スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

『デュエルのくに』 プロローグ

プロローグ 招待状
 人は何故、おもしろいと思うもの、楽しいと感じる瞬間を求めてしまうのだろうか?必要な事だけをして生きていけないのは何故だろうか?そして、人は何を楽しいと感じているのか?
 楽しいものがないと人はどうなるのだろう?物心がついた時から、ずっと同じ事を考えている。そして、俺には楽しいものを作り出せるだろうか、と自問自答する。
 ある場所に行った。どんな場所に行ったかはこれから詳しく話す。
 今、聞きたいという人は残念だが、お引取り願いたい。順序を追って話すからこそ、これは物語として成立する。
 俺が行ったのは、村おこしを計画した、田舎の農村。天才によって作り上げられた一つの世界。それはもはや『国』と呼ぶにふさわしい完成度だった。現実に存在しない生物(クリーチャー)が存在する現実世界の中の異世界。一種のバーチャルリアリティ。
 もし、神が俺の前に現れて俺の願いを叶えてくれるのならば、俺を過去の世界に戻し、あの世界を体験する側ではなく、あの世界を作る側の人間にしてほしい。あれだけのものを作れたら、俺は死んでもいいとさえ思っている。
 一つ、注意事項を。俺がこれから話すこの物語は俺の一人称で記述されず、三人称で記述される。では、好きな飲み物でも飲みながら、この岸宮勉(きしみやつとむ)が奏でる物語を体験して頂きたい。

 岸宮勉、高校二年生。成績は全体的に良い方だが、社交性がなく、友達がいない。彼に話しかけてくる人間はいるのだが、彼が相手にしないだけなのだ。彼は常に、遠くから他人を観察しているような人間なのである。
「岸宮、ね、これ見てよ」
 昼休みの教室。読んでいる途中だった映画雑誌から顔を上げる勉。そこには、彼にとって顔なじみのクラスメート、金谷幸一(かねたにこういち)がいた。手には、白い封筒を持っている。普通に手紙を入れるのに使われる一般的なサイズだ。封筒の口は開いていて、中からは何枚かの紙が見える。
「一体何だ?」
 勉にとって、幸一は学校の中で話をする唯一の人物といってもいい。幸一も友人が少ない人間なのだ。クラスの中では孤立していると言ってもいい。理由は簡単である。彼の趣味が問題なのだ。
 デュエル・マスターズというカードゲーム。勉もくわしくは知らないが、学校の中でそれをやっている人物を見かけた事はない。彼の話題と言えば、それくらいしかない。高校二年になった同級生から見れば、彼の趣味が子供っぽく見えるのだろう。
 勉は幸一の趣味を受け入れている。デュエル・マスターズのルールも完全に把握しているが、やろうと思った事はない。幸一の練習に付き合う程度だ。
 大柄な割りに子供っぽい幸一の顔が笑っている。勉は、デュエル・マスターズの大会の招待状でも来たのだろう、と思っていた。
「これを見てよ。すごい!」
 幸一が勉の机の上に並べたのは、田舎の行楽地のパンフレットだった。『デュエルのくに』と書かれている。
「大自然の中に突如、現れたクリーチャーの世界だって!」
「クリーチャーの世界の模型だろ?」
「それでも僕にはうれしいよ!交通費以外は無料で楽しめるみたい。僕の他に友達を一人連れて行っていいって書いてある」
「よかったな、誰か好きな奴でも連れて行け」
 勉はそう言って、再び映画雑誌に顔を向ける。幸一はにこにこと笑ったままで勉を見続けた。二人の間に流れる沈黙。勉は諦めて映画雑誌をしまった。
「判った。俺に拒否権はないんだな?」
「ありがとう、岸宮!一緒にクリーチャーの世界を楽しもう!」
「へいへい」
 暇だった。勉が幸一の誘いに乗った理由はそれだけだ。そして、二人は目にする事となる。この世界に作られた仮想現実世界『デュエルのくに』。その本当の意味を。


第一話へつづく
スポンサーサイト

コメント

非公開コメント

Twitter

FC2カウンター

FC2カウンター

現在の閲覧者数:

検索フォーム

QRコード

QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。