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『デュエルのくに』

第五話 火の部屋~red eye~

 一枚の呪文が判った。これだけで、堅牢な防御が崩されたのだ。
「俺が使うのは『獣達の挽歌』。これを使えば、シリウスにブロックされても、シールドを一枚ブレイクできる。ブロックした二体のシリウスはタップされ、シールドはゼロ。そして……」
 二体の『炎のたてがみ』は墓地に行った。だが、勉の場には最後の『炎のたてがみ』がある。
「最後に残った『炎のたてがみ』で直接攻撃をする!」
 回答を終えた勉は、険しい顔つきで上を見上げる。どこかにいる主を見据えているようだった。普段見ている彼との違いに驚き、幸一も声をかけられない。
「俺の予想は多分、当たっている。お前は宇島慈雨(うじまじう)だな?」
『正解よ。あなたなら、判って当然ね。さあ、次に部屋に進みなさい』
 植物に覆われていた扉が自動で開く。その先には、火文明の部屋があるのだろう。そこでも問題が待っている。そして、その先には何があるのか?
『犬、あなたはここにいなさい。あなたの仕事はもう終ったわ』
「は、かしこまりました」
 直立不動だった犬は、そのまま動かない。勉はそれに目もくれず、開かれた道を進んでいった。

 宇島慈雨。職業は天才演出家。
 演出家といえば、映画やテレビドラマなどで話を盛り上げるための工夫をするのが仕事だ。だが、慈雨のフィールドはその程度では収まらない。彼女は人々の生活を演出するのだ。
 倒産寸前のある企業は、慈雨の演出によって社員がやる気を取り戻し、倒産の危機を回避。またある時は、総理大臣の街頭演説を演出。その内閣の支持率を上げるのに、一役買った。
 また、映画や演劇の演出も手がける。本来なら中学生なのだが、義務教育程度のレベルなら完全に習得している上、学校に通うよりも働いた方が国益になるため、彼女は特例として義務教育という『足かせ』を免除されている。
 それほどの人物を知らない者はいないだろう。一般人は彼女の名前か、才能の何パーセントかを知っている程度にすぎないのだが。
 幸一でも、彼女の名前くらいは知っていた。
「勉は、何で宇島慈雨だって判ったの?」
 火文明の部屋に向かうための通路で、幸一は聞く。他にも、疑問はあるのだが、まず、これを聞く必要がある。
「俺がネットで奴の事を調べていたからかもな。奴がこの一年間でどんな演出をしてきたのかも全て調べた。奴は、いくつか映画の演出をしていた」
 幸一は、勉が映画監督になりたいと言っていた事を思い出す。
「じゃあ、勉が映画を撮る時に宇島慈雨に演出してもらうの?」
「いや、それは違う」
 勉は横に首を振ってそれを強く否定する。
「俺は、宇島慈雨の演出を超える映画を、俺の手で作り上げる」
 それは天才への挑戦。勝ち負けで言うのであれば、勝てる可能性は非常に低い。だが、それでも彼は挑むのだ。何故なら……。
「俺は映画が好きだから。だから、俺は奴の演出を超える」
 突き当たりに扉があり、勉はそれを開く。
 赤い光と熱気が二人を包んだ。噴火した火山からマグマが流れる。もちろん、本物ではない。よく似せた模型だ。だが、それはデュエル・マスターズを知っている者にとって、本物の火文明と呼んでもおかしくないほどの出来映えだった。
 地面は金属の板を打ち付けてあった。歩くと、大きな音がする。これは火文明の要塞などを意識した演出なのだろう。
 そして、何度も彼らの前に現れる場違いなテーブル。だが、何度現れても関係ない。立ちふさがるのなら、何度でも乗り越えるだけだ。
「今度の問題はなんだ?今の俺に解けない問題はない!」
 相手の場には、『光器スヴェータ』が一体。そして、シールドが四枚ある。
「シールドが四枚か……。厄介だな」
 そして、もう一方の場には『コッコ・ルピア』が一体と『スカイ・ジェット』が一枚。シールドは二枚。マナは火文明のカードだけで九枚あった。
『相手のシールドに、シールド・トリガーはなし。ドロー、マナチャージは終わっているものとする。二体のアーマード・ドラゴンと一枚の火文明の呪文を使って相手に直接攻撃をせよ。ただし、アーマード・ドラゴンは二体とも別のクリーチャーにする事。そして、アフタージェネレートに対応したカードのみを使う事』
 どこかにつけてあるスピーカーから慈雨の声が聞こえる。
 内容を理解した勉と幸一は、すぐに正解のカードを考える。
「シールドが四枚もあるのに、とどめをさすのは難しいね」
「だが、不可能じゃない。W・ブレイカーのドラゴンを二体並べれば、四枚のシールドを破り、とどめをさせる」
 だが、それには『光器スヴェータ』が邪魔である。何とかしてブロッカーを排除しなければならない。
「なら呪文は『火炎流星弾』か……。いや、『火炎流星弾』はアフタージェネレートに対応していないカードだ。だとすると、『ガルクライフ・ドラゴン』……。いや、これもアフタージェネレートに対応していない」
「じゃあ、ブロッカーを破壊できる『クリムゾン・バーク・ドラゴン』は?これなら、アフタージェネレートに対応してるよ」
「それでも駄目だ。1000足りない」
 最初の時点ですでにつまずいてしまった。だが、正解は存在するのだ。糸口さえつかめれば……。
「そういえば、シールドに意味はあるのか?ストライク・バックの『フレイムランス・トラップ』を使うとか……」
「勉、アーマード・ドラゴンには攻撃した時にシールドを手札に戻せるカードはないよ」
「そうだよな……。シールド……?」
 そうか。シールドが二枚あるというのは、この問題を解くヒントだったのだ。
 自分にとって邪魔な『足かせ』に気付いた勉はそれを振りほどく方法も見つけた。その瞬間、思考が軽くなる。
「この程度の問題で何度も俺を試しやがって。今から俺の答えを見せてやる!」


最終話へつづく
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