから覚悟しな!」
テツノスケが《エグゼドライブ》を手札に戻したのを見て菅野はカードを引く。
「いいでショウ。一枚くらいは許してあげまス。でスが、これ以上はやらせまセン!」

ダイゴとダイゾウの戦いは熾烈を極めていた。互いにシールドは一枚。《カチャマシグ》二体と《デ・バウラ》が一体いる分だけダイゴが有利だった。
「このまま決める!《偽りの名(コードネーム) オレワレオ》召喚!」
ダイゴの場に白い翼のエンジェル・コマンドが現れる。切り札の《偽りの名 オレワレオ》だ。
「やった!会長の切り札だ!これなら、シールド・トリガーで一体やられても勝てますよ!」
切り札の登場でタダオは大きな声を出して喜んだ。生徒会メンバーと新聞の渡辺兄弟も顔に安堵の色を浮かべる。
「これで召喚酔いしている《オレワレオ》以外、俺のクリーチャーは全員攻撃できるようになった!行くぞ、《カチャマシグ》!必殺!ダイヤモンド・ストライク・レーザー!」
ダイゴの声に反応して《カチャマシグ》の中央のクリスタルが光線を放った。真っ直ぐ飛ぶその光線は《ハッスル・キャッスル》で要塞化された最後のシールドを貫いていく。
「あと一発!」
「だが、それは無理だ」
ダイゾウの低く響く声と共に、再び、空が黒雲に包まれていく。そして、赤紫色の魔法陣が現れた。
「シールド・トリガー、《ウェディング・ゲート》。この効果で私は闇のエンジェル・コマンドを一体出す」
一体。
それを聞いた時、ダイゴは自分の耳を疑った。一体だけでは残った《カチャマシグ》と《デ・バウラ》を止められるとは思えない。最後の悪あがきかと思ったダイゴは静かに息を吐いた。
「一体?たった一体のエンジェル・コマンドでどうするっていうんです?」
「一体で充分。本当に優れた者は一体で充分なのだ。出でよ、《偽りの星夜(コードナイト)スター・イン・ザ・ラブ》!」
《ウェディング・ゲート》から降りてきたエンジェル・コマンドを見てダイゴとタダオは息を飲んだ。それはまるで黒く染め上げられた《オレワレオ》のような外見をしていた。
「《スター・イン・ザ・ラブ》は出た時に自分のシールドを全て犠牲にすることで自身以外の全てのクリーチャーを破壊する!ダイゴよ、必殺とはこういうことを言うのだ!必殺、アポカリプス・イン・ザ・ダーク!」
《スター・イン・ザ・ラブ》が両腕を大きく広げた時、ダイゴの場にいる四体のクリーチャーが金色の光を発しながら消えていった。これでは、このターンにとどめを刺すことなど不可能だ。
「さらに、もう一度《ウェディング・ゲート》。《善良なる堕天キャンドル・サービス》二体を場に出す。手札はこれでなくなったが、まあいい。最後のシールドが《ヘブンズ・ゲート》であったとしても、これで止めてやる!」
《スター・イン・ザ・ラブ》の右手から一条の光線が放たれる。それはダイゴの最後のシールドを貫いていった。
「シールド・トリガーは……?くそっ!」
最後の最後でシールド・トリガーは出なかった。いかにダイゴといえども、三体のクリーチャーを相手にこの状況では手も足も出ない。
「これが限界かよ……!?」
一方、テツノスケも追い詰められていた。
テツノスケはシールド二枚だが、クリーチャーはゼロ。菅野のシールドをゼロのところまで攻めきったが、彼は《曙の守護者パラ・オーレシス》二体、《愛々の守護者チョップルン》一体、そして、《ユッパール》一体を並べている。
「ククク、この《チョップルン》こそ極神寺さン対策のカード第三弾でス。無限にブロックが可能な《チョップルン》を《パラ・オーレシス》で強化。大量の大型ブロッカーの攻撃をこれ一体で受け切るのでス!さらに、第四弾にしてワタシの切り札、召喚!」
菅野は《チョップルン》に一枚のカードを重ねて進化させていく。それは白い二対の翼を持ち、金色に輝く飛行物体のような進化ガーディアン《守護聖天タース・ケルケルヨ》だった。
「無限にブロックできる《チョップルン》を進化元にしていいのかよ?」
「これでいいのでス。《タース・ケルケルヨ》は攻撃時に進化元を一枚山札の上に置き、再度出す能力を持ちまス。これで闘魂堂さンの最後のシールドを攻撃しながら、進化元の《チョップルン》を場に戻しまスよ!」
金色の光と共に《タース・ケルケルヨ》の横に《チョップルン》が現れる。《タース・ケルケルヨ》の体当たりは紙でも切り裂くように容易くシールドを貫いていった。
「さて、最後でス。《ユッパール》で――」
「シールド・トリガー!《地獄門デス・ゲート》!」
テツノスケが出したカードによって門が現れ、そこから黒い手が伸びる。黒い手は《ユッパール》を握り潰した。直後、門からは《ケンカボーグ》が出てくる。
「ふム、いいでショウ。パワー4000のクリーチャーなど、《チョップルン》で何度でもブロックできまス」
「く……」
テツノスケは手札を見た。手札にはブロッカーを破壊する《パワフル・ビーム》、《GENJI・ボーイ》が一枚ずつある。だが、マナのカードは五枚だ。二枚同時に使うことはできない。
「これまでかよ!」
ドローした後、ダイゴも自分の手札を見ていた。そして、何度か山札の上を見ている。
「どうした、ダイゴ。時間稼ぎとは男らしくないな」
「闘魂堂さン、引きなサイ。そして、絶望し、敗北を受け入れるのでス」
ダイゾウと菅野は自分達の勝ちを確信していた。生徒会のメンバーも、生徒達もダイゴとテツノスケが完全に打ちのめされたのを見てざわつき始めた。
「あの生徒会長が負けるのか?」
「じゃ、極神寺グループのトップと、この学校の生徒会長が変わるのか?」
周囲のざわつきにダイゴもテツノスケも反応しない。ただ、自分の手札だけを見ている。
「諦めろ、ダイゴ。お前の実力は確かに素晴らしい。だが、実力で拮抗した時に相手を打ち負かすだけの運がお前にはない。その現実を受け止めろ」
ダイゾウの声が不意に優しくなる。それは勝利を確信したが故に生まれた余裕のせいかもしれない。
「高校生なのに、今までよくがんばった。総帥の重荷から解放してやる。あとは伯父さんに任せて残りの高校生活を楽しみなさい」
「それは……、御免こうむる」
ダイゴは、静かな声で反論した。
「何……?」
「確かに極神寺グループの総帥は俺にとって重荷だ。だが、それ以上に楽しみでもある。手放すのは誰かに言われたからじゃなく、俺の意思で手放したい。重荷からの解放じゃない!信頼できる誰かに渡したいんだ!」
「ダイゴ!」
ダイゴははっきりとダイゾウを見てその言葉を告げる。それを聞いたダイゾウの顔が怒りで赤く染まった。
「闘魂堂君!」
「極神寺!」
ギャラリーの生徒達の中から声が聞こえた。一人は『闘魂』と書かれた半紙を持った生徒、書道部部長の村主(すぐり)シンゴだ。
「闘魂堂君!しっかりするんだ!君が書いた文字みたいに力強く立ち上がってくれ!こんなことでへこたれるのは君らしくないぞ!」
「極神寺、お前もがんばれ!」
シンゴの隣に立つのは野球部部長の猿渡(さるわたり)だった。大きな声を張り上げてダイゴを応援している。
「俺は頭が悪いから、気の利いた言葉は言えない!だが、こんな俺でも判ることがある!生徒会長も極神寺グループの総帥もお前だけだ!お前がふさわしいんだ!」
シンゴと猿渡の応援に続いて、ギャラリーの生徒からも少しずつ声が聞こえてきた。ダイゴとテツノスケを激励する言葉だ。
「会長、テツノスケ先輩、勝ってください!」
「ダイゴ、がんばって!」
「テツノスケもやるんだお!」
「二人とも勝ったら秘蔵の焼酎飲ませてあげるわよ!」
「総帥、テツノスケ君、行っけー!」
生徒会のメンバーとユウミも応援を始める。それを聞いたダイゴは口元に笑みを浮かべる。
「テツノスケ、やれるか?俺は腹をくくった」
「これだけ応援されたら、後には退けねえ。切り札を引く。その可能性に賭けるぜ!」
テツノスケは山札の上のカードに触れ、それを引いた。
そのカードの内容を見た時、彼は時間が止まったように感じていた。本当は時間ではなく彼の動きが止まっていたのかもしれない。
「闘魂堂君……?」
不安そうに聞くシンゴの声でテツノスケは我に返り、《パワフル・ビーム》をマナに置いた。
「オオ!ブロッカーを破壊できる呪文を捨ててしまうとハ!闘魂堂さン、自棄になりまシタか」
「菅野、お前、生徒会長になりたいのか?それとも、ダイゴのようになりたいのか?」
テツノスケは突然、見当違いの言葉を吐いた。それを聞いた菅野はしばらく考えていたが
「そうでスね。極神寺さんのように誰からも支持される素晴らしい生徒会長になるのでスよ。二年前はうまくいきませんでしたが、今なら全ての生徒がワタシにひれ伏すでショウ」
と、答えた。
「なるほど。俺がこのカードを引けた理由が判ったぜ。デュエマの神はまだダイゴに生徒会長をさせたいらしいな」
テツノスケはマナゾーンに置かれたカードをタップしていく。その動きを見て菅野は背筋に冷水を流し込まれたような錯覚を感じていた。
「お前、ダイゴがいなかったら生徒会長にはなれただろうな。だが、それだけだ。こいつと同じところまで行きたかったら生徒王を目指すんだな。それが判らねえ時点でお前に勝ち目なんかねえんだよ!」
六枚をタップし終えたテツノスケは《ケンカボーグ》に今、引いたばかりのカードを重ねた。巨大な拳、赤と紫の装甲、力強い肉体を持つ進化ヒューマノイド《無限鉄拳オニナグリ》だ。
「こいつの拳で殴り切ってやるぜ!《オニナグリ》!奴を殴り倒せ!」
両脚に力を込めて《オニナグリ》が進む。その前に《チョップルン》が立ちはだかった。
「闘魂堂さン、あなたは馬鹿でス!大馬鹿でス!《パラ・オーレシス》が二体いる現在、《チョップルン》のパワーは8000になっていまス!《オニナグリ》のパワーでは勝てまセンよ!」
菅野が嘲笑った時、《オニナグリ》は拳を突き出した。《チョップルン》もそれを嘲笑うように小刻みに震える。《オニナグリ》の拳は《チョップルン》の装甲に触れたところで止まってしまった。
「ほら、言ったでショウ?クックック!」
「馬鹿はお前だぜ」
菅野の嘲笑に対して、テツノスケは静かに言い放つ。すると、《チョップルン》の体がひび割れ始めた。
「そンな……!パワーではこちらが勝っていたはずでス!」
「俺がダイゴを倒すために用意した切り札を舐めんじゃねえよ。《オニナグリ》のパワーは7000だ。だが、光のクリーチャーとバトルする時、《オニナグリ》のパワーは9000になる。《チョップルン》じゃ止められねえ!」
《チョップルン》を砕いた《オニナグリ》の前に二体の《パラ・オーレシス》が現れる。《オニナグリ》はその二体を瞬時に粉砕し、菅野に向かって跳躍した。
「くたばれ、菅野!《オニナグリ》でとどめだ!」
《オニナグリ》のアッパーカットが菅野の顎を捉えた。攻撃を受けた菅野の体は宙を舞った後、地面に叩きつけられる。
「菅野君!」
「伯父さん、あなたの相手は俺ですよ」
覚悟を決めたダイゴはマナのカードを全てタップする。その数、十枚。
「なんだ。さっきやったように《グレイテスト・グレート》でも出すのか?それ一体で何ができる?」
「相手がこう来ると決めつけるな。そう教えてくれたのは伯父さんだ。そして、俺はあなたが予想していない一手を出せる!」
ダイゴの場に純白の獅子の騎士のようなクリーチャーが現れた。その美しい光が《ウェディング・ゲート》によって現れた黒雲を消し去っていく。
「俺の切り札《「俺」の頂 ライオネル》だ!《ライオネル》を召喚した時、山札の上のカード一枚をシールドとして加える。さらに、相手にシールドを一枚選ばせて手札に加える。俺のシールドは追加した一枚しかないからこれを手札に加える」
ダイゴがシールドのカードに指を添えた時、シールドのビジョンが消えた。彼はカードの中身を見ることなく、空高く放り投げた。
「そして!《ライオネル》は手札に加えられるカードにシールド・トリガーを追加する!俺が本当に極神寺のトップに立つべき男なら、幸運が訪れるはずだ!」
光と共に一体のクリーチャーが舞い降りる。それは《ライオネル》と同じような白い体色のクリーチャーで大きな二つの盾を持ち、天使の翼のような装飾が施されたクリーチャーだ。そのクリーチャーが輝いた瞬間、ダイゾウの場にいた三体のクリーチャーの姿が消え、シールドに変化していた。
「《「祝」の頂 ウェディング》だ。召喚した時、相手のクリーチャーか手札から四枚までシールドに変える。シールド・トリガーでの召喚でもこの能力は使える!」
ダイゴの目がダイゾウを見た。数分前とは逆に自分が追い詰められたことで彼は狼狽し、髪をかきむしる。
「こんな……、こんなことが……!何故だ!極神寺グループを捨て、ただの凡人として生きてきた男の息子が何故……!」
「確かに父さんは極神寺グループの会社には入らなかった。だから、伯父さん達とは違うものの見方ができた。俺がおじいさんに連れられて極神寺グループに入ったのも、総帥になったのもそんな父さんを見たからかもしれない」
「何を言っている、ダイゴ!!まだだ!まだ私のターンは残っている!引ける!引けるとも!引いてみせる!ダイゴだって切り札を引いたのだ!私だって何か引ける!勝つためのカードを引ける!」
ダイゾウは引ったくるようにしてカードを引いた。それを見た時、彼は力が抜けたように呟く。
「《フェアリー・ライフ》。ここで、《フェアリー・ライフ》だと……?」
「それがあなたの運命だ、伯父さん。そして、俺は勝つ。勝って明日も極神寺の総帥としての仕事をする。俺のためにも、俺の仕事を待ってくれる誰かのためにも!」
《ウェディング》の攻撃がダイゾウのシールド三枚を焼き尽くしていった。そして、光の剣を持った《ライオネル》がダイゾウに向かって走っていく。
「喰らえ、必殺!ニュージェネレーション・スラッシュ・ゼロ!」
《ライオネル》の斬撃がダイゾウを捉えた。攻撃を受けたダイゾウは口から空気を吐き、その場に倒れた。ダイゴはフィールドを解除してダイゾウに近づく。テツノスケ、生徒会のメンバー、ユウミも同じように彼に近づいた。
「伯父さん……」
「見るな……」
震える声でダイゾウが言う。彼の右手は目を覆い隠していた。
「関連子会社の社長ごときが極神寺グループの総帥様に逆らったんだ。覚悟はしている。クビにしたければすればいい。お前がグループの経営幹部の首を切った時のようにな!」
「ダイゾウ社長、それは誤解です」
涙を流すダイゾウに声をかけたのはユウミだった。手元には一枚の白い紙を持っている。
「ユウミ、それを伯父さんに見せるのか?」
「だって、ダイゾウ社長が総帥のこと悪者扱いするんですもん!ここで本当のことを教えてあげましょうよ」
「本当のこと、だと?」
ユウミの言葉にダイゾウが反応した。それを見てユウミは話を続ける。
「数年前にダイゴ総帥が極神寺グループの総帥になった後、総帥は祖父、ダイゴロウさんからある命令を下されました。それは、極神寺グループの経営幹部をしている極神寺の人間を全てクビにするというものです」
「何!?」
ダイゾウは驚いた顔で起き上がる。目を大きく開けて、ユウミを見ていた。
「本当です。その命令について書いた文書もここにあります」
ユウミは持っていた白い紙をダイゾウに手渡した。彼にとって見慣れたダイゴロウの署名も書かれている。
「ダイゴロウさんの狙いは極神寺の名がなくても会社を作ったり仕事をしたりできるか見ることにありました。でも、総帥は反対しました。考えは理解できても、いきなりクビにするのはひどすぎると思ったからです。そこで総帥は関連子会社に移動することを提案しました。ダイゴロウさんはそれに反対しましたが、総帥に押し切られてOKしたんです」
「ダイゴは、私達を守ったというのか?」
ダイゾウは呆けたような表情でユウミに聞く。ユウミは何も言わず、首を縦に振った。
「だが、私はまだダイゴを許す気にはなれない。ダイゴが私達の力を奪ったのは事実だ」
「わがままな大人ね。ちょっと一発殴ってやろうかしら」
物騒なことを言いながら、ミヤビが手の指を鳴らして近づく。慌ててタダオがそれを止めた。
「ダメですって!問題になりますよ!」
「大丈夫よ!仮にも極神寺グループの幹部だった人ならこれくらい笑って許してくれるわ!」
「何ですか、その理屈は!」
「社長!」
タダオがミヤビを止めるのに苦労していると、生徒達の中からそんな声が聞こえた。ギャラリーの中に大人が紛れていたらしく、数人の成人男子が飛び出してくる。彼らはダイゾウに向かって走ってきた。
「お前達……」
ダイゾウはその顔を見て驚いている。突如、やって来た男達の一人がダイゾウの手をつかんだ。
「帰りましょう、社長。僕達はもっと社長に教えてもらいたいことがあるんです」
「極神寺グループのトップがなんですか!俺達は俺達でもっとでかい仕事をしましょう!極神寺グループなんかよりもでっかい会社にしましょう!」
一人、また一人、ダイゾウの手を取っていく。やって来た者達が全員、ダイゾウの手をつかんでいた。その目には尊敬の眼差しが現れていた。
「伯父さん、今の会社の社員達ですか?」
「そうだ。お前達、もしかしてここまで迎えに来てくれたのか?」
「当然ですよ!僕達の社長なんですから!さあ、行きましょう!」
若手らしい男性社員がダイゾウに微笑みかける。それを見て、ダイゾウも微笑み返した。自然な微笑みだった。彼は去る前にダイゴを見て言った。
「ダイゴ、今回はお前の勝ちだ。だが、次の戦いはもう始まっている。私は私の会社を強く大きくする。いつか、極神寺グループよりも大きな会社にしてみせる。その時を待っていろ」
「いいでしょう。だが、次の戦いも俺は負けるつもりはない!」
別れる時の二人の顔は笑顔だった。恨みも憎悪もこの場で消え去った。
「ちょっと!これはスクープですわ!」
そんな空気を壊すようにヒジリが叫ぶ。それを聞いてダイゴ達は彼女に近寄った。
「なんだ。くだらないことじゃないだろうな?」
「ダイゴさん、これを見てから言ってくださいな。ほら」
ヒジリが指したのは地面に倒れた菅野の姿だった。彼の七三分けの髪はヘルメットのように外れて足元に転がっていた。代わりに彼の頭を埋め尽くしていたのは、茂みを思わせるような黒々としたアフロヘアーだった。
「菅野、カツラだったのか!」
「そう言えば、チサが言ってたな。菅野はヅラ疑惑がある、本当はものすごい癖っ毛で、放っておくと髪型がアフロになるから七三分けのヅラでごまかしてるって。本当だったのか」
「これはすごいですわ!コブシ!カメラの用意を!」
「もう撮ってるよ!」
驚く生徒会メンバーの横でコブシは写真を撮り、ヒジリは手帳を取り出してメモを取っていた。それを見てタダオは今回も無事、決着がついたと感じたのだった。

それから数週間が経ち、人々の関心は菅野のアフロヘアーではなく別のものに向いていった。
生徒会室に入ったタダオは先に中にいたダイゴに挨拶する。その後でテツノスケがやって来て作務衣に着替えた。ワンコと《ジェニー》は《ジェニー》のファンクラブがプレゼントしたケーキを持ってやってきた。最後に部屋に入ったミヤビは焼酎の瓶を持っている。
タダオがミヤビの焼酎お湯割りを作り、テツノスケが淹れたお茶を全員が受け取ったところでダイゴは仕事の手を止めた。
「平和だな」
何事もない現在の状況をダイゴが言い現した。タダオが他のメンバーを見ると彼らもくつろいでいる。
「会長、くつろいでいていいんですか?」
「たまにはいいんだよ。いつも張り詰めていたら、きついだろ?くつろぐことも人生の醍醐味なんだよ」
そう言ってダイゴが湯呑茶碗に口をつけた時、生徒会室の扉が開いた。茶色のスーツを着たナイスミドルに見える二十代、生徒会顧問の富宝(とみたか)だ。
「みんな、大変だぞ!」
「富宝先生、そんなに慌ててどうしたんです?」
「落ち着いている場合か!校庭を見るんだ!」
慌てた様子の富宝はそれだけ言うと生徒会室を出た。ダイゴ達も湯呑茶碗とケーキを置いて彼に続く。
「な、何じゃ、こりゃー!」
驚いたタダオの口からそんな言葉が飛び出た。
校庭には黒い大きな穴が空いていた。そこから、無双竜機学園の制服を着た五人の男女が飛び出してくる。
「奴らは暗黒生徒会。邪悪な力を秘めた生徒で学園の支配を企んでいた連中だ。様々な超能力で生徒を洗脳したり、学校の敷地を改造したりしていた。先代の生徒会長によって封印されていたが、まさか封印が解けてしまうとは……」
富宝は苦々しい表情で呟いた。それを聞いた時、タダオはどう反応していいか判らなかった。
「え?なんですか?そんなバトルもののマンガみたいな変なことってあるんですか?」
無理に絞り出した言葉がそれだった。それを聞いて、ダイゴが静かに笑う。
「タダオ、驚くのも無理はない。この学園には先代生徒会長が封じた凶悪な化け物がいる」
「そんなの初めて聞きましたよ!」
「封印が解けるとは思わなかったし、忘れていたから仕方ないわね。ところで、どうするの?」
ミヤビは窓から暗黒生徒会の五人を見て言った。彼女は既にデッキを取り出してやることを決めているようだった。
「決まってるじゃない!悪い奴だったらやっつければいいのよ!」
「ワンコも《ジェニー》の意見に賛成だお。先代がやり残した仕事に決着つけてやるんだお!」
《ジェニー》とワンコは闘争心むき出しの答えを出す。テツノスケもデッキを取り出していた。
「俺はやるぜ。暗黒生徒会の中に結構いい感じのボインちゃんがいるのが見えたからな!それに俺が格好良く学園を守るのを見て巨乳美女が惚れてくれるかもしれねえ」
本当にテツノスケ好みだったらしく、彼はよだれを垂らしながら言っていた。こんな時でも平常運転だ。
「俺達は戦うと決めた。タダオ、お前はどうする?」
デッキを取り出したダイゴはタダオに問いかける。タダオは諦めたように溜息を吐き、懐から自分の手で作ったデッキを取り出した。
「やりますよ。僕だって生徒会役員見習いなんですから!」
「そうだ。それでいい。それじゃ、行こう!」
ダイゴを先頭にして生徒会のメンバーは歩き出す。
未知なる敵も学園のトラブルも彼らに任せておけばいい。そこに彼らがいる限り、解決しない問題はない。
「待ってろよ、暗黒生徒会!この生徒王にして生徒会長、極神寺ダイゴが相手だ!」

『決闘暴走議事録 デュエマのダイゴみ!』
 完
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コメント

続編はありますか!?

Re: タイトルなし

貴さん、コメントありがとうございます。
続編は考えていませんでしたが、やって欲しいという意見が出たら何話か書こうかと考えています。
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