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DM企業戦士 時任俊之助 第十話

第十話 逆転の一撃

前回までのあらすじ
 時任俊之助(ときとうしゅんのすけ)は、とある企業に勤める二十四歳の会社員。まだ若いが、DM課の課長である。
 後輩の社員、相原文美(あいはらふみ)に敗北してから調子が出ない時任。金井(かない)社長から東京ドームに呼び出された彼は、熊本(くまもと)と一緒にそこへ向かう。東京ドームで行われていた様々な準備。金井社長のいう実験のために、時任のデュエルが始まろうとしていた。

熊本は、客席の中でも対戦しているテーブルに近い特等席に招待されていた。近いと言っても、時任に声は届かないだろう。時任の応援ができないのがもどかしい。
「あ、熊本君。おはよう~」
「文美さんじゃないッスか!文美さんも来ていたんスか?」
「そうよ。丁度よかった。コーヒー買ってきて!砂糖とミルクが入った甘~い奴ね」
 文美は熊本に百円玉を渡すと、再び、対戦台に目を向ける。何か文句を言いたそうにしている熊本だったが、諦めてコーヒーを買いに行った。
「先輩の運転手をしたり、文美さんのコーヒーを買いに行ったり、最近、みんな俺の扱いがひどいッス」
 熊本の独り言に答える者はいない。そのため、熊本は余計に虚しくなるのだった。

 時任は出場者用のゲートをくぐって、ドーム内に入る。すると、色々な方向から発せられた光が時任の体を包んだ。光だけではない。歓声が波となって押し寄せてくる。
「さあ、ただいまS社の時任俊之助が入ってまいりました!火文明の使い手として今日はどんな激しい戦いを見せてくれるのでしょうか!?」
 対戦席から離れたところに、テーブルと椅子が置いてあって、テレビで見た事があるアナウンサーが実況をしていた。アナウンサーは似たような人ばかりなので、名前は覚えていない。
 客席を見ると、ほとんどの席に子供達がいる。一体、何が起きているのか?
「そうか……。金井社長は、プロ野球みたいに観戦できる試合をやりたかったんだ」
「時任君、準備はできたかい?」
 金井社長が対戦席付近からやってくる。
「金井社長、あの子達は……」
「彼らはデュエル・マスターズが好きな子供達だ。少し訳ありだがね」
 金井社長の話を要約するとこうなる。
 彼らは中学受験のために塾に通う忙しい子供達だ。大人達のいる前では、勉強第一だ、と言っているが遊びたいという思いだって心の中に持っている。そんな子供達を一人入場料無料で招待するというもの。発売元の企業と連携してプロモカードも用意し、パックの販売も行っている。
「こういった場所で、同じ趣味の人がコミュニケーションを取る。ネットを使うのとは、違う存在意義があるはずだ」
「なるほど」
 金井社長の計画が成功するかどうかは判らない。成功させる鍵は今日の対戦にかかっている。だからこそ、今回のデュエルは気が抜けない。
「さあ、がんばっておいで」
「はい!」
 元気よく返事をした時任は対戦台に向かっていく。黒服の男はどうやら、ジャッジらしい。暗殺者かボディーガードだと思っていた。
 今回の対戦相手はR社の社員だと聞いていた。年齢は時任と同じらしいが、老けて見える男で三十代くらいに見える。眼鏡がずり落ちかけている。
「う~むむむ、君が遅いから眼鏡がずり落ちかけてしまいましたよ。困ったものだ!」
「は、はぁ……そうですか」
 おかしな事を言う人物だと思った。だが、世の中にはおかしな人物など大量にいるので、これくらいでは驚かない。
「私はR社の矢島です」
「S社の時任です」
 互いにデッキを交換してシャッフルしながら自己紹介。そして、シールドと手札の準備をしてから対戦が始まる。黒服のジャッジが二人もいる中でのデュエルなので、非常に緊張する。カメラが場を撮って、スクリーンに映しているので、下手な事はできない。
「まずは、私のターン。マナを置いて、『デモニック・プロテクター』をジェネレート。終了です」
「俺は後攻か。『無頼勇騎ウインドアックス』をマナに置いて、ターンを終了する」
「では、私のターン。『デンデン・パーカッション』を召喚!」
「げげっ!」
 『デンデン・パーカッション』は呪文によって場を離れない能力を持つ。呪文による除去を考えていた時任にとって、厄介なクリーチャーだった。
「ま……まだだ。まだ始まったばかりなんだ……。ドロー!『バザカジール・ドラゴン』をマナにチャージして、『幻緑の双月』を召喚!手札を一枚マナに置いて終了だ」
「ふっ……」
 矢島がため息をつく。時任を見下した視線だった。
「眼鏡がずり落ちてしまうようなデュエルですね。私が『デンデン・パーカッション』を出した時点であなたの負けは決まっているのですよ!『停滞の影タイム・トリッパー』召喚!」
「嘘だろっ!」
 『タイム・トリッパー』は相手がマナを増やすのを邪魔する事ができるカードだ。時任のマナブーストデッキにとって、天敵に近い。
「さあ、あなたの番ですよ、トッキーさん」
「トッキーさんって誰だよ」
 律儀にツッコミを入れつつ、時任はカードをドローする。
「大丈夫だ。マナをタップした状態でチャージして、『青銅の鎧』を召喚!マナをさらに一枚増やす!そして、『幻緑の双月』でシールドを攻撃だ!」
「おおっとー!時任選手、攻撃を先制したー!」
 アナウンサーの実況で、会場にいる子供達全員が歓声をあげる。ちょっとしたヒーロー気分を味わう時任。だが……!
「甘いですよ。『デーモン・ハンド』で『青銅の鎧』を墓地へ!」
「矢島選手、『デーモン・ハンド』を出したー!これはすごい!カードに守られているかのようだー!」
「ねぇ、だから言ったでしょう。あなたの負けは決まっていると」
「くっ……」
「では、私のターン。二体目の『タイム・トリッパー』を召喚して、『デモニック・プロテクター』を一体目の『タイム・トリッパー』にクロス。『幻緑の双月』を攻撃!クロスギアの効果で私だけがカードをドロー。そして、『デンデン・パーカッション』でシールドを攻撃!」
 時任と矢島のシールドの数が同じになる。だが、クリーチャーが二体いる分、矢島の方が有利だ。
「くっ……俺はこいつに勝てるのか……?」

「どうも胡散臭い男ね……」
 空になった紙コップを持って文美が呟く。
「えっ、先輩は胡散臭いッスか?」
 隣にいる熊本はホットドッグとポップコーンを食べていた。よく食べるから体が熊のように大きくなるのである。
「時任さんじゃないわよ。対戦相手の矢島って奴。二体も連続で『タイム・トリッパー』が出るなんて……」
「デッキがいいからじゃないッスか?」
「そうかもしれないけど、動きがよすぎるのよね……。熊本君、今回のデュエル、よく見ておきなさい」
「判ったッス」
 返事をした後で熊本は思った。自分の方が年齢は上なのに、文美さんの方が偉そうにしてるッス、と。

「ほぅ……思ったよりできる人ですな」
 ずり落ちそうな眼鏡を直しながら、矢島が場を観察する。矢島の場には、『デモニック・プロテクター』をクロスした『デンデン・パーカッション』が一体とシールドが三枚。時任の場には『猛菌剣兵チックチック』が一体、シールドが一枚。
「では、私のターン!『デモニック・プロテクター』を『ツナミ・カタストロフィー』に進化!」
「何だって!」
 恐ろしいカードが出てしまった。『デンデン・パーカッション』が攻撃する事で時任の手札が二枚減り、矢島の手札が二枚増える。合計で四枚分の差がつく事になるのだ。
「では、『デンデン・パーカッション』でシールドを攻撃!」
「くそっ、『母なる大地』をシールド・トリガーで使う!」
「それでも、『デンデン・パーカッション』には効きませんぞ!」
「俺はこれを『チックチック』に使う!『チックチック』をマナに送り、『アクア・サーファー』を召喚!この効果で『デンデン・パーカッション』を手札に!」
 『デンデン・パーカッション』が矢島の手札に戻る。何とかしたように見えるが、危険な状態に変わりはない。手札には『幻緑の双月』が一体。これで、勝てるのか?
「俺は……これで……このデッキで勝つ!」
 時任がカードをドローする。そのカードは……。
「俺の切り札!『紅神龍ジャガルザー』を召喚!さらに『幻緑の双月』を召喚だ!」
「バカな!クリーチャーを出したところで、召喚酔いをしている!意味がありませんよ!」
「どうかな?『アクア・サーファー』でシールドを攻撃!シールド・トリガーはないようだな?これで『ジャガルザー』のターボラッシュが発動する!」
「なっ、しまった!」
 時任のクリーチャーは『ジャガルザー』の能力でスピードアタッカーを得た。このターンに召喚された『ジャガルザー』も『幻緑の双月』も攻撃が可能になる。
「『ジャガルザー』でシールドを二枚ブレイク!『幻緑の双月』でとどめだ!」
「お……おのれぇぇぇっ!」
 怨霊のような声で叫び、眼鏡がずり落ちる矢島。時任は直接攻撃のために使った『幻緑の双月』を見て、呟いた。
「俺、勝ったんだな。今回は勝ったんだよな?」
 自分では信じられない勝利。だが、客席の子供達全てが時任の勝利の証人である。
「みんな、応援ありがとー!!」
 客席の子供達に手を振る時任。敗北からは完全に立ち直ったようだ。

「時任俊之助か……。おのれ……」
 控え室に戻る途中、悪態をつく矢島。その前に文美が現れる。
「何だ、お前!」
 矢島のセリフに言葉を返す事もなく、文美は彼の腕をひねり上げる。
「いっ……いてててて!」
「ああ、やっぱり……」
 矢島の袖からは大量のカードが落ちてきた。彼がデッキに入れていたのと同じカードだ。
「袖にもカードを仕込んで、手札のカードと入れ替えていたのね。映像が残っているから、何人か気付くと思うけど、後で、ジャッジに言っておくわ」
 矢島の手を離して、会場へ向かう文美。時任は前回の対戦よりも強くなっている。鍛えれば、もっと強くなっていくだろう。そうなってもらわなければ困る。金井社長の計画のためにも……。

次回に続く(矢島のずるは真似しないでね!)

次回予告
アカシック・ホールディングから大量の融資を受けるためのデュエル・マスターズ大会の開催が決定した。S社からは、時任、熊本、文美が出場する。その予行演習として、N社の社員と戦う事になる時任達。N社は百瀬が勤める会社だ。果たして、どんな対戦になるのか?
第十一話 百瀬の挑戦状
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