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DM企業戦士 時任俊之助 最終話


最終話 輝ける切り札

前回までのあらすじ
 時任俊之助(ときとうしゅんのすけ)は、DM企業戦士最強を決める大会で優勝した日本一の男だ。夢を追うために乗った飛行機がテロリストに占拠され、彼らのリーダーをデュエルで倒したものの、飛行機が墜落。時任は死んでしまったのだ。死後の世界で神と出会った時任は、神とのデュエルを開始する。このデュエルで勝てば時任だけでなく、飛行機に乗っていた人物全員が生き返る事ができるのだ。
 行け、時任俊之助!これが最後の戦いだ!!

 デュエルスペースの神とも言える場所のせいだろうか。時任は、自分が今まで以上に強くなったように感じる。さらに、使っているのは友が力をあわせて作ってくれたデッキ。相手が神でも負ける気がしない。
「『シビレアシダケ』を召喚!手札を一枚マナにして俺のターンを終了します」
「ふっ、マナブーストで手札を浪費していると、戦略の選択肢が減るぞ?私は『鎧兵機サーボルト』を召喚する!」
 神が召喚したのはドラゴンと進化クリーチャーをブロックできないというデメリットを負う事で、2マナでパワー4000という強大なパワーを得たブロッカーだった。
「『グレートメカオー』?どんなデッキなのかまだ判らないけど、行くぜ!『サイバー・ブレイン』!」
 『シビレアシダケ』のマナブーストで減った手札をドロー呪文で増やす。綺麗な流れで時任は自分に有利な状態を加速させていく。
「ならば、『アクア・ハルカス』を召喚してカードをドロー。時任、お前のターンだ」
 神が次に出してきたのはリキッド・ピープルだ。使っているカードはグレートメカオーだけではないらしい。
(とすると……『マーキュリー・ギガブリザード』に進化するつもりか?あのパワーと呪文を封じられるのは厄介だな。だけど、進化する前に俺の切り札が出れば勝てる!)
「『ブレイン・チャージャー』で手札を増やし、『レオパルド・グローリーソード』をジェネレート!ターン終了です」
「なるほど、そのクロスギアか……」
 時任が出したクロスギアを出して、神は眉をひそめる。
(今までの時任はドラゴンを使ったデッキが多かった。マナゾーンにも『コッコ・ルピア』と『ドルザーク』がある。『シビレアシダケ』を進化ドラゴンにするつもりかもしれん。だが……)
 神はそこまで考えて微笑む。
(手札破壊がないのならば、防御を固めてあの切り札を簡単に出せる。奴の切り札が何であろうと心配はいらない)
「行くぞ、時任。私は『サイバー・ブレイン』でカードをドロー!ターンを終了する」
 ピリピリとした緊張感が場を支配し、互いに準備を進める。
「だけど、いつまでもにらみ合いなんてやってられないぜ!『フレイムバーン・ドラゴン』を召喚して、『鎧兵機サーボルト』を破壊!」
 時任のドラゴンによって、神のブロッカーが弾けとぶ。だが、時任は攻撃を仕掛けなかった。
(何かある……。下手に突っ込んで相手の手札を増やすよりは、ドラゴンが並ぶのを待つべきだよな……)
「素晴らしい反応だな、時任。今まで私に挑んだ者の中で最高の存在だ!だからこそ、お前は私の切り札を出すのにふさわしい!」
 神は『ジル・ワーカ』と二体目の『サーボルト』を召喚した。
「『ジル・ワーカ』とは厄介な……。だったら、俺は『炎槍と水剣の裁』を使う!神様の『ジル・ワーカ』と『アクア・ハルカス』を破壊して、俺の『シビレアシダケ』も破壊!三枚ドローだ!」
「だが、忘れるな、時任。『ジル・ワーカ』の効果で『フレイムバーン・ドラゴン』をタップ!このターンも攻撃はできぬぞ!」
 相手のクリーチャーを破壊はしているが、シールドを一枚も壊していない。神が使うデッキは光と水の長期戦を意識したデッキのようだ。時間をかけるのはまずい。
「判っちゃいるけど、防御が堅い……」
「ならば、その防御をもっと固めるとしよう。『電脳聖者エストール』を召喚してシールドを追加だ!」
 神のシールドは減るどころか増えていった。時間をかけたくないのに、相手のペースにはまっていく。
「だけど、まだだ。マナも手札も充分にある。俺は戦える!」

 時任が乗っている飛行機が納豆団にハイジャックされたニュースが流れた数時間後、百瀬、文美、熊本の三人はDM課に集まっていた。
「ハイジャックか……。奴は最後の最後まで予想外の事をしでかしてくれる」
「百瀬さん、それじゃ先輩がこれで死んじゃうみたいじゃないッスか!先輩はこんなところで……!」
 顔を真っ赤にした熊本が百瀬につかみかかるが、それに対し百瀬は言葉を強くして言った。
「ならば、君は生きて帰れると思っているのか!?安い希望などを持って無意味に楽観的な姿勢でいるよりも、最悪の事態を受け入れる準備をする方が懸命だ!」
 百瀬は熊本と文美が持ちたかった最後の希望を打ち砕いた。だが、それは百瀬だって同じ事だ。時任が生きて帰ってくると一番信じたいのは彼なのだ。
(時任、お前はハイジャックごときに夢を潰されて終わる男か……?お前が本当にDM企業戦士ならば、この運命を打ち破ってみせろ。それが私達に希望を見せたお前の責任だ)
 百瀬は強く手を握り締める。やり場のない思い。それが文美にも伝わってきた。
「ほ、ほら!ニュースを見れば、新しい情報が入ってきてるかもしれないじゃない!」
 暗い空気を何とかしようと、文美は明るい声を出して二人に呼びかける。そして、テレビをつけた。
『たった今、速報が入りました。テロ組織納豆団に占拠された旅客機がアメリカに墜落した模様です。繰り返します……』
 死を司る何かの呪文のように、その言葉は三人の生気を奪っていった。墜落などしたら、中にいる乗客は生きていないかもしれない。
「ぐうぅ……うおおおぉぉぉっ!!」
 獣のような百瀬の叫び声。誰よりも時任が生きて帰る事を望み、最悪の状況を想定しようとしながらそれを一番信じたくなかった彼にとって、悪夢は最悪の形で降り注いだ。
 その場に耐える事ができなくなった百瀬はそのまま外へ飛び出した。何も見えない、何も聞こえない。気がつけば、ビルから外へ出て走り続けていた。走りながら、燃え尽きてしまえばいいと思いながら。そんな事ができるわけがないと、思いながら。

「『マーキュリー・ギガブリザード』でシールドをT・ブレイク!!」
 神の切り札はやはり、『マーキュリー・ギガブリザード』だった。時任のクリーチャーを倒しながら、メテオバーンを使い、残りのメテオバーンは一回だ。だが、シールドは六枚。クリーチャー一体でも、危険である。
「やっぱり、フェニックスは強い……。だけど……俺にもアイツがいる!」
 時任のシールドは残り二枚。場には、『青銅の鎧』が一体と『無双竜機ドルザーク』が一体いるのみ。
「マナも充分。さらに、神様の手札はもうない。一気に切り札級のドラゴンを二体出して、この次のターンに勝つ!」
「だが、どうするというのだ。『マーキュリー』を倒す術がお前にあるのか?」
 今の時任のデッキでは、『マーキュリー・ギガブリザード』を倒す方法は一つしかない。だが、それをやるにはカードが足りないのだ。
「だから、『マーキュリー』を倒さないでシールドを破る。『バルキリー・ドラゴン』を召喚!『バルケリオス・ドラゴン』を手札に加えて、G0で召喚だ!」
 時任のドラゴンがさらに増える。うまく行けば、ドラゴン達でシールド六枚をブレイクし、『青銅の鎧』で直接攻撃ができる。
「なるほど。これだけのクリーチャーの量は危険だ。だが、それでも負ける気がせんな!」
 神は一枚のカードを引いた。そして、そのカードから光がほとばしる。そのオーラに時任は威厳と恐怖を感じた。
「見るがいい、人間。これが神の光だ!」
 『マーキュリー・ギガブリザード』に一枚のカードが重ねられる。
「そっ、それは百瀬も使いこなせなかったあのカード……!」
「その通り、『究極銀河ユニバース』だ。私が今回の攻撃でメテオバーンを使い、次のターン、『ユニバース』のメテオバーンで『マーキュリー・ギガブリザード』を墓地に送った時、どんな事があろうと私の勝利は確定する!だが、その前にシールドが持たんな」
 神のユニバースが時任のシールド二枚を破って、メテオバーンを使う。
「シールドは……『地獄スクラッパー』……。駄目だ、『ユニバース』は倒せない。もう一枚は『フェアリー・ライフ』……。これも意味がない!」
 このターンで『ユニバース』を倒すか、シールドを全て壊して直接攻撃をしないと時任の負けだ。だが、神のシールドにシールド・トリガーがあり、攻撃が届かなかったら、その時点で負けが確定する。
「いや、後ろ向きに考えるな。このデッキは俺の仲間が作ってくれたデッキ。今だからこそ、切り札が来る!」
 時任が山札の一番上のカードに触れた瞬間、カードが赤く輝き出した。
「馬鹿な!このデュエルスペースの神の上で、カードが輝くのは私のみのはず……!カードが輝くという事は、時任は私を越える存在になるという事なのか!」
 神がおののき、時任はマナをタップする。
「目覚めろ!『超新星アポロヌス・ドラゲリオン』!!」
 時任の場にある三体のドラゴンが融合して、太陽を思わせるフェニックスが光臨する。その存在は神に等しい。
「メテオバーン発動!『アポロヌス・ドラゲリオン』のパワーは30000になる!『ユニバース』を攻撃!」
 神の切り札を蹴散らした事で、時任に少しの安心が生まれる。だが、まだデュエルは終わっていない。
「私の切り札を破壊だと……?人間風情が!ならば、私も『アポロヌス・ドラゲリオン』を場から消し去ってくれる!」
「できるんですか?」
「何ぃ!?」
 カードを引いた神に対し、挑発ともとれる一言をぶつける時任。彼の言葉には、まだ続きがあった。
「俺の『アポロヌス・ドラゲリオン』を選んだ時、神様のマナは全てなくなります。それでも、俺の『アポロヌス・ドラゲリオン』を倒せますか?」
 はったりだった。だが、この場をしのげれば何とか勝てるかもしれない。
「……どちらにしても、今出せるクリーチャーはこれだけだ」
 神が出したのは『電脳聖者エストール』だ。その効果でシールドが一枚増える。
「時任よ、『アポロヌス』は所詮T・ブレイカー。七枚になった私のシールドを破壊する前に、このエストールで……」
「いえ、俺はこのターンでシールドを全て破壊し、神様に勝ちます」
「何を……言って……」
 時任は真っ直ぐ前を見ている。そして、『アポロヌス・ドラゲリオン』に手を添えた。
「行くぞ、『アポロヌス・ドラゲリオン』……。ワールドブレイカー!神様を守る七枚のシールドを全て撃破だ!!」
「ワールドブレイカー。そういう事か!」
 一枚ずつシールドが割られていく。
「だが、時任。私のデッキには『アクア・サーファー』が入っている!シールド・トリガーでそれが出れば、『青銅の鎧』を手札に戻し、私の勝ちだ!」
 マナにあるカードを見た時点で、『アクア・サーファー』が入っている事は判っている。だが、これ以上待つ事ができなかった。
 二枚目、三枚目とシールドは消えていく。
「四枚、五枚……まだだ。まだ二枚残っている!」
 神も焦り始めているようだ。額には汗をかき、口も渇いている。
「六枚目ブレイク!」
 残りのシールドは最後の一枚となった。心臓の鼓動が脳に響き、目がぐるぐると回るような気がしている。
「『アポロヌス・ドラゲリオン』、最後のシールドをブレイクだ!」
 最後のシールドに『アポロヌス・ドラゲリオン』の攻撃が届き、それが神の手札に入った……。


 一年後、東京。
 東京ドームにて、DM企業戦士日本一を決める大会が再び行われていた。今回は日米合同で行われていて、参加企業は日本だけでも三倍に増え、金井社長以外のスポンサーもついた。日本一になったDM企業戦士はアメリカの優勝者とデュエルして、真の意味で最強のDM企業戦士を決めるのだ。
 今は、日本の決勝戦が行われている。
「自分は、GGアームズの星田五十六(ほしだいそろく)軍曹だ!百瀬光太郎!一年前の大会で惨敗した時の恨み、晴らさせてもらうぞ!」
 決勝に残ったのは百瀬と、ハリウッドの戦争映画に出てくる軍人のような服装の男だった。
「星田……五十六……?残念だが、君の事は覚えていない。誰かと勘違いをしているのだろう。だが、一つ言っておく。私は最初から全力で君を倒す!」
 百瀬はそう言って、重い上着を脱ぎ捨てその下に装備していた最強デュエリスト要請ギプスを外した。
「出た!百瀬さんの最強デュエリスト要請ギプス!あれを外した百瀬さんは無敵だ!」
「でも、あのギプス外してもデュエルが強くなるわけじゃないッスよねぇ……」
 対戦台に近い特別席で観ていた犬飼(いぬかい)の解説に対して、熊本がツッコミを入れる。
「リーダーは一年前に決勝で敗れてから、凄まじい努力をしました。そんなリーダーがここで負けるとは思えませんね」
「実際、私も負けちゃったし。優勝は百瀬さんで決まりかも」
 雉宮(きじみや)と文美も特別席で観戦している。
「百瀬さーん!がんばるでごわすー!」
「光ちゃん、これで勝てば優勝だよー!」
 百瀬の元部下、猿谷(さるたに)と片桐はるかは通常の観客席にいる。色々な人が百瀬を応援してくれているのだ。
「おのれ……。女に応援してもらうとは、けしからん!今から貴様を徹底的に叩きのめす!いいか、返事は「サー!イエッサー!」だ!」
 逆上した星田五十六の先攻で決勝が始まる。そして、数ターン後……。
「光器ペトローバで星田軍曹を直接攻撃だ!」
 百瀬の直接攻撃が決まり、日本一が決定した。
「リーダー、おめでとうございます!」
「百瀬さん、日本一おめでとうッス!」
 雉宮、熊本を始めとする仲間達が彼に駆け寄る。だが、百瀬はうれしそうではない。
「くだらんな……。時任と対戦せずに日本一の称号をもらっても、何の意味はない」
 百瀬の言葉は深い。彼にとって本当の日本一を名乗るには、時任を倒すしかないのだ。
「そういえば、そろそろアメリカの決勝戦も同時中継で行われているはずですよね!どうなったのかな?」
 犬飼の言葉を聞き、そこにいた全員がそれを思い出す。会場にある巨大なモニターでは、アメリカでの決勝戦の様子が写されていた。
『YO!俺の切り札、『緑神龍ダグラドルグラン』二体目を召喚だYO!さらに、一体目の『ダグラドルグラン』でシールド二枚をマナ送りだYO!』
 決勝に残っているのは、アルフレッドのようだ。彼の場には、『インビジブル・スーツ』をクロスした『ダグラドルグラン』が一体と、召喚したばかりの『ダグラドルグラン』が一体。シールドは四枚も残っている。
 対戦相手は、フードつきのコートに身を包んで顔がよく判らない。だが、体格からして男性のようだ。
『OH!『呪紋の化身(カース・トーテム)』一体と、『ファイアー・ブレード』一枚だけじゃ、絶対俺には勝てないYO!』
『絶対と、言い切れるのか!?』
 対戦相手の男が挑発する。まるで、勝利を確信しているような口ぶりだ。
『当たり前だYO!何故なら、次のターンお前の最後のシールド一枚を『ダグラドルグラン』でマナ送りにして、もう一体の『ダグラドルグラン』でとどめ!完璧だYO!』
『確かに、お前は強い!だけど、相手が悪かったな!』
 対戦相手の男は7マナをタップする。
『俺の切り札、『メタルカオス・ドラゴン』を召喚!ありがとよ、『ダグラドルグラン』の攻撃で増えた2マナを使って『ファイアー・ブレード』を『メタルカオス・ドラゴン』にクロス!!この意味が判るよな?』
『し、しまったYO!『メタルカオス・ドラゴン』はクロスギアを装備するとアクセルが発動して二回連続攻撃が可能!『ファイアー・ブレード』を装備する事でアクセルが発動し、召喚酔いも解除。さらに、『呪紋の化身』がいるから、シールド・トリガーが使えないYO!』
『そういう事だ!行くぜ、『メタルカオス・ドラゴン』!シールド四枚ブレイク!』
 アルフレッドのシールドが消し飛ぶ。その中の三枚がシールド・トリガーだったが、それを使う事はできなかった。
『Shit!この大会で優勝してモモタロを倒すつもりだったのに、これで水の泡だYO!』
『残念だったな!百瀬と戦うのは、俺の役目だ!』
『呪紋の化身』がアルフレッドに直接攻撃をした。
「あの人は誰でごわすか?」
 百瀬のそばに来て、一緒にアメリカの決勝戦を見ていた猿谷が呟く。
「もちろん、光ちゃんには誰か判るよね?」
「当たり前だ」
 片桐の問いに、どことなく機嫌の良さそうな百瀬は答える。フードを脱いだ優勝者は、その場にいる誰もが知っているあの男だ。
『お前!一体、何者だYO!俺が倒されるなんて、只者じゃないYO!』
『俺の名前を知らないのか?俺の名は……』
「あの場に立っている、私にとって最高のライバルの名は……」
 二つの声が綺麗に重なる。どこにいても、デュエルに対する真っ直ぐな想いが重なるように。
『DM企業戦士、時任俊之助だ!』

 DM企業戦士 時任俊之助
     完

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