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DM企業戦士 時任俊之助 第十三話

第十三話 荒らす鬼

前回までのあらすじ
 時任俊之助(ときとうしゅんのすけ)はデュエル・マスターズのカードで対戦して、契約を取るDM課の課長である。最大のライバルにして、小学生時代の同級生、百瀬光太郎(ももせこうたろう)の部下達に勝利した時任達。金井(かない)社長が言う大会まで約一ヶ月。時任と百瀬の闘志は燃え上がるのだった。

 澄み切った空。気持ちのいい風。百瀬にとって最高の日曜日である。もちろん、今日は彼にとっても休日だ。仕事は入っていない。部下の犬飼(いぬかい)に誘われて、雉宮(きじみや)の出身大学の文化祭に来ていた。猿谷(さるたに)は海外に出張である。そのため、百瀬は犬飼、雉宮を連れてその文化祭を楽しんでいたのだった。
「雉宮、今日は天才数学者の藤原譲二(ふじわらじょうじ)氏の講演があると聞いている。それは何時からだ?」
「はい、その講演は本日の午後二時からです。まだ時間がありますよ」
 雉宮がパンフレットを素早くチェックする。百瀬も雉宮も休日なので、それなりにラフな格好だ。雉宮は私服でいる時の方がホストっぽい。
「百瀬さーん!」
 犬飼が百瀬達に向かって走ってくる。彼は両手に二つずつ風船を持っていた。風船には『気球同好会』と印刷されている。身長が150センチほどの犬飼が風船を持っていると、違和感がない。今日の彼はスーツを着ていないので、ただの子供にしか見えない。だが、彼もまた雉宮と同年齢の会社員で百瀬の部下なのだ。
「あっちで風船を配っていたので、もらってきました。はい、これが百瀬さんの分です」
「む……ありがとう」
 犬飼が来た方向を見ると、そこで風船をもらっていたのは、子供だけだ。百瀬のような大人は誰一人としてもらっていない。
「犬飼、あなたは行動も子供みたいですね」
「そう言うなよ、雉宮。はい、君の分だよ」
 額にしわを寄せて注意する雉宮に対して、犬飼は笑顔で風船を渡す。雉宮も風船を受け取った。
「残りの一つは猿谷にあげよっと」
「ヘリウムが抜けて、しぼんでしまうぞ」
 両手に風船を一つずつ持って満足そうな犬飼に、百瀬が注意する。まるで、保護者のようだ。
「リーダー、あと十分ほどで、卓上遊戯研究会の大会が始まるようです」
「判った。そちらに向かおう」
 卓上遊戯研究会。それは、大学時代の雉宮が所属していたサークルで、チェス、囲碁、などの古くからあるゲームの他に、すごろくや人生ゲームといったテーブルゲーム、またはウノやトランプなどのカードゲームで勝利するための論理を築き上げるのが活動目的の団体である。今年はトレーディングカードゲームの研究が盛んで、その一環として、デュエル・マスターズの小規模な大会が開かれているのだ。無料の大会だが、優勝者には最新のパックが一箱与えられる。
 百瀬は参加する予定はない。だが、何かデッキ構築のアイディアが得られるかもしれないと思って、観戦に来たのだ。
(待っていろ、時任。私は金井社長が主催する大会で必ずお前に勝利してみせる)
 時任に勝つ。その目的のために、百瀬は努力を続けていた。

 卓上遊戯研究会の大会はある教室で行われていた。大学と言えば階段教室だが、ここは普通の教室である。多少狭いので、会議室にも見える。百瀬達三人は、教室後方に設置された客席から大会の様子を見ていた。近所の子供達が多く出場しているようだ。それぞれが自分達の使いたいデッキを使って楽しんでいる。
だが大会も決勝になったところで、
「弱い!弱すぎ!お前、デュエルやめちまえ!」
と、罵声が聞こえた。見ると、高校生くらいの少年が、対戦相手に対して言っているようである。その少年は目つきがよくなかった。ガムをかみながらのプレイ、手札の過剰なシャッフル、マナのタップアンタップをしをしていない。さらに、対戦相手への罵倒。
「くっ……『ボルメテウス・サファイア・ドラゴン』を召喚」
 それが、対戦している子供の切り札なのだろう。マナを溜めて何とか召喚したクリーチャーだが、ブロッカーに攻撃を阻まれる。
「ちっ……『パクリオ』で全部落としたつもりだったけど、まだそんなもん持ってやがったか!うぜぇ、『魂と記憶の盾』!」
 場にあった『ボルメテウス・サファイア・ドラゴン』が子供のシールドに移動する。そして、高校生の少年の攻撃が始まった。
「あいつが来ているとは……」
 雉宮が苦々しく呟くのを百瀬は聞いていた。
「あの少年は何者なのだ?」
「リーダー、奴は近所の大会であまりにも対戦時の態度が悪かったために全ての店に出入り禁止の処分を受けた男です。名は鬼塚恭兵(おにづかきょうへい)」
「鬼……か」
 百瀬は再び対戦している場に目を戻す。
「『スターマン』でシールドをW・ブレイク!『ミスト・リエス』でとどめだ!はっ、弱すぎ。お前死んだぜ」
 まだ続く罵声。さらに鬼塚は相手のマナゾーンにあった『サファイア』をつかむと、
「お前みたいなザコにこのカードを使えるわけねぇだろ。俺がありがたくもらっておいてやるよ。その方がカードもうれしいだろうし」
さらに、罵声を浴びせた。
「そんな訳がないだろう」
 客席から立ち上がった百瀬はゆっくりと鬼塚に近づいてくる。
「なんだ、このおっさん?」
「おっさんではない。私は百瀬光太郎」
「桃太郎?」
「ふざけるな!私を桃太郎と呼ぶとは、もう許せん!」
 百瀬はデッキを取り出すと、テーブルに置いた。
「公衆の面前で貴様を叩き潰してやろう。貴様の罵声は一人の人間として許せるレベルのものではない。そして、その子にカードを返してもらおう」
「ああ?人を馬鹿にしてんの、このおっさん?俺が負ける訳ないだろ?叩き潰す?そりゃ、こっちのセリフだ!」
 鬼塚少年はデッキをシャッフルし始めた。百瀬もシャッフルをする。
「いいぜ、桃太郎のおっさん。俺が負けたらこのガキのカードを返してやるよ」
「私は二十四歳だ。おっさんではない」
 雉宮と犬飼も近くまで様子を見に来る。
「百瀬さんは、あのデッキを使うつもりだ」
 犬飼がごくりとつばを飲み込む。全ての準備が整い、鬼退治が始まった。

次回に続く(デュエルはマナーを守って楽しくやりましょう)

次回予告
 鬼塚の『スターマン』デッキ相手に善戦する百瀬の新デッキ。彼に馬鹿にされた子供達のためにも、負けるわけには行かない。最大のピンチを迎えたその時、百瀬の切り札が牙をむく!
第十四話 断罪の一撃

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