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DM企業戦士 時任俊之助 第十九話


第十九話 美男と野獣

前回までのあらすじ
 時任俊之助(ときとうしゅんのすけ)達、DM企業戦士が戦う大会の決勝トーナメント。第一試合で時任は偽中国人の龍大人(ロン・ターレン)こと鈴木三郎を下した。残るDM企業戦士は十四人。次のステージへ駒を進めるのは誰か?そして、『ゲームの達人』一ノ瀬俊樹(いちのせとしき)の行動の目的は?

 文美(ふみ)は控え室に備え付けてあるモニターで時任の対戦を見ていた。予選を突破してきた者達を倒すのは、やはり容易ではない。この大会に集まっている者は、皆、ただの遊びでやっているわけではないのだ。ある者は自社の宣伝。ある者は優勝者の企業だけが得られる資金の調達。そして、中には単純に優勝者に贈られる副賞を求めて戦う者もいるだろう。
 文美は、誰にも負けるつもりはない。予選突破などすでに想定していた出来事である。これから起こるかもしれない想定外の事態にどう対処するか。それで、自分の運命が決まるだろう。
 第二試合は知らない企業の人間達の対戦だ。そして、その次の第三試合は熊本(くまもと)の対戦である。それを見ている時間的な余裕はない。
 文美はデッキリストの最終確認を済ませると、控え室を後にした。

 フリー対戦用の部屋。試合を控えている雉宮(きじみや)を先に行かせた百瀬(ももせ)は、直前まで自分のデッキの調整に専念していた。
「気にいらん……。私が好んで使う光文明のクリーチャーで組んだデッキなのに、何故うまくいかないのだ?」
 子供達と対戦をしながら、デッキの弱点を考える百瀬。だが、答えはまだ見つからない。
 一ノ瀬少年と戦うまで、このデッキと百瀬の相性は抜群だったはずである。しかし、彼に敗れてからは調子が悪くなっていた。
 デッキはカードの束でしかない。ただのカードの束に意思があるとしたら、作り手の想いによるものだろう。デッキへの想いが強ければデッキ自体も強い意思を持つ。それ故、使い手との不協和音を嫌う。
 思い入れが強くても、デッキへの不信感は簡単に生まれる事があるものだ。百瀬は今、完全な敗北によってデッキへの不信感を抱き始めている。
「こんなところで迷っていて……時任に勝てるのか?いや……」
 トーナメント表を見る限り、時任との対戦は決勝戦になりそうだ。このままでは、決勝へ進めるかどうかも危うい。
 テーブルの上には、アーク・セラフィムのカードがある。この日のために百瀬が選んたカードだ。
「お前達は、私に力を貸してくれないのか?」
 時間がない。百瀬はカードを手にとって再びデッキ作りを始めるのだった。

 第二試合が終わり、第三試合が始まった。熊本が大きな舞台でデュエルをするのはもう三度目だ。最初は観客の視線にプレッシャーを感じていた彼も、今なら適度な緊張感を生み出すその舞台を楽しむ余裕さえ持っていた。
「よっし、がんばるッス!」
 両手で顔をバシバシと叩いて気合を入れ、対戦台へと上がる。対戦相手は、線が細く、スマートな印象を与える好青年だった。レンズの小さな眼鏡がよく似合っている。
「よろしくお願いします。僕は、転生舎の紫村士郎(しむらしろう)といいます」
「自分はS社の熊本浩介(こうすけ)ッス!よろしくッス!」
 デッキを取り出した熊本はある事に気付いた。
「紫村さん、転生舎って確か、出版社ッスよね?」
「ええ、詩集を専門に取り扱っているので多くの人には知られていません。まさか、ご存知の方がいらっしゃるとは……」
 紫村は熊本に控えめな笑顔を見せる。洗練された彼の雰囲気は詩的と呼ぶのにふさわしい。
「いや、姉貴がよく転生舎さん発行の詩集を買うもんッスから。それで、覚えていたッス」
「ならば、熊本さんのお姉さんは大事なお得意様になるわけですね。ありがとうございます」
 デッキのシャッフル、シールド、手札の準備が終わり、いよいよ対戦が始まる。
「熊本さん、現在、日本にどれだけ出版社があるか知っていますか?」
「え?」
 マナを置いた熊本は、突然の質問に戸惑った。時任が買うマンガ雑誌などの出版社は知っているだけでも五社ほどある。それに会社の役員はマイナーな出版社から経営に関する本を出す者もいる。競争により、小さな出版社が潰れているとしても百くらいはあるのではないだろうか、と熊本は考えた。
「百か二百くらいッスか?」
「いえ、およそ四千はあるでしょう」
「よ……四千!?」
 想像していた数字とは桁違いだ。それだけの出版社が日本にあるというのか。自分の知らないところで本を出している出版社がそんなに……。
「その中でも、詩集を出す出版社は少ない。本は商品です。需要がなければ、優れていても世に出す事はできません。ですが、我々転生舎は優れた詩集を世の中に出して多くの人に詩を知ってもらいたいのです!そのためにも、この戦いは僕が勝ちます」
 紫村はマナを置き、準備を終えた。一見、優男のようにも見える紫村だったが、彼の執念がオーラとなって彼の周りに漂っているように見える。時任や文美と一緒に出場した熊本とは違い、この大会に『意義』を見出している。もし、紫村が優勝すれば、転生舎は多額の融資を受け、多くの優れた詩集が発行されるだろう。
「自分は……っ!」
 自分には何があるのか判らない。それでも、この対戦台に立つ以上、戦うしかない。
 外から来る巨大なオーラと、内からくる不安と迷い。今までに感じた事のないプレッシャーと戦いながら、熊本はカードを引くのだった。

次回に続く(彼は詩の中に何を見出したのか)

次回予告
 おっす、時任です。え?今回、俺の出番なし!?かんべんしてよ、俺主役なのに。百瀬と熊本ばっか活躍してんじゃん。次回は熊本の試合が終わって、百瀬のデッキが完成。俺の出番があるかどうかはまだ判らないな。次回『第二十話 己の声を聞け』。包囲する敵、蹴散らせ!『ふたつ牙(デュアルファング)』!!

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