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DM企業戦士 時任俊之助 第三十話


第三十話 到達点

前回までのあらすじ
 金井(かない)社長が主催するDM企業戦士達の大会は、ついにクライマックスを迎えようとしてた。予選から始まった長い大会には、様々なアクシデントが起こり、人々の心を熱くした。そんな中、決勝まで登りつめた時任(ときとう)と百瀬(ももせ)。彼らの戦いは人々に何を与えるのか?

 決勝が間近に迫った金曜日の夜。時任、文美(ふみ)、熊本(くまもと)の三人は鳥尾三郎(とりおさぶろう)の店に来ていた。決勝で使うデッキについて討論しながら食事をするためだ。
「つーかさあ、やっぱり俺のデッキだからドラゴンがメインじゃないと魂が震えないわけよ。って、事でドラゴンデッキに決まり!」
「先輩、そんな簡単に決めちゃ駄目ッスよ!ここはマナブーストを駆使しながらビーストフォークで速攻を決めるべきッス!」
「何言ってるの、熊本君。水で手札補充しながら、闇文明の手札破壊で戦略を崩す。でも、マナブーストもいいかもね。『ロスト・ソウル』が撃ちやすくなるし」
「だぁーっ!だからドラゴンデッキだっつーの!ビーストフォークも『ロスト・ソウル』も入らないよ!」
 そう言った時任がウーロン茶に口をつけると、一瞬で脳が爆発するような感覚に襲われた。
「うぇ……これ、ウーロン茶じゃないや」
「時任さん、何言ってるんですか!それはウーロンハイですよ。ウーロン茶に焼酎が少し入ってるだけだから、ウーロン茶と似たようなもんです!」
「酒……?」
 酒が苦手な時任にとって、割った酒でも摂取するのは危険である。
「俺、ちょっと外に出てる……」
 時任は一度店の外に出て、近くをふらふらと歩いていた。夜風に当たると、乱れていた思考が少しずつまとまっていく。
「お前、時任ではないか」
 聞き覚えのある声にふと振り返ると、そこには百瀬がいた。どうやら、会社の帰りのようである。
「おお~、浦島太郎~」
「とうとう桃太郎ですらなくなったか!私は百瀬光太郎(こうたろう)だ、こ・う・た・ろ・う!お前の部下にもきちんと言っておけ!」
「部下?ああ、熊本と文美ちゃんの事か。あの二人は部下じゃないんだ。一応、俺はDM課の課長だけど、うちの課は俺一人しかいないし。それよりも百瀬聞いてくれよ~。文美ちゃんが俺に酒を飲ますんだ。あれはアルハラだ~!」
「大の男が酒ごときで騒ぐな。食事がまだなら、いいところに連れて行ってやる」
 そう言って歩き出す百瀬。食事の途中で出てきてしまったが、特に問題はないだろう。文美に酒を飲ませると大変な事になるので、熊本に任せておいた方が良さそうだ。
 数分歩いて駅ビルの中に入った二人は、イタリア料理のレストランに入った。
「ここは金曜と土曜の夜は1時間限定でビュッフェスタイルの食事が取れる。好きなものを取ってくるがいい」
「へえ、そりゃいいな。好きなものを好きなだけ食えるのって、最高!」
 ピッツァや、パスタなどを取ってきた二人は席について食事を始める。オレンジジュースを飲む時任に対し、百瀬はワイングラスに入った赤い液体を飲んでいた。何かとワインを混ぜたカクテルだと聞いていたが、横文字が苦手な時任には覚えられない。
「デッキレシピの提出は明日だな」
「ん?ああ、そうだね」
 レバーペーストが乗ったトーストを食べていた時任は、百瀬に言われてその事を思い出した。いつもならば、デッキレシピの提出は大会当日でよかったのだが、今回だけは一日早くなった。
「俺のデッキはまだ決まってないよ」
「時任の事だ。どうせまたドラゴンデッキを作ろうとしていたのだろう?」
「ば、バカ言うな!俺はそんな単純じゃねぇ!」
 図星であった。百瀬にまで読まれるのであらば、熊本や文美の言うように全く別のデッキを作るべきなのだろうか?
「お前はいつもワンパターンだな。バリエーションという言葉を知らんのか?」
「でも、それが俊(しゅん)ちゃんのいいところだと、わたしは思うな」
 ふいに女性の声がして、時任と百瀬は固まる。二人がけのテーブルに椅子をつけて、細身の女性が座っていたのだ。
 年齢は時任や百瀬と同じくらいだろうか。髪は黒く長い。そして、それとは対照的に着ている服は白かった。目はくりくりしていて大きく、そこだけ見ると子供のような印象を受ける。
「……知り合いか?」
「いや……」
 百瀬が時任に問うが、時任はまったく覚えていない。だが、この女性は明らかに時任を知っているような口ぶりだったが。
「もう!光(こう)ちゃんもわたしの事忘れるなんてひどい!俊ちゃんが忘れっぽいには昔からだけど、光ちゃんは覚えてると思ってたのに……」
「俊ちゃん……光ちゃん……。もしかして、君は片桐(かたぎり)女史か!?」
「えっ!?片桐って言ったら、俺達と小学校の時に一緒だった片桐はるか!?」
 時任と百瀬の頭にその記憶が蘇ってくる。小学校の時の時任と百瀬のコンビにいつもくっついていた少女、それが小学生時代の片桐はるかだ。
「ああ、よかった……。二人とも思い出してくれたみたい」
「いや……すまない。君に言われるまで完全に忘れていたようだ」
「ところで、片桐。何でここにいんの?一人?」
 片桐は周りを見る。そして、首をかしげた。
「おかしいな?さっきまで一人じゃなかったのに……」
「片桐先生ー!」
 その時、眼鏡をかけた美形の男性が店に入ってきて時任達がいるテーブルに近づく。
「駄目じゃないですか、先生。一人で勝手にどこかに行かないでくださいね、とあれほど言ったでしょう。ん……?」
 その眼鏡の男性は時任と百瀬の顔を見て驚く。時任達二人もこの男性を知っていた。
「あなたは、一回戦で熊本と戦った紫村(しむら)さんですか?」
「そうです。覚えてくださって光栄です」
 紫村士郎(しろう)。熊本と戦って敗れた男。詩集専門の出版社、転生舎の社員だ。
「二人とも紫村さんの事知ってるの?紫村さんのカード仲間?」
「そのようなものだ。片桐女史こそ、紫村さんの知り合いか?先生と呼ばれていたようだが」
「そうだよ、光ちゃん。わたしは詩集の先生!紫村さんがわたしの編集さん!」
 百瀬も時任もこの言葉を聞いて素直に驚いた。片桐は昔から文章を書く才能に恵まれていたが、まさかプロになるとは……。
「すげえな……。俺も同じ歳なのに、ただのサラリーマンだよ」
「まったくだ。才能が開花したという事か。我々の想像を超えるような努力をしたのだろう」
「夢だったからね!他の人は努力したっていうけど、わたしは努力したなんて思ってないよ。努力ってつらい事を我慢してやるものだけど、わたしはつらい事も我慢もしていないもん。言葉とお話してただけ」
 夢に到達したものの言葉は、何気ないようでいて重い。その裏には他の者には出せない強い説得力があるからだ。
「夢……か」
 時任、そして、百瀬の今の夢は何か。言うまでもない。
「時任、我々の今の夢は判っているな?」
「ああ、俺達の今の夢はきっと同じだ」
 金井社長が用意してくれた舞台で、全ての力をぶつけた最高のデュエル。それを意識した途端、時任はデッキを作りたくて仕方がなくなってくる。
「燃えてきたぜ。これが俺達の到達点だ!」
 決勝まであと二日。夜がゆっくりと過ぎ去っていく。

次回に続く(食事シーンを書くと空腹になるのが問題)

次回予告
 紫村です。また、僕の出番があるとは思いませんでしたね。それにしても、先生が時任さん達の知り合いだったとは驚きでした。次回はついに決勝戦。百瀬さんは鉄壁の防御網を展開し、時任さんを翻弄します。時任さんも自分のデッキを信じて突き進み、ついに互いの最高の切り札が激突します!次回『第三十一話 最後に立つ者』多くの希望、継げ!『ボルベルク・クロス・ドラゴン』!

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