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『コードD』File.extra 相羽征市の帰還

『コードD』


デュエル・マスターズ。
それは、魔力によって生み出された四十枚のカードを使用する戦闘魔法の奥儀。
これは、デュエル・マスターズカードを使って戦った若者達の『ウソのようなホントウ』の物語である。


File.extra ○○○○の帰還

年の終わりの空はグレーの雲に覆われていた。
遠山陸(とおやまりく)はそんな空を見上げ、舌打ちをする。神経が高ぶっていた。表情にも余裕がない。苛立つ原因がどこにあるか、彼はよく理解していた。その原因がいる場所を見て、もう一度舌打ちする。
目の前にあるのは、完成間近の巨大なビルだ。未来地区の新しい名所として大々的に宣伝を行っているこのビルの存在を知らない者はいない。
名所は多くの客を呼び寄せる。だが、その中には客としてふさわしくない者も存在する。今、ビルの中にいる者達もふさわしくない者達だ。
その者達の名は新魔道書同盟。
陸達が所属するトライアンフの宿敵にして、人類に復讐を誓っていた魔道書同盟の後継者を勝手に名乗っている魔法使いのテロリスト達のグループだ。
新魔道書同盟の日本支部のトップはベンジャミン・パーカージュニア。パーカージュニアは魔法と科学技術の融合を得意とした科学者だ。組織を作るだけの資金力もある。彼なしで新魔道書同盟は作れなかったと言ってもいい。
宿敵の後継者を名乗るだけでも不愉快だが、陸はそれ以上にパーカージュニアの存在を憎む理由があった。パーカージュニアは陸の宿敵、ジャロール・ケーリックの弟子だった男だ。パーカージュニアと直接の面識はないが、宿敵の弟子というだけで気に入らない。
「こういう時、あの人がいてくれると心強いんだけどね」
陸の脳裏に浮かぶのは、今年の春に旅立った相羽征市(あいばせいいち)だ。トライアンフのエースで、最強の魔法使い。魔道書同盟との戦いでも多くの功績を残した。
征市がいなくなった後は、陸がトライアンフのエースとして戦っていた。エースを任されるプレッシャーは思っていたよりも大きい。
正月に合わせて征市が帰国するという話は聞いていた。再会を楽しみにしていた陸は、この戦いを早く終わらせて彼の顔を見たいと思っている。
「遠山さん、準備ができました!」
魔法警察の若い男の声を聞いて陸の思考は中断される。陸は目の前にあるビルを見て呼吸を整えた。
パーカージュニアが魔道書同盟のデータを基に作り上げた特殊な装置は厄介だった。魔道書同盟と戦った者達の情報を記憶したその装置は、データにある人物が一定の範囲内に入ると強制的に眠らせる結界を発生させる。陸よりも先にビルの中に入った若月湊(わかつきみなと)はこの罠を知らず、結界の餌食となった。
対抗策として、トライアンフと魔法警察は連携し、結界内でも行動する為の錠剤を開発した。しかし、それは一人分だ。故に、一人で新魔道書同盟と戦う事になる。
陸は魔法警察の男から受け取った錠剤を飲みこむと入口に向かって走っていった。

「おかしい」
中を進んだ陸はそう呟いた。中にいるのは、倒れた男達ばかりだ。駆け寄って顔を見て気付く。倒れているのは、新魔道書同盟のメンバーだ。事前にリストで顔写真とデータを見ていた陸には判る。
しかし、何故、彼らが倒れているのか、それまでは判らなかった。
「もしかしたら……」
一つだけ、思い浮かぶ事があった。それを確かめる為に陸は走る。

「なんなんですかぁーっ!」
ヘリポートのある屋上に着いた時、陸が耳にしたのは男の叫び声だ。叩きつけるような強風と共にそんな言葉が陸を出迎える。
それは陸に向かって発せられたものではない。屋上に着いた時、そこには二人の男がいた。一人は陸に背を向けている赤いブレザーの男だ。陸の目の前の男と対峙しているのが、白衣の男・パーカージュニアだ。
「こんな奴がトライアンフジャパンにいるなんて聞いてないですよ!なんですか、あんたは!大体、何で結界が効かないんですか!」
パーカージュニアの叫び声を聞いて陸の目の前の男は空を指した。
「結界が張られているのはビルの中だけだ。だから、俺は空から来た。高所恐怖症の俺にここまでさせやがって」
「空からですと!?」
「ああ、そうだぜ。その後、お前ら新魔道書同盟と一人ずつ戦った。お前が屋上に隠れていると判らなかったから、屋上からやって来て屋上に戻るなんて馬鹿みたいな事になったな。さて、俺の知り合いが美味しいオムライスを用意して待っていてくれるらしいんだ。年越しそばの前にそれを食べなくちゃならないから、さっさとケリつけるぜ!」
赤いブレザーの男とパーカージュニアはデュエル・マスターズで戦っていた。赤いブレザーの男は武者のような甲冑を纏った龍《ボルシャック・大和・ドラゴン》を従えている。パーカージュニアはそれまでの準備に手間取っていたのか、場に出しているクリーチャーはいない。
「余裕でいられるのも今だけです!《ブレイン・チャージャー》で手札を増やし、ターンを終えます!準備完了!次のターンであなたの切り札を葬ってあげますよ!」
「次のターンなんかねぇ!二体目の《ボルシャック・大和・ドラゴン》を召喚!」
赤いブレザーの男の場に二体目の赤い龍が並ぶ。それを見て、パーカージュニアは笑った。
「あなた、バカですね!《ボルシャック・大和・ドラゴン》はW・ブレイカー!私のシールドは三枚!二体の《大和・ドラゴン》で攻撃しても、私には届きませんよ!」
パーカージュニアの嘲笑が耳障りだった。だが、陸はその表情がすぐに覆される事を知っている。赤いブレザーの男の戦いを何度も見た陸には判る。
「誰もこれで終わりなんて言ってねぇ!《ボルシャック・大和・ドラゴン》を進化!」
赤い光と共に《ボルシャック・大和・ドラゴン》の姿が変化していく。刀を捨てた巨大な拳が赤く燃え、体は鋼鉄の鎧に包まれる。
「俺の切り札《超竜キング・ボルシャック》だ。ボルシャックの名を持つドラゴンがいれば、タダで進化できる。しかも、こいつはT・ブレイカーだ!」
「ひぃっ!こんなの嘘だ!」
パーカージュニアの叫びを消し去るように《キング・ボルシャック》の鉄拳が彼のシールドを砕く。シールドの破片が舞う中でブレザーの男は命じる。
「嘘じゃないぜ。これは『ウソのようなホントウ』って奴だ!《ボルシャック・大和・ドラゴン》でとどめだ!」
ヘリポートを蹴った《ボルシャック・大和・ドラゴン》は全力で刀を振り下ろす。その一撃を受けたパーカージュニアは叫ぶ事もなくその場に倒れた。
「せわしない再会になっちまったな。後の事は魔法警察に任せて俺達は帰ろうか。おっと、忘れてた」
赤いブレザーの男は振り返る。指先で前髪を軽くはらうと、彼は言った。
「ただいま、陸」
「おかえりなさい、セーイチさん」

『相羽征市の帰還』 完
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